デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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傷ついても、ボロボロになろうともなお力を求める士道、それを支えるのは家族たちの想い。

士道はその想いにどう答えるのか?

更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした!


四話 強さと弱さ!

時刻はPM6:30。そろそろソロモンとの約束の時間だ。士道は十香と琴里の二人と夕食を済ませ、食器を洗い終えたところだった。

 

「おにーちゃん、おっ風呂沸いたぞお!」

 

琴里が士道に伝えるが、士道はポケットの中から何かを取り出す。

 

「―――先に行けよ琴里。今日は運がいいことに福引を引いたら『こいつ』が当たったのよ。………これ使っていいから先に行けよ」

 

士道がポケットから取り出したのは、最高クラスの入浴剤―――バスソルトだった。

 

「え!?どこの福引よ!!そんな高級入浴剤が置いてある福引なんて滅多にないわよ!?―――先に入っていいの、おにーちゃん?」

 

「ああ、俺はこれからジムで体を鍛えてくる。―――いいジムを見つけたんだ、最近ちょっとお腹が出てきたからまた鍛え直そうと思ってな」

 

「わーい!ありがとう、おにーちゃん!」

 

琴里はバスソルトを受け取ると急いで浴室へと向かった。食器を片付けると、士道は家を出るために玄関へと向かう。

 

「………さて、今日はソロモンさんが相手か。ある意味、全力で殴り掛かってくるヘラクレスのおっさんよりも怖いぜ」

 

士道は今日の修行に少しだけ怖く感じていた。ソロモンを相手にすることは、士道にとって一番苦手なタイプの相手と戦うことに等しいからだ。

 

『………相棒、明日の修行は休むべきだと俺は思う。昨日今日で相棒の体はまだヘラクレスとの修行で受けたダメージが抜けきっていない。あまり無理をし過ぎたら潰れてしまうぞ?』

 

ドライグは士道の体を心配していた。二時間とは言え、休憩なしで天龍クラスの相手との死闘を繰り広げたのだ。おまけに今の士道はただの人間だ。肉体が悲鳴を上げていてもおかしくはない。

 

「―――ありがとなドライグ。だが、それじゃあダメなんだ。できる時にやっておかないと万が一の時に辛い思いをするのは俺だ」

 

『………………………』

 

士道の言葉にドライグは黙り込んだ。―――今の士道には何を言っても聞く耳を持たないとドライグは勘付いていた。士道は『仲間を守る強さを身につけなければ』と強迫観念に突き動かされていた。

『兵藤一誠』としての力が完全にコピーされているのであれば、士道もここまで焦ることはないのだが、彼はまだ禁手(バランス•ブレイカー)にすら至れていない。

 

「………俺がやらなきゃいけない―――俺がみんなを守るんだ」

 

士道は怖いくらいに眼光を鋭くして、前を見つめていた。

士道が靴を履いて家の扉に手を触れる。その時、士道の足を止める者がすぐ後ろにいた。

 

「シドー?こんな夜中に何処へ行くのだ?」

 

十香が家を出ようとしているシドーに声をかける。士道は十香に答える。

 

「………ちょっとしたトレーニングさ。最近お腹が出てきてダサいなと思ってさ、少し外を走ってくるつもりだ」

 

それだけを伝えると士道は扉を開けようとしたが、十香も士道に合わせて靴を履く。靴を履いている十香に士道は目を点にして反応する。

 

「………あの、十香さん?あなた一体何をするおつもりで?」

 

「む?『何をするおつもりで?』ではなかろう!私もシドーとトレーニングをするのだ!夫と常に共にあるのが嫁というものだと桐生藍華に教わったのだ!」

 

(―――あのエロメガネ女か!?十香に余計なことを吹き込みやがったのは!!)

