源氏刀と秘密の部屋 作:バジリスク13世
翌日はホグワーツの登校日になる。
源家は良く言えば風光明媚、悪く言えば交通最悪な田舎に居を構えていた。
田舎の地主とはそんなものだと両親は笑った。
英国の古き良き、そして悪しき貴族制度の残り香のようなものだ、と彼は思うことにした。
とにかく、交通網だ。
いくら家柄がよかろうと、裕福な生活をしていようと、不便なことには変わりない。
日用品は、いい。屋敷には使用人も下僕妖精も居るから、普段の生活には困らない。
だが、どこかに行こうという話になると別だ。
ご自慢の暖炉は古びており、せいぜいダイアゴン横丁までが飛べる限度。それ以上になると今度は誤差が生じる。荷物を抱えたままの飛行は難しい。
結局、魔法だなんだと言っても、トランクを担いでホグワーツまで行くにはマグルの様に汽車を乗り継いでいくしかないのだった。
膝丸はそれが酷く億劫だった。
身一つならばどこへだって行ける、便利な道具も魔法も揃っている。なのにいざ荷物を抱えて移動ともなればそれらの術はたちまち使い物にならなくなる。
魔法とは、便利なのか不便なのか分からないなと思わず皮肉を言いたくもなった。
「そう? 僕は結構好きだなぁ、コレ」
窓の外は薄明りの差す曇天。朝だからだろうか、少しばかり白く霧がかかっている。
地には一面の深緑が広がる。
その境界がひどく曖昧であり、代わり映えのない景色がただただ流れていく。
そんな有様を窓枠の外から見ていた。
「ゆっくりするのも、いいじゃない」
急いでばかりだとロクなことがないよ? と陽光のような金眼を細めて髭切はにこにこと笑っていた。
という事情で、膝丸達はホグワーツに入ってから毎年キングス・クロス近くの魔法使い専門のホテルに前日から宿泊することにしていた。
このホテルにはいかにも魔法族が好みそうな魔術が仕掛けられている。
一見は古臭い、ボロボロの最下級の安宿にしか見えない――そう見せる幻術がかけられているのだ。
だから何も知らないマグルは見向きもしない。たまにちらりと見るは、その視線にありったけの侮蔑をこめてすぐさま目を逸らすだろう。
それを見て生粋の魔法族は笑う。「見かけでしか物事を判断できぬ愚かなマグル」と。
安宿の立てつけただけの扉を開くと、景色は一遍する。
磨き上げられた大理石の床がある。
塵一つなく清められた緋色の絨毯がある。
芸術家が書いた天井画に魔法かかけられ動いている。それを宙に浮かぶ蝋燭が照らしている。
周囲には古い歴史を持つだろう、最高級の木材で作られた調度品が並ぶ。
まるで王侯たちの別宅を意識したかのような内装。
周囲には魔法をかけられた台車がいくつも宿泊客のものだろうトランクや荷物を運んでいた。
もう見慣れた光景だ、と膝丸は思った。
このホテルの客層は魔法族だけになる。
だから宿泊代はかなりの高額なのだ。
そして高いのは値段だけではない、まるで呼応するかのように敷居も高い。
要は代々純血だと証明できる家系の者にしか使用ができない、という仕組みになっていた。
安全性の優先という建前もあるが、要は純血だけに許された風雅という差別を執行したいと願う者達の驕りであることは明白だった。
つまりマグル出身者や、半純血の魔法使いは、どれ程金を積んでも相応の魔法使いからの紹介状が無ければ泊まることができず、また金のない純血の魔法使いも不可能という塩梅に収まる。
結果として生き残った純血家系にしか使えない秘められた場所ということになる。
