人間との戦争はどうなったのか!
光が収まるとフェンリルはゼロに抱きつきながらまるで猫が甘えるように頬を胸に擦り付ける。
そんなフェンリルを愛おしそうに撫でるゼロは眼下の景色を見つめる。
「もう…最初誰だか分からなかったよ…」
「お前は変わって無かったな。…今はちゃんと成長してるみたいだ。」
別れた時と同じ姿をしていたフェンリルだったが、光が消える頃には5年分の時を取り戻したように成長している姿だ。
雲のような触り心地の癖の強いピンクの髪に、小さかった角は少しだけ大きくなり羊の角のようだ。
ただ1番の成長は身体的なものであると抱きつかれながら考えていた。
「フェル?ちょっとだけ離れてくれないか?色々と当たって…」
「やだ。5年間ずっと待ってたんだから…それにその…当ててるんだよ…」
その言葉に意識を持ってかれそうになるゼロ。
あの純粋な程のフェンリルに何があったと考えあの豚のせいかと一瞬頭をよぎるが、
「ぎ、ギルがその…ゼロが喜ぶって。僕なにか間違ったかな?」
「いや大丈夫!問題ない!」
ギルぇ…
良くやった!褒めて遣わす!
てか恥ずかしいのか顔が真っ赤なんだが、こういう事にはまだまだ純真なんだなぁ。
「そ、それよりどうやってここに!?部隊長が城を守ってる筈なのに…」
「なに、俺もあの頃と変わったのさ。もう1人じゃないんだ。」
「そっかぁ。聞きたいこといっぱいあるんだからね?全部教えてくれなきゃやだよ?」
「もちろん、この5年の間のこと全部教えるつもりさ。」
そう言ってフェンリルを初めて会った時のように抱き抱えると、下へと飛び降りその場を立ち去った。
その時、幻聴だろうかまるで自嘲気味に笑う声がゼロには聞こえ、幻覚だろうか魔王の姿が見えた気がした。
ゼロが魔王城の地下にある聖域から出てくると、他にも数名が顔を出し周りを珍しそうに見渡す。
「おいゼロ。ここがテメェの居た世界って奴かぁ?」
強面の白髪短髪の男が身体中の関節を解しながら尋ねる。
ゼロは帰って来れたことの感傷に浸り、地面に落ち古びた鍵を手に取り埃を払う。
「魔王…帰ってきたぞ。彼女の事は任せろ。」
「おやおや?もしやいつぞや話していた恋人のお話でしょうか?それは是非とも聞いてみたい!ゼロの想い人とは一体どんな方なのか気になりますねぇ?」
紳士服にシルクハットのいかにも怪しい糸目の青年は、軽く身だしなみを整えながらどこからともなくステッキを取り出す。
「てか悠長なことしてていいの?僕としては急いだ方がいいと思うなぁ。」
「ふむ、我もそう思うな。最上階はともかく、中腹からとてつもない力を感じる。」
欠伸をしながら長い銀髪を揺らす両腕に包帯を巻いた青年と、まるで魔王と同じような服装のカリスマ溢れる厳格な男が天井を見上げてそう呟く。
ゼロは4人に城の制圧を任せ、自分は1番上へと向かうことを伝える。
「いいぜ。行けよ。こっちの方が楽しそうだしな。」
「ちゃんとエスコートしなければ嫌われますよ?」
「僕としては楽そうだからゼロと行きたい…」
「我はどっちでも構わん。魔王とやらに謁見したかったがな。」
個性的な協力者に頼むぞと告げてそれぞれは上へと向かった。
聖域で出会った友人と呼べる彼らは別の世界線の人間だ。
この世界の人間ではない。
では聖域とは何か?
