「出来たぜ。時間的にゼロ用のもんしか用意出来ねぇし、作れねえから勘弁な。」
そう言って渡してきたのは1発の黒い弾丸。
投げ渡してきたそれを受け取ると見つめる。
カイの能力が封じ込められそれに複数の魔術回路が入り組まれている。
素晴らしい造形に無駄のない回路。
能力も非殺傷でゼロ好みの物に変更してあるあたりよく分かってるな。
「ほう。ゼロの武器のひとつか。確かにこれなら比較的簡単に元に戻せるか。」
「まあな。これなら術式とか組み込むだけで作れるから、直接型の兵器より簡単なんだ。」
ゼロは弾丸を取り出した銃に装填する。
黒い銃のバレルが怪しく光ると自動でブローバックし弾丸を排出する。
その排出するカイ作の弾丸を今度はもうひとつの銃に空中で装填する。
「いつ見ても謎の銃だよな。弾薬のコピーってよ。」
「物の見方を変えればなんてことない能力だが、魔術弾丸となれば話は変わるな。」
「だよなぁ。幾つだっけ弾丸コピーしたの?」
「我と出会ってからだと既に数百はコピーしておるな。」
「そんでもって武器も多いからなぁ。ある意味チートだよな。」
「どれも好んで使わんがな。」
そんな事を言い合うカイとハオは数発銃を撃って確かめるゼロを見つめる。
((本気になればこの世界くらい、片手間で制圧できるのにな。))
「行くぞ、とにかく王城を制圧…じゃなくて、侵入して状況確認し感染が確認されれば治療と行こう。」
(今完全に乗っ取ろうとしてたな。)
(そういう思考はどうかと我は思うぞ、)
そしてそんな事を考えながら2人は先頭を走るゼロの後ろをついていった。
そして現在、城の1番上でとある男の頭を撃ち抜いた所だった。
「お、おい!流石に頭は不味いだろ!衝撃は一応あるからな!?」
「えっ!マジか!あーまあ生きてるみたいだし、魔法陣も起動してるから大丈夫だろ?」
「そうか?あの出てる液体は赤いみたいだが?」
「わー!!カイ!急いで止血と治療してくれ!!」
「国際問題起こしてんじゃねーよ!!」
慌てて男に駆け寄るとカイは治癒魔法を掛けて頭の傷を塞ぐ。
直ぐに治ると男は頭を押さえながら目を覚ました。
「こ、ここは……」
「あんた大丈夫か?」
カイがそう目を覚ました男に声をかけると、男は慌てながら腰の剣に手を回し距離をとる。
元気そうな男を見てカイは安心したように肩を落とす。
「どうやらちゃんと機能してるみたいだ。」
自分の作った魔弾が上手くいったことに安心していると男は周りを伺い、目線をゼロたちから離さないように近くのメイドの脈を計る。
「生きてる?」
「こいつらは感染していたからな。俺はその治療をしたまでよ。」
そう言って男に黒い小瓶を手渡すとうねうねと中で蠢く液体に顔を歪める。
こんなものが体の中に入っていたと考えて何か思うところがあるのだろう。
「君達は何者だ?どうやら人間のようだが……」
そう、彼はずっと考えていたのだろう。
あの人間が何故我々を助けるのかと。
その答えはゼロの自己紹介で解決された。
「悪いがあんな奴らと一緒にするな。我々は魔族だ。そして俺が今の魔王、ゼロだ。」
そう言いながら手の甲の紋章を見せると驚いたような表情を浮かべ膝をついて傅く。
「失礼しました!私はドワーフ領第一王子、アルフォンソと申します。魔王様とは知らずしての無礼をお許しください。」
「構わん。それよりそろそろ皆目を覚ます。その時、事の重大さを説明する。」
「分かりました。貴方々には感謝してもしきれない。」
ゼロはこの時彼の目をずっと見続けていた。
そして彼がとても真っ直ぐな目をしていたのでゼロは笑みを浮かべだ。
(フェルと同じ目だ……俺よりも相応しい男なのだがな。)
自虐的な考えを浮かべているとハオに肘で小突かれる。
何か言いたそうにしては少し怒っている様子だ。
カイも呆れているようだ。
「分かっている。あぁ分かってるさ。」
その言葉に2人は鼻を鳴らして倒れている皆を1箇所へと移動させるのを手伝った。
それからしばらく国王が目を覚ますまで今の現状をアルフォンソに教え、代わりにこの国の地図と主要な街から小さな街まで、全ての人が住む場所を教えて貰った。
「なんと……その様な病が……」
「感染源は仲間が探している。俺たちは感染したドワーフ達を救いたい。俺とカイが治療できるから取り敢えず、治療し終えた者を安全な場所に運ぶのを手伝って貰いたい。」
「分かりました。警備隊の指揮は私が取ります。運べば良いのですね?」
「あぁ。それとあまり怪我をするな。これは血液感染だから噛まれたり、血が身体の中に入れば感染する。」
「伝えましょう。……失礼。」
ドアがノックされアルフォンソが扉を開けると先程アルフォンソが最初に生きているか確認したメイドが国王の目が覚めた事を伝えに来た。
3人はアルフォンソの案内の元、国王へと謁見しこの事態の早期解決を申し出るのだった。
一方、ホロウの方の事態は深刻さを増していた。
「なるほど、私では解決出来そうにありませんね。」
鎖で雁字搦めの変異したウルフを見つめながら、どうすればいいのかをかんがえていると遠くを見つめる。
そして怪しく笑みを浮かべると、ドワーフ領を見つめて指を弾くと鎖を解いた。
「やはりここは飼い主に解決してもらいましょうか。」
そう言ってウルフの周りに浮かべたカードが鋭い刃の如くウルフを深く傷つけた。
「さぁ、追いかけてきなさい。」
その言葉を理解してかウルフは周りの木々をなぎ倒す程の咆哮と共にホロウを障害物を無視して追いかけた。