当然子供だけで使うような所ではない為、親に連れられて来た入学前はじろじろという周囲からの視線が幼い膝丸には痛かった。
その視線が排斥だったのか好奇だったのか、あるいはそれ以外の何かだったのかはわかりたくもない。
ただ横の兄の手を握りしめ、じっと耐えていたような思い出がある。
あの時ですら兄はただ悠然と構えていた。
そんな兄だからこそ膝丸は慕っているのだ。
そう、兄者はいつもマイペースなのだ。
ただ、少し、マイペースなだけなのだ……と。
「遅れるぞ兄者!!」
「はいはい……ねぇ、弟」
「何だ!?」
「もっとゆったり、のんびり行こうよ」
「兄者ぁああああ!!」
当日遅刻しない様にとの配慮は何だったのか。
その日、髭切は堂々と寝坊した。
ホグワーツ特急の出る時刻は12時。
膝丸は不安そうに頭上の大時計を見上げた。
あと5分で障壁は閉まる、という時刻だった。
「兄者!! あと5分だ! 急ごう!!」
「ありゃ? もうそんな時間かい?」
「頼むから急いでくれ兄者!!」
「分かった分かった。弟の……う~んと……」
「膝丸だぁああああああああああああああ!!!!」
膝丸は悲痛な叫びと共に9と4分の3番線の入り口たる柱へと吶喊していった。
が、しかし。
通り抜けられるハズのその場所がなぜか通り抜けることができず、膝丸は後ろに跳ね返った。
「え」
後続してきた髭切は跳ね返って来た膝丸と転がり落ちてきたトランクの下敷きになった。
膝丸の悲鳴、転がるトランクの音、ガチャガチャという金属音がプラットホームに響く。
大きな音に驚いた周囲の人間達がじろじろと兄弟を凝視していた。
「あ、兄者! すまない兄者……!」
「だいじょうぶ。大した問題じゃないよ」
あろうことか兄の上に乗っかっている、という状況に膝丸は羞恥や罪悪感やパニックで頭が混乱していた。
一方髭切の方は「弟……重いんだけど」と言った様子だ。特に大きな怪我はないようだ。
近くにいた駅員が「君たち、一体どうしたんだ?」と尋ねてくる。
「何でもないよ。急いでたら弟のカートが言うこと聞かなかったみたいなんだよねぇ」
「すまない兄者……!」
「そうなのか、君たち。気をつけなさい」
駅員はそれでも訝しそうに一瞥すると業務に戻っていった。
「なんで通れなかったんだろうねぇ」
「さあ……確かにギリギリではあったが、時間的にはまだ入り口が閉じる刻限ではなかったハズだ……」
「うんうん。困ったねぇ……そろそろ汽車が出る時間だ」
膝丸は心配そうな顔つきで再び頭上の大時計を見上げた。
ちょうど12時。短針と長針がぴったりと重なるその瞬間だった。
汽車が出る時間だった。
膝丸は呆然となる。
何という事だ、完全に自分の過失のせいだ。自分が柱を通り抜けることができなかったから、大切な兄までもがホグワーツ急行に乗り遅れてしまった。
「あ、兄者ぁ……すまない。俺のせいで……俺のせいで……!」
「よしよし、泣かない泣かない。弟はわるくないよ」
「兄者……!」
「……悪いとすれば別の何かだよね」
髭切は柱に手を触れて調べる。
特に異常はなく、ただ冷たい石の感触だけが伝わって来た。
やはり向こう側へ通り抜けられるような感じはない。
「どうだ、兄者」
「仕方ないね。もう少し待ってようか。誰か帰ってくるかもしれないし」
「あぁ、そうしたらフクロウを貸して貰おう。家と学校に連絡する。障壁が閉じるなど俄かには信じがたい話だろうが……話せば先生方も事情を分かってくれるだろう」
「…………まぁ、もっとも――――向こう側の人たちがこっち側に戻ってこれれば、の話だけどね」
