デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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前話のタマちゃんのヤンキーについては誰も触れないと思っていたのですが、それについて感想を書いていただけたことにびっくりしています。

いつも感想を書いていただき、ありがとうございます!


六話 デートの前日です!

「あ、狂三。ちょっといいか?」

 

放課後になり、廊下を歩いている狂三に士道は声をかける。狂三は士道の方を振り向く。

 

「あら、わたくしに何かご用ですの?士道さん」

 

「………明日は開校記念日で休みだ。狂三はその―――明日は暇だったりするか?狂三さえ良ければ俺が街を案内しようと思ってさ………」

 

士道が言った言葉に狂三は一旦足を止め、頭の中を整理していた。そして――――士道の言葉の真の目的を理解した狂三は頬を赤くし、人差し指をアゴにつける。

 

「えーと、それはつまり―――デート………のお誘いですか?」

 

狂三の確認に士道は恥ずかしそうに咳き込み、視線を狂三から逸らした。直球的な表現を避けていた士道だっだが、狂三はそんな士道を物ともせず、ド直球に述べたからだ。

 

「まあ、平たく言えばそうだな………その、どうかな?」

 

未だに恥ずかしそうにしている士道だったが、狂三の顔は光り輝く虹のように明るくなった。

 

「もちろん!光栄ですわ!」

 

狂三は士道のデートの誘いを快諾してくれた。士道は嬉しそうに微笑んでいる狂三をみてホッと胸をなでおろした。

 

「良かった………じゃあ、明日の十時半に天宮駅の改札前の広場を待ち合わせ場所にしようと思うけど、どうかな?」

 

「ええ、わたくしは構いませんわ。士道さん、楽しみにしてますわ!」

 

狂三は士道にぺこりと一礼すると、ルンルン気分で廊下を歩いて行った。

 

『………今のやり取りを見る限りでは、夜刀神十香と同様にチョロそうだが、あの小娘は何を考えているか全く理解できん。相棒、明日のデートはそれなりに覚悟を決めておけよ?夜刀神十香の時のような命のやりとりがあるかも知れん………』

 

ドライグの忠告に士道は息を飲んだ。先日の屋上での出来事がそれを物語っているからだ。

それでも、士道はそうならないように狂三も自分も楽しく思えるデートにしようと考えていた。

―――全ては狂三をデレさせるために………そして、霊力を封印し真那やASTの魔の手から狂三を救うために………

 

「狂三、今度こそ俺が救ってみせる………」

 

自分の想いを現実にしようと士道は拳を握り、天に掲げた。その時、士道は背後から何者かに両肩を掴まれる。

 

「―――時崎狂三と何を話していたの?」

 

「うわあ―――って折紙か………」

 

折紙が怜悧な瞳で士道を見つめる。今士道は折紙に両肩を掴まれている状態だ。

 

「………いや、大したことじゃない」

 

「答えて。これは非常に重要なこと―――」

 

折紙は口を割ろうとしない士道に、廊下の壁に士道を押し付け、さらに逃げられないように士道の顔を挟み込むように両手を廊下の壁につける。

―――今士道は折紙に壁ドンをされているのだ………

 

「本当に大したことじゃ―――ウッヒョおおおおっ!!」

 

逃げようとする士道を見た折紙は、士道の手を自分の胸へと押し付けて触らせた。

―――士道くんの現状は片腕を折紙に握られ、自分の胸へと押し付けられてる状態だ。

士道は鼻の奥から溢れそうになっている熱いモノを空いてる手で塞いだ。

 

「………何を話していたかを教えてくれたら、この場で()()()()のことをしても構わない。

―――士道、全てを話して楽になって。その後は、私のお腹に愛の結晶が出来るまで何度も励もう。これは士道にとっても私にとっても有益な取引。士道も私も気持ち良くなれる」

 

―――完全な犯罪チックなことを述べている折紙。士道もそうだが、折紙もこの手のことには自分に正直なのか大胆すぎるのか、自分がしていることが校則違反だとは全く思っていないのだろう。

 

『―――ゴホンッ!楽しんでいるところに邪魔をして悪いのだが………相棒、そろそろ現実を見た方がいいぞ?怖い怖い魔王の霊力が完全に逆流する三秒前と言ったところだぞ?』

 

ハッ………と慌てて周りを見渡すと、ドライグが懸念した通りのことが起きていた。

全身から不機嫌なオーラを放出させ、霊装を具現化させようとしている十香の姿が………四糸乃とのデパートでの出来事を再現しているかのようだった。

士道は折紙の胸から手を離し、両肩を掴んで強引に拘束を振り切る。

 

「―――鳶一折紙………今すぐ私のシドーを返せ」

 

「す、すまん折紙!十香を待たせて―――おおっ!?」

 

ドサッ!!

