目が覚めたら艦娘と深海棲艦がリアルに戦争してた件   作:Sh1Gr3

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誤字とかないか読み返してたけど、横より縦読みの方が読みやすいなと思いました(小並)


チュートリアル②

 

 妖精によるチュートリアルは実に分かりやすいもので、提督さんが来る前に、俺はこの世界の艦娘と深海棲艦の知識を大方抑えることができた。

 少なくともこの説明の中では、俺の懸念するゲームとの差異は見当たらなかった。まあもっとも、チュートリアルと言うぐらいなので、本当に基本的なことしか説明されていないのだが。

 例えば、艦娘は軍艦の力を持った存在で、艤装を使って深海棲艦と戦う。その際、提督の存在が必要不可欠で、指揮を執る提督がいなければ艦娘は通常の力を発揮できない。そして彼女らは軍艦と同様、艦種ごとにその役割が異なり、艦娘になってもそれは変わらない。とか。

 一方で深海棲艦は、いつどのように出現するのかは不明。だが一度出現したらどんどん増殖していき、最終的にはその海域を我が物顔で占領するらしい。その上、通常兵器では決定的なダメージは与えられないという、艦これの創作物でよく耳にする設定つき。俺が言うのもなんだが、非常にタチが悪い。

 

 「以上が艦娘と深海棲艦についてです」

 

 妖精の話が終わる。俺は分かったような顔で、何度か頷いてみせた。

 横から大淀さんがフォローしてくれる。

 

 「いきなりこのような話をされても、全てを理解するのは難しいでしょう」

 

 「は、はい」

 

 「ゆっくりで構いません。着任までになんとなく我々や深海棲艦に対して、そのようなイメージを定着していただけたらと思います」

 

 「あっ、分かりました……」

 

 着任と言われて、俺は一つ気になった。俺の着任先は一体どこになるのだろうか。県外は仕方ないにしろ、海外泊地は流石に勘弁してほしいんだけど。

 

 「だいぶ駆け足になってしまいましたが、何か質問があればどうぞ」

 

 と妖精。

 俺は早速、今気になったことを大淀さんに訊いた。

 

 「あの、俺の着任先ってどこになるんでしょうか……?」

 

 俺の問いに、大淀さんはハッキリと返答してくれた。

 

 「予定では第六鎮守府と呼ばれる、つい先日新設されたばかりの鎮守府です」

 

 「第六鎮守府……」

 

 「はい。千葉県の館山に位置しています」

 

 「わっ、結構近いですね」

 

 俺はほっとした。館山の正確な場所までは知らないが、千葉県ならいつでも帰ってこれる。

 そう肩をなでおろした途端、部屋の扉がノックされた。

 なにかを言う前に扉が開く。入ってきたのは全身真っ白な服を着た、見るからに体格のいい男性であった。

 

 「すまない、遅くなった」

 

 彼は暑そうに上着をぱたぱたさせ、扉を閉めた。

 大淀さんはメガネに手をやると、男性に対して鋭い目を向ける。

 

 「随分長い会議でしたね。予定ではもうとっくに終わっているはずですが」

 

 「何事も予定通りとはいかないものだ。きりがないから途中で抜けてきてやった」

 

 男性は「やれやれ」といった口調で喋っていた。見た目の厳つさとは裏腹に、口振りからは意外とフランクさを感じる。

 

 「彼が?」

 

 「ええ。神城信吾さんです」

 

 ため息混じりに頷く大淀さん。俺は反射的に席を立った。

 

 「あっ、神城信吾です。よろしくお願いします」

 

 「第一鎮守府で提督をしてる相浦(あいうら)だ。よろしくな」

 

 相対するとよりいっそう精悍に感じる。俺はかしこまって頭を下げた。

 

 「ああ、そうかしこまらなくていいよ。座ってくれ」

 

 「は、はいっ」

 

 言われた通り座り直す。相浦さんも机を挟んで、俺の向かい側の席に腰を下ろした。

 

 「悪かったね遅れて。本当はもっと早くに来れるはずだったんだが」

 

 「あ、いえ。全然大丈夫です」

 

 むしろ忙しいのにもかかわらず、俺なんかのために貴重な時間を割いてくれて申し訳なく思う。

 

 「おっ、妖精さん」

 

 相浦さんが机の上の妖精を見て言う。妖精はぺこり一礼し、俺にだけ聞こえる程度の声量で呟いた。

 

 「見た目はああでも、我々を『妖精さん』と呼べる程度の愛嬌は持ち合わせてるんですよね」

 

 「……」

 

 これに関しては完全にスルー。この妖精、可愛い形をしてても言うことは全て直球勝負だから怖い。

 相浦さんの視線が戻る。

 

