ドワーフ領に入る前、カイは血液の小瓶を揺らしながら今後の話をしていた。
この血をどう排除するか。
「俺がこいつを消し飛ばす。だが、他の血液までぶっ壊したら意味がねぇ。」
「なるほど。俺とハオで止めるのか。」
「少々手荒になるが、命を奪うよりは大分良い結果だな。」
問題があるとすればひとつ。
カイの能力の危険性だ。
これが発覚すれば少し面倒だ。
交渉の妨げになりかねない。
「どうする?止めておくか?」
ハオがゼロの目を見てそう真剣な表情で聞いてくる。
あの顔は何を考えているか分かっている顔だ。
長くいると考えまで読まれるのはどうにかならないかねぇ。
「いや、人命救助優先だ。もしこんな事で交渉が決裂するようなら同盟なんて結ぶ必要ない。」
「それでこそ、だ。」
ハオは満足げに微笑むと3人は目の前の村の中へと侵入。
村人がいないことが事態が深刻である事を告げる。
ハオは目を瞑ると反応を探る。
反応が複数。
どうやら生存者がいる。
が、このままではまずい。
「ゼロ、急いだ方がいい。生存者がいる。西だ。」
その言葉と共にゼロの姿が一瞬で消え突風が吹き荒れる。
人命となると見境ない辺り、少々危うい存在ではあるようだな。
そんな事を考えながら粉々になった地面と突風で散乱した出店を見つめる。
「行くぞ。」
「あぁ、無茶すんなよおっさん。」
「うるさい!少し老け顔なだけだ!」
そして今は、助けた村人を牧場に眠らせ助けた少女から事情を聞こうとしていた。
そうしているのだ。
と言うより途中だ。
なのだが…………
「ハオ。どうしてこうなった?」
「ふはははは!なかなかに愉快ではないか!!」
ハオは目の前の状況を楽しんでいるようだが、ゼロは腕を組みながら逆に苛立ちを見せ始めた。
というのも、
「恩人様です!あの時はほんとありがとうございました!」
「だから!それ何十回も聞いたっての!いい加減離れやがれ!!」
カイに抱きついたままずっと離れず話も聞かず顔を擦り付けるドワーフの彼女。
事情を聞くことなど出来ないのだ。
「それに私だけでなく村の人まで助けていただきました!本当にありがとうございます!」
「わーったから!くそ!ドワーフなだけあって力が強え!」
「あーそろそろいいか?」
「ゼロ、ここはカイに任せ我々は外の村人が目を覚ました時にでも事情を聞こうと思うがどうであろう?」
「待て待て待て!!俺を置いていく気か!?」
ハオは笑いを堪えているようだがまったく隠す気はないらしい。
それに面白がっているみたいだ。
まあ実際この様子だとしばらくは落ち着かないだろ。
「分かった。後は2人仲良くなー。」
「くっそ!待てゼロ!ふざけんな!」
振り解こうとするカイだが、彼女は笑顔のまま離れようとはしない。
それに手を振って2人は部屋を出た。
「くそぉぉぉぉ!!」
カイはこの時、あの時助けなければと少し後悔した。
暫くしてカイが情報を聞き出しある程度状況がまとまったのか、彼女が左腕に抱きついた状態で現れた。
村人の方も目を覚ましたのか、ハオとゼロに驚いたが状況を説明すると納得して自分たちの家へと戻った。
その時に、家からあまり出ずにおかしいと思った村人や魔物には近づくなと警告までした。
「やはり、狂欲症だったか。そうなるとこれはかなり厄介だなぁ…」
「ふむ、感染が拡大すればカイだけでは手に負えぬ事になるやもしれん。」
被害がどこまで及んでいるのか、村人達の感染の原因は何かを探ろうとした2人にカイは感染源を報告した。
「感染源は魔物の肉だ。この国は魔物を食料として食ってる。」
「動物ではないのか?」
ハオの問いに彼女が答えた。
「ドワーフは動物の肉は動物達は食べないの。私たちは獣人の一種だから。」
なるほどと理解した2人は残りの被害状況を確認しに向かう前にカイに止められる。
どうやら何か情報を彼女から聞き出したようだ。
それもかなり有力な情報を。
「魔物が徒党を組んで襲ってきたらしい。それを撃退し食料を得て今は国の首都に送り届けたって話だとよ。」
「なるほど。それはかなり有力だな。」
「彼女はここで牧場主をしているウォルフって言うらしい。」
「初めまして!カイ様や貴方々に助けてもらった恩は忘れません!ドワーフ族は受けたご恩は必ず返すのが礼儀です!」
そう言ってカイの腕を強く抱きしめる天真爛漫な彼女、ウォルフはそう自己紹介をする。
受けた恩を忘れないのは彼女だけではと思うが、去っていく村人たちが皆、他種族である自分達に深く感謝していた事から嘘でもなさそうだ。
「それより急ぐぞ。このままだと狂欲症でこの国が滅びる。その前になんとしても止めるぞ。」
ゼロはそう言って首都に行こうとするのをウォルフに止められた。
何故ならもう間に合わないからだと。
どういうことかハオが説明を求めるとウォルフは申し訳なさそうに俯いたまま答えた。
「実は……届けられたのは三日前で、既に皆食べてるんです。私はまだ仕事が忙しくて食べてなくて……」
その言葉にゼロは間に合わなかった事に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
ハオも少し動揺のしているのが分かる。
このままではこの国が崩壊しちまう…
それに被害がこの領地だけとは限らない。
早急に感染源を潰し、これ以上の被害を止めなければ不味いことになる。
最悪、根絶やしにする事も視野に入れなければ……
「俺に任せろ。」
カイはゼロを見つめてそう強く言った。
その言葉をゼロは信じた。
彼の目がいつもより透き通っていたから。
「何か策があるのか?」
「感染源はホロウ次第だが、俺はこれでも医者だ。それに……」
カイは周囲の空間を歪ませると周囲にかなり大掛かりな作業台が現れた。
それを見て2人は笑みを浮かべると確信した。
カイならこの状況を打破する何かを『作れる』と。
「技術者でもあるんだぜ?」
その言葉は何よりも頼もしく感じることが出来た。
カイは医者で戦闘員で技術者なんですね!
結構多彩だし器用なんだなぁー
脳筋なのに笑