目が覚めたら艦娘と深海棲艦がリアルに戦争してた件   作:Sh1Gr3

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協力者探し

 

 この世界に来て約一ヶ月半。

 とうとう深海棲艦との初戦闘を経験した上に、羅針盤なんて物騒なモノの存在を知ってしまった俺は、いつも通り書類整理に励みつつも、内心では自身の立ち回りの悪さを憂いていた。

 俺が平行世界(パラレルワールド)から来たことは言えないにしろ、もっと上手く情報を集められないものかと。このままでは、みんなが深海棲艦と遭遇するたびに、胃痛に苛まれることになってしまうだろう。いくら安全と言われても、ゲームとの差異を把握していない以上は安心できない。それは艦これを知ってる俺にとっては尚更だ。

 鎮守府に着任してから、かなりの差異を頭の中に叩き込んできた。時には、ゲームにすらない異常性も。

 しかし、それでもまだ足りない。

 やはり俺一人で情報を収集するには、些か能力不足が目立つ。大体少し考えてみれば分かることだった。ただでさえ不器用なのに、仕事と艦娘とのコミュニケーション、加えて情報収集を同時にこなそうなんて無理がある。初めから俺一人でどうこうなる問題ではなかった。

 本当はこういう場合、どんな逆境下でも奮闘するものなんだろうが、俺はアニメや漫画の主人公ではない。であるならば、少しでも頭を絞って、上手く立ち回ろうというもの。

 そう、例えば協力者とか。俺の疑問全てに答えてくれる、そんな協力者がいれば、かなり楽に立ち回れるようになるだろう。

 

 (誰かいねえかな……)

 

 ちらと塚原さんの方を見る。

 歳はそこまで離れていないはずなのに、まるでそうとは思えないほど余裕に満ちていて、超親切で仕事も完璧にこなす、この世界のリアル提督。おまけにイケメン。

 塚原さんなら訊けば教えてくれるだろうし、分からないことは調べてさえくれると思う。でも出来れば、艦娘の方が都合がいい。忘れがちだが、塚原さんはこれでも新人提督なのだ。ただでさえ毎日忙しいのに、迷惑はかけたくない。

 

 「よし、この書類で午前の分は終わりだ」

 

 「うっす」

 

 塚原さんから書類を受け取り、ざっと見た後に判を押す。

 午前中はほぼ、こういったデスクワーク中心の業務だ。といっても、俺の役目は書類を類別したり、判子を押す簡単なものなのだが。

 処理した書類を整え、塚原さんに渡す。これで午前の業務が終了した。

 

 「お疲れ。キリも良いし、一旦昼を挟もう」

 

 塚原さんが言った。俺は塚原さんの言葉に頷いて、席を立つ。

 と、ちょうど提督室から出ようとしたその時。部屋の扉が叩かれた。

 

 「いいタイミングだ。今日はこっちの方が少し早かったな」

 

 と塚原さん。そして入室を促す。

 すぐに扉が開いて、軽快な足取りで島風が入ってきた。

 

 「失礼しまーす、ってあれ?」

 

 入ってくるなり、島風は首を傾げた。彼女は俺と塚原さんとに、目線を行き来させる。

 

 「もうお仕事終わったの?」

 

 「はい、今さっき」

 

 俺がそう応えると、島風は意外そうな顔をした。

 

 「へー、珍しい。いつも遅いのに」

 

 これには思わず苦笑い。後ろの塚原さんも、微妙な笑みを浮かべている。

 このように、昼時になると島風がやって来る。出撃や遠征で帰投が長引いた時以外は、大抵この島風と一緒に、食堂に足を運ぶのが俺の日常となっていた。

 

 「何してるの?早く行くよ!」

 

 見れば島風は、すでに部屋の外に出ている。そんなに慌てなくても、飯は逃げないと心の中で何度思ったことか。

 

 「すみません、ちょっと行ってきます」

 

 「ああ、いってらっしゃい」

 

 俺は塚原さんに頭を下げ、提督室を出た。

 とここまでが、朝から昼前までの流れである。午前中は書類に書かれたことや、上手い具合に塚原さんに質問したりして、この世界の情報を集める。

 最初はそれでも充分だったが、そうも言ってられなくなった。一刻も早く、協力者を見つけなければ。

 

