他のラインは大丈夫そうだ。
でもやっぱりドワーフの村も感染しているみたいだ。
恐らく考えられる感染した時の欲は食欲だろうなぁ。
なんか獣みたいだしうんきっとそう。
僕じゃ殺しかねないなぁ…
「仕方ない。僕が魔物を抑えるから、君達は村人を抑えて。ギルに指揮は任せるよ。」
「分かった。だがリパー1人で大丈夫なのか?流石に範囲が広くないか?」
ナックルガードの付いたナイフを両手で構えるリパー。
広範囲となる防衛ラインを1人で守れるのか心配なギルはそう聞いてくるが愚問だった。
「仕方ないから3割くらいは本気だすよ。」
そう言って数十m先から現れた魔物の首が、地面が綺麗に一閃されると同時に落ちていく。
更にその先の木が真っ二つに割れる。
「うーん、ちょっと範囲が狭いかな?」
そう言ってナイフに魔法陣が浮かび上がると刀くらい長く伸びる。
更に地面に別の切り傷が真っ直ぐ一閃伸びると数百は先の木が割れた。
「これくらいなら大丈夫かな?」
「そ、それで3割なのか!?」
「ん?そうだよ?本気でやれば首都圏まで斬ってみせるよ?」
冗談ではない。
リパーとは短い付き合いだが、嘘をついたこともつかれたこともないギルはその力に驚愕した。
一個人の力で国を落としかねない。
それほどまで強力な力があれば本気でやれば1人でも解決できるのではとさえ考えてしまう。
「全力は出さないんじゃない。出せないんだよ。」
まるで思考を読まれたようなリパーの言葉に肩をびくつかせる。
そんなに顔に出ていただろうか。
「全力出すとこの世界の空間が歪みかねないからね。下手したら世界ごと崩壊しちゃうかもだし。」
世界に匹敵する力なのかと再度驚くとリパーはニコニコしながらギルの方を向いて腕を振るう。
見てもいないのに100メートル先の魔物がズタズタに切り裂かれた。
「それに僕はみんなの中じゃ力は一番下だからね。ゼロなら5割位までしか本気出せないよ。」
リパーは倒れた時のゼロを思い出して空を見上げる。
「じゃなきゃ、人間なんてあの時に全員死んでるし。抑制魔道具のせいでゼロは1割位しか力出せないしね。」
あの時と言う言葉にギルは戦争の時を思い出していた。
あれで1割程度の力。
それを考えると聖域で一体何があったのか、どうやったらあそこまでの力が身につくのか。
余程の事があったのだろうとあまり深くは考えず、リパーにその場は任せてギルは部隊を連れて村の人達を抑えに向かった。
城の浄化を終わらせたゼロは銃を仕舞うとハオに魔法陣の設置は出来ているか尋ねる。
この魔法陣が今回の修復の鍵を握る。
俺一人では数カ月かかってしまうからだ。
「首都は既に終えた。が他の街となると時間が掛かるな。」
「そうか、ドワーフの王には許可を貰ったし、同盟に関してもかなり好感触だ。なるべく早く事態の収束を目指すぞ。」
カイは次々と運ばれてくる抗狂欲症を撃ち込まれた患者の容態を確認してはベットに横にしていく。
カイにはここに運ばれてくる患者を任せて2人は城の外へと歩み出した。
そこはまるで地獄のようだった。
噛まれた痕から出血しながら城の城門に群がる村人達。
想像以上に凄惨な光景だった。
「魔法陣の起動を確認した。あと数十秒でここは浄化されるであろうな。」
「ふむ、あとはこの国の者に任せるとするか。」
そんな事を話していると、首都を覆う巨大な魔法陣が浮かび上がり地面へと吸い込まれていく。
地面に消えていく魔法陣と共に黒い液体が村人達の中から弾け飛び意識を失っていく。
「村人達を簡易医療施設に運べ!重傷者から治療しろ!医療品は後で我々魔族が補填するし食料も支給する!出し惜しみはするな!」
ゼロの指示に従ってドワーフ達は次々と行動を起こしていく。
それを見届けてゼロはホロウの名前を呼んだ。
すると、血塗れのホロウが姿を表した。
「お呼びでしょうか?」
「状況は?」
「感染源を見つけました。今はリパーが交戦中です。」
「……何故だ?詳しく報告しろ。何を勿体ぶっている?」
「さすがお見通しですか。感染源はゼロ、貴方のペットのようですよ?」
その言葉に訳がわからないと言って首を振るゼロだったが、何かを思い出したのかゆっくりと振り返り背後のホロウを見る。
ホロウはそんなゼロに一言、「そのようです。」と答えるとゼロは真っ先にリパーのいる方へと駆け出していく。
嵐のような突風が吹き荒れると、城壁の一部を破壊してゼロは消えた。
「悪趣味だぞ詐欺師よ。」
「おや?私としては最善の策ですよ?ゼロの名前を呼んだ者を勝手に殺してはゼロに怒られてしまいますから。」
クスクスと笑うホロウにハオは腕を組みながらゼロの向かった方を見つめる。
ホロウの言うことは最もだが、なら何故直ぐに報告しないのかと呆れたように首を振るう。
「ならお前にはこちらの協力を手伝って貰うぞ。お前の得意分野なのだからな。」
「ほぅ!では粉骨砕身やらせて頂きますよ。」
ゼロの代わりにとホロウを連れてハオは次の街へと向かって行った。
そしてリパーは突然森から現れた巨大な魔物をホロウから殺すなとの指示と共に預けられ応戦していた。
もちろん、他の魔物はちゃんと始末している。
「殺すなって言われても!結構キツいんだ…ぞ!」
飛んでくる黒い液体の無差別攻撃と噛み付いてくる魔物を避けながら攻撃を加えるが、あまり効いていないのか傷口は黒い液体が付着すると直ぐに治っていく。
なかなかに厄介な魔物だ。
(このままじゃ殺しかねないなぁー。)
そんな事を考えていると轟音と共に魔物の動きが止まる。
そしてその音の正体をリパーは確信していた。
これでこの厄介事から開放されると。
「あとはゼロに任せるよー。」
「あぁ。任せてくれ。」