デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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今回は天宮市自衛隊病院での描写が入って来ます。
折紙の様子は、原作とは少し異なります。


三話 病院内ではお静かに!

 

「―――確か、ここのはずだよな………」

 

士道は病院と思しき建物を見上げながら、スマホの地図を確認する。士道が行き着いた病院は『自衛隊天宮病院』だ。

 

この病院に真那が入院していると令音から聞き、士道はくるみんと琴里の霊力を封印した後、すぐにこの病院へと足を運ぶことにしたのだ。

 

「真那………」

 

士道が心配していたのは、真那の容態だ。真那と兄弟だったことは士道の記憶には残っていない………だが、それは士道が心配をしない理由にはならない。

真那の言葉を信じると決めた士道が真那の容態を心配するのは当然のことだ。

 

ウィーンっ………………

 

病院の自動ドアが開き、士道が病院内に入る。

士道は受付まで歩いて行き、受付の女性に訪ねる。

 

「すみません、崇宮真那の面会をしたいのですが、彼女の病室を教えてもらえませんか?」

 

「崇宮真那さんですね?………ご家族の方ですか」

 

「―――はい、真那の兄です」

 

「左様でございますか………少々お待ちください」

 

受付の女性はパソコンへと向かい、そのパソコンで情報を打ち込んでいた。

………数十秒ほど経過すると、女性が受付へと戻ってくる。

 

「大変申し訳ございませんが、真那さんは現在特別処置室で処置中の為、面会はご家族の方でもお断りさせていただいております」

 

受付の女性の言葉を聞いた士道は、頭を鈍器で殴られるような衝撃を受けた。士道はその衝撃のまま受付の女性に訊ねる。

 

「―――そ、そこまで真那の状態は良くないのですか!?」

 

「………すみません、容態の説明もできない規則になっておりますので………」

 

「俺は真那の兄ですよ………家族に容態の説明すらできないなんて、そんなもん納得できませんよ!!」

 

士道はドンッ!と受付のカウンターに拳を叩きつける!真那の容態が心配だったために、士道くんは冷静さを失っていたのだ。

 

「その―――規則は規則なので………」

 

「規則もへったくれもあるか!!お前ら真那をどうするつもりだ!!真那は俺の妹だ、お前らなんかに真那を任せておけるか!!容態の説明ぐらいしやがれ、家族にはそれを説明する義務があんだろうがッ!!」

 

鬼のような形相で怒鳴り声をあげる士道に恐怖を感じた女性は、SPのような人を士道にけしかける―――だが………

 

「―――ええい、邪魔だ!!」

 

「ジェロニモおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

ドガアアアアッ!!

 

SPが士道の肩を掴んだ瞬間に士道は裏拳でSPを吹き飛ばし、失神させる………もう彼は止まらない、否が応でも真那の特別処置室へと突入する覚悟だ!!

だが………一人の少女が士道に怯えるように、士道の服の端を掴む。

 

「士道………………」

 

「あ゛!?―――って折紙………」

 

折紙の怯える様子に、士道はハッと我にかえった。

………士道は拳を握りしめ、奥歯をギリギリと鳴らしながらも、受付の女性の言葉に従うことを決めた。

 

士道と折紙は少し歩き、近くの椅子へと座る。折紙は腕に点滴をしているため、点滴が外れることを恐れた士道は、ゆっくりと折紙を座らせた。

 

「見苦しい姿を見せちまったな………ゴメン折紙、怖がらせちまったな」

 

「………気にしてない、私は士道が怒鳴るのも理解できる。―――でも、崇宮真那には機密性の極めて高い機材が使用される………詳しくは言えないけど、一般大衆に晒せるようなものではない」

 

折紙は申し訳なさそうに士道に受付の女性が言っていた事の理由を伝える。士道は未だに納得できていないが、折紙に迷惑をかけるわけにも行かないので、今日は立ち去ることに決めた。

 

「そうか、じゃあ俺はもう帰るわ………真那との面会が出来ないならこれ以上ここに留まる理由もない―――それに、元気そうな折紙の顔も見れたし、ひとまずは安心したよ」

 

士道がゆっくりと立ち上がると、折紙は士道の顔を覗き見るように訊ねる。

 

