デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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執筆していて思ったのですが、DD原作のイッセーならここでゲームオーバーになる気しかしないんですよね••••••

狂三のような積極的にアプローチをかけて来る精霊が相手だとすぐにタジタジになりますからね•••••


二話 押されまくりです!

「―――で、間違いないのか?」

 

士道はタマちゃんが教室から退出した後に、スマホで琴里に連絡し、あることを確認してもらっていた。

 

『ええ、間違い無いわ。「フラクシナス」の観測データから見ても完全に精霊の数値を叩き出しているわ―――狂三は正真正銘の精霊よ』

 

「………夢か幻なら嬉しかったんだがな―――ASTの連中が手を出して来る前に攻略が本当にオススメだな」

 

士道の発言を聞いた琴里は、口の端を吊り上げて笑みを浮かべる。

 

『やけに今回は乗り気じゃない―――精霊に心を奪われちゃったの?このスーパードスケベ野郎』

 

「うるせえよ!!なんか俺のことを気に入ってくれてるみたいだから早めにことが済んじゃうのかな〜って思っただけだよ………」

 

『ええ〜、怪しいなぁ〜。もしかして「案内をしてくれたらご褒美をあげる♪」―――なんて口車に乗せられた訳じゃあないでしょうねえ?』

 

「―――おい!?俺はどんだけは信用ねえんだよ!!」

 

琴里の懸念も無理もないだろう。―――兄の士道は三秒に一回はスケベな妄想を膨らませる変態だ………心配するなというほうが逆に無理があるだろう。

 

『―――とにかく、私を含めた「フラクシナス」のクルーたちも、士道が言ったようにASTがちょっかいを出して来る前にケリをつけることに賛成しているわ。………士道のクラスの鳶一折紙からASTには伝わっているはずでしょうし、あまり時間は残されていないわ―――やれるわね、士道?』

 

琴里たちも士道が考え出した意見については、背中を後押ししてくれるようだ。―――士道は空を強い眼力で見つめる。

 

「―――ああ、任せろ。精霊を助けることがこの俺の使命だからな………絶対やり遂げてみせる!」

 

士道はそれだけを伝えると、琴里との通話を終えた。その通話を終えた時には、既にチャイムが鳴り響き、一限目の授業を行う先生が入室していた。

 

 

 

 

 

――◆――

 

 

 

 

「………まさかまさかの本当に精霊でしたか」

 

天宮市の某所にあるASTの基地で男性職員が観測室で計測された霊波を見て眉間にしわを寄せ、顎に手を置いていた。

 

「なにかの間違い―――なんて事はないの?」

 

日下部燎子一尉も観測室のモニターを強い視線で見つめているが、男性職員は首肯するだけだった。

 

「………ここの観測機の精度は国内では群を抜いています。

しかも、観測された霊波はここ最近では最高クラスのもので、『プリンセス』が出現した時と同等―――もしくは、それ以上に化けるかも知れないレベルです」

 

プリンセス―――十香は精霊の中ではAAAランクに危険な精霊という情報があり、その力は絶対で天宮の街に甚大な被害をもたらした天災と呼ぶのが相応しい力を見せた。

新たに現れた精霊の狂三はその十香を上回るかも知れないほど未知数の力を隠し持っている可能性があると観測機は告げているのだ。

 

「………それにしても、精霊が高校に転入してくるなんて飛んだ冗談もあったものよね」

 

ちなみに燎子は折紙からの通信を受けて、その真偽を確かめていたのだが、観測機が叩き出したデータを見て時、それは真であることが立証された。

 

「―――こいつは空間震とは別に、その手で一万人以上の人間を手にかけた最悪の精霊『ナイトメア』です」

 

ひょっこりと観測室に顔を出した真那がモニターの映像を見て殺気を漏らしていた。真那が伝えた情報に観測室内に緊張が走る!