 「それでねー、今日も私が一番に帰投したんだよ!」

 

 前を歩く島風が、遠征帰りの海上駆けっこ勝負について楽し気に語っている。

 霞がいたら何を言われるか、考えただけでも怖いけど、艦娘にだって息抜きは必要だろう。

 

 (いや……島風はなしだな)

 

 少し考えて、対象から外す。島風なら訊けば普通に教えてくれるだろうし、もうそれほどの関係は築いてるはずだ。たぶん。

 

 「?補佐官?」

 

 「へ?」

 

 声をかけられ、はっと我に帰る。視線を移すと、島風がまた首を傾げていた。

 

 「どうしたの?さっきからぼーっとして」

 

 「あ、いや、なんでもないっすよ」

 

 いけないいけない。島風はこんな風に、妙に鋭くなる時があるから怖い。

 

 「ふーん。ならいいけど!」

 

 (危ねえ……)

 

 俺は改めて、島風を協力者候補から除外した。

 

 

 島風がダメとなれば、必然的に候補は絞られてくる。

 残った五人のうち、未だまともな会話をしたことのない霞。島風同様、普通に訊けば教えてくれそうな不知火を除く。

 とすると、あとは漣か皐月、夕張さんの三人。この三人であれば、面白そうだと乗ってくれる気がする。

 この中の誰かに、溜まりに溜まった疑問に答えてもらったり、できれば情報収集も手伝ってもらう。それが俺の考えた協力関係だ。

 その際、俺がこの世界の人間じゃないことはバレても構わない。別にかっこつけて秘密にしてるわけでもないし。

 昼食のカツカレーを食べながら、向かい側に座る皐月と漣に目をやる。正直この二人ならどちらを選んでも問題ないのだが、皐月はまだ建造されたばかりの、俺と同じ新米。今は余計なことを頼むべきではないだろう。

 

 「はあ……今日は出なかったね、深海棲艦」

 

 皐月が丼飯を頬張りながら、残念そうに呟いた。対して横の漣は呆れ顔。

 

 「どんだけ食べれば気が済むんですかねえ……」

 

 漣の台詞はもっともだ。現時点でお代わり二杯、今それすらもなくなろうとしている。

 まったく、その小さな身体のどこにそんな余裕があるのやら。

 

 「あはは、いっぱい訓練した後だからお腹減ってるんだよね」

 

 皐月が照れ臭そうに頭を掻く。

 

 「あと食べた方がその分、強くなれるかなって」

 

 「いやいや単純か。太りますよ?」

 

 「それは大丈夫。その分、身体動かしてるから」

 

 そこにさらに横から、不知火が会話に加わった。

 

 「あながち間違いではありません。我々は人間のような身体の変化は望めませんが、それでもエネルギーにはなります」

 

 「いや真面目か!そんなマジレスしないでくださいヨ」

 

 「マジレス?なんのことでしょう」

 

 不知火の箸が止まる。皐月が笑って言った。

 

 「出た漣語!今度のはどういう意味なの?」

 

 「……こほん。漣もお代わりしてこよーっと」

 

 わざとらしい咳払いをして、漣は逃げるかのように厨房へ駆けて行った。

 さすが漣、俺の予想通りネットを嗜んでいた模様。普段はあまり口にしないが、あの様子だと他にも色々知ってるんだろうなと推察した。

 

 「ねえねえ、マジレスって?」

 

 不意に島風に尋ねられる。他二人の視線が、なぜか俺に集まった。

 

 (ええ……)

 

 まるで不本意な後始末を押し付けられたかのような気分になる。なんで俺がネット用語を解説しなければならないのか。

 

 「まあ……普通にマジなレスの略っすね。一言で言うと」

 

 「マジなレス?」

 

 「マジは真面目とかそういう意味で、レスは返信。それをくっつけてマジレス、とかなんとか」

 

 「なにそれ、変なのー」

 

 全く興味なさげな島風。不知火も食事を再開している。

 穴があったら入りたいなんてことわざは、こんな時のためにあるのだろうと思った。あと顔から火が出るも然り。

 

