「国王様、吸血鬼討伐隊が帰ってきました」
「ふむ、通すがよい」
シューヤとジェイドは王の前に出て来て跪いた
「して、結果は」
「吸血鬼の街にいる吸血鬼は全て殲滅しました」
「だけど、生き残ったのはオレら二人だけっす」
「ほうほう、そうかそうか、よくやってくれた
殺された仲間達もきっと安心して天国へいけるだろう
お前達にも褒美を渡さないとな、何か申してみろ」
シューヤはミラやミラの父親の言っていた事を確認するように聞いた
「すみません、個人的に1つだけお聞きしたいことが」
「ほう?何だ?」
「本当に吸血鬼の攻撃があったから、私達に吸血鬼の殲滅を頼んだのでしょうか」
「おい、シューヤ!」
「ふむ、誰かから何か聞いたのか?」
「吸血鬼の王が攻撃を受ける理由が分からないと言っていたので……」
王は自らの髭を撫でて、不気味に笑いながら話始めた
「死人に口なしとも言う、お前達には本当の事を教えてやろう、立案したのは私ではないのだが、他種族からの申し出があってな、まぁ目障りだとは昔から思っていたから殲滅させたのだ
おかげで報酬も素晴らしい額が支払われる、私の国は今よりさらに豊かになるだろう」
「その種族とは…………」
「魔族なのは分かるが詳しくは分からん、分かっていてもその種族に対して失礼をされたら私も面つぶれだからな、言わないぞ」
嘘の情報で多くの仲間を失ったシューヤやジェイドの怒りより、シューヤの鎧の内側でくっついているミラは間違いなく強く憤りを感じていた
それでも飛び出すこともせず、少し震えながらシューヤの体を強く抱き締めている
「私の方から運び屋を既に送っている
それはそうと、吸血鬼の王と戦ったのなら、その娘はおらんかったか?」
ミラがビクッと動いたのはシューヤはもちろんのこと隣にいるジェイドも気付いた
「まだ10歳程のガキならいたけど殺したっすよ」
「そうか……」
国王は少し残念そうな顔をした後、玉座を勢いよく叩いた
「カルアだけに伝えておくのは間違いだったようだな」
「カルアに何と?」
「吸血鬼は若い時代が長いからな、生け捕りにして私のペットにしようとしたのだ、死ぬまで楽しめるからな
それはお前らに頼むべきことだったな、これは私の失態だ
さて、無駄話もそろそろ良かろう、褒美は何がほしい?」
ジェイドはただ金だけ貰えれば構わないと答えたが、シューヤは2年ほど休みが欲しいと頼んだ
「そんなんで良いのならお安いご用だ」
報酬と国王のいう褒美をもらって城を後にして二人は家に帰った
家といっても馬小屋のようなところで生活を強いられている
報酬では次の装備を整えるのと、食事代で家なんてとてもじゃないが持つことが出来ないからだ
「あの糞王め、オレ達を捨て駒にしやがって!」
「悔しがるのはわかるけど、ミラちゃんがいるの忘れんなよ」
胸のプレートを外してもミラはシューヤから離れようとはしなかった
「オレ達を殺してやりたいほど憎いよな……」
「誰も殺したくない、誰にも死んでほしくない
あたしは平和にのんびりと生きられればそれで良かったのに
どうしてよ、街の人達は誰も悪くなかったのに、お父様もお母様もみんな死んじゃったのは何でよ!!」
シューヤはミラを抱き締めることも頭を撫でることすら出来なく、それでいて何か言えることも無かった
「オレらみたいなのは国が大変ならそのために動かなくちゃいけねぇんだよ
特にシューヤは勇者とまで言われてるからな、国の最高責任者がヤれと言ったらヤるしかないんだ
それでいて、オレら人間の方が強かった…それだけのことだろ」
「ジェイド!!そんな言い方はねぇだろ!!」
「仕方ねぇ事だってあるんだよ!!
おいガキ、嘘みてぇな話だが本当の話だ、よく聞いておけよ
オレとシューヤは別の世界から転生させられたんだ、生まれもっての能力の高さからそりゃ期待され続けてきた
家は持ってねぇけど、他の奴等より納税とか払わねぇ分マシな暮らししてるんだ
不自由だがオレらは国に生かされてるんだよ、王への裏切りはオレらにとって死を意味する」
「だからって確かな証拠も無しにあたし達仲間を…吸血鬼を……」
ミラが離れたと思うとミラの指先から糸が出てきていて、二人が気付いた頃には完全に拘束出来ていた
少し体を動かそうとすると糸はどんどんと食い込んでいく
「動けねぇ……!?」
「おい糞ガキ、オレらをここで殺すつもりか?」
ミラが5本の指を少し動かすと糸による拘束は簡単に解けた
「出来ないですよ、人間を殺すことなんて
それに、あなたがお父様の願いを叶えてくれるんですよね」
吸血鬼に罪を擦り付けた者を探すことを再確認するように聞くと、シューヤはミラの頭に手を置いた
「それが解決したら、ミラちゃんがオレを殺してくれ
そして、他の奴には手は出さないでほしい
身勝手で傲慢な意見だがお願い出来ないか?」
「その時シューヤを殺すなら代わりにオレを殺せ!!
