デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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この話で『琴里クラッシュ』はフィナーレです。

番外編を二話挟んで五章は活動報告にも書いた通り、オリ章『六華クライシス』へと突入したいと思います。

※気がつけばこの小説のお気に入りも400件に到達しました。
読者のみなさま、ご愛読ありがとうございます!


十話 絶対に譲りません!!

 

 

「………終わったか」

 

折紙に『刻々帝(ザフキエル)』の三番目の弾丸【三の弾(ギメル)】を使用し、彼女の神器『白龍皇の(ディバインディバイディング•)輝銀鱗装(シルバードラゴニックユニット)』を粉砕した士道は、一息ついた後に腹部を貫いたレイザーブレードを引き抜き、地面に突き刺す。

 

「ぐっ………ガハッ!?」

 

「―――士道さん!!しっかりしてくださいまし!!」

 

士道は引き抜いた時の激痛で血を吐き、地面に膝をついた。それを見たくるみんはすぐに士道の側に駆け寄ろうとするか、士道が手を出してくるみんを制した。

 

「………大丈夫だよ、くるみん。すぐに治る」

 

士道が述べると同時に、腹部から焔が這い傷を癒していく………士道の腹部に空いた穴は瞬時に消えた。

その瞬間を見た折紙は驚愕のあまり口が塞がらなくなる。

 

「………っ。士道、何故あなたがその力を―――」

 

折紙は限界を迎え、地に這いつくばる形で士道を見ていた。

士道は折紙を見て話し始めた。

 

「折紙、聞いてくれ―――お前の両親を殺したのは琴里でもなければイフリートでもない。………五年前、お前の両親を殺したのは()()()()だ」

 

「―――ッ!」

 

いきなり士道がいきなり述べた言葉に折紙は動揺のあまりカタカタと体を震わせていた。が、しかし!次の瞬間折紙は震えながらも叫んだ。

 

「―――信じられない………五年前の火災は『イフリート』のせいで起きたもの!その時に私の、両親を………!」

 

「ああ、五年前の天宮市の火災は琴里が霊力を暴走させちまったせいで発生した。それは事実だ―――でも!!琴里は自分の意思でそんなことはしていない!!

それに、あの辺りには俺と琴里の他にその『別の何か』しか居なかった!琴里をそんな目に合わせたのはその別の何かに精霊にされた―――もしかしたらそいつがお前の両親を………」

 

「………………」

 

士道の言葉を聞いた折紙は少しの間黙り込んだ。―――彼女の頭の中では、“士道が嘘をつくはずはない”という思いと、“けれどその話は信じられない”という二つの思いが彼女の心中を支配していた。

 

「俺が琴里を守るために偽装した作り話だとお前が思っていることも理解している。今言ったことを証明できる確かな証拠を俺はお前に提示してやることも出来ない―――だから俺がそいつを必ず見つけ出す!!

その場凌ぎにしかならない空想のお伽話かも知れない―――でも頼む!俺を信じてくれ!!」

 

「………ッ!!こんな、ところで―――私は止まっては、いられない!!」

 

士道は両膝をついて折紙に頭を下げた。………しかし、折紙はホルスターから対精霊用の拳銃を取り出し、琴里をおぶっているくるみんへと―――いや、正確にはくるみんがおぶっている琴里へと銃口を向ける!!

限定的な霊装を纏っているくるみんでも、対精霊用である拳銃なら致命傷を負わせることは可能だ。

―――ましてや、霊力を失い、意識を失っている琴里に命中すれば琴里の首から上が吹っ飛ぶことは必定!!

それを見た士道は慌ててくるみんの前で仁王立ちをする!

 

「お願いだ折紙、俺から琴里を奪わないでくれ!!琴里はもう普通の人間なんだ!!………琴里がいなければ、俺はもうこの世にはいなかった。あいつがいたから今の俺があるんだ!」

 

「………………」

 

士道が全力で叫んだ思い虚しく、折紙は目を鋭くして対精霊用の拳銃を握る手に力を込める!!