物騒なことは言わないでくれ兄者、と膝丸が言おうとしたその時、後ろの方で小さく息をのむ声が聞こえた。
振り返るとそこには三人の11歳か12歳程度の子供が居た。
どの子も身の丈よりも大きいカートに荷物を積んでいる。
その様子から膝丸は察する。
おそらくは、同胞。
ホグワーツの生徒――――それも、下級生だろう、と。
「おや? 君たちも通れなくなっちゃたのかい?」
「君たちは……下級生か?」
こくり、と一人が頷いた。
やや癖のある猫毛に、金色の目。肌の色が浅黒い少年だ。
髭切は彼を見たことがあると思った。
「ひょっとして……同じグリフィンドールの生徒かな?」
「……大倶利伽羅だ」
「あぁ、やっぱり。スリザリンにお兄さんが居る子だったよね」
「兄じゃない。あいつは従兄だ」
「ありゃ? そうなのかい? まぁいいや。今何年生だっけ? そっちの子たちは知り合い?」
「今度2年になる。こいつらのことは知らない」
ふぅん、と髭切の目線が横に動いた。
青い髪を高い位置で結い上げている小柄な子供と、金髪碧眼で長い髪をそのまま流した子供だった。
「君たちは?」
「僕は小夜左文字。あなたは……誰かに復讐を望むのか……」
「乱藤四郎だよ。……ねぇ、ボクと乱れたいの?」
「うんうん、えーっと……何年生で寮はどこ?」
二人は寮はまだ決まっていない、今年入学する予定の新入生だと言った。
「それは……災難だったねぇ」
膝丸は彼らが名乗った名前にどこか聞き覚えがあると思った。
そのどちらもが、長い間純血が続いている家、を示す家名だったからだ。
「藤四郎という事は粟田口か? そしてそっちの君は左文字の弟だな?」
「……兄様たちのこと、知ってるんですか?」
「江雪も宗三も同じスリザリンだからな」
「……兄様たち、今頃心配してると思います……。江雪兄様は……心配しすぎると、ちょっと何するか分からないから……」
「……だろうな」
長兄、江雪左文字は膝丸と同学年だった。
かれこれ5年を同じ寮で過ごしていると言える。
だから多少の面識はあった。
そのため彼の普段は温厚な性格ではあるものの、時に過激に腕力で物事を解決しようとする側面や弟のこととなると見境がなくなるという場面を目撃していた。
「ところで左文字の弟。ここまでは鉄道で来たのか?」
「僕たちみたいにかい?」
小夜はふるふると首を横に振った。
「車に乗ってきました」
「車か」
「車ねぇ」
全員でカートを押して駅の出口まで出る。
すると、そこには。
深い青で塗装のされたベントレーコンチネンタルフライングスパーだった。
簡単に言うなら雑誌などで目撃できる超高級車。
値段でいうなら日本円にして3000万程度。
そして高級そうな見た目だけでなく実力も本物である。
552馬力のパワーを持ち、最高時速は312kmまで加速可能という逸品だった。
産まれたころから魔法界の名門で生きてきた為マグルには疎い二人にも「これはいいものだ」と何となく理解することができた。
「……ねぇ、この車で来たんだよね?」
「……はい」
よし、と髭切は言った。
「じゃあ、僕らはコレでホグワーツまで先に行くことにするよ。そこで先生達に事情を説明してくる。それまで君たちはここで待っていればいいよ……多分付き添いで姿現しとかしてくれるんじゃない?」
「あぁ、それが良い。3人だけで不安かもしれないが……何、時間的には汽車よりも早く到着するだろう」
乱と小夜が不安気に顔を見合わせた。
「大倶利伽羅」
「……なんだ」
「ホグワーツの先輩として下級生二人を監督できるかい?」
