デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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この章は四糸乃パペットと違って七話か八話ほどで終わると思っていましたが、予想より多くなってしまいました。

とても一話では書ききれないので、前編と後編に分けようと思います。

※誤字を修正しました。


十一話 最高の赤龍帝VS最悪の精霊!!前編

 

「狂三、俺がお前を救ってやる!!」

 

屋上のドアを蹴破り、ダイナミックな登場をする主人公の士道くん。

屋上へと着くと、黒と赤の二色が目立つ霊装を纏った狂三が口に手を当てて微笑む。

 

「あらあら、お早い登場ですわね士道さん………あまり学校の私物を壊すことは感心しませんわよ?」

 

狂三は士道が蹴破った屋上のドアの残骸を眺めていたが、士道は狂三に鋭い眼光を向ける!

 

「狂三、お前の狙いは俺だろ?俺だけを狙って攻撃するならまだしも、なぜ校内にいる十香たちにまで手を出す必要がある!?」

 

士道の心の叫びを聞いた狂三は、愉快に微笑むだけだった。

 

「わたくしの天使は、非常に強力な反面、力を使う度に膨大な時間を消費します欠点がありますの………ですので、こうして外から補充する必要があったということが一つの理由ですわ。

―――そしてもうひとつは………」

 

もう一つの理由を述べる前に狂三は、冷酷な視線を士道に向ける。その視線の冷たさは、まるで凍てつく闇を思わせるほどだった。

 

「昨日、そして今朝方、そして今も………士道さんはわたくしを『救う』などと言う世迷言を掲げていることが、わたくしにとっては気分を害するものでしかありませんもの―――今すぐその世迷言を撤回してくださいませんこと?そうすれば、この結界はすぐに解除しますわ」

 

―――狂三が言っていることは全て本心だと士道も理解していた。だが、士道は狂三に食い下がる。

 

「………それは俺に『狂三を諦めろ』と言うことか?」

 

「ええ、そうですわ。こんな自分勝手に弱者を傷つけるような存在を士道さんは許すことはできませんわよね?

わたくしみたいな人殺しに、士道さんが慈悲をかける必要がありまして?」

 

士道はもう一度だけ狂三に確認をする。―――これは士道にとっては最後通告だった。

 

「―――俺が狂三のことを諦めること以外では、()()()()()この結界を解いてはくれないのか?」

 

「聡明な士道さんなら分かっていますわよね―――わたくしは嘘はついていないということが………」

 

狂三の揺るがない決心に士道は天を仰ぎ瞑目する―――そして………

 

「………分かった―――仕方ない、それなら()()()()を取るまでだ」

 

『Boost!!』

 

士道が鋭い視線を狂三に向け、赤龍帝の籠手を纏った左拳を強く握る。それは行われていた倍加が完了したことの合図だ。

赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)の宝玉が輝き始め、ドライグが士道に語りかける。

 

『―――相棒、これで完了した倍加は七回だ。この程度の固有結界ならば、これだけの力があれば確実に破壊できるはずだ』

 

ドライグの言葉に士道は不敵な笑みを浮かべ、左手に野球ボールほどの球体を具現化させ、掌を上空へと向ける!

 

「―――ッ!?士道さん、まさか!?」

 

狂三は士道の様子を見て、戦慄していた。士道がこれから行うことは、狂三が展開した固有結界『時喰(ときは)みの城』の破壊だったからだ!

戦慄する狂三を無視して、士道は赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)で具現化させた球を殴りつけ、上空へと飛ばす!

 

「―――赤龍帝からの贈り物(ブーステッドギア•ギフト)ッッ!!」

 

『Transfer!!!!!!!!!』

 

カッ!!ドオオオオオオオオオオッッ!!