「―――そう………夜刀神十香も無事なの?」

 

「ああ、十香も無事だぜ。心配してたけど、いつもと変わらないから安心したよ」

 

「ちっ、既にくたばってると思ったのに………」

 

折紙は十香の無事がよっぽど気に食わなかったのか、吐き捨てるように言った。折紙は悔しそうに表情を強張らせていた。

………士道は敢えてそれは見なかったことにした。

 

「―――じゃあな折紙、早く退院しろよ?」

 

「………………」

 

士道がゆっくりと病院の外へと足を進めていたその時―――

 

ドサッ………

 

何かが倒れるような音が聞こえた士道が振り返ると―――折紙が椅子から転げ落ちていた………

それを見た士道は慌てて駆け寄る!

 

「お、おい折紙!大丈夫か!?」

 

士道に肩を貸して立ち上がらせる。折紙は体がダルそうにしており、とても一人では歩けそうにない――――ように()()をしている!

そして、士道くんの鈍感はここでも遺憾無く発揮される!

 

折紙が()()()()()を披露していることに気付いていない!!

 

「………士道、一人で歩けそうにない、病室まで連れて行って欲しい」

 

「分かった!すぐに車椅子を―――」

 

士道が車椅子を取りに行こうとしたその時、折紙は士道の服を掴んで動きを止める。―――車椅子は折紙ちゃんは嫌いなようだ。

 

「車椅子は好ましくない。乗り物酔いが激しい」

 

「………………デハ、ドウシロト?」

 

目をパチパチとさせながら士道が問うと、折紙は士道を見つめて答える。

 

「―――抱っこ」

 

「………パードゥン?」

 

―――まさかの折紙が所望したのは抱っこだった。士道は冗談だろうと思って訊き直すが、折紙の要望が変わることはなかった。

 

「抱っこ―――お姫様抱っこ」

 

「………わ、分かりました」

 

士道は折紙を抱えて歩き始めた。折紙は士道のビーストモードを煽るように体を密着させてくる!

士道は自分に「自制心、自制心………」と呟くが、折紙は止まらない!

 

「―――士道、私のお尻や胸を触っても構わない。………ううん、士道が望むならここで子作りをしてもいい」

 

「………………!!!!!」

 

必死で自分の理性と欲望と懸命に戦っていた。折紙の悪魔の声に必死で堪える。折紙の悪魔の声に乗るのは簡単だ!

しかし、彼には守らなければならない笑顔がある!!

万が一、折紙に心変わりするようなことがあれば、それこそ魔王降臨となってしまう可能性があるからだ!!

士道は折紙の誘惑を必死で振り払った。

 

「―――に、西棟の三○五号室で良かったよな!?い、急ごう!」

 

何とかこの状況を抜け出そうと、近くにあるエレベーターに乗ろうとするが、折紙はそれすら妨害する!

………この女も士道とまた同族なのだ。

 

「士道、向こうにもエレベーターはある。それに乗ろう」

 

折紙がさすのは、受付を超えた先にあるエレベーターだ。あのエレベーターに乗るためには、受付を横切る必要があるのだ………そう、これが折紙の狙い―――“この男は私の所有物”というアピールを人前でするためだ!!

………ちなみにこのエレベーターに乗れば、折紙の病室までエレベーターを降りたら数秒で到着するのだが、少しでも長くお姫様抱っこを味わっていたい折紙の気持ちの表れでもある!

 

士道は首を横に振って、近くのエレベータのボタンを押そうとするが、折紙が士道の腕を抑える。

 

「あの―――オリガミ、さん?」

 

「………私は向こうのエレベーターを所望する。このエレベーターはよく修理が来る。わざわざ危ない冒険をする必要はない」

 

―――ダウト!!なのだが、士道はこの病院に来るのは初めてだったので、折紙を疑うことはしなかった。

 

「………りょ、了解しました」

 

士道は折紙の言う通りに受付を横切った地点にあるエレベーターに乗ろうと受付を横切ろうとすると………………案の定、外野から声が飛んで来る。

 

「―――えっ、何あれ!?患者を一般の人が抱っこしてる!?」

 

「………最近のバカップルは場所すら選ばんのか!?」

 

「リア充なんて死ねば良いのに!」

 