大倶利伽羅は数秒黙っていた。
が、何かを決意したらしくこくり、と頷く。
「俺の邪魔をしなければ、それでいい」
という言葉とは裏腹にそのセリフには強い責任感が見て取れた。
「じゃあ行こうか」
◆
「出すぞ、シートベルトをちゃんと閉めてくれ兄者」
「うんうん、えーっと……これかなぁ?」
「少し待っていてくれ兄者。確か江雪が言っていたような気がする……『弟が車を空飛ぶ感じに改造した』と」
「へぇ、やるね、彼。だけどどうやって飛ぶんだい?」
「加速すれば飛べるんじゃないか?」
「箒の要領で?」
「名前にフライングと付いている位なのだから空を飛んでも不思議じゃない筈」
「……ん? んん??」
「取説によればこの車は300キロまで出るぞ兄者」
「……え? 弟……?」
「たとえマグルの道具であろうと、おそるるに足らず!!」
「お、弟……!?」
膝丸は個人的な興味から車の運転を何となくマスターしていた。
ギュルギュルとタイヤのきしむ音アレな音が響く。
数秒後。
アクセルを踏み込んだことにより一気に加速した車は物理的に空を飛ぶ。
と、同時に計器盤の横のボタンを押す。
透明ブースターが機動、車を魔法が覆い隠すという仕組みだった。
「よし、上々だ」
「……」
「高度はこのまま。民間に飛行機という奴にも注意しなければな」
「…………」
「汽車の線と合流できれば早いのだが……兄者?」
「……………………」
「兄者!? どうした兄者!?」
「…………肘丸……」
「膝丸だぁ!! 兄者ぁああ!」
「僕、もう、ダメ…………」
「あ、兄者……?」
「オロロロロロロロロロロロロロロロロロロロ」
「兄者ぁああああああああああああああああ!!」
白雪のような雲を情緒も何もなく通過しながら通る過ぎると、やがてホグワーツ特急を見つけることができた。
特急の横を通過する一瞬。膝丸は汽車の中を見ることができた。
ボックス席に薄い茶色の髪の少年が座っている。顔を下に向けている。
片袖で顔を拭っている、ぐずぐずという音が聞こえてくるようだった。隣に居るのは友達だろう、背中をさすってやっている。
とても声は聞こえないが、口の動きだけは分かる。
それは「ひろみつ」と言っている様に見えた。
膝丸にその名前に覚えは無かった。
空飛ぶベントレーはあっという間に汽車を追い抜く。
やがて湖の向こう側に大小の尖塔が見える。
間違えない。あれこそがホグワーツ城だ、ようやく着いたという僅かな安堵感と懐かしさが膝丸の胸に去来する。
しかし、ここで気を抜いてはいけない。勢いだけで来ているのだからこの後着陸までしなければならないのだ。他ならぬ兄者の為にも。
その時。
車体がぐらぐらと妙な揺れ方をした。エンジンが呻き声を上げる。ボンネットからは謎の蒸気が漏れだしている。湖水と車体の距離はわずか1000メートルあるか、ないか。
計器を見ると燃料が残り少なくなっていることが分かる。
このままの速力だと確実に水面に墜落するだろうという予想が膝丸の頭をよぎる。
「あ、兄者!」
「………………」
兄からの返事はない。見ると横で真っ青な顔のままぐったりとしていた。
「兄者……? 起きてくれ兄者!」
「…………無理…………ほんともう……無理……」
「兄者……っ!」
何故か兄者はとてつもなく弱っていた。
何が兄者をここまでさせたのか膝丸には分からない。
自分のかなりアレな運転が兄を車酔いさせているという現実に膝丸は気づけない。
しかし、もうこれ以上兄者にも車にも無理はさせられない――!