 

士道が放った球体は結界に染み込むように広がり、その結果、狂三の『時喰(ときは)みの城』は急に大きく振動し始め、徐々に結界にヒビが入り始め、入ったヒビからは光が入り始めていた。

 

「―――こ、こんなことが………くっ、もう制御が効きませんわ!?」

 

ピシビシピシピシビシピシッ………

 

狂三の固有結界『時喰みの城』のヒビはさらに広がっていき、狂三が『時喰みの城』の修復を急ぐが、すでに焼け石に水でもう崩壊を止める手立ては無かった

 

そして―――………

 

バリンッ!!サーーーーーーッッ………

 

『時喰みの城』はついに粉々に砕け散り、砕け散った結界は光の粒子となって消え去った。

士道は邪魔な結界が消え、晴れ渡る空を満足げに見上げていた。

 

「心に黒い雲が掛かっていたら、振り払ってやるのが一番だ。雲が晴れたら、待っているのはこんなに綺麗な風景だ―――美少女の心はこうじゃなきゃいけないよな!」

 

士道は意味深な発言をし、取り敢えずは校内の生徒の一息の休息を勝ち取った。

晴れ渡った太陽が士道の頑張りを祝福するかのように照らしていた。

 

『………上手く言っている場合ではないぞ?―――見てみろ、最悪の精霊さまは随分と頭に血が上っているようだぞ?』

 

ドライグの言葉に、士道は目の前の狂三へと目をやると、手札の一枚を失ったことに狂三は動揺を隠せず、士道をまるで化け物を見つめるかのような目で見ていた。

 

「士道さん………あなた一体何をしたんですの!?」

 

先ほどまでの笑みが完全に消え去り、狂三には完全に余裕が無かった。そんな狂三に士道は至極わかりやすく説明する。

 

「何って、狂三の結界に力を譲渡しただけだよ」

 

「―――なっ、しかし!それだけでわたくしの『時喰みの城』が砕けるわけ………」

 

「それを知りたいなら、俺に降参をするんだ。そんでもって俺と同じ屋根の下で、お風呂も寝るのも一緒の生活をするって約束してくれるなら教えてやっても良いぜ?」

 

士道は狂三に降伏を勧めたが、最後が酷すぎるのはいつものことだから放っておこう。

士道は屋上に行くまでの間、ドライグの助言でずっと赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)を纏い、倍加を行なっていたのだ。

七度も倍加をしようとなると、十秒に一度の倍加だと七十秒も要してしまうため、狂三との会話との後に七十秒も稼ぐことは不可能だった。

故に、()()()()()()()()()()()倍加をはじめ、狂三がセコセコと結界を張った原因を話している間も士道は倍加を続けていたのだ。

―――つまり、狂三が結界を解除をしないことを読み、自分で結界を破壊しなければならないことまで計算していたからこそ、移動中と狂三と話している時に七度の倍加を完了させる時間を士道は稼いでいたのだ!

 

そして、『時喰みの城』を崩壊させるに至った決定打は、七回も溜められた倍加―――士道の力が128倍にも膨れ上がり、その力がいきなり結界を強化したことで発生する力の負荷だ。

 

度が過ぎた力が加わると、力が加わった物を崩壊させる。

それは結界と言えど例外ではない。強化された力の増幅に結界の耐久力が悲鳴をあげ、粉々になって砕け散ったいうわけだ。

 

………しかし、『時喰みの城』の攻略は、狂三を本気にさせることまでは計算していなかった―――いや………

 

「キヒヒヒヒヒヒヒヒヒ、士道さんと同じ屋根の下でお風呂と寝るのも一緒というのは、さぞ魅力的なお誘いですわ―――だって士道さんを滅茶苦茶に犯すことはとおっても楽しそうですもの!考えただけでゾクゾクしますわぁ!!

―――でぇもォ!今度はそう簡単にはいきませんわよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

狂三が右腕を強く天へと突き上げると、周囲の空気が歪みはじめ、狂三の上空を中心に非常に強力な力が収束を始める!!

 

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ………

 

精霊が出現するときに発生すると言われる空間震警報が鳴り響く!!その空間震の発生源は狂三の頭上の力の渦だ!!

士道はこの時、今の状況で空間震が発生した時の被害のことを考えると、顔が真っ青になった。

―――『時喰みの城』で弱った生徒たちは逃げる術はない。ここで空間震が発生してしまえば、来禅高校の教師と生徒の大半が犠牲になってしまうからだ!!

 

「―――や、やめろ!!やめるんだ狂三!!衰弱した生徒や教師たちがいるこんな上空で空間震なんか発生させたら、どれだけの犠牲が出るか!!」

 

士道が全力の叫びを上げるが、狂三は士道が罠にかかった所を大爆笑するかのように、士道の心を抉る!!

