デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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感想についてなのですが、まさかのショッピングモールの売り場に売っていたDxD原作の方を突っ込んでくるとは思っていませんでした。
それにしても全くブレない士道くん。

それは今回もです。


九話 奇策で乗り切ります!!

 

 

士道と狂三がランジェリーショップを出た後は、士道が素晴らしいものを見せてもらったお礼に狂三と一緒にコーヒーを飲んだ。

そして、士道と狂三がショッピングモールを出た頃には、空が茜色に染まり、太陽もそろそろお眠の時間が近づいていた。

 

「ふぃ〜!いや〜ランジェリーショップは本当に良いもんだよなぁ。狂三、また行こうな!今度はもっと良い奴があるはずさ!」

 

狂三の下着姿を十分に堪能できた士道は、ランジェリーショップから退避して近くの公園のベンチに座っていた。

―――また行こうな!じゃ無いんだよ士道くん。キミはもう出禁だ!

 

「ひっ!?ま、またですの!?――――わ、わかりましたわ!」

 

狂三はまだ恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていた。色々と自分の体を見られたのだ。普通の女性なら間違いなくトラウマものだろう………哀れな狂三ちゃんだ。

 

「―――なあ狂三、今日は楽しかったか?」

 

ベンチに座りながら目の前にある噴水を見たまま狂三に訊く。士道の言葉を狂三は軽く微笑んで首肯する。

 

「ええ、楽しかったですわ士道さん」

 

狂三も士道に辱めを受けたが、デート自体は楽しかったらしく満足げにしていた。

 

その時、士道の目にとある光景が映る。

 

「………………………」

 

士道の目に映ったのは、男の四人組が手足を縛った女の子を近くの林の中に連れ込んでいる姿が目に移る。

士道は静かにベンチから立ち上がる。

 

「――――あら?士道さん、どうかなさいまして?」

 

いきなり立ち上がった士道に狂三は怪訝に思い、士道を見上げる。

 

「………悪い狂三、ちょっと席外すわ」

 

「は、はい………」

 

士道は狂三を公園のベンチに残して、仕事を片付けに林の中へと駆けて行った。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

夕暮れになり、人気の少ない林の中ではリア充の中学生や高校生が野外でも、若さ故にハメを外してしまうバカップルも存在する。

しかし、この林の中では完全な犯罪が行われようとしていた。

 

「――――!!――――!!」

 

制服を着た少女が手足を縄で縛られ、口はナフキンで縛られ言葉を発することが出来ないようにされ、犯される十秒前といった具合だった。

そして、その少女に四人の男どもが群がっている。

 

「無駄無駄無駄ムダアアアアアアアアッッ!こんな時間に助けはきましぇ〜〜ん!!」

 

「いやあ〜、良いケツしてますなぁ〜」

 

「はあぁぁぁぁ、この太ももたまらねぇぇぇぇぇええええ!!女子高生最高おおおおおおおおおおお!!」

 

「いや、制服の上から揉んでも確かな重さとこの揉み応え!!すんげ〜おっぱいだ!!」

 

―――少女が縛られて抵抗が出来ないことにつけこんで最低な行為をしている人間のクズども。

しかし、少女の前に一人のヒーローが見参する。

 

「―――おいテメェら、警察だ。全員頭の後ろに手を組んで跪け」

 

筋肉質だが、どう見ても威厳のある警察には見えない一人の若い少年主人公が悲劇の少女の前に現れる。

そのヒーローの名は――――『乳龍帝おっぱいドラゴン』こと五河士道だ。

 

『男の風上にもおけないクズどもが………同じ男――――いやオスとして恥ずかしい限りだ』

 

ドライグは全力で男どもの醜悪さを嘆いていた。ドライグもオスのドラゴンだ。誇り高いドラゴン―――そして同じ性別としてこんな連中と一緒にされるのは屈辱以外の何でもないだろう。

 

「ああ!?警察ダァ!?――――なめてんじゃねえぞクソガキィィィィィィ!!」

 

男の一人が士道に殴りかかるが――――

 

ドゴッ!!

 

「ぐわああああああ!!痛いっ!いだいよおおおおおおおッ!!」

 

士道は向かってくる拳を体を横にして躱し、男の腹部に膝蹴りをお見舞いする。士道に殴りかかった男は情けないことに激痛に耐えきれず地面に泣き叫びながら右往左往していた。

 

だが、仲間がやられて黙っているほど連中もバカではない―――いや、勝てない相手だと理解できないバカしかいない無能な連中だった。

 

「この野郎おおおお!!」

 

「ふざけやがってええええええッッ!!」

 

「―――野郎ぶっ殺してやるッ!!」

 

三人の男たちは正面、側面、そして背後から士道に襲いかかるが――――士道はため息をつきながら三人を軽くあしらう。

 

バギッ!ドゴッ!ズガッ!