 

「な、なんですって………一万人以上も!?」

 

燎子が慌てて訊き直すが、真那は首を縦に降るだけだった。

真那は観測室を出ようと扉の前に立つ。

 

「―――さて、仕事の時間でやがりますね」

 

扉が開き、退出しようとする真那を燎子が手を掴んで足を止めさせる。

 

「ま、待ちなさい―――何をするつもり?………勝手な事はさせないわよ?」

 

「―――精霊が現れたのですからぶっ殺す以外にねえじゃねえですか………それともなんですか『犠牲が出るまで指をくわえて見てろ』なんて事は言わねえですよね?」

 

「ここの隊長は私よ!指示に従いなさい!」

 

燎子が強く言うと、真那はしぶしぶながらも「………了解です」と頷いた。しかし、真那はとある企業から派遣されてきた社員のため、いざとなれば勝手に行動をすることも可能だ。

―――燎子はそのことを分かっていたため、非常に不愉快な表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

――◇――

 

 

 

 

太陽が中天から少しずれて、気温が最も高くなる時間を迎えようとしていた。―――士道たちは今日の最後の授業である体育の授業を受講していた。

現在、士道たちが行なっている種目は―――ソフトボールだ。

 

「―――四番、キャッチャー『五河』」

 

体操服を忘れて見学をしている殿町がコールをして、士道が打席に入る。

その時、守っているナインから全力のヤジが飛んでくる。

 

「殺せェェェェェェェ!!五河を殺せェェェェェェェ!!俺たちの明るい未来のために!」

 

「デッドボールいったれやオラァ!!ハーレム野郎を殺して明日を掴むんだ!」

 

「ピッチャー、ぶつけていいぞ―――いや、ぶつけろ!」

 

完全に守っている野手たちには全力で嫌われている士道くんだ。しかも、全員がデッドボールだけを願って声を出している。

 

『………随分と嫌われたものだな相棒』

 

(―――もう慣れたよ………ここまで嫌われたら逆に清々しい気分だ)

 

ドライグも士道の境遇を哀れんでいたが、士道は特に気にしてはいなかった。

 

「―――喰らえッ!これが俺の必殺魔球『ソニックライジング』だああああああ!!」

 

ピッチャーが投げたのは、ソフトボールでほとんどのピッチャーが投げる『ライズボール』だ。相手のピッチャーは右投手で、士道も右打席に入っていた。

しかし、不安なことにその投げたライズボールがシュート回転し―――

 

ドガッ!!

 

「………………•」

 

『うおっしゃああああああああああ!!』

 

―――見事にデッドボールとなった。士道は反応していたが、避けようとはせず、ヘルメットに直撃した。………しかし、士道は倒れる事はなかった。

………それも当然だ。士道がここ最近はソロモンやヘラクレスといった、全盛期のドライグやアルビオン―――二天龍に匹敵する猛者を相手に修行を続けて来たのだ。

士道がその身で受けたヘラクレスの拳に比べれば、高校生が投げるボールの衝撃など鉄球と丸めた紙くずといったところだろう。

士道は全く気にするそぶりを見せず、一塁に歩いた。

野手たちはデッドボールで大喜びをしており、ぶつけたピッチャーでさえ、ガッツポーズをしているほどだ。

 

「………士道、仇は私が討つ」

 

折紙が鬼の形相で打席へと向かっていく―――しかし、その様子とは違って別のシーンが士道の視界は捉えていた。

 

「………おい、どうかしたのか?」

 

士道が気になった光景は、桐生藍華と他複数人がグラウンドの隅で固まっているものだった。―――その真ん中には十香が足を伸ばして座っていた。

 

「五河、いいところに来てくれたわ―――十香ちゃんが前の打席でベースを踏んだ時に足を捻ったらしいのよ………」

 

桐生藍華の言葉に士道は強い衝撃を受け、顔を強張らせる。十香が痛めたのは左足らしく、左足を伸ばし座っていた。すぐにしゃがみこんで十香の足の状態を確認する。

 

「な、なんだと!?―――十香、足を見せてみろ」

 

「だ、大丈夫だシドー。少し捻っただけだ………」

 

士道を心配させまいとすぐに立ち上がろうとする十香だったが、士道は強がりかどうかを確かめるために左足首を軽く握った。

 

「―――っ………」

 

歯を食いしばって痛みを堪える十香に、士道はため息を吐く。

 

「………確かに酷い怪我ではなさそうだけど、痛みがある事は事実だ―――そんな状態で球技をさせるわけにはいかねえよ………保健室に行くぞ十香」

 

「………………………………」

 

士道の言葉に十香はジト目で士道をにらみつけ、いかにも『い•や•だ!!』と頭の上に文字が浮かばせている雰囲気を醸し出していた。

 

「………気持ちは分かるが、十香に怪我をして欲しくはないんだ―――ほら、俺がおんぶしてやるから」

 

背中を見せてしゃがみ込む士道を見て、十香もついに折れた―――いや失礼、おんぶをしてくれることが嬉しかったの方が良かったのかも知れない。

十香は一秒にも満たない時間だったが、思いがけない幸福に恍惚としていたが、すぐに首を横に振る。

 