 

士道は空から“してやったり”といやらしい笑みを浮かべて手を振っている桐生の顔が思い浮かび、歯ぎしりをしていた。

―――だが、これからの修行に十香を連れて行くわけにはいかない。士道はどうやって十香を家に置いて出ようかを考えていた。

 

「………シドー、どうしたのだ?早く私とトレーニングだ!」

 

士道は首を横に振り、十香の肩を掴んで想いを伝える。

 

「十香、お前は家に残ってくれ。トレーニングをするのは俺だけでいいんだ」

 

「―――何故なのだシドー!私とトレーニングをするのは嫌なのか!?」

 

十香はいきなり拒否されたことに動揺し、先ほどまでの笑顔の表情が困惑の表情へと一変する。士道は理由を説明する。

 

「………十香、今から俺が話す事は誰にも言わないで欲しい―――ドライグ、アレを頼む」

 

士道が『赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)』を出し、ドライグに準備をするように告げる。

 

『任せろ―――ConnectMind』

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)』が二度と点滅をした後、士道に力が無い赤いオーラを包み込む。士道を包み込んだ後、十香にも赤いオーラが包み込んだ。

そして、二人を包み込んだ赤いオーラは、しばらくして弾けて消え去った。

 

「い、今のはなんだったのだシドー?」

 

シドーは目を瞑り、口を開けずに心の中で十香に自分が言いたいことを思う。

 

(―――十香、聞こえるか?)

 

士道が念じるとそれは十香に聞こえたのか、十香がびっくりして慌てふためく。

 

「な、何なのだ!?い、今シドーの声が私の心の中で聞こえたぞ!?」

 

いきなりのことでパニックになり、十香は目をぐるぐると回し、あたふたとしている十香に士道は笑みを浮かべながら再び想いを念じる。

 

(………最近俺が使えるようになった新たな手品みたいなものだ。十香、言いたいことを心の中で念じてみろ。そうすれば俺にもお前の声が届く)

 

十香は言われた通りに目を瞑り念じる。すると――――

 

(………シドー?聞こえるか?)

 

(ああ!聞こえているよ)

 

十香も思念で士道に語りかけると、それは見事に成功し、十香は嬉しそうに舞い上がっていた。しかし、士道は少しした後、真剣な表情で十香を見つめる。

 

(―――十香、聞いてくれ。………俺が行なっているトレーニングはただのトレーニングじゃないんだ。十香たち以上に強い相手に俺はトレーニングをしている。………下手をすれば死ぬかもしれないほど危険なトレーニングをしている。だから十香を連れて行くわけにはいかないんだ)

 

「―――なっ!?」

 

十香はいきなり士道に突きつけられた現実に言葉を失う。士道は続ける

 

(………こんなことを琴里や令音さんに言えば必ず止められる。もちろん、十香も俺を止めようとするだろう。でも、俺は強くならなければならないんだ。お前たちを助ける為には俺自身が今よりも強くなる必要がある。だから―――琴里や令音さんには黙っていてほしい)

 

「―――嫌だ………」

 

十香は表情を陰らせ、ふるふると肩を震わせながらかすれるような声を出した。それは小さな声だったが、十香の心の叫びだった。―――大切な人に死ぬかもしれないほど危険なことをしてほしくないと士道を思ってのことだった。

 

「嫌に決まっておろう!士道が死ぬかもしれないほど危険なことをしているというのに黙って帰りを待つなど出来るわけがなかろう!!―――何故そこまで一人で抱え込むのだシドー!!」

 

十香は士道をいかせないといわないばかりに扉の前に立って両手を広げる。

士道は拳を握り、十香と目線を逸らして心の声を念じる。

 

(―――俺には守れなかった人がいた)

 

「………守れなかった?」

 

(―――ああ。俺がもっと強ければ確実に救うことのできていた人がいた。………けど、俺はその人を救えなかった。あの時ほど自分の弱さを憎んだことはない。だから俺は()()()()では家族をそして仲間を必ず守らなければならないんだ………)

 

これは『兵藤一誠』としての記憶だった。友達であった少女―――アーシアを救えなかった自分が今でも彼は許せていない。だからこの五河士道になってからはそうならないようにと毎日鍛錬を怠ることなく続けてきたのだ。

 

(―――今言ったことは琴里や令音さんには話さないでほしい。………できれば忘れてほしい。―――退いてくれ十香)

 

「ッ!シドー!!」

 

立ちはだかる十香の肩を掴んで士道は無理矢理にその場から動かし、ドアを開けて闇に染まった夜の街を駆けて行った。

 

「―――シドー………何故なのだ」

 

残された十香はただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

――◇――

 

 

 

 