 

「「「ぷぎゃあああああああ!!!」」」

 

士道は正面から向かってきた男に足刀を男の急所に喰らわせ、側面と背後から襲いかかってきた男には空中で回転蹴りを顔面にお見舞いし、撃沈した。

士道は連中には見向きもせず、縛られている少女の縄を引き千切り、口に巻かれたナフキンを外して解放する。

 

「―――怖かっただろう?ほら、もう大丈夫だ」

 

「はい!ありがとうございました!!」

 

少女は士道にぺこりと士道に一礼をすると、一目散に公園の方に走って行った。

―――自分たちが捕らえた極上の獲物を逃がされた野郎どもは激昂する!

 

「クソガキがッ!!俺たちの性処理奴隷を逃してんじゃねええええええええ!!」

 

連中の一人が拳を振り上げ士道に向かっていく―――その時だった!!

 

パァンパァンパァンパァン!!―――ドサドサドサッッ………

 

「――――ッ!?」

 

いきなり謎の赤い液体が宙を舞ったことに士道は目を見開いた。そして四人いた男たちの内、三人が体に風穴が開いたまま地面に倒れ伏した。

 

「う、うわあああ―――――ああああああああああああああああああああ!!!」

 

四人いた内の三人が何かで体に風穴を開けられたことに最後の一人はパニック状態に陥っていた。

ザッ、ザッ、と草木を踏みながらこちらに近づいてくる者がいた。

 

「――――あらあら、わたくしとしたことが………一人殺しそびれてしまいましたわ」

 

頭部を覆うヘッドドレスに、赤と黒が際立つコルセットとスカートを見に纏い、左手には古式の短銃を握った最悪の精霊『ナイトメア』こと時崎狂三だった。

狂三が纏っていたのは、精霊であることを象徴する装飾『霊装』であり、その姿はまさに災厄の降臨とも言えるものだ。

――――この光景を目の当たりにした士道は拳を握りしめ、頭の中にうずまく感情を声に出す!

 

「狂三――――お前何やってんだよ………自分が何をしでかしたか分かっているのか?」

 

士道は鋭い視線を狂三に向け、静かな声で彼女に問う。

士道は自分の中で燃え上がりそうになった感情を抑えながら静かに言い放ったが、狂三は自然体で先生に当てられて答えるように簡潔に述べる。

 

「―――何って、殺しただけですわ。こんな出来損ないの欠陥品に生きている価値がありまして?」

 

狂三の答えを聞いた士道は、抑え込んでいる感情が溢れ完全に溢れた。士道は両手を広げて狂三に言い聞かせる!

 

「狂三、たしかにお前の言う通りだ。お前が手にかけた三人はどうしようもないクズ野郎だ………でも!だからといって殺してもいい理由にはならねえ!!」

 

士道の全力の訴えに狂三は手を口に当ててクスッと笑むだけだった。

 

「あらあら、士道さんは本当にお優しい方なのですね………。ですが、この手の連中は生かしておいても、また同じことを平気で繰り返しますわ――――ですのでこの方達を殺すことが間違っていると言えまして?」

 

狂三は殺し損ねた残りの一人に無慈悲にも短銃を向ける。

 

「あ、ああ!!た、助けてくれ!うわあああああああ!!」

 

男は立ち上がって走ろうとしたが、恐怖のあまり腰が抜けてしまい、尻を地面につけたまま後退ることしかできなかった。狂三は慈悲を掛けようとはせず、汚物でも見るような蔑んだ視線で男に銃口を向けていた。

―――士道はこの時、弓の弦が弾かれるように“あの男を助けなければ”と体が反応していたが、ドライグは制止を呼びかける。

 

『――――捨て置け相棒。こればかりは、俺もあの精霊に賛成だ。あんなゴミを助けるために相棒が犠牲を払う価値は無い。あいつらはこれから死ぬべくして死ぬ………因果応報だ』

 

………ドライグの言う通り、こんな連中を見殺しにしても誰も咎めはしないだろう。

それでも、士道は見捨てようとはしなかった。

 

パァンッ!!

 

「――――ぎょええええええええええええ!!」

 

狂三が銃弾を発射する少し前に、士道は尻餅をついた男を大空へと蹴り上げた!!