「ゴボボボボボボボボボボボボボ………………」

 

自衛隊天宮病院に来ている一般の人たちからの声に顔を真っ赤にしながらも、士道はエレベーターに到着した。

………ちなみに、士道が裏拳で吹き飛ばした黒服のSPはまだ泡を吹いて気絶していた。

 

―――エレベーターを降りて、折紙の病室へと辿り着くと、折紙をベットに座らせて、士道は外へと出ようとする。

 

「じゃ、じゃあな折紙。今度こそ俺は帰―――うおっ!?」

 

帰ろうとした士道に折紙は果物ナイフを眉間に突きつける。

 

「………士道、リンゴを剥いて欲しい」

 

「ナースコ―――「剥いて」………はい」

 

ナースコールを勧めようとしたが、再び折紙はぐいっと果物ナイフを士道に突きつける。観念して士道はバスケットの中にあったリンゴを八等分にし、リンゴの皮でうさぎの耳を作ったり、するなど豪勢なものを折紙に調理してあげた。

 

―――しかし、折紙の要求は止まることを知らない!!

 

折紙はあーんと口を開けている。怪訝に思った士道は折紙に訊ねる。

 

「えーと………その、折紙さん?」

 

「食べさせて」

 

「あ、はい………」

 

士道はがっくりとしながら、切ったリンゴを折紙の口へと運ぶ。しかし―――折紙は受け入れようとはせず、さらに注文をつける。

 

「恋人同士なら口移しが―――」

 

「問答無用っ!!」

 

折紙が口を開けた瞬間を狙って士道はリンゴを折紙の口にイン!!

得意げな表情を浮かべている士道くん。しかし、士道に異変が起こる………なぜか士道の手を折紙が離そうとしないのだ。

 

そして―――折紙は士道の指を舌で舐め始める!

 

「ああ、おい!?こ、こらやめっ、オリガミサンっ!!」

 

男を虜にする舌使いで、士道を魅了しようとする折紙。士道は意表を突かれ声を裏返しすほど揺さぶられていた。

 

「―――ごちそうさま………」

 

満足げに折紙は士道の手を離し、解放した。今度こそ士道は帰ろうとしたが、折紙は電子体温計を士道に渡す。

 

「………いやいやいや!これは流石に―――」

 

「過度な運動は控えるように言われている―――「了解しました………」」

 

………完全にこき使われている士道くんだったが、折紙の言い分に従うことにした。

 

「………それで、俺はどうすればいいんだ?」

 

「―――ここに座って」

 

折紙は自分のすぐ横を手で叩く。士道はそこに座ると、折紙がなんと、士道の膝の上に座って来たのだ!!

服の紐を解くと、真っ白なおっぱいが露わになり、士道は鼻血を吹き出す!

 

「お、おっぱい!!」

 

………狂三とのデートを尾行していた折紙も、士道の誘惑のノウハウを知ってしまった。

士道におっぱいを見せれば乗ってくれることをわかっていたからこその行動だ。

もう、暴走列車は止まらない!折紙は電子体温計をわざと落下させる!

 

「あ、手が滑った」

 

「あ、俺が拾―――んむむむむむ!!!!!」

 

落下した電子体温計を拾おうとした士道くん。この時を折紙は待っていたのだ。

折紙は士道が電子体温計に手を伸ばした瞬間、素早く自分の胸に士道の頭を抱えて押し付ける!!

折紙は目的のためなら手段を選ばない!士道くんの貞操がピンチだ!!

 

「―――これこそ士道体温計」

 

折紙は電子体温計ではなく、士道を体温計にしているようだ………ちなみに、士道くんは立派にその役をこなす。

 

「お、おっぱ―――じゃなくて、三六•二度………平熱だ」

 

士道は首を横に振って折紙の体温を言ってみせた。

―――この男は、おっぱいに触れれば即体温を読み取ることができる………おっぱいのことになれば、彼の右に出るものはいないだろう。

 

役目を果たした士道は、逃げるように折紙の病室から出ようとする。

 

「―――じゃあ今度こそ帰るぞ?………またな、折紙」

 

「………………………」

 

士道が帰ってしまうことを非常に残念に思っていた折紙ちゃん。何も言うことはなく、手を振って士道を見送ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

―――◆―――

 

 

 

 

 

 

カーッ!カーッ!