―――折紙は拳銃の引き金を引くつもりなのは誰が見ても明らかだった………

 

「………分かった。それなら仕方ない」

 

士道は瞑目し、天を仰いだ。折紙の様子を見た士道は、彼女を信じさせる言葉を………彼女の信頼を勝ち取ることは出来ないと悟ったのだ。

赤龍帝の鎧を解除し、再びくるみんと琴里の前で両腕を広げた。

 

『何の真似だ相棒、本当に死ぬぞ!?』

 

「―――士道さん、いけませんわ!!」

 

ドライグとくるみんが叫ぶが士道は再び鎧を纏おうとはしなかった。

 

「………どうしても俺が信じられないなら、その拳銃で俺を撃ってくれ―――今は、俺が炎の精霊『イフリート』だ。俺を殺す事で折紙の心の傷が少しでも癒されるのであれば―――それでいい………」

 

「私は―――私は………っ!!うわあああああああああああああ!!!」

 

折紙は士道に怯えるように叫び声をあげ………そして―――

 

 

 

 

 

 

 

ズドンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

―――銃口の中の弾丸を解放し、その弾丸は風を切り裂きながら士道へと迫った。

 

(―――俺の命もここまで、か………)

 

銃弾が放たれる音が聴こえると同時に、士道は覚悟を決め、目を閉じた。士道はこれでいいと満足そうに。

くるみんと琴里さえ助かるのであれば、これ以上望むことはない………自分を屍を両親の仇として踏み越え、折紙が笑顔になってくれるのであれば、それは願ってもいないことだ………と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが――――――………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッ!!」

 

痛みを感じたが、自分の中で感覚が生きていることを感じ取った士道は加減に思い、目を開けた。

体に穴も開いていなければ、頭も吹き飛んではいなかった。

ふと振り返れば、くるみんも琴里も無事だった。

 

………そう―――折紙が放った弾丸は、士道の頬を掠れて遥か彼方へと消え去った。

―――折紙には出来なかったのだ………士道の命を奪うことなど、最初から………例え()()()()ということが分かっていたとしても。

………四月に十香を狙撃したあの時、士道を撃ち抜いてしまった時、彼女は身を切り裂くような後悔に囚われた。

―――“私はこの手で士道を殺してしまったのだと………”

その後に十香が自分に向けた目を見て、彼女は『両親を奪われたあの時の自分と同じ目をしていた』と思った。

―――自分も精霊と同じところまで堕ちてしまった………

しかし、士道は心臓を貫かれたが、何事もなく生き返った。けれども、数ヶ月の時が経過した今でも、士道を傷つけてしまった事実は消えることなく折紙の心の中にトラウマとして残っている。

故に出来なかったのだ。二度も同じ形で自分の想い人を葬ることなど………

 

「………………」

 

「折紙―――おい、折紙!!」

 

折紙はその後、肩で息を数回した後―――力なく地面に倒れ伏した。士道は折紙を救護した後、フラクシナスの迎えが到着し、士道たちは回収された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――◇◆―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、あら………わたくしの出番はございませんでしたわね………」

 

天宮市の商店街の路地裏で、赤と黒がメインのドレスのような衣装に身を包んだ一人の少女がいた―――最悪の精霊『ナイトメア』と名高い、狂三だ。

人間から時間を吸い上げる狂三の天使『刻々帝(ザフキエル)』ともう一つの代名詞―――『時喰(ときは)みの(しろ)』を広げ、彼女の力の源である【時間】を人間から吸い上げていた。

 

狂三はこの前の士道との激闘で多くの力を使ったにも関わらず激闘に敗れ、命からがら戦場から逃げ出したのだ。

今行なっているのは、士道との戦いで失った【時間】の補充だ。

 

「まさか士道さんがわたくしの『刻々帝(ザフキエル)』を使用するとは夢にも思いもしませんでしたわ………まあ、あの出来損ない(くるみん)の差し金なのは間違いありませんでしょうけど」

 

―――これを聞いたら士道が激昂するのは間違いないだろう。士道の眼前でくるみんを出来損ない呼ばわりしようものなら、彼は一切の慈悲をかけることなく本気で殺しにかかることは、必定だ。

狂三は士道と折紙の激闘の結末を見て下品な笑みを浮かべ、笑い始めた。

 

「きひ、きひひひひひひひひひ!士道さぁ〜ん、これで終わったなぁんて思わない方がよろしいですわよぉ?