そう決意した膝丸の目に、闘志が宿る。
「待っていろ兄者……!」
「待って弟本当にもう無――――」
膝丸は、賭けた。
残り少ない燃料、その全てを吹かしてこの湖面を一気に渡り切る―――――と。
「シャアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
車体が傾ぐ。
重力の助けで速度を上げながら、落ちていく。
そしてそれは城の固い壁へと一直線に向かっていく。
「ここだぁああああああああああああああああああッ!!」「ひでぶ」
膝丸はハンドルを切った。
車が空中でカーブを描く。
ガリガリガリという音がする。車体と石壁のわずかな隙間に火花が散り、細かな石片が散華する。
衝突を回避したベントレーはそのまま黒い芝生の上へとコクコクと高度を失いながら進むだろう。
その時、膝丸の目があるものを捉えた。
「――暴れ、柳…………!?」
何故今まで気づかなかったのだろう。
おそらくは湖面を渡り切ること、城との衝突を避けることに集中しすぎてしまったせいだろう。
ホグワーツ地理にまで頭が回らなかった己の愚かさに舌打ちをしながら、回避を試みる。
しかし、ハンドルはもう操作を受け付けることは無かった。
「兄者!」
「うっぷ…………」
あえて音にすると言うのなら、グワッシャン、が妥当だろう。
形容しがたい金属と木がぶつかり合う音が鳴り響く。わずかに残った燃料が漏れた臭気が漂う。
車は太い幹に衝突したのだろう。
その後、地面に落下し、激しく揺れた。
ひしゃげたボンネットの中からは蒸気が噴出している。
膝丸はフロントガラスにぶつけた額を抑えながら慌てて兄者、と叫んだ。
「無事か!?」
髭切は絶望しきった様子で、呻いた。
「もう、絶対……」その声は震えている。「飛ぶ車なんか……のらない…………」
聞こえてくるのは泣き言だ。
だが特に大きな怪我はないだろうということが分かった。
脱出しよう兄者。と言おうとしたその瞬間。
「……ッ!!」
激しい衝撃が車内を襲った。
まるで巨大な何かに突進されたかのようだ、と膝丸は直観する。
一体何が。
残念ながらその答えは明白だ。
今しがたこっちが激突した暴れ柳が、狼藉物を排除すべく殴りかかってきているのだろう。
「ぐっ――兄者、動けるか!」
「次から次へと……」
髭切はふらふらと頭を押さえながら起き上がった。
すかさず暴れ柳からの2撃目が来る。
ガン、ガン、ガンという金属が軋む音がする。
まるで巨大なハンマーのような大枝が、屋根を打ち、凹ませているのだ。
屋根が突き破られるのは、時間の問題。
このままでは身動きなどできない、兄者を抱えて出ることはできても、その先兄者を抱えながら逃げ切れるかどうかも分からない――。
その時、膝丸の頭に閃く何かがあった。
「……そうだ!」
「え、待って―――す、脛丸!!」
「俺の名前は膝丸だ兄者!!」
いい加減名前を覚えてくれ!と言い残し膝丸はドアから外に出た。
そして暴れ柳の前にその身を投げ出す。
「鎮まり給えーーーー!」
「は?」
「鎮まり給え! さぞかし名のある古木と見受けたが、なぜそのように荒ぶるのか!?」
暴れ柳は、何かはっとしたかの様に動きを止めた。
その薄緑色の髪が春の訪れを告げる新緑に見えたのかもしれない。
手に持つ杖が古木に何かを思わせる材質だったのかもしれない。
暴れ柳は一瞬だけ止まる。
「怨みを忘れ静まり給え」
「え? え??」
膝丸は小言で呪文を詠唱していた。
その瞬間に、杖の先から何か温かい光が迸る。
髭切は「あ、これルーモス・ソレムだ」と分かった。
光を浴びた暴れ柳は思いだす。
これが欲しかった陽光。
自分はただ、穏やかな日向で光合成がしたかっただけだったのだ――――と。
「分かってくれたか、暴れ柳よ。我ら兄弟、何もお前に害をなしたかったわけではないのだ。これで許してはくれないだろうか……?」
暴れ柳がその太い幹を差し出す。
そこに先ほどの様な殺意は漲ってはいない。
むしろ、和睦を望んでいるかのように手を差し出しているかのように見える。
膝丸はその幹に向かって手を伸ばす。
それはあたかも、握手を交わしているかの様な光景だった――――。
人と木、全く異なる生物。
だが、確かにそこには友情があった……。
「……ナニコレ……?」
「本当に、何をしているのか」
二人の背後でひどく冷たい声がした。
「さて――――何故汽車に乗っていないのか……話を聞かせて貰おうか?」
そこには、ホグワーツのスリザリン寮の寮監であり。
魔法薬学の教授でもある。
小狐丸が居たのだった。