『………相棒、あれは酷いのではないか?』

 

士道が来禅公園を目指して夜道を駆けていた時、ドライグが士道に語りかける。

 

『―――夜刀神十香が相棒を心配するのは相棒が傷付く姿を見たくないからだ。………鈍感が過ぎるぞ相棒』

 

ドライグは生前から士道が鈍いことを気付いていた。しかし、士道はドライグの言葉を質問で返す。

 

「………ドライグ、誰も傷つかない世界なんてあるか?」

 

『―――それはないな。だが、俺が言いたいのはそういうことじゃない。少しはあの女の気持ちになって考えてみろ、自分のヒーローがボロボロになってまで強さを求めるところを見たいと思うか?あの女の精神はかなりすり減っていたはずだ。………何故理解してやらないのだ』

 

「―――俺が死にそうになって十香が暴走したことだって俺は忘れたわけじゃない。確かに十香には不安な気持ちにさせたことは本当に悪いと俺も思っている………。

でもなドライグ―――()()()()()()()()()が現れた時、俺以外の誰が十香を守ることができる?………『それなら黙って滅びよう』なんて言葉をお前は言えるのか?」

 

『………………………』

 

ドライグは黙り込んだ。当然そんな言葉は口が裂けても言うことは出来ないだろう。士道は夜空の月を見上げながら、誓うように告げる。

「………俺だけなんだよ。―――いや『赤龍帝』である俺だけじゃないか。十香を守ることも、精霊たちを救うことができるただ一人の人間が俺だ。………誰かを助けることに―――守ることに理由なんて要らないだろ?俺はあいつらに笑顔になって欲しいんだよ………」

 

『………今の相棒に夜刀神十香を笑顔にできるとは思えんがな』

 

「―――ああ、今の俺には出来ないだろうさ。十香を泣かせてしまったんだ。でも、俺は諦めはしない」

 

士道は強い決心を抱き、目的地を目指した。―――全ては家族を守る力を手に入れるために。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

「―――やあ士道くん、今日はいつもより遅かったね。………十香ちゃんと喧嘩でもしたのかな?」

 

目的地の来禅公園に着くと、すでにソロモンが待っていた。士道はソロモンに「………いえ、特には」と返した。

 

「………若いうちは色々とあるからねぇ。僕は士道くんのような青春を送ることなくこんな姿になってしまったけどね。―――ああ、リア充なんて爆発してしまえばいいのになあ。………今度『全世界リア充爆発術式』でも組んでみようかな?」

 

―――この童貞魔法使いもリア充は気に入らないみたいだ。彼からは凄まじい魔力が溢れていた。………このソロモンには青春のことを問うのは禁句に近いだろう。

 

「………あの、なんかすみませんでしたぁ!」

 

「謝らないで士道くん!!なんか本当に惨めな気持ちになってくるから!!よし、リア充撲滅大作戦を決行する!!」

 

「―――あんたそれでも守護者かあああああああああ!!」

 

修行前に無駄な体力を使った士道だった。ソロモンの暴走を止めた後、しばらくして修行が始まった。

 

 

 

「………士道くん、飛行魔術は制御が多いんだ。キミの場合は殆どが悪魔の翼かドラゴンの翼で制御していたからかなり難しいと思う。まずは制御の種類から一つずつやっていこう」

 

「………はい!」

 

「うん、いい返事だ!」

 

ソロモン大先生の飛行魔術の説明が始まった。

 

「―――僕の場合は魔力で空を飛ぶが、キミの場合は霊力を使って空を飛ぶことになる。だが、魔力も霊力もそこまで大した違いはない。

魔力でも霊力でも空を飛ぶために必要な制御は同じだ。………士道くん、飛行するために必要な制御は何が必要になるかわかるかな?」

 

士道はバカな頭をひねりながら一生懸命考えていた。しばらくしたのち、士道は答える。

 

「………飛行するために必要な制御は『上昇』、それから『下降』の二つが主体だと考えます。今の二つだと上下にしか行けないので、前後左右の『移動』の制御と、飛行速度を調整する『加速』それから『減速』の制御が全てだと俺は思っています」

 

士道が導き出した答えにソロモンは笑みを浮かべる。

 