折紙さんを破った方法が自分の首を絞める結果につながるなぁ〜んて夢にも思っていませんわよねぇぇぇぇ!

きひひひひひひひひひひひひ!!」

 

………狂三は十香、四糸乃、琴里の三人の精霊の中ではとりわけ知識が高い。

狂三は士道と折紙の激闘の中で、士道の攻略法を見出していた。―――【三の弾(ギメル)】は士道相手にも効力を示すと!!

 

「きひ、きひひひ、きひひひひひひひひひひひひひ!!次こそあなたが体内に封印したその霊力―――ちょぉだいしに参りますわよォ〜!!」

 

追い込んだ獲物を見て馬鹿笑いをするように、狂三は下品な笑みが止まらなかった。

………そんな時に、事件は起こった。

 

「―――まったく、見た目はいいのにこれがあるからねぇ………」

 

狂三しかいないはずの路地裏に男性のものと思われる声が響き渡る。狂三は警戒し、短銃と歩兵用の銃を両手に構える。

 

「―――誰、ですの………!?」

 

狂三が路地裏の影の部分に歩兵銃の銃口を向ける。そこから現れたのは、水泳帽を頭に被り、目をゴーグルで隠して服装は海パンとサンダル!そして、男なら誰でも憧れる細マッチョボディの男が現れた!!

水着で街中を歩いていたと思われるその男は―――言うまでもなく変態だ!!

その変態の名は―――次元の守護者ソロモン!!

 

「………やあ、はじめまして―――時崎狂三ちゃんで良かったかな?

この僕こそは、通りすがりの魔法使いというものです、ハイ」

 

「………………」

 

ズドンッ!!ズドドドドドドドドドドドッッ!!

 

いきなり現れた水着姿の変態(ソロモン)に無言で銃弾を乱射!!

ソロモンは見事なダンスを踊り、銃弾を避けて避けて避けまくる!!

 

「あー、手厚い歓迎ありがとうございます♪―――ホワーチョーッ、タタタタタタタタタタタタタッ!!」

 

狂三は、これ以上この変態に関わりたくないと、背後に文字盤を出現させ、文字盤の『VII』から狂三の短銃に霊力が注ぎこまれる!!

ソロモンはまるで百裂拳―――失礼百烈脚を刻むように凄まじい速さの高速ダンスを披露している!!

 

「―――タタタタタタタタタタタタタタタタタタタッッ!!」

 

ソロモンはいまだにダンスを止めようとはしない!!

これが女性―――それも巨乳の持ち主が水着姿でダンスをしているのであれば、士道くんのような変態は大喜びだ!!それはもう眼福の一言だろう、いい目の保養となるからだ!!

―――が、しかし!!それをソロモンのような男性が水着姿でやるもんだから、誰得なのよこの企画となるだろう―――今のソロモンはもうとにかくキモい!キモすぎる!!

 

「………『刻々帝(ザフキエル)』―――【七の弾(ザイン)】」

 

これ以上は見るに堪えないと感じた狂三は、被弾した相手の時間を止める『刻々帝(ザフキエル)』の秘奥【七の弾(ザイン)】を放つ!!

―――【七の弾(ザイン)】は他の弾と比べ使用時の霊力が多いのだ。『時喰(ときは)みの(しろ)』で外から補充した【時間】を切り崩すことになったとしても、目の前の変態の排除を選んだのだ!!

狂三は文字盤の『VII』の文字から霊力が注ぎ込まれた短銃の引き金を引く―――全ては目の前の変態を排除するために!!

 

ズドンッ!ズドンッ!!

 

狂三が引き金を引き、弾丸がソロモンを目掛けて迫る!!狂三が放った弾丸は二発ともソロモンに命中し、ソロモンの周りを靄が包む!!

 

だが――――――!!狂三は自分の目が捉えていた光景を疑うことしかできなかった………狂三の視界内には、【七の弾(ザイン)】が命中したにも関わらず、未だにダンスをしているソロモンの姿が!!もういい加減やめて下さい!!