 「神城君は妖精さんと、ちゃんとした会話ができるらしいね」

 

 「あ、はい」

 

 「驚いたよ。俺の周りでは見える奴ですら少ないってのに」

 

 俺は前会った妖精が言ってたことを思い出した。確かにそのようなことを言ってた気がする。

 

 「まあ、我々妖精は人の心に敏感ですからね。見えない人間はそれだけ心が毒されてるってことでしょう」

 

 妖精が付け加えるように言った。相変わらずの辛口である。

 しかしこれで、見える人間と見えない人間の差は理解できた。だから前会った妖精も目の前の彼女も、俺がこの世界の人間じゃないことを薄々感じ取れたんだ。

 相浦さんは再び目の前の妖精に目をやった。

 

 「会話できる人間はもっと少ない。俺も一応できるんだが、彼らの言葉はどうも片言のように聞こえてね。恥ずかしながら完璧ではないんだ」

 

 「そ、そうなんですか……」

 

 これはどう捉えればいいのだろうか。会話できることを素直に喜べばいいのか、それとも。

 

 「貴方はそれだけ単純な人間だということですよ」

 

 三たび妖精さんの辛口コメントが突き刺さる。明らかに俺に対しての台詞だ。

 

 「私たち妖精の存在を信じて疑わない。こうして平然と言葉を発していることすらも、当たり前のように受け入れる。そんな人間は希少種です」

 

 (希少種って……)

 

 遠回しに馬鹿にされたような気がした。だがそれも、相浦さんの話でプラマイゼロになる。

 

 「この人手不足の中で君のような人間が名乗りを上げてくれるのは、我々としても非常にありがたい」

 

 「あ、いえ……」

 

 「しかし君はまだ大学生だ。素質があるとはいえ、何も無理してこちら側へ来る必要はない」

 

 相浦さんの表情が険しいものへと変わる。

 

 「私が言うのもなんだが、提督業ってのは君の想像以上に厳しいぞ。特に精神的にな」

 

 「提督業ではありません。補佐官です」

 

 不意にそれまで無言だった大淀さんの、鋭いツッコミが入った。メガネをくいっとやる姿が流石によく似合う。

 

 「そ、そうだったな。だがいずれ、彼も提督として着任するんだろう?」

 

 「ええ。まだ当分先の話ですが」

 

 「なら今のうちに、この仕事の厳しさというのをだな……」

 

 「余計なことはしないでください。威圧的な話し方も控えるようお願いします」

 

 大淀さんはぴしゃりと言い放った。この感じだと、怒らせたら怖いのは大淀さんで間違いないなさそうだ。

 その証拠に、相浦さんの表情から険しさが消えている。

 

 「す、すまん。君の覚悟は既に宗川さんから聞いてるよ」

 

 「あっ……はい」

 

 覚悟。そんな大層なものでもないけど、俺の持つ知識を少しでも役立てたいって思いは今も変わらない。

 相浦さんは少し間を置いて、続けた。

 

 「これからよろしく頼む。何か困ったことがあれば遠慮なく言ってくれな」

 

 「あ、ありがとうございます!」

 

 と、いい感じの雰囲気が流れているところに、大淀さんが横から口を開く。

 

 「相浦提督、神城さんの着任先は第六鎮守府です」

 

 「……えっ?」

 

 しーんと静まり返る室内。

 俺は相浦さんと大淀さんの両方に、視線を行き来させた。相浦さんの様子から察するに、どうやら自分の下に来るものだと思ってたらしい。

 大淀さんはさらに言う。

 

 「あなたに補佐官は必要ないでしょう。それに第六鎮守府の方が、仕事量も少なくて済みます」

 

 「いや、それはそうだが……神城君のためを思うなら、忙しい場所に身を置いてこそ——」

 

 「既に決まったことですので」

 

 「あっ、はい」

 

 なんとも面白い光景である。大淀さんに頭が上がらない相浦さんも面白いけど、こうやって俺の目の前で、実際の提督と艦娘のやり取りが行われていると思うと、なんか感慨深いものがある。

 相浦さんは開き直ったようにして、俺に言った。

 

 「と、いうわけだ。頑張ってくれ神城君」

 

 「あ、ありがとうございます……」

 

 とりあえずお礼を言っておく。

 俺は第六鎮守府の提督も、相浦さんみたいな人がいいなと思った。見た目が厳ついかはともかく、人としてしっかりしてるって意味で。

 

 

 

 




次の次辺りで着任したい・・・

この見るからにテンポの悪い展開は、作者の文才の問題です。どうかご容赦の方を()
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