男は遥か彼方へと吹っ飛び、光となって何処かへと消えた。

狂三が放った銃弾は士道の足を掠め、地面へと突き刺さった。

銃弾が掠った士道の足からは、鮮血が滴っていた。

 

「………ほんっとうに士道さんはお優しいですわねぇ―――あのような男を助けるために自分の体を犠牲にするなんて………理解に苦しみますわ」

 

「―――俺は目の前で狂三が人を殺すところを見たくなかっただけだ………未然に防ぐことは叶わなかったけどな」

 

士道が憎しげに唇を噛み締めて言った言葉に、狂三は一瞬だが眉がピクリとも動く。だが―――すぐに何かを思い出し、突然笑い出す!

 

「………あらあら、それはざァン念でしたわね士道さん。キヒ、キィヒヒヒヒヒヒッ!士道さん知ってますぅ?

あなたは今、わたくしとこおんな()()()()()()()()()()()()()()になってしまっているということを!!」

 

それは狂三にとって理想的な状況が完成したことを意味していた。狂三の目的は士道を吸収してその力を得ることだ。

………実際に、この林の中は人の気配が無くいるのは士道と狂三の()()()()

――――ここまで言えば多くを語る必要はないだろう………そう、この空間は狂三が目的を果たすにはこれ以上ない巡り合わせだった。

 

「………………………」

 

不気味な笑みを浮かべる狂三とは対照的に士道は冷静だった。士道もこの状況になることは覚悟していた。狂三を攻略する上では、この状況は避けては通れない決死行だ。

捕食者の笑みを浮かべて迫ってくる狂三に、士道は額と体から嫌な汗が流れるが、一歩も動こうともせずに平静を装う。

 

「キヒ!キヒヒ!キヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!さあ士道さん、わたくしが食べて差し上げますわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

綺麗な桜色の唇から舌をペロッと出し、舌舐めずりをしながら士道の顔へと手を伸ばす。狂三は両手が士道に触れた時、ついに士道が動く!!

 

「――――ッ!?」

 

ドサッ――――ジュウウウウウウッッ!!

 

狂三とは別の危険信号を感じ取った士道は、自分の顔へと手を伸ばす狂三を抱え、狂三が怪我をしないように狂三の後頭部に両手で守りながら地面に倒れこんだ。

狂三はいきなり士道に抱きかかえられ、言葉も出ないほど戸惑っていた。

士道が倒れこんだことで何かが士道たちの上を通り過ぎ、近くにあった大木に真っ赤な円状の印が浮かび上がり、大木を燃やした。

 

「うっわ、危っぶねッ!あと少しでも反応が遅れていたらあの世行きだったぞ………ったく、おいたが過ぎるんじゃないのか?()()()()()()

 

士道は素早く起き上がり、何かを士道たちに向けて掃射してきた人物がいる方角に視線を向け、キザな言葉を発した。

士道が視線を向けた場所からは、青髪ポニーテールで対精霊用の武装『CRユニット』を装備した小柄な少女が姿を現した。

 

「―――なんの真似でやがりますか兄様?

………あなたは精霊を――――人類の仇敵を庇いやがったのですよ?」

 

士道と狂三に死角から攻撃をしてきたのは、士道の実妹を名乗る少女『崇宮真那』だった。

真那は士道が()()()()()()ことに不快感を感じていた。

――――だが!この変態の兄は真那をさらに煽る!!

 

「精霊が人類の仇敵?………寝言は寝てから言うものだよ、マイシスター。

精霊たちはそんな人間どもの間違った考えで一体どれだけの理不尽をその身に浴びて来たかことか………。

どこのバカに騙されているかは知らないが、そんな思い違いをしてしまうなんて悪い妹だ、帰ったら一緒に入浴の刑に処す!」

 

――――まったく似合わないキザな言葉を投げかけ、実の妹に指をさして決めポーズを取り、堂々とセクハラ宣言をする変態兄!

真那のいきなりの発言に真那は顔を真っ赤に染め、胸元を隠す!

 

「な、なな!なにを言ってやがるんですか!!十香さんや四糸乃さんだけでは飽き足らず、実妹である真那にまで手を出そうと!?」

 

「――――当たり前だろ!?俺の夢はな『俺だけのハーレムを築くこと』なんだよ!!それにな、妹は()()()もんなんだから仕方ねえだろ!!可愛い実妹を躾けることになんか問題でもあんのかあ!?」

 

『もうダメだぁ、おしまいだ!!』

 

ピカッ!ゴロゴロゴロッ!!