シューヤは生きていなきゃならねぇんだから」
「だからってジェイドが殺される必要はねぇだろ!
オレがミラちゃんの親父さんをヤっちまったんだから責任くらいとらせろよ!」
「それでもシューヤはダメだ!」
少し続いた言い争いに水を差すように、ミラは口を開いた
「双方ともに大切に想っているのに、それを割いたりはしませんよ?
それとあたし言ったじゃないですか人間は殺せないって」
どういうことか聞こうとする時、3人のお腹が同時に鳴った
「あー飯買ってくるわ
ジェイド、ミラちゃんのことよろしくな」
「はぁ?どこかで食ってくれば良いだろ…………って
このガキ連れてたらどこにも行けねぇのか」
「それとまだしっかりと腕繋がってないんだろ?
いきなり腕が落ちたとかいったら困るからな、そんじゃ行ってくるわ」
ミラとジェイドを残してシューヤは馬小屋を飛び出していった
数分の沈黙に耐えきれなくなったジェイドから口を開いた
「おい糞ガキ、お前親や仲間を殺されたわりには落ち着いてるけど、吸血鬼ってそんなもんなのか?」
「あなた達と同じだから」
「はぁ?」
「あたしも別の世界で死んで、ここに来たんです
だから悲しい気持ちも当然ありますが、年相応の子どものように泣いて暴れることなんてしませんよ
転生先は人間ではなく魔人種、吸血鬼でしたけどね」
「おいおいおいおい!嘘だろ?」
「いいえ、嘘ではありません」
「な、ならこの言葉は読めるか?」
ジェイドは適当に日本語で文字を書くと、ミラはそれを普通に読み返した
「すげぇな、マジかよ!?あの女……オレら以外にも送ったやついたのかよ」
「女?あたしが見たのは男性でしたが……
日本だけでもいくつか区切りで分けていたのでしょうか」
「そうかもしれねぇな、それか神々の遊びってやつに無理矢理オレらとお前をぶつけたのか……まぁわかんねぇな
で?お前は何で死んだんだ?」
「ストーカーに包丁で刺されました、あなた達は?」
「オレとシューヤは部活帰りに二人仲良くトラックにぶつけられてな、目を覚ましたら変な部屋に一緒にいたんだ」
懐かしいような話をしているうちにシューヤが戻ってきた
「オレがいない間にずいぶん仲良くなったじゃんか」
「聞いてくれよシューヤ、こいつもオレらと故郷が同じ異世界人なんだ」
「マジで!?」
同じような説明をもう一度しながらあまり美味しくはない野菜とパンをかじった
「なるほどな、軽々しくミラちゃんとか言ってたけど、死んだとき社会人だったらオレ達より年上ってことか……ですよね?」
「こっちの世界じゃあたしの方が後輩なので、気にしなくて良いですから、それとちゃんを付けないでもらえますか?なんだかくすぐったくて」
「わ、わかったよ
それでミラはこの先どうするつもりなんだ?」
「この国の王を殺します」
「お前人を殺さねぇって言ったじゃねぇかよ」
「あれは人間何かじゃない!私欲に溢れた化け物です」
「だからって相手は国王だぞ?いくら転生者が強いからって簡単に……」
「そうですね、あたしはこの国を去って力をつけます
それであいつを殺して繋がりを探します、全部終わったら自殺するのでご迷惑はかけませんから
ここまで連れてきていただいて、食事までありがとうございました」
ミラが立ち上がるとリュックを背負い直したとき、ジェイドの短剣が首もとで止められた
「国王を殺す宣言されて逃がせる分けねぇだろ」
「止めろよジェイド!」
「それじゃこれであたしを殺す?
対吸血鬼用の符術が施されていない短剣で」
「いや、死なねぇ事くらい分かってんぞ、ただ首跳ねときゃ再生までに多少の時間がかかるだろ」
「確かにそうですね、しかも痛覚も存在しますから出来れば斬られたく無いですね
それでは、あたしにこれからどうしてほしいのですか?」
「それはまだわかんねぇけど、1人で行くことはさせねぇ」
「いいからナイフを下ろせ!」
シューヤはジェイドからナイフを取り上げたがミラはその場から逃げようともせずにいた
「1人で行けないのなら、あなた達と一緒ならいいの?」
ミラはリュックに手を伸ばしてマジックアイテムを取り出した
「それは?」
「着けた相手を奴隷にするアイテム、どうしても人間の血を欲したら取り付ければ良いってお母様からあたしのために作られた強化版のマジックアイテム、まぁ使用したことはないけどね」
「それをオレらに着けるつもりか?」
「1つしかないですし、あなた達に着けるつもりは無いですよ」
「じゃあそんなもの出して……」
ミラはそれを二人に渡した
「あたしと一緒に来てほしい、あたし1人で行かせられないなら奴隷としてでも構わない、あたしはここに居たくない」