そしてホロウとリパーはどうしてるのか?
カイが何かを製作している時、ホロウは感染源を見つけるために森の中を歩いていた。
感染した魔物が襲ってくる方角と数が多い場所へと、次々と襲い来る魔物を返り討ちにして。
「やれやれ、面倒この上ないですね。…ですが匂いが近いですねぇ。」
一度経験した事のある現象。
異世界でだがその経験はしっかりと生きている。
あの頃と同じような感染者を皆殺しにするような悲惨な方法を取ることもない。
「感染源があるとは分からず無茶をしたものです。」
フワッと空中に浮くとさっきいた場所に黒い液体が放射状に広がっていく。
辺りの木々は液体に触れた瞬間に枯れ果て、地面の草花は溶けだし地面の土が剥き出しになる。
そのまま空中に滞空すると、感染源が姿を表した。
黒い毛並みに大きな体躯に鋭い牙。
「狼型の魔物ですか。ですがこの身体の大きさはもしや…プラチナウルフでしょうか……珍しいですねぇ。」
目の前の狼が遠吠えと共に黒い液体を周囲に撒き散らす。
ヘドロのような液体は意思があるみたいにふよふよ動くとホロウに向かって槍のように襲い掛かる。
「!?……血液を使役している!?この現象は初めて見ますね!!」
その全てを避けるとステッキを取り出す。
厄介ですね。
あの血液で傷を負えば私自身感染してしまう可能性があります。
まあ当たらなければ良いのですがそれではエレガントさに欠けますねぇ。
「ゼロ……と約束………森……守る……」
「会話が出来るのですか!?これはこれは驚かされてばかりです。」
これで更に厄介になった。
殺すだけなら本当は簡単なのですが、ゼロの名を口にした時点で殺すわけには行きません。
それに森を守るということは悪いことではありませんから。
「少しだけ本気を出しましょうか。こちらの世界で2割は初めてですのでどんな影響が出てしまうのか心配ですねぇ。」
その頃、リパーは部隊を編成して周辺魔物の広域包囲をしていた。
国や地域の警備を最小限に留めて。
ホロウとゼロに今回の騒動の原因を聞いたけど、これはかなり厄介な問題だ。
敵が強いとかそっちの方が簡単な問題だけど、こればかりは個人ではどうしようもないからね。
ウイルス感染とは恐れ入るよ。
噛まれない事を願いたいね。
「感染には気をつけてね。噛まれたり怪我したら感染するかもだからその時は楽にしてあげるよ。」
ギラリと怪しくナイフを輝かせるリパーに誰もが冗談だと思っていたが、様子からして本気で殺られると感じ緊張が走る。
警備隊をドワーフ側の領地内まで拡大、ホロウが送ってきたポイントを中心に部隊を囲むように配置。
「それでどうするのだ?これ以上範囲が広がればどうする?」
「僕達の仕事は感染拡大の防止。そして他国の人間を救うこと。それ以外はないよ。それと領域内で他種族との交戦はなしね。」
「分かった。リパーにはドワーフ側の指揮を頼みたい。」
「もちろん。ブラッド、君はその血を使うのは禁止。感染したら大変だからね。」
「了解しました。」
それぞれが行動を起こす中、リパーは1人考えていた。
被害を抑え込むのは簡単だ。
何度も殺す気で訓練したから魔物相手なら殺られることはない。
問題があるとすれば……
(ドワーフ達の感染。この場合、魔物とドワーフに挟まれる…それに魔物とドワーフが争わないとは限らない…)
そんな心配をしていた。
ーーー具合が悪い。
何を考えているかすら分からないほど思考が定まらない。
それどころか何をしたいのかも分からない。
ここ最近、外に出たいという願いが強くなっていく。
何故か父はそれを止めるが、その理由は教えてはくれない。
それを今日こそは問い正そうと王の間に向かうと何人もの衛兵やメイドがその場に倒れている。
自分も体調が悪い中、倒れてる衛兵に駆け寄ると具合が悪そうに大量の汗をかき顔色が悪い。
みんなそんな様子だ。
玉座に座っていた父も椅子から倒れて階段に伏せている。
一体何が起きているのか。
そんな事すら考える余裕が今の自分にはない。
今何をすべきか、どうするべきなのかもはっきり出来ない。
(何が……一体……私は……)
自分の中に何か別の誰かがいるような感覚。
身体を動かしているのは自分なのか、それとも別の何かなのかさえ分からなくなってくる。
そんな中、窓ガラスの割れる音が聞こえると王の間に謎の男が3人降り立った。
見たところ他種族のようだ。
我々ドワーフ族ではない。
まさか彼らが何かしたのだろうか。
「ちっ!やっぱ感染してやがる!時間の問題だぞこれ!!」
「魔族の肉はあまり使われなかったか、もしくは調理過程で血が薄れたかのどちらかだな。」
「どっちでもいい!早く救助するぞ!」
近くの衛兵に近づく人影は手を頭に置くと大量の血が吹き出した。
やはり侵略者のようだ。
このままではみんなが危ない。
次々と皆の体から血液が噴き出し辺りが黒く染まっていく。
そしてとうとう、王までもが血を噴き出した。
あいつらを止める。
どんな事をしても。
ーーーーナントシテモ
「あいつはどうやら呑まれた奴だな。」
「なら試してみるか。」
「ふむ、カイを疑うわけではないが……大丈夫なのか?」
何か話している。
気が逸れた今が好機。
一気に片付ける。
「信用してるからな。」
目の前で男は見慣れぬ武器を構えている。
そして、何かが弾けるような音と共に視界が暗転し意識を手放した。
カイが作った物が状況を打破できる?
かもしれませんね、!