 

士道が自衛隊天宮病院から出た時には、すでに空は茜色に染まっており、カラスが鳴く時間となった。

自衛隊天宮病院から自宅へと帰る途中、士道はドライグと会話をしていた。

 

「………ドライグ、お前は()()()をどう思う?」

 

士道は琴里を助け出した時のことの夢についてドライグに訊いた。ドライグは難しそうに声を濁らせる。

 

『どうも何もな………言えることはただ一つ―――あれはとても並の人間がなせる技ではない………夢だからこそ力を感じることは出来なかったが、あの力の解放は少なく見積もっても魔王クラス以上のものだった………相棒の体の中はまだ何か秘密があるのかもしれん………それが何かは分からんがな』

 

ドライグの見立てに士道は身震いをした。自分の体の中には、魔王クラス以上の力が眠っているかも知れないからだ………士道はその力が暴走することを恐れた。

―――万が一魔王クラスの力が暴走すれば天宮市そのものが地図からごっそり消えて無くなってしまう可能性があるからだ。

 

『―――人間を精霊に変える存在に、相棒の中に眠る漆黒の闇か………この世界では分からないことが多過ぎる。しかし、この二つを考えるよりも、今後のことを考えた方が良いだろう。

―――相棒、再び神器の中に潜ってみたらどうだ?』

 

琴里の霊力を封印した時に、士道にはうっすらと琴里が精霊になった時の映像が記憶として流れ込んできた。存在がノイズの塊だったために、真の姿を拝むことは叶わなかったが、琴里のそばにその存在は確かに()()()のだ。

 

そして、夢で見た禍々しい力の解放については今以て謎のまま。

人間を精霊に変える存在と士道の中のうちに眠る悍ましい力の答えは、是が非でも欲しいところだが世の中はそんなに上手くはできていない………

故にドライグは士道の成長を優先しようと考えていたのだ。

 

「………そう言えば、一度も潜ったこと無かったよな―――よし、帰ったらやってみるよ」

 

ドライグの提案に士道は首を縦に振った。

それは兵藤一誠が『覇龍(ジャガーノート•ドライブ)』以外の進化の可能性を見出すために、堕天使総督の『アザゼル』の考案したものだ。

士道はそれを思い出し、実行することを決めた。士道が足を進めるスピードを上げた時、目の前によく知る人物が姿を見せる。

 

「やあ、士道くん。狂三ちゃんの攻略お疲れさま、まさか本当に攻略してしまうなんて思ってなかったよ………それから、おめでとう。ついに至ったみたいだね」

 

魔法使いのローブを纏い全身を隠しており、いかにも『私は不審者で〜す!』と言うアピールをしている守護者ソロモンが士道の前に現れる。

ソロモンは士道がバランス•ブレイカーに至ったことを即座に見抜いてみせた。士道はソロモンに頭を下げる。

 

「―――ソロモンさん、『フェニックスの涙』本当にありがとうございました。お陰で『くるみん』を死なせずに救えました!―――でも、狂三は………」

 

士道は最後まで伝えようとはせず、表情を陰らせ言葉を濁した。くるみんこそ救えたが、狂三の攻略は出来なかったからだ。

 

「そうか………でも、くるみんを救えたことは胸を張るべきだと僕は思うよ?………自分を卑下しちゃダメだ、キミはまだ高校生だ。まだ全てが上手くいかなくて当然だ―――だから次に出会った時は攻略すれば良いじゃないか」

 

「―――分かりました………」

 

ソロモンは士道を見守る教師のように、士道に道を示した。士道は唇を噛み締めながらも、ソロモンの言葉に従うことに決めた。

しばらく話し込んだ後、ソロモンがポケットの中から豪勢な箱を取り出す。

 

「―――さて、ここに来た目的を話さないといけないね………今日は士道くんにプレゼントがあるんだよ」

 

「………プレゼント?」

 

『フェニックスの涙』だけでも十分過ぎる贈り物だったが、ソロモンは豪勢な箱の中身を開けて中身を士道に見せる。

―――箱の中身は、研磨されたダイヤモンドを思わせる手のひらサイズの宝石だった。

宝石は虹色の光を放っており、まるでなにかを覚醒させるような力を士道は感じ取っていた。

………ソロモンは宝石について士道に話す。

 