 

走って逃げようとする士道に折紙は足をかけて転ばせる。そして士道の背中に座る。

 

「―――ダメ、行かせない。士道は今日から私の家に住んでもらう」

 

士道の背中から全く離れようとしない折紙を見た十香は、顔を茹でたこのように真っ赤にしてどえらいことを叫ぶ!

 

「―――ええい!こんな破廉恥なことは言いたくはなかったがやむ終えん!し、シドー!き、きき、今日は私が一緒にお風呂に入ってやる!私の体を好きにさせてやるぞ!!さあ、帰ってお風呂だ!」

 

十香の言葉で士道が抑えていたリミッターが解除された。そして―――………

 

「おっぱいジャンプッ!!」

 

「―――っ」

 

士道は両手で地面を強く押して、背中に座っていた折紙の拘束を振り払った。そして目にも留まらぬ速さで十香をお姫様抱っこにする!!

この男の頭の中は十香とのお風呂のことでいっぱいだった。

 

「よおし十香、今日はいっぱい洗いっこしようぜ!!じゃあな、折紙」

 

「待っ―――」

 

バビューンッ!!

 

士道は光の速さで階段を降り、下駄箱で靴を履き替えて家へと向かった。士道は『ぐへへへへへへへへへ』といやらしい笑みを浮かべながら音速に等しいスピードで、十香をお姫様抱っこをしながら天宮を駆け抜けた。

 

『………相棒、忘れているなら教えてやるが、今日はソロモンとの修行があるぞ?残念ながら夜刀神十香とのお風呂はお預けだな』

 

「―――そ、そうだったあああああああああああ!!!!!!」

 

ドライグの言う通り、今日の夜はソロモンたちとの修行があることを士道は完全に忘れていた。

ドライグの忠告で現実に戻った士道は『クソッタレェェェェェェェ!!』と雄叫びを上げてお預けになった十香とのお風呂を嘆いていた。

 

「………夜刀神十香、時崎狂三――――士道に群がるお邪魔虫は皆殺しにしてやる!!」

 

士道を十香に横取りされ、折紙が殺意に満ちていたのは、また別の話だ。

 

 

 

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

 

「ふぃぃぃぃ―――折紙か………」

 

士道は家に着き、十香たちの夕食の調理を終えて修行に行く準備をしていた時、ふと部屋に置いていたスマホを見ると折紙からの電話の通知が何件も来ていたことに気付く。

 

そして――――………•

 

ピリリリリリリリリリリリリッ………

 

またまた士道のスマホに電話がかかってくる―――これもまた折紙からの電話だった。士道は通話のボタンを押して電話に出る。

 

「………折紙、そんなに何回も電話をして何かあったのか?」

 

『―――良かった、やっと繋がった………士道、あなたは一人になってはいけない』

 

「ほぇ!?」

 

士道が電話に出たことで、折紙は安堵の声を上げた後、突然に色々と理解に苦しむ言葉を残す。折紙からのメッセージに士道は眉間にシワを寄せ、頭の中で議論を繰り返していた。

 

『明日の午前十一時天宮駅の広場で待っている』

 

「すまん折紙、明日はどうしても外せない用事があるんだ。だから折紙の要求には答えられない」ガチャ………

 

士道は間髪入れずに返事を返すと、すぐに電話を切られた。

―――士道はそのことに罪悪感を感じていた。

 

「………あ、切られた。まあ、狂三との約束があるからシカタナイヨネ………」

 

………士道は折紙からの誘いを断らざるを得なかった。それは狂三との約束があったからだ。士道が避けたかったことは狂三の好感度を下げてしまうことだったのだ。

士道が選んだ行動をドライグも賛同のようだった。

 

(相棒、こればかりは仕方が無い………気にするなよ?一人で二人の女とのダブルデートをしようものなら必ず裏目に出て修羅場になるのが目に見えている。

それに、相棒がいま優先すべきことは時崎狂三の霊力の封印だ。鳶一折紙も話せばきっとわかってくれるさ)

 

「………そ、そうだよな!次に学校に行った時に土下座をして謝ればきっとわかってくれるよな!」

 