 

「キヒ、キヒヒヒヒヒ、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!さあどうしますの士道さぁん!わたくしを救うと言ったのは嘘だと言ってくださいましぃ〜?さもなければ、空間震が発生してみぃ〜んな死んでしまいますわよぉ〜?」

 

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる士道を見て、狂三は楽しむかのように薄ら笑いを続ける!!

赤龍帝の籠手の宝玉が点滅を繰り返し、ドライグの音声が響き渡る。

 

『―――こうなってしまった以上はこの小娘は諦めざるを得まい………相棒、辛いのは百も承知だが、この小娘を始末するんだ。それで空間震は止まり、夜十神十香たちの安全も確保できる。今更迷う必要がどこにある、これは致し方ない―――』

 

「ふざけるなッ!!」

 

ドライグの言葉を遮って士道は大声で叫んだ!士道は胸の内にあるものを全て吐き出す!!

 

「『致し方ない犠牲だ………』とでも言うつもりかドライグ!?

―――ならハッキリと言ってやる!!狂三の犠牲で得られるものなんてなにもねえ!!それでこの状況を切り抜けたとしても、俺に残るのは『狂三を殺した』という虚しい結果だけだ!!

―――この戦いの勝利条件はなぁ、ここにいる()()を救うことなんだよ!!俺はここにいる誰一人として見捨てることなんてできねぇ!!」

 

『相棒………』

 

士道の言葉を聞いたドライグは押し黙った。しかし、狂三は士道の叫びを聞いて憤りを露わにするだけだった。

 

「―――あなたバカなんじゃありませんの!?それはただの偽善ですわ!!確実に救える命を疎かにし、わたくしのような悪人にまで手を差し伸べることが大事だとでも言うつもりですの!?」

 

士道は狂三の言った言葉を強く肯定する。士道は右手に塵殺公(サンダルフォン)、籠手からアスカロンを引き抜き、左手で握る。

 

「ああそうだよ!!俺は絶対にお前を見捨てない!!俺が望む結末は―――未来は!!この手で掴み取ってみせる!!まだ手札が残っているにも関わらず、自分が理想とする結末を迎える努力をせず、一番楽で確実な道を選ぶのが善人だと言うのなら、俺は偽善者で結構だ!!」

 

士道の覚悟に呼応するかのように、塵殺公(サンダルフォン)とアスカロンが凄まじい力を放出する!!

塵殺公は霊力を、アスカロンは今までとは比較にならないほどの強い光を放っている!!

押し黙っていたドライグも士道の背中を押す!!

 

『―――そこまで言うのであれば、最後までその偽善を貫け!!相棒がそれを望むのであれば、俺もそれに全力を以って応えよう!!ここにいる全員を救うぞ五河士道ッッ!!」

 

「おう!!」

 

ドライグの言葉に士道は目を開けて驚いていたが、すぐに笑みを浮かべ、狂三から距離を取り最後の切り札を使う!!

 

『Welsh Dragon Limit Break!!!!!!!!!!』

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)の宝玉が凄まじい輝きを放ち、赤いオーラを士道の体から噴出させる!!

そして―――………ついに神器の枷が外れる!!

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!!!』

 

士道は全身にかかる倍加による負荷に吐きそうになるが、士道は全身に力を入れ、全力で耐える!!

そして―――塵殺公(サンダルフォン)とアスカロンを両手で握り、一本の剣として力の波動を合わせる。その結果、放出される霊力と聖なる波動が融合し莫大な力を生み出す!!

そして、狂三が発生させようとした空間震の発生が始まろうとしている!!

 

「―――ドライグ、今だ!!」

 

『Transfer!!!!!!!!!!』

 

ドオオオオオォォォォォォォォォォッッ!!

 

二つの剣の合成によることで生まれた莫大な力に、さらに赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)で倍加した力を込める。

その結果、剣から放出される力は天宮市の街を震わすほどのものだった。

そして―――狂三が発生させた空間震がついに発動し、生じた歪みから収束した力が溢れ出そうとしてしていた。

 

「これで終わりですわ!!学校もろとも吹き飛びなさい!!」

 

狂三が拳を振り下ろすことで、その力は一気に放出される!!まるで歪みから巨大な津波が発生するかのように!!