「―――うーん、五十点かな。そこまでの制御は必要じゃないんだ。………まあ、言葉で言うよりは士道くん自身が試すことが一番早いね。士道くん、一度その制御を行ってごらん」

 

「………五十点!?―――まあ、論より証拠ですね。分かりました!」

 

士道はソロモンに言われた通りに空を飛ぶ。確かに士道の考えていた通り、士道は宙に浮き、まるで鳥を思わせるかのように空中を飛行していた。―――しかし………長くは続かなかった。

 

「………あれぇ?」

 

士道は三十分ぐらいで士道は倦怠感に襲われ、地面へと着地する。

 

「―――なんで空を飛ぶことがこんなにも疲れるんだ!?」

 

その様子を見てソロモンが士道に解答を言う。

 

「士道くん、それじゃあ空を飛ぶことはできないね。―――あまり空を飛ぶことに時間を費やすのは無駄にしかならないから答えを教えてあげよう。―――霊力を全身に纏わせるようにコントロールしてごらん。あとは自分の中で思い浮かべるだけで簡単に空を飛べるさ」

 

士道はソロモンに言われた通りに霊力を纏い、空を飛ぶように念じると―――見事に空を飛べていた。

 

「―――ま、マジか………。俺がドラゴンの翼で飛べるようになるまでかなりかかったのに………」

 

「キミの相棒も驚いていたんじゃないかな?空を飛ぶことより禁手(バランス•ブレイカー)に至る方が早い宿主なんて初めて巡り合ったんじゃないかな?」

 

ソロモンの問いにドライグは呆れながら答えていた。

 

『………ああ。この男は歴代の中でも最も変わった宿主だからな。こいつぐらいさ、飛ぶようになるまで時間がかかったのは』

 

「………ゴメンね!才能がなくて!!」

 

士道は恥ずかしそうにドライグに謝っていた。そして、今から修行の本番が始まろうとしていた。

 

「―――さて、士道くん。今からが修行の本番だと思ってくれて構わない。………やれるよね?」

 

ソロモンは魔力を放出して士道を見つめていた。士道はあまりの魔力に後退りをしそうになったが、拳を握りしめ前を見つめていた。

 

「―――お願いしますッ!!」

 

士道は全次元最強の魔術師に勇気を持って立ち向かった。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガカッッ!!

 

ソロモンはひたすらに魔力弾の嵐を士道に向けて放っていた。ソフトボールほどの大きさの魔力弾をソロモンは無数に放ち、それを雨のように降らせたり、前後左右や地面の下からも士道をめがけて攻撃をしていた。

 

士道も目に頼るだけではなく、力の動きを探ることで次の攻撃方法を予測し、直撃だけは避けることができていた。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

ズバアッ!

 

士道は目の前に突っ込んできた魔力弾をアスカロンで粉砕し、ただひたすらにソロモンを目指して猛進する。

 

「なかなかやるね!ヘラクレスと撃ち合った自信が今のキミからは感じられる―――ならば、これはどう凌ぐ!?」

 

ソロモンは伝説の賢者が持っていそうな杖の先に魔力の玉が付いている杖で横薙ぎのように一閃する。

―――次の瞬間、士道の目の前にとんでもないものが現れるッ

!!

 

ドオオオオオオオオオオッッ!!

 

「―――な、なんだこりゃあああああああ!?」

 

突如津波のような魔力で作られた衝撃波が現れ、士道に襲いかかる!衝撃波の高さはこの空間を突き破るかのような高さで、前に進むたび、衝撃波は横にも広がるように大きくなっていた。

 

(………あの衝撃波はおそらく避けることは不可能だ。だが、普通に防御しても、あの衝撃波を全て防ぎきるのは無理難題だ。―――あれを防ぐには、同質のものを垂直に放出するしかない!!未完成だが試すか!)

 

士道はアスカロンを籠手から引き抜き、『赤龍帝の籠手』の力を高めていく。

 

「………ドライグ、アスカロンに力の譲渡だ!―――試したいことがある!」

 

『………承知した!―――Transfer!!!!!!!!!!!』

 

ドクンッ!とアスカロンが脈打ち、力が高まったことを確認した士道はアスカロンを掲げて強く願う!