士道が折紙の誘いを断ったことは人としては正しいだろう。しかし、折紙がこれで引き下がらず、士道の行動の監視に出ようとしていたことは士道もドライグも読めてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

 

 

PM6:00となり、夕焼けが強く茜色に輝く頃の出来事だ。

士道はいつも通りジャージに着替え、来禅公園へと到着していた。今日はソロモンとヘラクレスだけでなく、もう一人の人物の姿があったことに目が向かった。

 

「………やあ士道くん、三日ほど空いたけど体を休めることは出来たかな?」

 

ソロモンが士道に問う。ソロモンたちとの修行は四糸乃救出後も行われており、三日前に士道はヘラクレスを相手に修行をしていたのだ。

 

「はい、無茶ばかりすると十香が全力で止めに来ますからね………ところでソロモンさん――――そちらの美女様は一体?」

 

士道はソロモンの言葉に軽い返事をすると、身長は士道よりも低く、神話で描かれている神様が纏うような衣を身を包み、長い金髪を後ろで一つくくりにし、翡翠の瞳を両目に持った絶世の美女に士道の視線は釘付けになっていた。

そして―――士道はその美女の胸部に視線を凝視していた。衣の中に山があるように思わせるほどの巨乳の持ち主だった。

 

「………士道くんは彼女と直接会うのこれが最初だったね。彼女の名前は『アテナ』だ」

 

「――――――――ハッ!?す、すみません。ちょっと眺めていただけというか何というか………五河士道です、よろしくお願いします」

 

士道くんの大好物はおっぱいだ――――基本的には小さいのも好きだが、やはり彼の大好物は大きなおっぱい『巨乳』だ。アテナの豊かなおっぱいは、リアス•グレモリーや姫島朱乃にも匹敵するほどの巨乳だったのだ。

 

「………あ、アテナです。よ、よろしく………」

 

アテナは鼻の下を伸ばし、鼻血を出しながら胸ばかりを見つめる士道に目元をヒクつかせていた。

いきなりマイナスの印象を持たれた士道くんだった。

 

「―――さて、お互いに自己紹介をしたことだし、早速始めようか………士道くん、今日はアテナがキミの修行相手を務める。キミとって彼女は、僕やヘラクレスよりもやりづらい相手になるだろうね」

 

「………分かりました、全力で挑みます」

 

士道が片足を引き半身で構えた時、来禅公園は真っ白な空間に包まれた。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

お馴染みの真っ白な空間が来禅公園を包み込んだ後は、修行の定番であるスパーリングの時間となった。

士道は自然体で構えるアテナを見て、違和感を感じていた。

 

(………この人からは気が全く感じ取ることができない?でも、それとは逆に圧倒的なプレッシャーはビシビシと伝わって来やがる………)

 

士道はアテナの気を掴むことが出来ていなかった。それはつまり気の流れが全く見えないということだった。

士道はこれまでソロモンやヘラクレス。そして十香との剣術の修行の時は魔力や闘気―――力の本流を読み取って攻撃を読んでいたのだが、アテナから放たれる力は()()()()だった。

しかし、士道の体は全身の毛が立つほどのプレッシャーを受けていた。

 

「――――『神槍•アイギス』」

 

バチッ!バチチチチチチチッ!!

 

アテナは亜空間に手を入れ、けら首に光り輝く龍の翼を思わせる装飾が左右にあり、穂先はスパークを飛びかわせているまさに神槍と呼ぶべき槍を取り出した。

槍を見たドライグは赤龍帝の籠手の宝玉を点滅させる。

 

『―――この槍を見ていると、聖書の神「ヤハウェ」が生み出した最強の神滅具(ロンギヌス)黄昏の聖槍(トゥルー•ロンギヌス)」がおもちゃの槍にしか見えないな………』

 

アテナが持つ槍からは異様な力を放たれていた。ドライグの言う通り、士道は嫌な汗で体を濡らしていた。

圧倒的なプレッシャーを放つアテナと、スパークを纏わせているアテナの槍『神槍•アイギス』がその汗の原因だ。

士道は自分から仕掛けようとはせず、ただじっとアテナの様子を観察していた。

………一向に仕掛けて来ない士道を見て、静かに構える。

 

「―――来ないのでしたら、私からいきましょうか………」

 

タンッ!タンッ!