 「へー、補佐官も詳しいんだね。漣語」

 

 皐月が感心したように言う。

 

 「面白そうだし、もっと教えてよ」

 

 「いや、俺もそんな知らないんすよ。これだけたまたま知ってたんです」

 

 冗談じゃない。そんなことをすれば、せっかくのややコミュ障な普通のお兄さんというキャラが、崩れてしまいかねない。

 そこへ漣が戻って来た。ニヤニヤと悪戯な笑みを浮かべて。

 

 「どもども、ご丁寧な解説ありがとうございます」

 

 「はあ……」

 

 悔しいけど、これは認めるしかなさそうだ。たぶんこの子となら、良い協力関係が築けるかもしれない。

 俺は誠に複雑ながら、眼前の少女を見てそう直感した。

 

 

 昼食後、俺は午後の業務が始まる前に工廠を訪れた。

 とりあえず漣は決まりとして、あとは夕張さん。この世界でも技術屋の気質を持つ夕張さんには、ご教授願いたい装備の知識が山ほどある。今後のことを考えると、安易に候補から外せない。

 とはいえ、確信はある。俺の持つ艦これの知識を活かして、どうにか夕張さんの興味を引く。それができれば彼女のことだ、普通に協力してくれるだろう。

 

 「ふう……行くか」

 

 一呼吸おいてから、工廠の中を歩き出す。

 夕張さんは基本的に、この工廠を活動拠点にしている。そのため、自発的に足を運ばなければ、彼女と話をする機会がほとんどない。塚原さんに工廠へ使いを頼まれた日以外は、朝礼でしか顔を合わせないほどに。

 まあ逆に言えば、こちらから動けば確実に会えるってわけだ。しかも他に人もいないので、心置きなく話をすることができる。今まではコミュ障を発揮して、個人的な都合で訪ねることはなかったけど、今回はそうも言ってられない。

 歩を進め、俺は先日まで明石さんが、艤装を修復するために使っていた場所までやって来た。明石さんが他の鎮守府に異動してから、夕張さんがこの場所を引き継いだのだ。そして塚原さんに資材をねだっては、日々ここで研鑽に励んでいる。

 すると、壁の向こうから話し声が聞こえてきた。

 

 「ありがとうございます」

 

 「いいのいいの、これぐらい。お姉さんに任せなさい」

 

 歩くのをやめる。反射的に回れ右をしながら、少しだけ聞き耳を立てた。

 

 「でも、あまり無理しちゃダメよ?私は明石と違って、修理はできないんだから」

 

 「……はい」

 

 夕張さんの声だ。それともう一人、この声は、

 

 (霞か……?)

 

 そういえばいつも、なんだかんだで昼食の時間は被ってたのに、今日はいなかったのを思い出した。

 霞も夕張さんに用があったとは。先客がいたとなっては、機会を改めるべきだろう。午後の業務も控えてるし。

 

 「失礼します」

 

 「ほどほどにねー」

 

 と、二人の会話が終了した。次いですたすたと、こっちまで歩いてくる足音。

 やばい、聞き耳なんて立ててる場合じゃなかった。

 

 「!……何してるの?」

 

 案の定、目の前に霞が現れた。俺を見て若干はっとした様相を見せるも、すぐにいつもの仏頂面に戻る。

 ビビるな俺、コミュ障だからって目を逸らしたら嫌われるぞ。そう自身に言い聞かせ、返答する。

 

 「いえ、ちょっと夕張さんに用があって……」

 

 「……」

 

 霞からの返答は得られない。黙ったまま俺のことを見据えている。

 

 (え、何これ……キツいんですけど)

 

 その状態が十秒近く続いて、俺は堪らず視線を逸らした。ダメだ、これ以上は俺の精神がもたない。

 先にこの沈黙を破ったのは霞の方だった。

 

 「……中にいるわよ」

 

 「へ?」

 

 唐突な言葉に、思わず聞き返してしまう。霞はそれだけ言うと、この場から去っていった。

 一体なんの時間だったのか謎でしかないが、とにかく何も言われずに済んで一安心。

 

 「あら、神城さん」

 

 ほっと胸をなでおろしていると、後ろから夕張さんの声がした。

 