「これは『龍醒石(りゅうせいせき)』と言ってね、ドラゴンの隠れた潜在能力を引き出す力を持つ宝石なんだ。

士道くんの更なる進化の手助けになってくれるだろうと思ってね」

 

ソロモンの話を聞いた士道は、ソロモンに訊く。

 

「―――これを、俺に?」

 

「うん、そうだよ。………ちなみにこの

龍醒石(りゅうせいせき)』の元ネタは十香ちゃんや四糸乃ちゃんたち―――精霊ちゃんたちの力の源の『霊結晶(セフィラ)』だよ。

上手くやれば士道くんのがその身に封印する精霊の霊力と赤龍帝の力と融合することが出来る筈だ」

 

ソロモンは士道に『龍醒石(りゅうせいせき)』を差し出すが、士道は受け取ろうとはしなかった。

士道は首を横に振ってソロモンに言う。

 

「―――受け取れません………確かに強くはなりたいですけど、これ以上ソロモンさんに迷惑をかけるわけには………」

 

士道の言葉にソロモンは士道の方を掴み、士道にもう一つの理由を述べる。

 

「………さっき『霊結晶(セフィラ)』の話をしたけど、キミの体には精霊の核となっている

霊結晶(セフィラ)』が存在しない………だから、非常に力が不安定なんだ………このままいけば、近いうちにキミが封印した精霊の霊力が暴走する危険性があるんだよ………

龍醒石(りゅうせいせき)』には、力の覚醒以外にも、力を安定させる術式を組み込んでいる。

キミが暴走してしまえば、僕たちはキミを倒さなければならなくなる………僕はそんなことはしたくないんだ」

 

「………………………」

 

士道はソロモンに何も言い返す事が出来なかった。確かにソロモンの言っていることが事実ならば、士道の封印する霊力が暴走したら、本当にこの天宮の街並みくらいなら簡単に吹き飛ぶだろう。

 

………しかも、士道は現在は四体の精霊の霊力を封印している―――これから更に精霊を封印していくとなると、それに比例して士道の体に封印される霊力は大きくなる………万が一暴走してしまえば、それこそ三十年前のユーラシア大陸を襲った空間震を大幅に上回るものになる可能性があるからだ。

 

『………相棒、ソロモンの言葉に従うべきだ。俺も他人の力を使って強くはなりたくはないが、相棒の身の安全が最優先だ。万が一相棒が暴走して死ぬことになれば、夜十神十香がまた魔王になって街を破壊しまくるぞ?』

 

―――ドライグの『十香が魔王になる』と言う言葉を聞いた瞬間、士道は身体中から嫌な汗が大量に吹き出した。

そうなれば本当にこの世の終わりになるだろうから………

………ドライグの賛成もあり、士道はソロモンの言葉を信じることにし、プレゼントを受け取ることを決意した。

 

「………分かりました、ありがたく頂戴します」

 

ソロモンは承諾してくれた士道に優しく微笑む。

 

「分かってくれたなら、僕も言うことはないよ。

………じゃあ士道くん、『赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)』を出してくれないかな?」

 

ソロモンの言葉通り、士道は左腕に赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)を具現化させる。

ソロモンは士道に龍醒石(りゅうせいせき)を手渡すと、士道に指示する。

 

「―――士道くん、籠手の宝玉に龍醒石(りゅうせいせき)をはめ込むんだ」

 

「わ、分かりました!」

 

士道は言われた通りに、赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)の宝玉に龍醒石(りゅうせいせき)をはめ込んだ―――その時だった………

 

パァァァァァァァッッ………

 

龍醒石が溶けて赤龍帝の籠手に染み込むように、宝玉の中へと沈んでいった。

宝玉が士道とドライグに、確かな変化をもたらした。

 

赤いオーラが士道の体に絡みつくように解放され、そのオーラの解放は徐々に士道の体に浸透している!