 

「―――吹っ飛べぇぇぇぇぇえええ!!」

 

ズガアアアアアアアアアアアアンンッッ!!

 

士道も負けじと発生した空間震を相殺しようと、剣を振るう!!士道は剣を斬りあげるように振るい、上空の空間震だけを狙って剣に溜まった力を放出させた

 

 

 

そして―――………

 

 

 

 

力の衝突が終わり、辺りに立ち込めた煙が吹き飛ぶと、屋上の落下防止の鉄柵やアンテナは全て地面に落下したが、それ以外で来禅高校に目立った被害は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

 

 

 

「へ、へへ………聞いていた通りだぜ、空間震は発生と同時に同等かそれ以上のエネルギーをぶつければ相殺できるってな。本当にやってみりゃ見事に成功したぜ………」

 

士道は全力の一撃を放ち、息が上がりながらも笑みを作り出した。これで狂三の手札の全てを士道は潰したのだ。

―――だが………その代償はあまりにも大きかった。

 

「ぐうううああああああああっっ!!」

 

「―――っ!?」

 

ブチブチッ!と切れてはいけない何かが、士道の体の中で切れたような音がし、左手で右腕を抑え倒れこむ士道。士道の右腕は血で真っ赤に染まり、骨が砕けたのか士道の右腕は本来ならありえない曲がり方をしていたのだ。

―――その原因は士道が先ほど振るった塵殺公(サンダルフォン)が原因だ。身に余る力はその身を滅ぼす。

いくら神滅具を所持し、封印した精霊の霊力に護られているとは言え、士道自身は脆弱な人間だ。

精霊が顕現させる天使を使えば、こうなることは士道も覚悟していた。

 

狂三はそんな士道の痛々しい姿を見て、狼狽していた。

 

「あ、ああ………あああああ!」

 

いつもの狂三なら『無様ですわねぇ士道さん』などと士道をあざ笑うだろうが、狂三は口の前に手を置き、一歩また一歩と後退りを始めた。

 

「そんなに泣きそうな顔をしないでくれよ、マイ女神さま。俺はこの程度じゃ死なねえよ………まあ、腕が無くならなかっただけ奇跡だけどな。十香やクラスメイト達の命を腕一本も犠牲になることなく救えたんだ………今回の大博打は大勝利だな」

 

苦笑いをしながらボロボロになった右腕を抑えて立ち上がる士道。そんな士道の姿を見た狂三は感情を爆発させる!

 

「―――あなた本当に何を考えていますの!?あなたがやった行為は一歩間違えば死んでいたかもしれないんですのよ!?あなたは命をなんだと思っているんですの!?」

 

―――それは狂三が言えるセリフではないのは言うまでもないが、士道は自分のことを狂三に語る。

 

「………少し話をしようか―――もう何年も前の話になるけど、俺は大切なものを全て失った。一緒にバカなことをやって来た親友も、大切な仲間も、己を高めていくためのライバルも、そして好きだった人も全て失った………

そして俺は産んでくれた両親にも捨てられたんだよ」

 

それは士道の前世の記憶とこの世界に来てからの記憶だった。―――士道は何かも失い、失意のどん底に落ちることを経験した。立ち直るまでに多くの時間がかかった。

だからこそ、士道は行動する―――自分と同じ絶望を味わう人々を作らせないために!

士道の右腕から焔が迸り、傷を癒していく―――士道は腕が元どおりに戻った後、狂三を見つめた。

 

「―――もし、狂三が発生させた空間震が学校を吹き飛ばしていたら多くの人が家族を失った苦しみに絶望するだろう………俺はそんな人達の絶望した顔を見たくない!何かを犠牲にするのは俺だけでいい―――狂三、俺はお前も例外にするつもりはない!」

 

「なっ――――何を言っていますの………」

 

士道が強く言い放ったことで、狂三は呆然と立ち尽くしていた。士道は続ける。

 

「狂三、俺は―――お前が誰かを殺し、誰かに殺される………そんな生活をして欲しくないだけだなんだ!

狂三がみんなと笑って、楽しく過ごせる生活をしたって誰も文句を言わねえよ!!もしそんな奴がいたら俺がぶっ飛ばしてやる!だから狂三―――黙って俺を信じてくれないか?俺たちと一緒に、笑って過ごせる生活をしようぜ」

 

「ふん、大きなお世話ですわ!第一、そんなこと許されるわけがありませんわ!わたくしの手がどれだけ汚れているかは士道さんもよく知っているはずでしょう!?