 

「―――タタタタタタタタタタタタタッ!!」

 

狂三は、眼前のカオスな光景にやられたのか、ようやく正気に戻り、ソロモンに訊ねる!!

 

「こ、こんなことが………………信じられませんわ!!あなた一体何者なんですの!?」

 

「―――いやいやいや!それを最初に聞こうね!?僕に『バレットサンバ』を踊らせる前に!!」

 

―――ソロモン殿、ごもっともな意見であります。狂三は歩兵銃と短銃を下ろし、ようやくソロモンの話を聞くことを決めた。

狂三の様子が変わったことを確認したソロモンは、大きく息を吸い―――盛大にくしゃみをする!!

 

「ふぇぇぇぇっくしょぉぉぉいい!!」

 

「なっ――――――」

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオッッ!!

 

ソロモンは一度のくしゃみだけで狂三の【七の弾(ザイン)】の効力を吹き飛ばして見せた。

くしゃみだけで凄まじい突風が巻き起こり、路地裏のコンクリートにヒビが入った。

狂三はソロモンを見て瞬時に悟った―――“まともに戦っても勝てる相手ではない”と。

 

………狂三の記憶では自身の天使、『刻々帝(ザフキエル)』がまともに通用しなかったのは、士道の他にもう一人の存在しかいない。

それも【七の弾(ザイン)】を完全に無力化したのは、このソロモンが最初だ―――故に眼前のソロモンはこれまでに自分が対峙してきた相手とは次元が違うと………瞬時に悟ったのだ。

 

「ふぃぃぃぃ………あれ、もうおしまいかな?それとも、ようやく話を聞いてくれる気になったのかな?」

 

「―――手短に済ませて下さいまし。わたくし、こう見えても余計なことに費やす時間はありませんのよ?」

 

狂三は一秒でも早くこの変態から解放されたいようだ。ソロモンはそんな狂三の様子を見て説明を始めた。

 

「いやいや、僕もそんなにお時間をとらせる予定はないよ。狂三ちゃんも忙しいようだし、手短に済ませようか。

僕がキミのところに来たのは警告しに来たんだよ―――もう士道くんには関わらない方が良い。例えキミじゃあ士道くんには逆立ちをしたって勝てやしないんだから………力はもちろん、心でもね」

 

「―――ッ!!」

 

ソロモンの言葉を聞いた狂三の表情が激変する!!先ほどまで狂三は面倒くさそうな表情を浮かべていたが、今では苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、完全に我を失っている!!

それでも、狂三は冷静さを保ちながらソロモンに答える。

 

「あら、あら………よりにもよってそんな戯言を述べるためにこんな場所までやってきたんですの?

………ご苦労さまなことですわね。残念ながら士道さんを叩き潰す方法なら既に―――」

 

狂三が全てを言う前に、ソロモンは話し始める。………何を言っても信じようとしなかった狂三を見てソロモンは哀れに思ったのか、御構い無しでソロモンは強行する。

 

「―――自信満々のところ悪いんだけどね、時間を操ることしか能の無い天使では彼を殺すことは不可能だ。

残念ながらキミが今考えている『彼が鎧を纏った瞬間に【三の弾】を撃ち込み彼を数時間先の時間へ()()()()()()()()()()()()()』―――確かに、制限時間付きの相手への対処法としては、悪くないやり方だ。

………しかし、士道君ほどの相手ともなるとそう上手くはいかない………いや、そのやり方ではむしろ―――彼を()()にしかねない」

 

ソロモンは路地裏のコンクリートにもたれながら狂三に言った。今のソロモンの言葉は狂三に思うことがあったのか、目を細めソロモンに真意を問う。

 

「それは―――どう言う、ことですの?」

 

「言葉の通りさ。彼は仲間を守るためならどんなことでもやる―――それこそ、世界を滅ぼす覇の理にさえ手を伸ばすかも知れないしね………そんなことになれば天宮市はもちろん、運が悪ければこの国自体が終焉を迎えることになるかもしれない。

―――この世界で彼ほど世界を動かす可能性を秘めた人物は存在しない………そんな彼を覇王にするようなことをキミがしようものなら、その時は――――――キミを完全にこの世から消滅させるから、そのつもりで」

 

「………っ!!」

 