「………し、シドーがそこまで言うなら仕方がない、な………今日はシドーの言うことを聞いてやるか―――きょ、今日だけだからな!」

 

十香は恥ずかしそうにしながら、士道の背中に体を預けた。十香は今、士道におんぶをされているのだ。

―――その様子を見ていた桐生藍華がニヤニヤとしながら近くに来ていた殿町を弄る。

 

「………こういうところが五河のいいところよね―――殿町、アンタも五河を目指してみたら?」

 

「―――俺は五河みたいな『おっぱい星人』にはなりたくねえゼッ!」

 

桐生藍華の弄りに殿町はプイッと顔をそらした。

士道は十香をおんぶしながら、一歩また一歩と歩き始める。

 

「―――桐生、それから殿町、向井先生に伝えておいてくれ」

 

一度振り返り、士道は桐生藍華と殿町宏人に伝言をお願いすると、殿町は快諾してくれた。

 

「はいよー」

 

殿町は返事を残してその場から立ち去った。―――士道と十香は保健室を目指して歩き始めた。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 

十香をおんぶして、ゴールである保健室を目指している時のことだった。―――その人物のシンボルである、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて、メガネをキラキラと光らせている人物が士道に同行していた。

 

「―――んで、なんでお前まで一緒に来てるんだ?桐生藍華………」

 

その人物とは、変態エロメガネ女の桐生藍華だ。桐生藍華は十香をおんぶしている士道の様子を見て、楽しそうな笑みを浮かべている。

………これから起こるであろう()()()を心待ちにしているのだ。

 

「あれあれぇ、アタシがいたら何か困ることでもあるのかなぁ♪」

 

十香に変な知識を与えさせない為に、士道は視界に桐生を捉えて物申す。

 

「―――んなことねえよ!!とりあえず、その嫌らしい笑みを止めろ!」

 

「だったらアタシがいても問題ないでしょ?―――十香ちゃん、五河が大喜びすることを教えてあげるわ」

 

桐生藍華は士道ではなく、十香に今度は話しかける。―――桐生藍華の言葉に、十香は腹を空かせた野獣の如く食いついた。

 

「………シドーが大喜びすること?それは一体なんなのだ!?」

 

桐生は十香が食い付いたことを確認すると、今までとは比べものにならないほど、嫌らしい笑みを浮かべて十香にその方法を告げる。

 

「―――それはねぇ、五河の背中にギューって強く抱きついてあげることよ♪」

 

「………•こ、こうか?」

 

ぎゅうううううううっっ………

 

十香は桐生に言われた通りに、自分の体を強く押し付けるように士道の背中を圧迫していた。

士道は十香の不意打ちに素っ頓狂な声を出す。

 

「あうっ!?ちょっ、何してんだよ十香!」

 

「………どうだシドー、嬉しいか?」

 

十香が密着しているせいか、言葉を口にするだけで首筋に吐息がかかる。―――士道の精神の中では、理性と獣が壮絶な死闘を繰り広げていた。

―――これはもっともだが、士道くんの一番の喜びは、押し付けられる十香のおっぱいだった。

 

「―――っておい!?どこ見てやがるんだ桐生藍華ッ!!」

 

士道の下半身を確認するかのように凝視している桐生藍華を見た士道は、すぐに桐生の視界内に入らないように背中を向ける。

―――士道の分身体は大喜びをだったのは、言うまでもないだろう。

 

「あら?別にいいじゃない♪減るもんじゃないんだし」

 

「そういう問題じゃねええええええええ!!」

 

この桐生藍華という女は、飛んだ魔女だろう。―――桐生藍華の士道を弄るノルマは達成された。

 

「―――それで、どうなのだシドー?………嬉しいか?」

 

未だに士道の背中に強く体を押し付けている十香が、士道に訊く。士道は頬を赤くし、恥ずかしそうに呟く。

 

「あ、はい………最高です」

 

「おおっ!それは良かったぞ!ではもう少し続けてやるぞ」

 

ぎゅうううううううっっ

 

再び十香は士道の背中を自分の体を押し付けていた。

―――思いがけないイベントに士道の分身体は大喜びだったが、隣にいる魔女に盛大に歓迎される事だけは唯一の災いだった。

 

「………夜刀神十香、絶対に殺す」

 

メキメキメキメキッ………•

 