 

「―――ッ!!」

 

次の瞬間、アテナの姿が一瞬にして士道の視界から消え、一気に地面を蹴って間合いを詰めてくる。

士道は籠手からアスカロンを引き抜き、アテナの攻撃に備える。

 

『Boost!!!!』

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)での倍加も同時に始めており、いつでも攻勢に転じられる準備を進めていた。

 

「―――はあっ!!」

 

「チッ!!」

 

スドオオオオオオオオオオッッ!!

 

アテナは真正面から士道を目掛けて槍を突き出した。突き出されたアテナの槍は竜巻を放出するかのように地面を抉りながら迫ってくる!!

士道はアテナの槍が頰を掠めるようなギリギリで士道はアテナの槍を間一髪で交わし、距離をとって倍加の時間を稼ごうと思っていた――――だが………••

 

「―――ゴハアッ!?」

 

士道は腹部に衝撃を受け、血の塊を吐きながら堪らず後方へとゴロゴロ転がりながら吹き飛んだ。

何が起きたか分からなかったため、士道の頭の中は混乱状態だった。

 

「ごほ、ごほっ!!くそっ、一体何が起こったんだ!?」

 

士道はアスカロンを杖代わりにして立ち上がる。

士道は目ではアテナの動きを捉えることが出来なかった。士道が見えていたことは、アテナが槍を突き出したところまでだった。

ソロモンがアテナの攻撃を見て苦笑いをしていた。

 

「………えげつない攻撃だねアテナ。キミがいきなり『神速』を発動するとは思ってもみなかったよ―――士道くんも頭の中で色々と仮説を立てているみたいだけど、ここで解答を教えようか」

 

ソロモンは立ち上がった士道に解説をする。

 

「アテナが攻撃に用いたのは、明鏡止水を極めた者だけが発動することができる『神速』を発動したんだ。

―――神速とはその名の通り、限界を超えた加速をすることを可能にする明鏡止水の奥義さ………ちなみに、士道くんが槍を躱わした時にアテナは神速を発動し、加速をする。そして槍が外れた後は、槍の石突きの部分で士道くんの鳩尾を攻撃してから蹴りで士道くんを吹き飛ばしたんだよ―――つまりアテナはキミが距離を取ろうと考えていた時にはすでにその二発をキミの体に喰らわせていたんだよ」

 

ソロモンの解説に士道は目が飛び出すほど仰天していた。

 

「―――はあっ!?つまりアテナさんは一瞬で三つの動作を行ってことですか!?」

 

最初の槍での突きをはじめに、ソロモンが語った二つの動作をアテナは一瞬のうちにやってのけたのだ。これは超常の存在の中でも出来るものはごく僅かだろう。

 

「正確には一瞬で行ったのは二つだけだよ。でも、アテナが全力で神速を使えば、一瞬の内に五つの動作を行うこともできるんだよ?」

 

「―――なにそれズルくないですか?」

 

「いやいや、神をも滅ぼす神滅具(ロンギヌス)赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)』を宿したキミが言えることではないよ?キミの存在はこの世界では十分な脅威だ」

 

「いやいや、全盛期のドライグやアルビオンに匹敵するソロモンさんたちにバケモノって言われても、俺なんかはただの人畜無害な小動物のようにしか見えないですよ!?」

 

いつの間にかアットホームな雰囲気を醸し出している修行空間だったが、アテナがため息をつきながら槍を構える。

 

「――――はあ………ソロモン、それから士道くん、お話は終わりましたか?」

 

「ああこれでお話は終わったよ―――士道くん、神速は教えて身につくものじゃないんだ。明鏡止水をキミ自身が極める以外にない。アテナの動きに集中するんだ。それでもアテナの動きが見えない時は、さらにその上の領域に手を伸ばすんだ」

 

ソロモンのアドバイスを聞いた士道は更に困惑した。彼の頭ではソロモンのアドバイスを理解するには苦しむようだ。

 

『―――恐らく極限まで集中してそれでもダメなら、その上へと自分を強引に持っていけという事だろう………要は死ぬ気で頑張ればなんとかなるかも知れんという例えをあの魔法使いは述べていると俺は推測している』

 

「なるほど、そういう事か………そいつは分かりやすいな」

 

士道はアスカロンを構えて、静かに全身の感覚を研ぎ澄ました。士道はソロモンとドライグの言葉を信じてただ目の前のアテナに集中することだけを考えた。

 

「………いきますッ!」

 

こうして第二ラウンドが開始となり、士道の修行はさらに熾烈を極めた。

 

 

 

 

 

―――………•

 

 

 

 

修行を始めてから約三時間ほどが経過した頃のことだ。

一時間ごとに休憩をとり、休憩が終わればまたスパーリングを行うという今日もこれまでとは変わらない修行を士道は続けていた。

 

「はあああああああああっっ!!」

 

ドガガガガガガガガガ!!!