 「どうかしました?」

 

 「あ、えっと……」

 

 頑張れ俺、とりあえず話を展開しろ。全てはそれからだ。

 

 「その、装備のことでいくつか訊きたいことがあって」

 

 「……ほう?それはそれは」

 

 夕張さんの眉がピクッと動く。

 

 「立ち話もなんですし、どうぞ中へ」

 

 よし、掴みは成功。

 中に入ると、さすが工廠と思わせるような、実に様々な器具や機材が目に飛び込んできた。特に今の俺なら一目で分かる、ギラギラと黒光りした鉄の塊。

 おそらく夕張さんの艤装だろう。うろ覚えだけど、確かこんな形だった気がする。

 

 (そういえば、夕張さんの練度まだ把握してなかったな)

 

 艤装を見て、俺はふと思った。

 この世界の練度表記は、今のところ高、中、低の三段階で評価されている。それも、訓練や出撃の戦果から客観的に判断するしかないという、非常に曖昧なデータだ。

 しかし俺には、そんな面倒くさい作業は必要ない。非常にありがたいことに、俺はただ艤装をまとった艦娘の姿を見れば、練度らしき数字を一瞬で目視できるのだ。

 早いとこ確認しておきたい。戦力層を計算した上で、適切な編成を組むのが提督の役目。ならば、詳細な練度の把握はいずれ役に立つだろう。

 

 「ごめんなさい、散らかったままで」

 

 床に散乱した工具諸々を、足でどかす夕張さん。そして隅の方からパイプ椅子を引っ張ってきてくれた。

 

 「はあ……作るのは得意なんだけど、片付けはどうも苦手なのよねえ……」

 

 夕張さんがため息混じりに言う。確かに、お世辞にも片付いてるとは言えない状態だ。

 俺は周りを見渡してから、パイプ椅子に座る。

 

 「手伝いましょうか?」

 

 「あはは、ありがとうございます。でも大丈夫です、片付けてもどうせまた散らかるので」

 

 そう言って、夕張さんも椅子に腰を下ろした。

 

 「それはそうと、急にどうしたんですか?」

 

 「え?」

 

 「いきなり装備のことが訊きたいなんて。もしかして、提督の差し金?」

 

 確かに、夕張さんの疑問はもっともだ。これまで彼女の前で、そんな素振り一切見せてこなかったし。

 だがそれは、事実とは反する。ただコミュ障を発揮してただけで、本当は直ぐにでも尋ねたかったのだ。

 

 「いや、単に自分が知りたいだけっす。自分補佐官なのに、あまりにも知らなすぎるんで」

 

 俺が本心を伝えると、

 

 「あー、そっか。そういえば神城さん、つい先日まで大学生だったのよね……」

 

 夕張さんは納得した様子になった。それから、ぽんと手のひらを叩く。

 

 「よし!そういうことなら、この兵装実験軽巡、夕張にお任せあれ!兵装のなんたるかを、一から教授してさしあげます!」

 

 「あっ、ありがとうございます!」

 

 俺はほっと息を吐いた。これで次から気兼ねなく工廠を訪れることができる。

 夕張さんは椅子から立ち上がると、どこからかホワイトボードを引っ張り出してきた。さらに彼女の顔には、いつの間にかワインレッドのフレームの眼鏡がかけられている。

 

 (うわ……これグラ実装不可避だろ)

 

 整った顔立ちに知的度が加わることで、ますます美人に見えた。実によく似合っている。

 

 「はい注目!」

 

 夕張さんの一声で、俺は視線をボードに移した。

 

 「憂鬱な訓練までそう時間もないので、まずは基本をおさらいしておきましょう」

 

 「は、はい。お願いします」

 

 俺としてはその方がありがたい。何事も基本は大事だからね。

 憂鬱な、の部分はスルー。

 

 「大前提として、艦娘の兵装は二種類。これらの違いは、端的に言うと妖精の力が宿ってるか否かの違いです」

 

 これは知ってる。前に塚原さんに教わった、基礎兵装と赤兵装の話だろう。

 

 「前者はその分、後者と比べても兵装の性能は段違いですが、装備できる数に限りがあります。また、扱いもそれなりに難しいです」

 

