「これが下層を騒がせる侵入者か。随分呆気ないな。」
そう鼻で笑う魔族は貫かれた3人を一瞥し、別室に戻ろうとするが慌てて振り返ると、3人の姿は消えその魔族の横を歩いていく。
「そんなわけないじゃないですか。ちょっとした演出ですよ。」
そう言って軽く帽子を持ち上げ通り抜けようとする詐欺師ことホロウの言葉に、少し苛立ちを見せながらさっきと同じ赤黒い棘を目の前の地面から突き出し進行を遮る。
「おやおや?随分と気性の荒い。ちゃんとカルシウム取って下さいよ?」
が、まるで何も無かったかのようにその棘を通り抜けると上の階層の扉を開ける。
訳が分からないと魔族が今度は直接3人に向けて棘を放ち刺し貫く。
確かな手応えさえある。
「それではゼロ、後ほどちゃんと紹介して頂きますよ?」
「勿論だ。先にハオと向かわせて貰うぞ。」
「おお!その威圧的な口調!懐かしいですねぇ!」
「フッ、我からすればまだまだだがな。」
「お前と一緒にするな。それではここは任せるぞホロウ。」
悠長な会話を、体に棘が刺さったまま繰り広げる彼らに魔族は異様だとさえ感じていた。
だからこそ、ゼロとハオを見逃したのかもしれない。
ホロウ1人でも手に余ると感じていたから。
「さて!お待たせしてしまい申し訳ありませんが、貴方のことを少しだけ教えて頂けますか?」
ニヤァと恐ろしい何かに見える笑みを浮かべるホロウに、きっと無意識なのだろう魔族は1歩後ずさる。
棘はいつの間にか地面にカランと乾いた音を響かせて落ちている。
「くっ!何が目的だ!!姫に近づくものは誰一人とて許さん!」
「素晴らしい忠義ですね!嘘偽りない瞳をしている。あぁ綺麗ですねいいですね!」
「何がおかしい!人間め!!!」
恐らく何かしらの魔法で直撃は避けている。
そう思いホロウの周りを取り囲むように棘を配置する。
全方位からの一斉攻撃。
(これなら攻撃が通らない謎を少しでも明かせる。)
「なんてこと考えてますねぇ?」
一言一句、自分の考えを口にし指摘するホロウに向かって棘が襲いかかる。
まるでホロウの言葉を引き金になったかのように。
そしてその棘は全てホロウを貫き無残な姿が目の前にあった。
が、コツコツと靴音が鳴ると棘をすり抜け無傷の男が目の前で歩み寄ってくる。
「な!?何故だ!確かに貫いたはず!」
「目に見えるものだけが本物とは限りませんよ。」
そう手を広げまるで自分が幻覚だと言わんとしているホロウの言葉に、室内の至る所に棘を伸ばし部屋中を赤黒い柱が占拠した。
室内全ての全体攻撃。
例え目に見えているホロウの姿が幻覚で、別の場所に居ようとも確実に貫いた。
「元気ですねー。羨ましい限りです。」
そう言葉が聞こえてくるとまたも無残に刺し貫かれたホロウは1本の棘に腰掛けている。
「馬鹿な!貴様はなんだ!なんなのだ!!」
夢でも見ているのではないかと思い始める魔族にホロウは腰を上げて地面に降り立つと帽子を軽く持ち上げる。
「ただの詐欺師ですよ。」
「くそ!なんなんだ!まるで…」
魔族はふと気づいた。
自分で思っている感覚こそが本物なのではと。
試しに棘に触れるとそれは確信に至った。
そして次の瞬間には自分の身体を極太の棘が貫いた。
「おや?存外早く気づきましたね。」
その言葉を最後に魔族は天井を見上げていた。
慌てて身体を起こすと目の前にはホロウが優雅に紅茶を嗜んでいた。
いつの間にか眠らされたようだ。
「俺の魔法に魔力が無かった。舌を噛んでも痛覚が無かったからな。」