 

「―――くっ!!このっ!!」

 

アテナの目にも止まらない嵐のような連続攻撃に士道は押されていたが、修行を始めた頃とは見違えるほどの成長を遂げていた。最初の頃はアテナの攻撃に反応すら出来ていなかったが、神速を発動させたアテナの攻撃を徐々に士道は見切り始めていた。

 

「―――はあっ!!」

 

ヒュン―――ドガアッ!!

 

アテナの槍での上段狩りを士道は躱し、すぐに第二撃である回し蹴りが士道に飛んでくるが、それを士道は腕で防ぐ。

―――そして士道はここから反撃に移る!!

 

「喰らえッ!!」

 

ガギィイィィン!!

 

士道はアテナの足を払い、アスカロンの袈裟斬りでアテナに出来た僅かな隙を突く!!しかし、神速を発動しているアテナには簡単に防がれてしまうが、攻撃をされながらも反撃が出来るようになっていた。

 

「………さすがにやりますね―――ならばこちらもギアを上げていきましょう!」

 

「―――ッ!?」

 

スガアアアアアアンッッ!!

 

アテナの攻撃はさらに鋭さを増した。間一髪で初撃の切り上げを避けた物の、スピードと威力はこれまでとは全く違い、士道は再び窮地へと追い込まれていた。

それに対応するために士道は、今まで以上に精神を研ぎ澄ませた―――その時、士道の体が異変を起こす。

 

「チッ!!さすがに苦しくなってきやがったぜ………」

 

士道の鼻から赤い液体が滴っていた………その正体は鼻血だった。彼がエロ以外で鼻血を流す経験は無かったためか、ここまででも士道がどれだけ頑張ってきたかを物語るには十分だった。

 

「はあっ!!やあっ!!」

 

ギィン!ガギィイィィン!!

 

「くっ、しまっ――――」

 

アテナは士道の懐に入り込み、渾身の突きを士道にお見舞いした!士道はその突きはなんとか反応して、アスカロンの刃を盾にしてガードしたが、第二撃の切り上げで、アスカロンを弾かれ、士道は丸腰になってしまった。

 

「―――これで終わりです!」

 

バチチチチチチチチチチチッ!!

 

アテナはトドメと言わんばかりに槍に力を溜め始める!スパークが飛び交い、青白い光が穂先に集まっていた。

アテナは槍を強く握り、トドメの一撃を放とうとしていた。

 

(このままいいようにやられて、倒れるなんて無様なことは出来ねえッ!!最悪でもアテナさんに一太刀だけでも浴びせなければ俺の気が収まらねえッ!!)

 

士道はここまで徹底的にやられた悔しさを噛み締めていた。その時、士道の右腕が光を放つ!!

士道の悔しさに呼応するかのように、不思議な力が士道の体に集まりつつあった。

しかし、士道はそのことに気が付いていなかったため、最後の足掻きとしてがむしゃらに腕を振り抜く!!

 

「クソッタレェェェェェェェ!!」

 

ズガアアアアアアアアアアアアッッ!!

 

士道が腕を振り抜いた瞬間、放たれていた光が奇跡を起こし、一本の大剣として具現化した!!

その大剣は凄まじい衝撃波を生み出しながらアテナに迫る!

 

「―――ッ!!」

 

ドガアアアアアアアンンッッ!!

 

アテナは槍に溜めていた力で士道が放った衝撃波を一閃する!凄まじい轟音共にアテナは煙に包まれたが、今度は士道が攻めに転じる!

 

「ドライグ、今だ!!」

 

『―――承知した、EXPLOSION!!!!!!!!!!!』

 

倍加をしていた赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)の力を解放した士道が、煙の中にいるアテナを目掛けて突進する!!

 

「―――ッ!?」

 

槍の力で煙を吹き飛ばしたアテナだったが、目の前の光景に喉を詰まらせた。―――煙を放った瞬間に自分の目の前には、大剣を携えた士道が斬りかかって来ているからだ。

 

「うおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

「くっ!!」

 

ドオオオオオオオオオオッッ!!