 

拳を握り、力説する士道くん。士道の全力の訴えに雷鳴が轟くような音が鳴ったが、空は雲ひとつない綺麗な空だったため、それは気のせいだった。

―――ちなみに、士道は前世とは違い新たに『シスコン』という称号も得ている。琴里の成長アルバムを作成しており、十年間にわたる琴里との生活を記録した、士道が秘蔵するエロ本をも凌ぐ士道の至宝で、それは一見の価値ありだ!

士道の変態さに相棒のドライグの精神は疲弊を極めていたためか、いつものツッコミは鳴りを潜め、ただ泣き言を口ずさむだけだった。

 

「―――そ、それは虐待でやがります!!訴えますよ!?」

 

「………………っ!!」

 

真那に全力で拒否された士道はがっくりと肩を落とし、あろうことか自分を捕食しようとしている狂三に泣きついた!!

会社で辛いことがあった夫が、最愛の理解者である妻に泣きつくかのように!!

 

「ふ、ふぇぇ、ふぇぇぇぇぇぇぇぇんん!!狂三ぃぃぃぃぃ、聞いてくれェェェェェェェ!俺、真那に拒絶された!実の妹に拒絶されちゃったよおおおおおお!!」

 

「え、えーと………これは――――どうすれば正解ですの?」

 

いきなりの士道の攻撃にあたふたとパニックになる狂三ちゃん。―――答えは簡単だ、士道くんを吸収してしまえばいいのだ。

狂三はマジ泣きしている士道に同情をしたのか、優しく頭を撫で始めた。

 

「………かわいそうな士道さん。わたくしは士道さんの味方ですわよ〜?ほぉらよしよし、よしよしですわ………」ナデナデ

 

――――狂三は捕食者から完全に母親モードへと移行して、士道を優しく慰めていた――――が!!目元をヒクつかせて幼児プレイをかます変態にドン引きしているのは誰が見ても明らか!!

こんなに気持ちがこもっていない奉仕があって良いものか―――いやあって良いわけがない!!

これを見た真那は完全に頭に血が上り、再びスイッチが入り、装備しているCRユニットの砲門を狂三に向ける!

 

「こ、これは屈辱でやがります!!真那の目前で兄様のナデナデを奪われるとは!!

こうなったら御構い無しでやがります!!兄様の湯だった頭ごとナイトメアを貫いて差し上げます!!兄様をまっとうな人間に戻すことも実妹である真那の仕事でやがります!!」

 

ズビィィィィィィィィ!!

 

真那は再びプラズマビームを狂三を目掛けて掃射する!!

全ては目の前の変態と最悪の精霊といった、最悪の人害コンビを打ち滅ぼす為に!!

しかし―――真那が放ったプラズマビームは士道が神速を発動し、目にも止まらぬスピードで狂三を抱えて、その場から退避することで完全に回避する!!

 

「なっ――――なぜ当たらねえのですか!?」

 

「士道さん――――なぜわたくしを………」

 

真那のプラズマビームから二度も自分を守ってくれたことに狂三は目を丸くして驚いていた。

 

「なぜって………美少女を守ることに理由なんていらないだろ?―――狂三、俺はお前を救うためなら、火の中だろうが水の中だろうが関係ねえ――――例えお前のスカートの中にだって喜んで飛び込んでやる!!」

 

「――――なっ!?」

 

士道は真那の行動を警戒しながら、自分が抱きかかえている狂三へと言い聞かせた。狂三はボンッ!と顔を真っ赤にし、ドライグはドン引きをし、真那は悔しそうに地団駄を踏む!

 

『へ、変態だああああああああ!!』

 

「―――兄様、真那は悲しいでやがります!!きっと兄様は、終わることの無い地獄と絶望の日々を過ごした結果こんなどうしようもない変態になってしまった………そんな兄様に手を差し伸べることの出来なかった真那は自分に腹が立ちます!!」

 

真那はいきなり武装を解除し、地面に拳を叩きつけうなだれ始めた。―――なぜか雑木林の中まで混沌が満ち溢れる空間へと変えてしまった士道くん。

真那から殺気が消えたことを確認した士道はそのまま来た道を逆走する。

 

「狂三、しっかり掴まれ!全力で走るから!!」

 

士道はアテナとの修行で身につけた神速を発動し、戦意喪失した真那から全力で逃げる。

士道の胸の中で突風を感じた狂三は慌てて士道の服を強く握る!