 

「―――アスカロン!俺の想いに応えやがれェェェェェェェッ!!」

 

パアアアアアアアァァァァッ………………

 

アスカロンが凄まじい光を放ち、士道は地面にアスカロンを突き刺し、技の名前を謳う!

 

「―――ドラゴニック•ゾーンッッ!!」

 

『Shining Sword Of Zone!!!!!!!!!!』

 

ドオオオオオオオオオオッッ!!

 

ドライグの音声が響き渡ると、士道を中心に莫大は光の柱が建ち、ソロモンが生み出した超巨大な衝撃波と正面衝突をする!!

光の柱と衝撃波がぶつかり合ったことであたりに凄まじい剛風が生まれ、あたりを煙が包む。

 

そして―――煙が収まった時には、全く無傷な士道の姿が確認できた。

 

「―――正直なところこれは僕も驚かざるを得ない。今の技は同じ威力の衝撃波をぶつけるしか相殺方法は無かったと思っていたんだけどね。………まさか()()()()()()()()()()()()という発想を僕は持っていなかったよ。まさにキミの名付けた通り、ドラゴニック•ゾーン―――赤龍帝の守護領域と言ったところだね」

 

ソロモンは士道に賞賛の声を上げて士道を称えた。士道はアスカロンを引き抜き、ソロモンに対する。

 

「………まだ未完成なんですけどね。でも、ソロモンさんの太鼓判なら胸を張れますよ!―――行きますッ!!」

 

士道はアスカロンを籠手に収納し、再びソロモンをめがけて突進した。

 

「―――ハハハ、本当にキミは面白いよ」

 

士道はソロモンを相手に徹底的にテクニック関連の修行に打ち込んだ。士道は何度ソロモンに吹き飛ばされても立ち上がり、倒れ伏すことは無かった。

 

「―――まだまだまだまだああああああああ!!!」

 

「………その意気だ!さあ、続けよう士道くん!」

 

士道は、修行の終了時間が来るまでなんとか耐えきった。そして、ソロモンにいつもと同じように家まで魔法で送ってもらったのであった。

 

 

 

 

 

――◆――

 

 

 

 

 

「今日もよく頑張ったね士道くん。お疲れ様」

 

ソロモンが家の前で士道に言った。士道は「まだまだです。俺はもっと頑張らなければならないんです」と悔しそうな表情でソロモンに伝えた。―――今日も士道は至ることが出来なかった。

 

「………士道くん、これだけは覚えていてほしい。体を休める事もトレーニングの一環だと」

 

「―――分かりました。今日は早めに寝ます。明日もよろしくお願いします」

 

それだけを伝えると、士道はソロモンに頭を下げて扉を開けて家の中へと入った。

 

「………限界は明日かな。―――誰かを守ろうと思っている人間は強い。けど、そういう人たちはみんな決まって心が弱い。士道くん、キミが傷付くことで誰かが悲しむと言うことだけは忘れないでほしい」

 

ソロモンは士道の体が限界にきていることを悟っていた。多くの者を救ってきたソロモンだが、救えない命も確かにあった。だからソロモンは今の士道を見ていて思うところがあったのだろう。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

士道が家に入ると、パジャマ姿の一人の少女の姿が見えた。その少女を見て、士道は限界が近づき、閉じそうだった目を開く。

 

「………十香」

 

―――そう、十香だった。十香は泣き出しそうな表情で士道を抱きしめた。

 

「―――心配させおってこのバカ者ッ!!私がどれほど胸の張り裂ける想いで待っていたかわからぬか!………もう帰ってこないかと思ったぞっ………」

 

「ゴメンな十香。俺、風呂に入って―――」

 

ドサッ………

 

溜まっていた疲労が限界になり、士道はとうとう倒れ込んだ。

 

「―――シドー!シドー!!」

 

倒れた士道の体を揺する十香だが、士道が意識を取り戻すことは無かった。




士道の体にはじわじわと限界が近づいてきています。
———それは当然ですよね、士道は精霊の霊力を封印できる力があり、小さい頃から体を鍛えてきたとは言っても所詮は人間です。天龍クラスの相手に修行を休む事なく続ければ限界は必ず来ます。

次回は誰が士道を立ち直らせるのか!?

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