「素晴らしい状況判断力、冷静な思考力、即行動を起こせる大胆さ。自分を殺すなどという予想外の方法でまさか夢から覚めるとは。」
ホロウは頭を下げ、
「侮っていたこと謝罪します。」
と述べるとステッキとティーセットを指を鳴らし消す。
そして魔族に名を尋ねた。
自分の紹介をして。
「ブラッドだ。」
簡素で投げやりな自己紹介にホロウは感謝すると、空中に数十枚のトランプが現れ浮遊する。
「悪い方では無さそうですね。忠誠心の塊のようなお方だ。」
「姫に何かあっては亡き魔王様に申し訳が立たん。貴様を倒しすぐ様ギル殿に加勢しなければ!」
同じようにブラッドと名乗った魔物が赤黒い塊を浮遊させるとナイフの様に鋭く形状が変わる。
現実の世界で戦いが始まる。
一方のカイ達2人組は問題の人間を見つけ既に片付けていた。
至る所にクレーターとバラバラにされた四肢。
潰れた亡骸など一面を真っ赤に染めていた。
「張り合いがねぇなぁ。つまんねー。」
そう言って潰れた顔面の死体をゴミを捨てるように無造作に放り投げる。
リパーは両手のナイフをクルクルと回して死体の1つに腰掛けている。
そんな2人の前に4人組が現れ目の前の光景に絶句しているようだ。
その4人組を見て2人は確信を持って言えた。
勇者(笑)が来たと。
「何故同じ人間同士で戦うんだ!共に悪を倒す仲間だろ!?」
1人、そう語る男が恐らく勇者だろう。
物事の本質さえ見極められないこんな奴が勇者とは笑える。
「悪の基準ってのはなんだぁ?俺からすりゃ急に宣戦布告して攻めてくるテメェらの方が悪役だぜ?」
「領土を分け合わない魔物の変異種が悪いのよ!」
「分け合うってじゃあ人間側に他の種族が分けてって言われて分けるの?」
リパーの問いに癇癪を起こしている、魔法使いだろうその女は鼻を鳴らす。
「なんで私たちが?寧ろ領土を明け渡し私たちに従属するべきね。」
なんて腐った奴らだろうか。
ここまで醜悪な奴らは初めてだ。
ゼロが自分の種族を嫌うのも、自分の中に流れる血を全否定したくなるのも分かる。
俺でさえ同族扱いされたら発狂しそうだ。
「ねぇカイ。もうこいつら殺っちゃおうよ。吐き気がする。」
「同感だ。てめぇらは髪の毛1本この世に残さねえから覚悟しな。」
2人の殺気に4人が臨戦態勢を取る。
反応が襲い。
既にリパーが勇者と魔法使いの後ろの2人の背中にナイフを突き刺している。
そのままナイフに付いた鎖を伸ばすと思い切り壁へと叩き付ける。
「あは!呆気なく死なないでよね!」
楽しそうなリパーに勇者が援護に行こうとするが、カイから放たれた殺気に直ぐに振り返り剣を構える。
魔法使いに関しては既にカイへと魔法を放っている。
「余所見してんなよ三下が。」
「勇者!私たちはこいつの相手よ!2人を信じましょ!」
「そうだね!君となら絶対負けないよ!」
反吐が出る台詞にカイのイライラは臨界点を超える一歩手前だ。
リパーが刺し貫いた後ろの2人、と言うより片方の女の方をあいつは見て笑った。
女同士の醜い争いだな。
大方、勇者に好意的なんだろう。
だから女は思った。
邪魔者が消えるかもと。
そして勇者はすっかりビビってる。
どうやってここまで来たかは分からないが、ちょっと殺気を向けただけで萎縮してる。
大層な事を言ってる割には逃げ腰なのがそれを物語っている。
手まで震えてるんじゃ隠しようもない。
だからといって手は抜かない。
圧倒的に、残酷に、惨たらしい最後を約束する。
「さあて虐殺タイムだ。」
やっべ、めちゃエグい笑
てか人間クソだなほんと笑
いつも悪役の魔族が常識人に見える笑