ソロモンの最後の言葉を聞いたとき、狂三は返す言葉を失い身体中から嫌な汗が噴き出た。………それは純粋な恐怖によるものだ。

このソロモンには最強の弾【七の弾(ザイン)】ですら碌な効力を発揮しなかった。故に現時点で勝てない相手だということがわからないほど、狂三もバカではない。

 

「………それじゃあ僕はこの辺で失礼しようかな。バカなことはしないで、残りの人生をエンジョイしたまえ若人よ。

あ、そうだ最後にこれを言っておかないとね―――失った命は何をしても帰っては来ない、例え歴史は改変したとしてもね。改変の結果発生する矛盾を無くすための修正が施されるものなんだ………くれぐれも覚えておいてくれたまえ、ハッハッハッ!」

 

最後に意味深な発言を残してソロモンは狂三に背中を向け、手を振りながら光が照らす表の世界へと消えて行った。

狂三は手の中にある銃を強く握りしめ、一言だけ漏らした。

 

「………わたくしは、絶対に諦めませんわ。諦めることなんてできませんわ!

わたくしはどれだけの屍を積み重ねても士道さんの力を手に入れる………そして―――」

 

光の当たらない路地裏で狂三はボソッと言った。彼女が血で手を汚し、屍を増やしてでも望むことそれは一体………

 

 

 

 

 

 

―――◆◇―――

 

 

 

 

 

 

フラクシナスで回収された士道は、が向かったのは医務室だ。

………琴里の霊力を封印する間、十香と四糸乃の二人は、自分の実力を大幅に上回る折紙の足止めをしてくれた。

折紙は精霊を強く憎んでいるため、二人に手加減をせずに全力で殺しにかかるだろうと考えていた士道は、十香と四糸乃の二人の容態が気が気でなかったが、二人とも奇跡的に軽傷で済んでいた。

令音が言うには「………明日になれば傷は完治する」とのことだ。士道はホッと胸を撫で下ろし、十香と四糸乃の二人に感謝をしたのだ。

 

ちなみに琴里はまだ眠っていた。傷は完全に塞がっているため、しばらくすれば眼を覚ますそうだ。

気持ちよさそうに眠っている妹を起こすのも悪いと思ったのか、士道はそっとしておくことに決めた。

 

『………まったく、運のいい奴らだ―――アルビオンの力を纏った鳶一折紙を相手にしてよくこの程度で済んだものだ。

例え無事でも手足の一、二本は消されると思っていたのだがな………』

 

ドライグも十香たちの容態を見て言葉を漏らした。本当にその通りだ、十香は医務室で神無月が買ってきた、きな粉パンをムシャムシャと頬張り、四糸乃はよしのんとお喋り中だ。

 

「んぐんぐ………きな粉パン、きな粉パン!」

 

『ああ〜、十香ちゃん。そんなにがっつくと喉に詰まらせちゃうよ?

んまあ、そうなった時はよしのんが頭突きをしてあげちゃうよ〜♪」

 

「………よしのん、それはダメ!」

 

―――この通り、フラクシナスの医務室は見事に平和だ。ちなみに、よしのんの頭突きは士道の鎧を破壊するほどの威力を誇る。

 

………事の発端は士道が四糸乃から、Bサイズ80cm以下の女性から放たれる乳気(にゅうき)『ロリニュウム』の吸収をしようと四糸乃を抱きしめて深呼吸をしていた時だった。

よしのんが悪ふざけで士道のお腹に頭突きをした時、士道が四糸乃の部屋の壁をぶち破って遥か彼方へと吹き飛んでいった。

四糸乃の部屋は精霊専用の特殊住居なため、他の建築物の数千倍の強度を誇るにも関わらず、壁が崩壊したのだ………

その時、士道は肋骨の十数本を複雑骨折し、ドライグも『よしのんの頭突きは禁手(バランス•ブレイカー)の鎧ですら破壊する威力だぞ………』と若干ヒキ気味で解説したほどだ。

当然ながら並の人間にそれを行えば、当たりどころが悪ければ即死なため、四糸乃はよしのんの扱いを厳重に注意するようになった。

 

………まさに、殺戮パペットよしのん、ここにあり!である。

 