そんなわたくしがそのような生活をする権利なんて、あっていいはずがありませんわ!!」

 

士道は狂三に手を差し出すが、狂三はその手を取ろうとはせず、士道を拒絶するように強く叫んだ―――まるで士道に怯えるように………

だが、士道は拒絶されても一歩、また一歩と狂三に向かって足を進める。

 

「狂三、確かにお前がやってきたことは決して許されることじゃねえ、それは一生背中に背負わなければならない十字架だ―――でもな!狂三の手がどれだけ汚れていようが、俺が狂三に手を差し伸べてはいけない理由にはならねえ!!」

 

「―――っ………そんなこと、できるわけが………」

 

狂三の頭の中は混乱していた。何度拒絶されてもこの五河士道という男は諦めることなく自分に手を差し伸べてくる。

―――こんな男は見たことがないからだ。

 

「―――お前の自慢のだった『時喰みの城』を破壊し、空間震を消滅させた俺の言葉では不満か?

狂三が俺の言った生活がくだらないと思ったそん時は、絶対に責任を取る!黙って俺は喰われてやるし、奴隷にだってなってやる―――だから狂三、俺の手を取ってくれ………今はそれだけでいい、また一緒に遊ぼうぜ狂三」

 

狂三は考えていた『もしそのような生活が出来るなら………』と。実際に狂三は士道とのデートは色々な辱めを受けたが、楽しんでいた。

 

そして、自分を殺そうと向かってくる真那から二度も自分のことを命懸けで守ってくれた―――そしてそれは今日もだ。

自分を救うために自ら罠に飛び込む士道なら()()()()()と………

 

「士道さん、わたくしは――――」

 

狂三が士道の手を取ろうとしたその時―――――

 

ビチャッ………

 

「――――え?」

 

士道は顔に温かい液体が掛かったことに怪訝に思っていた。その液体の正体は―――()()()()だった。

そして―――狂三の体には異変が起こっていた。

士道は目の前で起こった光景がまだ理解できていなかった。

 

「………あ、ああ」

 

狂三は目が飛び出るほどに目を開き、全身に広がる苦痛に耐えていた。狂三の胸を何者かの腕が貫いていたからだ。

狂三の胸から腕が引き抜かれると、狂三は口からも吐瀉物を吐き出し、地面に倒れこんだ。

―――その時、ようやく士道は状況を理解し、すぐに狂三に駆け寄る。

 

「――――ッ!狂三ッ、狂三ッッ!!」

 

倒れた狂三を士道は抱える。そして、狂三の胸を貫いた人物に鋭い視線を向けた士道だったが―――その光景を見た士道は言葉を失った。

その理由は―――()()()()()()()()()からだ。

狂三―――()()()()の胸を貫いた狂三は怒りに打ち震える士道を見て微笑む。

 

「あらあら、士道さんったら、そんな怖〜い顔をして………何か怒るようなことがありまして?」

 

士道はくるみんを腕に抱えながら狂三に殺気を込めて怒鳴る!

 

「お前―――なんでこんなことが出来るんだよ………お前は―――お前はッ、自分の手で自分自身を殺したんだぞ!?」

 

「それはわたくしの分身体ですもの。本体が分身体を始末することに理由がいりまして?士道さんに絆されたわたくしに存在理由はありませんので、回収致しますわ」

 

「―――()()()()は渡しはしないッ!!」

 

影の中から無数の腕が現れ、士道が抱えているくるみんに迫る!しかし、士道は神速を発動し、その場から飛び退くことで腕を避ける!

その時―――頼もしい援軍が現れる!!

 

「シドー、すまぬ遅くなった!!」

 

「現れやがりましたね『ナイトメア』ッ!真那の兄様に手を出そうとは言語道断でやがります!」

 

「士道、良かった………」

 

十香、真那、折紙だ。十香は限定的な霊装を纏い、真那と折紙はCRユニットを纏っていた。

そんな援軍を見た狂三は、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!といきなり笑い出し、腕を天に掲げる!