 

「これは――――」

 

『………あの時と同じだ―――相棒が

三叉成駒(トリアイナ)』を覚醒させた、あの時に………これは俺の本来のオーラだ―――「覇」の力に身を任せたものじゃない、ただ純粋に白いのに勝ちたかった頃の………目覚めてからだったの数ヶ月で、この領域にたどり着けるとはな!!」

 

ドライグは楽しそうな声音で、封印の枷が外れたことを喜んでいた。

しかし―――ドライグは本来のオーラが覚醒したが、士道に新たな力が流れ込んでくる様子はなかった。

 

「………………あれ!?ここは俺も一緒に覚醒するシーンだよな!?なんで俺には何にも起きないんだ!?」

 

慌てふためく士道にソロモンは何かヒントになりそうなことを告げる。

―――士道が何が足りていないのかを、示すかのように………

 

「―――おそらく、それは神器の中に原因があるんじゃないかな?それが解決すれば士道くんはもう一つ上のレベルに到達出来るはずだ………」

 

「神器の中に―――ですか?」

 

士道はソロモンに言われた通り、神器にはこれまで一回も潜ったことはない。故に、帰ったら試さなければならないと思っていた矢先、ソロモンにも同じことを突き付けられたのだ。

 

「………とにかく、やってみます!」

 

士道は坐禅を組んで試そうとしていたが、ソロモンは士道を止める。

 

「―――帰ってからでいいんじゃないかな?十香ちゃん達がお腹を空かせて待っていると思うよ?

………不機嫌になって霊力が逆流することの方がマイナスだと僕は思う―――とりあえず帰ってからでもできることだし、まずは十香ちゃん達の夜ご飯の準備が先じゃないかな?」

 

「―――わ、忘れてたぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

ガビーンッ!と忘れていたことを突き付けられた士道は、あたふたと慌てながらもソロモンに頭を下げる。

 

「す、すみません!俺帰ります!十香が叫んでいる様子が頭に浮かびました!」

 

士道は足に力を込めて走り出そうとしたが、ドライグは待ったをかける。ドライグの真剣な声音を聞いた士道は思わず足を止める。

 

『待て相棒、俺は一つこの男に確認したいことがある………』

 

「………珍しいね、赤龍帝のア•ドライグ•ゴッホが僕に何を訊きたいのかな?」

 

『―――禍々しい闇を纏い、紅蓮の瞳、そして手足に謎の術式を思わせる紋章がある存在について訊きたい』

 

「――――ッ!?」

 

ドライグが訊ねたのは、士道の五年前の時の記憶だった。ドライグの問いにソロモンは驚きを隠せず、表情が激変した。

 

「………どうしてそんなことを僕に訊くのかな?」

 

いつもはヘラヘラとしているソロモンだが、ソロモンの表情は真剣なものに変わり、ドライグにその原因を訊ねた。

 

『―――詳しくは話せないが、相棒が五年前の天宮市の大火災の時に纏った力が先ほど話した力だ。………貴様なら何か知っていると思ってな』

 

ソロモンの頭の中には、最悪の存在が一瞬頭によぎったが、首を横に振ってドライグに伝える。

 

「………なるほど、それは士道くんの中にあった精霊の力だったんじゃないかな?そんな漠然とした情報じゃあ、さすがに僕も分からないよ………」

 

『―――そうか………すまんなソロモン。貴様なら力になると思ったのだがな………やはり情報が少な過ぎるのが問題だ』

 

士道も知りたかった答えを知ることはできず、残念にしながらソロモンに一礼して去って行った。

ソロモンは拳を握りしめ、視線を鋭くして記憶を探る。

 

「………まさか、()()が士道くんの体の中にいるとしたら―――いや、考え過ぎだろう………あれは三十年前の出来事だ。士道くんは今年で十七歳だ。どう間違っても十三年の誤差は埋まることない………けど、備えておくに越したことはないか」

 

ソロモンはブツブツと呟きながら、来るべき災厄に備えることにした。

―――万が一その存在がこの世界に再臨するようなことがあれば、確実に人類は滅亡の一途を辿ることになるだろうから………

 




士道のパワーアップはこの章でも行う予定です。

あれ?霊力が暴走しないなら、『五河ディザスター』はどうなるの?と思う方もいるかも知れません………が、飛ばす予定はありません。
『五河ディザスター』ではなく、『士道エンディングワールド』という章名で投稿すると思います。

————恐らく、かなり先になると思いますが………

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