「………でも、大変なのはむしろここからだよな」

 

―――話が脱線してしまい、申し訳ない。

士道は十香たちから目を離し、天井を見つめて言った。ドライグもそれに頷くように左手の甲から言葉を発する。

 

『―――ああ、不安要素が完全に消えたわけではない。いつまた鳶一折紙が奇襲を仕掛けて来るやもしれんし、謎のノイズ『ファントム』に、最悪の精霊『ナイトメア』。そして、これからまた新たに現れる精霊か………俺たちの日常とはイベントが事欠かないものだ』

 

ドライグは皮肉げに毒を吐いた。士道も「仕方ねえよ、それが俺たち赤龍帝の本質みてぇなもんじゃねえか」と諦め気味に返していた。

医務室から退出して、艦橋を目指して歩いていた時、一人の女性が士道に声をかける。

 

「………シン、今日は本当に良くやってくれた―――心から感謝を」

 

その女性とは令音だ。いきなり令音が頭を下げたことに士道は慌てて令音を止める。

 

「そんな、頭を上げてください!俺は当然のことをしたまでです!折紙が乱入するアクシデントこそありましたが、令音さんの判断で十香たちが来てくれなければ、俺は折紙を殺していたかもしれません―――感謝をしなければならないのは俺の方です」

 

士道が令音の方に触れ、強引に元の姿勢へと戻させた。

―――確かに令音の判断で十香たちが来ていなければどうなっていたかは分からない。あのまま勝負がつくまで決闘が続いていた可能性もある。

十香たちも軽傷を負ったが、奇跡的に死傷者はゼロ―――結果的には十香たちを寄越した令音の判断が最善だった筈だ。

 

「………そう言えば、何で琴里の霊力の封印はうまく言ったんでしょうかね?

最初のアレは勢いに任せてやったら結果は成功でしたけど、理由がわからなくて………」

 

士道がボソッと疑問に思っていたことをそのまま話すと、令音がフラクシナスのモニターで琴里の好感度を示したデータを表示した。

琴里の好感度は常に最高値が維持されてあり、ところどころ線が消えている部分があった。

 

『………やはりか』

 

ドライグは答えに辿り着いたようだが、士道は違った。

 

「『………やはりか』じゃねえよ!!線が消えてるって事はこの辺は好感度がガタ落ちしたって事じゃねえか!!これじゃあ何で成功したか不思議で不思議で仕方ねえよ!!」

 

士道の疑問に令音が簡潔に答える。

 

「………ああ、その辺りはMAXの値を超えていたんだ。だから表示されないんだ―――カンストと言う言葉が一番正しい。

………琴里のキミへの好感度は常にMAXを維持し、下がるどころか時々上昇していたんだよ」

 

「………ん?って事はつまり―――」

 

………好感度がMAXをキープする時点で滅多にないことだろうが、全世界最高とも言えるスペックを誇る『ラタトスク』の機械ですらカンストするほどの数値を叩き出す琴里も大したものだろう。

そして―――士道もやっとこのデータを見てある真相に辿り着いた。そう、それは――――――

 

「………ああ、言っていたじゃないか―――琴里はお兄ちゃんが大好きだと」

 

令音が言った言葉で士道の考えた事は正解であったことが証明された―――しかし!!

 

「―――どおおおおおおっせぇぇぇぇぇいいい!!」

 

ドガッ!!

 

背中に何か衝撃を感じて士道は令音の胸元へとダイブする!!

倒れ込んだ士道と令音に顔から熱を放出した一人の少女がビシッと指を指す。

 

「そ、そんなこと有り得ないわ!!これはただの数値ミスよ!!」

 

―――琴里ちゃんである。士道の可愛い妹の琴里ちゃんである。琴里は士道を蹴っ飛ばし、令音の胸元へとダイブさせた。

―――色々と思いと正反対のことをしてしまうお年頃なのだ。

………俗に言う反抗期である。

 

そして、ここで問題が発生する!!令音の胸元へとダイブした士道は幸せそうな表情を浮かべ顔をさらに深く令音の胸元へ沈ませる!!

 

「―――ユートピア!!ここが俺のユートピア!!」

 

士道は琴里に蹴っ飛ばされて令音の胸元へとダイブしてしまった!!