 

アテナは士道が振るった斬撃を槍でガードする以外に対処する方法を知らなかった。

しかし、士道の放った斬撃の威力は凄まじく、アテナは地面を擦る形で後退した。

士道は最後の最後でアテナに一矢を報いたのだ。

 

『―――相棒、右手をよく見てみろ』

 

ドライグが籠手の宝玉を点滅させながら士道に語りかける。士道は自分右手を確認すると―――見覚えのある大剣を握っていることに気付き、叫び声を上げる!

 

「な、ないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?ど、どうして俺が十香の『塵殺公(サンダルフォン)』を!?」

 

そう、士道の手には十香が愛用している剣『塵殺公(サンダルフォン)』が握られていた。

―――士道は天使を顕現させたのだ。

士道のその姿を見てソロモンは拍手を送っていた。

 

「ハハハハハ!士道くん、キミの成長速度は本当に恐ろしいよ。まさかここまで早く守護天使を顕現させるとはね………とりあえず、おめでとう士道くん」

 

拍手をするソロモンと同じくヘラクレスも目を丸くして驚き、先程まで撃ち合っていたアテナも士道を賞賛する。

 

「すごいじゃない士道ちゃん!これでまた強くなったんじゃない!本当におめでとう!」

 

「………驚きました。私も先程の一撃には度肝を抜かれました―――さすがはソロモンとヘラクレスが目を付けるだけのことはありますね!」

 

次元の守護者達は士道の成長を自分のことのように喜んでいた。士道は照れ臭そうにしていた。

少しして、ソロモンがパンっと手を叩く。

 

「―――さて、今日の修行はこの辺にしておこうか。士道くんは明日は狂三ちゃんとデートなんだろう?疲れを残してデートを失敗なんてさせられないからね」

 

ソロモンの言葉にヘラクレスとアテナも首を縦に振った。こうして今日の修行はこれで終了になった。

 

「ありがとうございました。またよろしくお願いします!」

 

天使を顕現させ、そして神速の足がかりを掴めた士道は満足そうに修行を終えることが出来た。

士道は風呂に入って即ベットに向かったのであった。

 

 

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

 

「ぐごおおおおおおおっ………•ぐごおおおおおおおっ………」

 

疲れていたのか、大きないびきを立てて眠っている士道くん。その寝顔はとても幸せそうだったが、士道の部屋に入ろうとする一人の少女がいた。

 

ガチャッ………

 

「………シドー?―――もう眠っておるのか」

 

その少女は十香だ。眠れなかったのか、枕を持って士道の部屋に入った。そして、十香は士道と同じベットの中に入って眠りにつこうとしていた時、士道の左腕から声が聞こえる。

 

『―――夜刀神十香、そのままでいいから聞いてくれ』

 

声の正体は赤龍帝のドライグだった。十香は士道の方を向いて声を聞こうとする。

 

「ドライグ、起きていたのか?」

 

『………ああ、明日のことについてちょっと気になることがあってな………』

 

ドライグがそう述べると、十香はそのことについて訊く。

 

「―――狂三とのデェトのことか?」

 

『っ!?貴様一体誰からそのことを………』

 

ドライグは声を詰まらせたが、十香は「桐生から聞いたのだ」と簡潔にドライグに返す。ドライグは士道に変わってあるお願いをする。

 

『夜刀神十香、貴様も知っている通りだが相棒は明日の十時半から時崎狂三とデートをする。―――だが、時崎狂三が相棒に何をするかが全く分からん。もしかしたら相棒に危害が及ぶかも知れん………こんなことを俺が頼むことは間違っていると思うが、万が一の時は貴様が相棒を守ってやってくれないか?』

 

ドライグは狂三が士道を狙っていることを勘付いてのことだった。せめてもの安全策として十香にお願いをした。

十香はドライグの願いを首肯する。

 

「………もちろんだ。シドーに降りかかる災いは私が払う。私はシドーの力になりたい。シドーは誰にも渡しはしない!」

 

十香の迷いのない言葉にドライグは感謝を示す。

 

『………毎度のことながら貴様には本当に世話をかける。―――もしもの時は頼むぞ、夜刀神十香』

 

「ああ、任せてくれ!」

 

ドライグの最後の不安も解消され、勝負の日を迎えようとしていた。明日はいよいよ最悪の精霊を攻略し、その精霊を救うために士道たちは作戦を遂行するのであった。

 

 

 




原作とは異なり、トリプルデートにはならない予定です。

塵殺公を顕現させたことには一応理由があります。
どこで使うかは秘密ですが、この章でもう一度使う時がくると思います!


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