空飛ぶメカメカ団鳶一折紙一曹が、士道におんぶをされている十香を見て、嫉妬の炎を燃やしていた。

―――あまりの苛立ちに、折紙はソフトボールのバットをくの字に折り曲げていたが、士道は敢えて見ないことにしていた。

 

 

 

 

 

―――………•

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン………

 

ついに授業が全終了し、士道たちはホームルームの時間を迎えていた。タマちゃんが教室内に入室し、教卓に上がる。

 

「最近、この天宮市では失踪事件が多発しています。みなさん、下校する時は必ず複数人でお家に帰るようにして下さい。―――今日から完全下校を17:30としましたので、必ず守るようにして下さいね!約束ですよ、約束!」

 

タマちゃんの言う通り、今朝のニュースでもそのことは取り上げられていた。タマちゃんは生徒を心配してのことだったのだろう。

伝言を伝えると、タマちゃんは教室から出て行き、ホームルームも終了し、下校時間へとなった。

 

「―――さて、勝負はここからだな………」

 

士道は大きく息を吐いて、こちらに足を進める()()『精霊ですわ』の少女に視線を向ける。

 

「………士道さん、よろしくお願いしますわ」

 

精霊だと謳う少女―――狂三が士道の席まで来て直々にお願いをする。士道もそれに笑顔で答える。

 

「ああ、俺から申し出たことだからな―――()()、行こうぜ」

 

「―――あらあら、『狂三』で構いませんわよ、士道さん」

 

士道が苗字で呼んだことが気に食わなかったのか、狂三は名前で呼ぶように勧める。士道もそれに頷く。

 

「………じゃあ狂三、行こうか」

 

「ええ、よろしくお願いしますわ」

 

士道の後を追って行くように狂三が歩き始める。『フラクシナス』のクルーたちも既に攻略体制に入っており、琴里も令音も館内に戻り、各々が全霊を尽くしていた。

 

「むう………っ!何なのだアイツはッ!?」

 

教室の扉を開けて、体勢を低くして士道と狂三の動向を伺う十香と、もう一人十香とは違い、立ち上がって士道と狂三の二人を見つめる少女がいた。

 

「………士道にこれ以上悪い虫がつくのは勘弁」

 

士道に強い感情を抱く十香と折紙は、尾行をすることを決意し、気配を殺して慎重に足を進めた。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

天宮市の上空一万五千メートルには、空飛ぶ巨大な艦隊がある―――それはラタトスク機関が誇る『フラクシナス』だ。

現在クルーたちは総力を尽くして士道をサポートしていた。

 

「―――好感度は現在、四五•五。変化していません」

 

「精神状態オールグリーン、安定しています」

 

解析用顕現装置(リアライザ)が弾き出した数値を見る限りでは、現時点では普通ということを表している。それを見た琴里は、ホッと胸をなで下ろす。

 

「………いきなり嫌われている状況じゃないって事だけは安心できるわ」

 

確かに見た瞬間に好感度がゼロ付近で、精神状態がブルーになると攻略どころではないからだ。―――琴里が懸念していることは、士道がいきなりビーストモードを解放して精霊の好感度がいきなりゼロ付近になることだった。

 

モニターに琴里と神無月が集中していた時、ついに動きがあった。

 

『………士道さん、どこから案内して下さるのですか?』

 

『―――そうだな………』

 

士道の後をつける狂三が士道に訊ねる。その時、解析用顕現装置のAIが四つの選択肢を叩き出す。

 

①屋上

②保健室

③食堂•購買

 

「各自選択、五秒以内」

 

クルーたちは現れた選択肢の中からそれぞれの番号を選ぶ。

一番多いのが屋上で三票、次が保健室二票、もっとも少ないのが、食堂•購買の一票だった。

 

「大方の予想通り、屋上が人気ね………この③は誰が入れたの?」

 

「―――私だ」

 

琴里の確認に令音が答える。食堂•購買に票を入れたのは、令音だった。

琴里は令音を見てその真意を訊ねる。

 

「理由を聞いても良いかしら?」

 

「………単なる消去法さ。現在保健室には、風紀委員長の『古手川唯』と養護教諭がいる。―――特に古手川唯は来禅高校の歴史に名を残すほどの実力者だ。彼女がいなくなるまでは保健室は避けた方が良い。―――次に屋上だが、これも似たような理由さ••••夕日が差してからの方がいい雰囲気になり、目標達成までの近道へとなるだろう」

 

令音の意見を聞いた琴里は、納得をして首を縦に降り、士道への支持を伝える。

 

「さすがは令音、なかなかロマンチストじゃない―――士道、聞こえる?」

 

琴里からの指示を聞き、士道が狂三を見て伝える。

 

『―――まずは食堂と購買を見ておこうぜ。ここには、これから世話になることがあると思うからさ』

 

『分かりましたわ』

 

士道の言葉に狂三は笑顔で了承し、士道の後を追った。

果たして、士道たちは戦いに勝利することができるのか!?