 

「―――あらあら、私みたいなか弱い乙女に四対一ですか………でぇもォ!今日は私も本気ですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

援軍の三人は、最悪の精霊『ナイトメア』に挑んだ。

士道はくるみんをどうにかして救おうと思っていた時、くるみんが士道の胸を弱々しく掴む。

 

「―――し、どう、さん………」

 

くるみんがまだ生きていることに士道は、ホッと胸を撫で下ろしたが、あまり好ましい状況ではないため、すぐに緊張状態に戻る。

こうしている間にも、くるみんの命の猶予は刻一刻も迫っているからだ!

 

「くるみん、後少しの辛抱だからな!」

 

士道が『切り札』を取り出そうとした時、士道の手をくるみんが握る。

 

「………わたくしは、もう助かりません………わ。

しどう、さん―――少しの間だけ、でも希望が持てましたわ………デート、ほんとうに………楽しかった、ですわ」

 

「ああ、俺も楽しかった!!でもな、これが最後だなんて言わさねえぞ!絶対に俺が助けてやる!!」

 

息が絶え絶えになりながらも言葉を発するくるみんを見て、士道は涙が止まらなかったが、ソロモンから貰った『切り札』の箱を握りしめる!

ドライグも士道の行為に賛成する。

 

『………俺も相棒の心意気を汲もうと思う。それを使うならここ以外にはあるまい』

 

「―――頼むッ!!」

 

士道は箱の中身に『フェニックスの涙』のような傷を癒すアイテムが欲しいと願い、箱を握りつぶす!

 

 

その時―――奇跡が起こった。

 

 

 

 

握りつぶした箱から士道の手に握られていたものは―――『フェニックスの涙』だったのだ。

士道は涙を振り払い、くるみんにフェニックスの涙を使う!

 

「―――くるみん、俺はお前を絶対に救ってみせる!!」

 

フェニックスの涙の雫がくるみんの体に落ちると―――狂三に貫かれた胸の傷は瞬時に消え去った。

 

「士道さん、わたくしは――――」

 

くるみんは口を開け士道何かを伝えようとしたが、目が霞み始めたため、最後まで言うことが出来なかった。

そんなくるみんに士道は優しく訊いた。

 

「―――くるみん、俺はお前を救えたか?」

 

「………」

 

くるみんは、士道の問いに笑顔を見せることで応えた。そしてくるみんは意識を手放した。

 

そして―――くるみんを抱きかかえる士道を見下ろすように狂三が士道に銃口を向ける。

 

「キヒ、キヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!士道さんは本当にバァカなのですわねぇ………そのような欠陥品を助けるために、神のようなアイテムを使うとは………理解に苦しみますわ」

 

―――狂三のこの言葉で、士道の胸の中は煉獄のように燃えていた。

胸の中に渦巻く煉獄の怒りは、士道を縛り付ける最後のリミッターを解除するには十分だった。

 

「――――今、なんて言った………」

 

「ッ!?」

 

普段の士道からは考えられないような低く、怒りと殺気が篭ったドス黒い声に狂三は恐怖していた。

士道がくるみんを抱え、ゆっくりと立ち上がった次の瞬間――――

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオツッ!!

 

 

赤いオーラが竜巻のように士道を中心に展開され、その竜巻状の赤いオーラは天を貫く!!

 

それは―――真の赤龍帝の降臨を意味していた。

士道の仲間を傷つけられたことで感じた純粋な怒りは―――ついに士道を次のステージへと導く!!

 

「―――禁手化(バランス•ブレイク)ッッ!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!!!!』

 

士道を中心に展開した激しいオーラは払われ、赤い粒子となって、龍を模した全身鎧を纏った士道を祝福しているかのように辺りを照らした。

士道はくるみんを寝かせ、狂三を睨み付ける!

 

「――――狂三、俺はお前を許さないッ!!」

 

士道は神速を発動し、地面を強く蹴る!目の前の巨悪を討滅するために、神速を発動し握りしめた拳を解き放つ!!

 

ドガアアアアアッッ!!

 

士道が放った怒りの一撃は狂三を捉え、狂三が吹き飛ぶ!吹き飛んだ狂三が屋上への入り口を崩壊させた。




次回「最高の赤龍帝VS最悪の精霊!!後編」

フィナーレは次回にせざるを得ませんでした!

なるべく早めに投稿できるように頑張ります!

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