至るところから魔物に襲われる!
出発してしばらくすると魔物が襲い掛かってきた。
もちろんそれを撃退する5人だったが、すぐにその異変に気づく事が出来た。
魔物の数がドワーフ領に近づく度に増えているのだ。
「数多くね?」
「黙って手を動かせよカイ。」
カイは以前、ドワーフ領へと入った唯一の人間だから感じたのだろう。
前の時よりも魔物が増え更には好戦的であることに。
どれだけ殺気を放とうと威圧しようとまったく怯む様子が見られない。
かなり異常な事態だ。
「……この現象、覚えがあるな。」
ハオの呟きにゼロは顔を顰める。
ゼロにも覚えがあるようだが、その可能性は無いに等しいようなものだからだ。
だが、似たような事を経験したことはあった。
異世界で。
あの時はホロウとハオの2人が居て解決するのにかなりの犠牲者と時間が掛かってしまった。
だが今回はカイとリパーがいる。
特にカイがいれば早期に解決出来る事案だ。
「カイ。魔物の一体を調べてくれ。」
「あ?どんな風にだ?」
「精密検査だ。リパー、一体だけ捕まえてくれ。」
「りょーかーい。」
リパーが手近かな魔物を鎖で巻き付けると地面にナイフを刺して縫い留める。
その隙に検査を始めるカイの周囲を4人で囲み援護する。
医療知識があるカイなら何か分かる可能性がある。
無駄な血を流す前に解決出来ればそれがいい。
「検査、終わったぜ。こいつは……ちと厄介だぜぇ。」
検査の終わったカイは周囲で休憩する4人を呼び集める。
既に魔物は居らず、死体と流れ出る血が地面を埋めつくしていた。
「何か分かったか?」
「あぁ、こいつはウイルスみてぇなもんだ。」
取り出した小瓶の中には魔物の血と黒い物質が交じることなく中で揺れている。
「この黒い物質。こいつが暴走の原因みたいだ。これは血だ。魔物の血液とは別の血液が交じることなく体内に存在してる。」
「対処法は?」
「全ての血を抜き取って、新しいやつを入れる他にねぇな。……後はこいつがどこで生まれたのかその原因も探さねぇとならねぇ。」
「なるほど。我らも無駄に殺さずとも済みそうだな。」
「知ってるのハオ?」
「あぁ、お前達と出会う前に別の世界でこの症状が蔓延していてな。世界の6割がこの症状に感染し凶暴化していた。」
「お、おい!てことは何か!?魔物だけに感染する訳じゃねぇのか!?」
「えぇ。これは血液感染のようで噛みつかれれば感染します。」
「厄介だね…なら急いで原因を探そうよ。」
「あぁ。とりあえず、リパーは一度城に戻り警備隊と共に魔物を制圧してくれ。ホロウは原因の究明。カイとハオは俺と一緒にドワーフ領だ。この結果は同盟において有効な手札になる。」
カイから小瓶を受け取りそれを太陽に翳す。
リパーとホロウは直ぐに行動に移り、ゼロ達も小瓶を仕舞うと急いでドワーフ領へと向かった。
ドワーフが感染していないことを願いながら。
最近、皆の様子が少しおかしい。
まともなご飯を食べられないせいでピリピリしてるのか、険悪な雰囲気が村中に漂っている。
「さぁみんな、今日のご飯だよー。」
全身の所々を包帯で巻いている彼女は動物達に干し草を次々と渡していく。
それを美味しそうに食べる牛さんが少し羨ましかった。
食事なんて最近はパンとスープを日に2回くらいしか食べていない。
前はそんなこと無かったのだが、人間達が鉱石をあまり買わなくなってからこの国の食事事情は変わった。
(戦争終わったみたいだから仕方ないかなぁ…)
あまりにも唐突に終わった戦争に何の準備もしていなかった国は農業など考えず縮小したままだ。
結果、食料の供給が追いつかなくても仕方の無い事なのだろう。
そんな事を考えていると動物の金切り声が聞こえてきた。
何事かと思い、急いで声の聞こえた放牧中の動物達の方へと駆け出すとあまりにも衝撃的な光景が目の前にあった。
ぐちゃぐちゃと肉を食いちぎる音、びちゃびちゃと血が滴る音、徐々に小さくなる動物達の鳴き声にピクリとも動かなくなる体。
目の前で手塩にかけて育てた動物達が捕食されている。
同じドワーフの、村の人達によって生きたまま。
その目は既に正気ではないことは見て分かった。
そして一斉にこちらを見るその目は既に自分を餌としてしか捉えていない。
「あ、あぁ………あ…………」
所々に噛みつかれ出血している村人達は、腰の抜けた彼女にゆっくりと歯をカチカチ言わせながら歩み寄ってくる。
逃げなきゃと思えば思うほど足に力は入らず、ただ地を這うことしかできな。
「だ、誰か……」
逃げようとする彼女に1人の村人が吠えた様な声を上げると、他の村人が一気に駆け出し彼女へと襲いかかる。
危機的なこの状況の中、今の状況に似ている事があったと走馬灯のように思い出す。
魔物に襲われた所を助けてくれた魔族の人達、そして懸命に治療してくれた人間。
真剣な彼の目はとても澄んでいた。
感謝の言葉を伝えることなくこのまま死んでいくのかと諦めそうになる。
死にたくないのだろう。
彼女の口からその想いが吐露された。
「誰か助けて……」
刹那のその言葉と共に目の前の村人達が吹き飛び轟音が辺りに響き渡った。
目の前には黒いコートを靡かせる人間が凹んだ大地の上に立っていた。
「この村はダメか。カイ!やれそうか!?」
「拘束する。後は任せるぞ?」
目の前の男の影から現れた男が魔法陣を浮かべると、暴走している村人が次々と自分の影に拘束されていく。
「大丈夫か嬢ちゃん?」
後ろから声を掛けられ振り返ると、そこには自分にとっての命の恩人がしゃがんでいた。
「ちっと待ってろ。詳しい話を聞きてぇが、今はあいつらの治療が最優先だ。」
そう言って頭を軽く撫でられると、男は村人の1人に歩み寄って行くと頭を掴む。
何をするのかと思っていると、目の前で村人の血が盛大に噴き出し男の身体が染め上げられる。
「ひぃ!!?」
「心配すんな。殺しちゃいねぇ。この血が原因で暴走してやがる。」
小さく悲鳴をあげたのが聞こえたのか、男はそう言うとうねうねとまるで意思があるみたいに動く黒い血液を拳で殴る。
弾けるような音と共に血液は消え去っていく。
「さぁて。オペ開始とシャレこむか。」
バイオハザードですね分かります。
そりゃ医者のカイ居たらなんとかなるね。
えっ?
カイ万能?
いえ、みんな万能です笑