 

 

 

 

 

―――………••

 

 

 

 

現在は16:20。まだ完全下校の時間までは猶予がある。

士道と狂三は誰もいなくなった食堂と購買を訪れていた。

―――士道が購買に売っている品物の宣伝を始める。

 

「―――ここでの人気は焼きそばパンだな。カレーパンとか、コロッケパンとかも美味いけど、焼きそばパンは安いから人気なんだ―――次に食堂のメニューについてなんだが、ここでの人気は唐揚げ丼だな」

 

「………そうなんですの」

 

士道が品物の説明をするが、狂三は特に興味が無かったのか士道の横顔だけをじっくりと見つめていた。

 

「………ところで狂三さん、そんなにお顔を近づけていますが―――どうなされましたか?」

 

気付いたのか、士道は自分の頰に顔を近づけている狂三に慌てて確認するが、狂三は頰を赤らめて理由を述べる。

 

「………申し訳ありませんわ、わたくし士道さんの横顔に見惚れていましたわ」

 

「―――わ、What!?」

 

狂三の言葉に士道は声が上ずらせ、狂三と慌てて距離を取った。―――いきなり『見惚れていた』と女性に言われたら当然の反応だろう。

 

『………相棒、お前が攻略されているようでは先が思いやられるぞ?』

 

ドライグは完全に心を盗まれそうになっていた士道に釘を刺した。―――もう少し士道くんにはしっかりとしてもらいたいところだろう。

士道は深呼吸をして兜の緒を締め直した。

 

『………相棒、このままではあの狂三という女の手の上で踊らされることになるぞ?―――お前の方から何か話題を切り出してみたらどうだ?』

 

士道はドライグの言葉を肯定していた。

―――士道と狂三、どちらに主導権があるかは一目瞭然だった。

 

「―――さ、さて!購買と食堂はこんなもんでいいだろう。次は保健室を案内するよ。………ここもこれからお世話になることがあるかも知れないし」

 

「………ええ、了解しましたわ」

 

次に士道たちが目指すのは、保健室となった。

 

 

 

 

 

――◆――

 

 

 

 

 

食堂•購買の案内が終わって、保健室を目指して校内の廊下を歩いている赤龍帝と黒の精霊の異色のコンビ。

ずっと視線を感じていた士道が隣を見る。

 

「―――なあ狂三、前を見て歩かないと危ないぞ?」

 

士道は前ではなく、士道の顔を見て歩いている狂三に注意を促すが、狂三は相変わらず笑っている。

 

「………あらあら、士道さんったら優しいですわね。わたくしのことを気遣っていただきありがとうございますわ」

 

「お、おう………」

 

完全にペースを握られている赤龍帝コンビ。これまでにはないタイプの精霊だったため、いつもなら頼りになる相棒のドライグも、今回は慎重を極めているためか後手を踏んでいる。

 

『………迂闊にグイグイと押せば、泥沼にはまってさあ大変になるだろう―――乳語翻訳(パイリンガル)が使えないのは痛いな』

 

―――え?使っても良いのか?と訊き返す士道くんだったが、ドライグは『………聞かなかったことにしてくれ』と若干ヒキぎみで考えをリセットしていた。

 

そんな中、フラクシナスからの助け舟がやって来て士道の補助活動が開始される。

 

―――選択肢

 

①朝言ってた『精霊』ってどう言うことだ?

②学校には不慣れって言ってたけど、前の学校で何かあったのか?

③俺、実は君の穿いているパンツに興味があるんだ―――見せてくれることは出来ませんかね………

 

『ちょ、ちょっと神無月!?』

 

選択肢が出た瞬間に神無月が琴里を無視して士道に指示を出す。

 

『士道くん、③―――』

 

しかし、神無月が全てを述べる前に士道は迷うことなく見事なムーンサルトジャンピング土下座を披露する!

