目が覚めたら艦娘と深海棲艦がリアルに戦争してた件 作:Sh1Gr3
こんな感じで毎日更新していきたい(願望)
いざ、非日常の中へ
『艦娘』と『深海棲艦』がリアルに存在する世界に来てから、早くも数日が経った今日。
かなり唐突だが、俺はいよいよ本当の非日常の中へと、足を踏み入れようとしている。
「はぁ……流石に緊張するな……」
それもそのはず。目の前に見えるは、以前の俺なら決して縁のない建物。
その名を
なぜ俺がこんな縁もゆかりもない地にいるのかというと、話は四日前まで遡る。
この世界の情報を大方集め終わった俺は、最後に艦娘とお近付きになれる方法を探っていた。
せっかくこんな世界に来れたのに、何もしないまま普通の生活を送るなんて、まっぴらごめんだ。そんな思いから、何か方法はないかと探っていたところ。
なんとも驚いた事に、その方法はいとも簡単に見つける事が出来たのだった。
防衛省が専用のサイトで、深海棲艦と戦うための拠点『鎮守府』で働くための人手を募っており、そこに一連の流れが全て記載されていたのである。
俺はすぐに指示通り必要事項を記入し、最後に書かれていた番号に電話をかけた。そして見知らぬ誰かと言葉を交わし、この日この場所に来いと言われて今に至る。
最初はあまりの胡散臭さから、流石の俺も冷静だった。具体的には募集に関しての経緯を調べて、周りの友人や家族にも相談したぐらい冷静だった。
しかし、この募集は深海棲艦が現れた四ヶ月前から、防衛省や各鎮守府が行っている公式のもので、友人や家族には周知の事実だった。どうも俺だけが知らなかったらしい。
「ふう……」
約束の時間までは後五分弱といったところか。大きく深呼吸して、再び足を進める。
正門の前まで近付くと、警備のおじさんが数人。またそれとは別で、門の前に立っているセーラー服姿の女性が見えた。
俺は「ん?」と思いながらも、手に持った携帯の画面を確認する。
向こうからの指示だと、案内役として女性が一人来てくれるらしいのだが、もしかしてあの人がそうなのだろうか。
一見、学生に見えなくもないその姿は、なんだかどこかで見たような格好をしている。やや離れた距離でも分かる、黒の長髪にすらっとした佇まい。メガネをくいっと上げ直す仕草は、いかにも出来る女性って感じだ。少し目線を下にずらせば、あの独特な形状のスカートが目に入る。
ここまで見て俺は確信した。まさか防衛省の真ん前でコスプレをする猛者もいるまい。
しばらくその場に立ち尽くしていると、メガネの女性は俺の存在に気が付いたのか、こっちを見て頭を下げた。
「あっ……」
すぐに俺も頭を下げる。そして凄まじい緊張を抱えながら、メガネの女性に近付いた。
「あ、あの、電話でこの時間に、来るように言われた、
声が震える。目線は泳ぎまくり、かなり失礼な挨拶になってしまった。
それでもメガネの女性は、そんな俺に対して特に怒った様子もなく、しっかりと対応してくれた。
「神城さんですね。どうぞ、ご案内致します」
「は、はいっ!」
なんとか平静を装おうとするも、やはりテンションはいつもの何倍も高くなってしまう。
この声、この姿。二次元の存在をまさかこれ程まで再現するとは。すれ違う人たちと比べて見ても、その存在はどこか違って見えた気がした。
メガネの女性の後に続いて、こっそり防衛省の内部を見学する気で歩いて行く。
少し歩いたところで、不意にこちらを振り向くことなく、メガネの女性が話しかけてきた。
「神城さんは、
「へ?」
突拍子もない問いかけに、俺は言葉を詰まらせる。
普通の人が妖精なんて口にしたら、おそらく変人扱いされてしまうだろう。だがこの人が言うと話は違ってくる。
「妖精……そうですね。まあいてもおかしくないとは思います」
少ししてから応えた。
女性の反応は、先に『妖精』なんてワードを用いて話しかけてきた割にはやけに薄いもので、ただ小さな声で「そうですか」と呟いただけだった。
(あれ、なんか変なこと言ったかな……)
その後は会話らしい会話もなく、黙って目的地へと進む。
やがてメガネの女性は第一会議室と書かれた部屋の前で止まると、初めてこっちに振り向いた。
「少々お待ち下さい」
そう言って、そのまま部屋の中へと入って行った。
俺は周りに誰もいない事を確認して、再度深呼吸する。ダメだ、まったく落ち着かない。
すると突然、どこからか誰かの声が聞こえてきた。
「おい、そこの兄ちゃん。うちのこと見えるか?」
「……え?」
てっきり俺が話しかけられたのかと思い、周囲を見回すも人影はない。
再び自身を落ち着かせるべく、深呼吸に専念する。
「おっ、うちの声が聞こえるのか。こいつはたまげたな」
声の主は楽しそうに喋り続けている。
俺はこの声がどこから聞こえてくるのか気になった。相変わらず周囲に人影は見えない。
「下だ下。鈍い奴だな」
言われた通りに下を見る。
そこには確かに『なにか』がいた。そのなにかは、じっと俺の事を見据えている。
俺はびっくりして思わず飛び上がってしまった。
「わっ……!」
「ははは、面白いな兄ちゃん。もしかしてうちと電話で話したのって兄ちゃんか?」