 「限り……」

 

 「はい。基本的に装備できる兵装の数は、駆逐艦と軽巡が二から三。重巡以上の艦種は四つになります」

 

 なるほど。要するに、艦これでいう装備スロットのことね。

 

 「ちなみに、後者は元から備わっている兵装です。こちらはあまり気にする必要はないのですが、まあ実際に見てもらいましょう」

 

 ここで一旦ボードから離れ、自らの艤装の元に向かう夕張さん。

 まさかとは思ったが、夕張さんは自身の手で大きな艤装を身につけ始めた。その刹那、何もない宙に二桁の数字がぱっと浮かび上がる。

 

 (出た!!)

 

 やっと確認できた。しかしながら、見えた数字は決して高いとは言い難い。なんとなく察していたが、彼女の改造レベルである25にも届いてなかった。

 書類には夕張さんの練度は中と書かれてはずだけど、この世界の評価基準はどうなってるのやら。

 

 「私の場合は、この二基の主砲以外がそれにあたりますね」

 

 夕張さんが主砲を構える。目を凝らすと、主砲の上に小さな動く影が見えた。

 手のひらサイズのそれ——妖精は、半身を覗かせ、こちらをじっと見つめている。

 

 「魚雷や爆雷も一応積んでますけど、主砲ほど有効的なダメージを与えることはできません」

 

 見たところ、妖精は主砲以外の兵装には見受けられない。つまりそれは、

 

 「……妖精がいないからですか?」

 

 「イエス!さすが、理解がお早い」

 

 片目を閉じ、ぐっと親指を前に突き出す夕張さん。

 複雑な話にも聞こえるが、中身は艦これと変わらない。これが分かっただけでも、今日は大収穫だ。

 

 「とまあ、基本は以上です。残念ながら訓練の時間なので、今日の講義はここまでとします」

 

 夕張さんの話が終わる。言われてみれば、確かに講義っぽいなと思った。

 俺は深々と頭を下げ、携帯で時間を確認する。午後の業務まであと五分、俺もそろそろ戻らなくては。

 

 「はあ……ほんと憂鬱だわ。せめて新しい兵装でもあれば、気分も乗るのに」

 

 ため息を吐きながら、夕張さんがらしくない愚痴をこぼす。俺は気が抜けていたのか、言う必要のない台詞を口にしてしまった。

 

 「でも、あと少しで()()じゃないですかね。そしたら()()()ですし……」

 

 「えっ?」

 

 一瞬で夕張さんの顔が、怪訝そうなものへと変わる。その反応で、俺ははっと我に帰った。

 

 「あ、いや、なんでもないっす。すみません変なこと言って」

 

 やらかした。コミュ障のくせに調子に乗るから、余計なことを口走るのだ。

 夕張さんと長話ができて嬉しかったのはわかるけど、少しは自重しろ俺。

 

 「改造……改造って、艤装の強化のことよね」

 

 まずい、夕張さんが何やら考え込んでいる。そして案の定、俺を見て訊いてきた。

 

 「提督に言われたんですか?」

 

 「へ?そ、そうですね……確か」

 

 予想外の問いかけに、俺はそう答えてしまった。言うまでもなく、これは嘘である。

 

 「ふーん……そういうことなら、少しやる気出しちゃおうかしら」

 

 「……」

 

 俺は心の中で、二人に全力で謝罪した。

 ごめんなさい塚原さん、夕張さん。ただ改造できるというのは、あながち嘘でもないのでどうかお許しを。

 

 「それじゃ、私訓練行ってきますね。神城さんもお仕事頑張ってください!」

 

 「あ、うっす」

 

 どうしよう。ああは言ったものの、まだ一回の出撃や訓練で得られる、経験値の把握も済んでないのだ。夕張さんらの練度から考えても、この世界ではゲームより練度が上がりにくそうなのは明確。これを把握して解決しない限り、改造の件も嘘になってしまう。

 

 「はあ……やることだらけだな」

 

 俺は提督室へ向かう途中、考えれば考えるだけ出てくる、艦これというゲームの複雑さに、深いため息を零した。

 

 

 

 

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