 

「―――狂三、俺にパンツを見せてくれ!!」

 

『………お、おい!?血迷ったか相棒!?この場面でそれは色々とマズイだろう!?―――それ以前にあのAIはなぜ一つや二つ馬鹿げた選択肢が出るようになっているんだ!?』

 

ドライグは完全に終わったと思っていたが、狂三はポカーンと一瞬魂が抜けていたが、しゃがんで士道に視線を合わせる。

 

「………士道さんは、その………わたくしのぱんつに興味がおありですの?」

 

士道は立ち上がって拳を握りしめて強く答える。

 

「ああ!!俺は狂三のパンツが見たい!」

 

―――煩悩マックスの士道くん、君は立派なセクハラ野郎だ。

全力で自分の願いを口にする士道を前にして狂三は近くにあった階段を数段登り、スカートの端を握る。

 

「………いい、ですわよ―――士道さんなら」

 

「うおっしゃああああああああああ!!ありがとうございますッッ!!」

 

『―――いやいやいや、そこは相棒が殴られる場面ではないのか!?相棒と一緒に風呂に入る夜刀神十香や、相棒の着せ替えに付き合う四糸乃と言い―――精霊は自己犠牲の精神の塊なのか!?』

 

ドライグは全力で正論を述べるが、士道も狂三も完全に二人の世界へと突入していた。

 

「―――い、いきますわよ、士道さん………」

 

士道は狂三が少しずつスカートの端を捲り上げて行く姿に生唾を飲み込み、その先の光景に胸を膨らませていた。

鼻の下が地面につく勢いで伸び、流れ出る鼻血も滝を思わせるほどの勢いだった。

 

(―――狂三のパンツ………否ッ!黒タイツから見えるパンツは女神様のおパンツなんだ!!俺の脳内メモリーに保存してやるぜッ!!今日はこれでブレイクするまで励むんだ!!)

 

『うおおおおおおおおおおおんんんんっっ!!』

 

ドライグもこの状況では大泣きする以外に選択肢はないだろう。

 

―――しかし………•

 

 

 

ガタンッ!ドスンッ!!

 

 

 

いきなり階段の近くにあった用具入れが盛大に倒れる。―――まるで、中に人がいるかのようだった。

 

「―――ッ!?一体なんだってんだ!?」

 

「………あらあら、ご苦労様ですわね」

 

倒れた用具入れからは、ほうきやデッキブラシと一緒に人が二人の人物が一緒に飛び出してきた―――その二人の人物は、どちらも士道に強い想いを寄せている者たちだった。

 

「―――貴様ら、学校内で何をしているのだ!?それにシドー、私と一緒にお風呂に入ったことをもう忘れたか!!」

 

―――まず最初に一人目の人物である、十香が顔を真っ赤にして士道と狂三に人差し指を前に出す。

………十香が爆弾発言をしたということは触れないでいただきたい。

次に二人目の人物である、折紙も十香同様に不快な想いを顔に出している。

 

「………士道にパンツを見てもらうのは、恋人である私だけの専売特許」

 

いきなりお化けのように出てきた十香と折紙に士道はため息を吐く。

 

「………おい二人とも、屁理屈言ってないでとっとと帰れ。俺はこれから狂三と保健室に―――」

 

士道が全てを言い切る前に十香と折紙は士道に詰め寄る。―――十香と折紙には何か思うことがあったのだろう。

 

「「ほ、保健室っ!?」」

 

「な、なんだよ!?」

 

いきなり近づかれたことに戸惑いを隠せなかった士道だったが、十香がいきなり左足に違和感があるように振る舞い、士道と腕を組む。

 

「そ、それなら私も同行しよう。どうにも足の調子が優れんのだ………ちょっと見てもらう必要があるからな」

 

折紙も十香とは逆の腕にしがみ付き、離れようとしなかった。

 

「私も同行する。………バットを折り曲げた時に筋肉を痛めた」

 

「………お前らなぁ」

 

腕をいくら降っても離そうとしない十香と折紙に頭を悩ませていたが、狂三はその様子を見て微笑んだ。

 

「あらあら………わたくしは構いませんわよ士道さん、友達は大切にするものですわ」

 

狂三はどうやら十香と折紙がいても問題ないようだ。士道は狂三の寛大さに頭を下げる。

 

「すまない狂三、恩にきる―――お前ら、付いてくることは認めるけど狂三優先だからな?」

 

「「ぶー!!」」

 

十香と折紙は二人揃って士道の言葉にブーイングをした。

―――はてさてこの先どうなりますことやら………

 




フィナーレまでの道のりは出来ましたが、フィナーレが本当に難しいです。

この章は四糸乃パペットほど長くはならないと思います。

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