聖域は様々な世界と繋がるトンネルのようなものだった。
この世界とは異なる世界、異世界と繋がりそこでは様々な常識が存在する。
魔王が余命1年となったのも、数ある異世界の中で呪いや負のエネルギーが満ちた世界を闊歩したからだろう。
ゼロ自身もその世界に降り立ち、原因を解明することが出来た。
そもそも何故他の世界に飛ぶのか。
それには理由がある。
世界の終わりを防ぐ力を持つものを呼び出すためだ。
その出来事に関与し防ぐのが聖域に入った者の宿命となる。
が、世界が滅びた場合には強制的に元の世界に戻される。
そのため魔王は戻って来れたのだろう。
廃人となるのも無理はない。
毒の大気の中で、肉が裂けるような激しい嵐の中で、全身燃えるような熱風の中で、凍えるような吹雪の中で、世界が終わるその時まで住み続ければ誰だって嫌にもなる。
それにゼロ自身、命を落としそうになることなど幾度となくあった。
それでも強靭な精神力と運の良さで乗り越えてきたのだ。
それだけではない。
彼らの力があったからこそ突破出来たのだ。
異世界の住人の力によって。
彼らは異世界の中でも異端とされた者達だ。
だからこそ、差別しないゼロに惹かれたのだろう。
共に地獄のような世界の危機を救いいつしか絆が芽生えた。
そして最後なのだろう世界を救った時、声が聞こえた。
『君たちは何を望む?』
と。
ゼロは、
「守る為の力を、明日を照らす力が欲しい。」
そう告げたが、他の者達は皆同じような事を言った。
『ゼロと共に行動したい。』
と。
その望みにゼロはそれでいいのかと、考え直せと言うが彼らは頑なにそれを拒否。
共に歩むことを選んだ。
その理由がとても馬鹿らしくゼロは唖然とした。
『楽しそうだから。』
たったそんな理由で今までの辛い日々の対価を一緒にいることという願いに変えた彼らに自分が恥ずかしくなったゼロ。
だから願いを変えた。
「こいつらがいるなら俺の願いは叶った様なもんだ。なら願いは1つ。こいつらと俺の世界へ行きたい!」
その言葉に嬉しそうな笑い声が聞こえてくると、黒い聖域に入る前に見た入口が空間に出来上がる。
そして飛び込むと元の世界へと帰って来れたのだ。
そんな理由で信頼している彼らの行動にはあまり咎めたりはしない。
が、全員が全員ゼロのあとを付いてくるのは流石に文句を言った。
「なんで来るんだよ!おかしいだろ!」
「いや、そもそも今戦争してるから城に兵士なんてそんな居ないしな。」
「く!馬鹿に正論言われると腹立つな!」
「誰が馬鹿だテメェ!」
そんなこんなで上へと時たま出会う兵士を難なく無力化(非殺傷)し、上に向かうとやけに大きな爆発音が響き渡り城が揺れた。
何事かと外を見ると一角が吹き飛んでいる。
恐らく人間の間者が潜んでいたのだろう。
「あっちは俺とこいつでやるわ。楽しそうだしな。」
「僕はどっちでもいいけど、こっちの方が容赦なく殺れそう。」
「分かった。好きにしていい。」
ゼロのその言葉に嬉しそうに2人が爆発のあった場所へと消えていく。
相変わらずの速さだ。
楽しそうな事にはいち早く駆けつけて問題を起こす。
白髪の名はカイ。
一言で言えば脳筋だ。
そして銀髪の長髪がリパー。
こっちも一言で言えば通り魔。
もちろん戦い方の話だ。
性格の話だったらこのふたりはサイコパス扱いになる。
「それでは我々は上ですね。非常に楽しみになってきましたねぇ!」
「素晴らしい内装だ。これはかなり価値が高いな!」
さっきからテンション高めなのがホロウ。
皆からは詐欺師と呼ばれてる。
少女漫画が趣味らしい。
そして城の品の高さに感嘆しているのがハオ。
他の世界の魔王だが優しい。
一手に世界の悪意を手に大立ち回りし世界を統一し、自分は死んだフリをして平和な世界に別れを告げ、俺と別世界へ来たようだ。
そんな2人と共に魔王の部屋へと向かうと、地面から突き出してきた赤黒い棘に3人は身体中を貫かれた。
絶賛戦争中というね。
異世界の仲間はおいおいちゃんと説明したいなぁー
なんか勢いで書いた感あったし、聖域の存在意義もちゃんと書きたいしね!