 

「へ――――きゃあッ!?」

 

真那が作った隙を見事に着くことで士道と狂三は難を逃れた。しかし――――士道は大切なものを一つ無くしたことに気付く事ができなかった。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

士道が公園へと逃げ戻った時には、士道に抱えられていや狂三は霊装を解除し、デート時の服装に戻っていた。

そんな時、士道と狂三に迫ってくる二つの反応があった。

 

「シドー!!」「士道!!」

 

士道は雑木林の中から全力で公園へと戻ると、血相を変えて自分の元に駆けてくる二人の少女に視線が向かう。

 

「十香、それに折紙!?一体どうしたんだよ、こんなところで?」

 

士道は十香と折紙がこの公園にいることを怪訝に思っていたが、十香と折紙は士道に指差す!

 

「シドー!嫁というものがありながら狂三を抱っことは何事か!!早く降ろさんか!!」

 

「………こんな公衆の面前で、私以外の女性をお姫様抱っこなんて許さない」

 

―――二人とも士道の安否が心配して士道を尾行したにも関わらず、二人の不満は士道にお姫様抱っこをされている狂三にあった。

公園を歩いている人たちの視線を士道と狂三は一心に浴びており、士道は慌てて狂三を地面に降ろす。

 

「………狂三、立てるか?」

 

「わ、わたくしは大丈夫ですわ!!」

 

狂三は先程からずっと士道と視線を合わせようとせず、すぐに士道から顔を逸らす。

狂三の顔は熱を放出させており、士道を直視することができなかった。

――――そう、つい先ほどの出来事で狂三の心は完全に士道に屈服しようとしていたからだ。

 

「―――そ、それでは士道さん、わたくしはこれで失礼をしますわ!!ごきげんよう!!」

 

神速を発動しなければ追いつけないほどのスピードで、狂三は帰って行った。

士道は頭に疑問符を浮かべていたが、ドライグが溜息を吐いていた。

 

『………あの精霊、間違いなく堕ちたな』

 

「――――堕ちた?」

 

ドライグがボソッと呟いた言葉に士道は浮かべていた疑問符をもう一つ増やす。その様子を見てドライグは心底呆れていた。

 

『転生してもその鈍感さとスケベだけはどうにもならんか………』

 

「お前だけ納得してんじゃねえよドライグ!俺にも理解できるように説明しやがれ!!」

 

『――――少しはそのバカな頭をフル回転させることも覚えろ。難しい事は全て俺頼みにしているようでは全精霊攻略なんぞ夢のまた夢だぞ?』

 

ドライグから返された言葉にぐうの音も出なかった士道くん。生前からの鈍感さは相変わらずのようだった。

そして――――その鈍感さのあまり、自分に危機が迫っていることも理解できなかった。

 

「シドー、今から私とデェトだ!邪魔者はいなくなったところで今からは私の時間だ!」

 

狂三がいなくなったことで空いた士道の腕に抱きつく十香。そしてそれはもう一人いる少女も同じだった。

 

「………士道は私とデートをする約束がある。夜刀神十香、貴方は家でお風呂にでも入ってて」

 

士道を挟んでお互いに目から火花を散らす十香と折紙。そう、狂三のことを意識し過ぎて目の前の危険を完全に察知できてはいなかった。

 

「――――そんな約束は聞いてはおらぬ!!貴様の約束は無効だ、鳶一折紙!!」

 

「………証拠ならある。私は昨日、士道をデートに誘った―――電話の履歴も言質もとってある」

 

自己中心的に話を進める十香と折紙に士道は訊ねる。

 

「………えーと、ここは二人揃って家に帰る――――という一番利口な選択肢があると俺は思うんだけど………今日一日頑張った俺へのご褒美として、今日くらい見逃してくれたらな〜、なんて………」

 

頭から嫌な汗をダラダラと流しながら十香と折紙に尋ねるが、二人とも笑顔で返事をするだけだった。

 

「―――そんなものはないぞ、シドー♡」

 

「………うん、ない。あるのは私の家で子作りだけ。男の子なら『貴士』、女の子なら『千代紙』」

 

―――狂三に想い人をいいように弄ばれた二人の傷は想像以上に深かった。

士道は空を見上げ、大声で叫ぶ!

 

「――――でぇぇぇぇすぅぅぅよねぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

結局、士道は十香と折紙に連れられながら、深夜近くまで振り回されることになった。

最終的には琴里が『フラクシナス』で士道と十香を回収し、士道はヘロヘロになりながら自室のベッドで休息を取った。




あと二話くらいでフィナーレかなと思います。

※三話の設定を更新しました。ソロモン、ヘラクレス、アテナの三人です。


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