言われてみれば、この声に聞き覚えがある。
電話中、やけに馴れ馴れしい奴だなって思ったのだ。その口調から何から、間違いない。
「よ、妖精……」
たとえ初見であっても、今喋っているなにかが『妖精』だと確信できた。
「おうよ!って、うちとは初対面のはずだけどな」
「あ、いや……」
あまりにもじろじろと見てくるので、俺は堪らず視線を逸らした。
リアルで見ても意外と可愛いと思えるのは、さすが妖精さんと言うべきか。
しばらくして扉が開き、中からメガネの女性が出て来た。
「お待たせしました。どうぞ中へ」
「ほれ、行くぜ兄ちゃん」
妖精はいつの間にか、メガネの女性の肩の上に移動していた。
結局俺の緊張は少しも和らぐ事なく、二人?に言われるがまま部屋の中へ入ることとなった。
部屋の中は文字通り、少し広めの会議室だった。さすが防衛省というだけあって、ただの会議室でも感じる空気はどこか重々しい。
テーブルの向こう側には、スーツ姿のおじさんが一人だけ、椅子に座って何やら書類に目を通していた。
「お連れしました」
メガネの女性が声をかける。
男性は「ありがとう」と一言礼を言ってから、俺に椅子に座るよう促した。
「どうぞ、おかけください」
「は、はいっ」
言われた通り椅子に座る。メガネの女性も、男性の隣の席に腰を下ろした。
まるで面接のような雰囲気だが、あながち間違ってはいない。
これから始まるであろう問答によって、俺がこの世界で艦娘と関わりを持てるかどうかが決まるのだ。
相手はスーツ姿のおじさんに、たぶん俺のよく知る艦娘、そして妖精。あまりの緊張で頭の中は真っ白だが、なんとしてもこの場を乗り切らねばならない。
「さて……本日はこの暑い中ご足労いただきまして、ありがとうございます」
一番最初に男性が口を開いた。俺も反射的に頭を下げる。
「私はこの防衛省で、先の深海棲艦に対する作戦指揮・立案等に従事しています、
男性の自己紹介が終わると、間髪を容れずにメガネの女性が名乗った。
「
そして一礼。俺は内心「やっぱり」と思いつつ、頭を下げた。
(やっぱ大淀さんか……)
最初に彼女を見た時から、薄々勘付いてはいた。
彼女から発せられる声とその格好を見れば『提督』なら誰だって大淀さんだと気付くと思う。それぐらい、目の前の彼女は大淀さんそのものだった。
「それじゃ、最後にうちだな」
続いてテーブルの上に立つ妖精が、待ってましたと言わんばかりに名乗りを上げた。
「とはいっても、名前はないんだけどな。ま、気軽に『妖精さん』とでも呼んでくれ」
なんとも不思議な光景だ。俺の目の前で、手のひらサイズの人形が喋っている。
初見では流石に驚いたが、もう慣れた。今の俺の目には可愛い妖精さんとして目に映る。
「ふむ……どうやら妖精さんとの意思疎通も、問題ないようですね」
唐突に宗川さんが言った。その言葉に大淀さんも頷く。
「では早速、本題に入りましょうか」
宗川さんの表情が、より真剣なものへと変わった。
俺はいよいよかと思い、緊張しながらも話を聞く事に精神を集中させる。
「神城さんも既にご存知の事とは思いますが、我々は現在、
(素質……)
黙って妖精の方に視線をやる。だが視線の先に妖精はいなかった。
「そういうこった。兄ちゃんは合格だよ、合格」
変わりに近くから声がした。いつの間にか妖精は、俺のすぐ近くまで移動していたのだ。
「わっ……!」
思わず身体中がびくっと震えた。そんな俺とは対照的に、妖精はどこか楽し気だ。
「ははは、面白い兄ちゃんだな」
身体中の力が一気に抜けていく。正直、かなり心臓に悪いからやめてほしい。
「妖精さん、話に水を差すのはやめてください」
大淀さんが少し厳しめの口調で言う。
妖精は「へーい」と気の抜けた返事をして、元いた位置に戻って行った。
「申し訳ありません。いつもはもう少し大人しいのですが……」
「あ、いえ、全然大丈夫です」
びっくりはしたものの、妖精に気に入られるのは悪い事じゃない。
さっき宗川さんが言ってた素質というのは、おそらくこの妖精に関わる何かだろうし。
「話を戻します」
そう言ってから、再び宗川さんは話始めた。
「先ほど素質と言いましたが、そう大層なものではありません。ここにいる妖精を視認できるか、また話をする事ができるか。これだけです」
「はあ……」
どこかで聞いたような設定だと思った。確かそんな感じの設定をした『艦これ』の創作物があったような気がする。
「ああ、すみません。これだけとは言いましたが、もちろん他にも判断材料はあります。妖精の見える見えないは、あくまでも最低条件です」
あっと言う間もなく部屋の空気が変わる。どうやらここからが本番らしい。
「これから話を進めていく中で、何点か神城さんに確認しておきたいことがあります。今後こちら側で働くために必要なことなので、その際はよく考えてからお応えください」
「は、はいっ」
俺は改めて、現実世界の厳しさを痛感させられた。
よくある創作物なら、妖精が見えるってだけで『提督街道』まっしぐらのはずなんだけどな……。