琴里はハッ!と状況を冷静に捉える。変態兄は令音のおっぱいを堪能し始めている!!琴里は士道の服の襟を掴んで強く引っ張る!!

 

「―――っていつまでくっついてんのよ!?さっさと離れなさいよ!!」

 

「嫌だ!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!ここが俺のユートピア!!離れてたまるもんか!!―――お、おっぱいいいいいいいい!!令音さんのおっぱいぃぃぃぃ!!」

 

士道は絶対に離れまいと令音のおっぱいに顔を突っ込み、さらに顔を動かし、手でも触り始めた!!

 

「うっ、ううんっ………し、シン。いい子、いい子………」

 

『うおおおおおおお、うわあああああ!!うおおおおおおおんんんっっ!!』

 

離れまいと令音のおっぱいへしがみつく士道と、紅潮させながら子を可愛がるように士道の頭を撫でる令音。

………そして大泣きを始めるドライグ。

おっぱいにしがみつく士道の頭を撫でながら、令音は琴里の質問に答える。

 

「………琴里、装置に異常はなかった。これでどうやって間違いの証明を―――」

 

令音は琴里の指摘を一蹴する。琴里は令音の様子を見て不敵に笑みを浮かべ、令音に言う。

 

「今日の夕飯のメニューは激辛ハバネロカレーに決定しようかしら………」

 

「………すまないシン、きっと機械の故障だ」

 

「うへへへへへへへへ!!ユートピア、ユートピア!!」

 

琴里が夕飯の脅しをかけると、令音の言葉が一八◯度変わった。

令音さんは辛いものが大の苦手だ。まあ、それは置いておこう。真に問題なのはこの変態、五河士道だ!!

令音の胸に顔を突っ込み、幸せを全力で満喫している!!

堪忍袋の尾が切れた琴里は士道の脇腹を渾身の力で蹴り上げる!!

 

「離れろって、言ってんでしょうがああああああああああ!!!」

 

「―――ユートピアァァァァァァァ!!」

 

ドガッ!!ドオオオオオンンン!!

 

琴里の蹴り上げは、令音のおっぱいを満喫する士道を見事に蹴り飛ばし、艦橋の天井まで士道は到達した。そして、また床へと落下した。

 

「………ちっくしょう!俺は諦めないぜ!!もう一度チャレンジしてやる!!」

 

「いや、素直に諦めなさいよ!?」

 

起き上がり、もう一度令音のおっぱい目掛けて突進しようとする士道を琴里が押さえ込む!

士道は琴里に抑え込まれながらも、琴里に訊ねる。

 

「―――イデデデデデデ!!っていうか、お前寝てなくて良いのかよ?折紙に相当手酷くやられてただろ?」

 

琴里に卍固めされながらも、士道は訊いた。

琴里は士道の拘束を解除し、USBを取り出して話し始める。

 

「そうも言ってられないわ。やっと思い出すことができたのよ―――私たちを精霊にし、その記憶を操作した存在について………また記憶が消される可能性がある以上、アンタと私の頭の中だけに留めておくのは愚の骨頂、バックアップを取っておいた方が賢明でしょ?」

 

「確かに!―――でもな、今日くらいゆっくり休んでもいいんじゃないのか?無理は良くない、明日にでも―――」

 

「こういうことは出来るだけ早いうちに済ませておく方が賢明だわ………ていうか、アンタにだけは『無理するな』なんて言われたくないわよ。いつもいつも自分の命を顧みず他人を救おうとするアンタにだけはね―――まあ、善処するわよ」

 

―――ごもっともな意見である。士道も「ハハハ、手厳しいなこりゃ………」と恥ずかしそうに頭をポリポリとかいていた。

艦橋から出ようとした時、琴里が振り返らずに士道に訊く。

 

「ねえ、士道―――私の霊力を封印するときに言ったことって………………本当?」

 

士道は琴里の表情を伺うことは叶わなかったが、士道は間髪入れずに答える。

 

「ああ、大好きだぞ琴里、妹としても――――――」

 

「そっちかああああああああいいい!!」

 

琴里はくるりと向きを変え、士道の顔面を目掛けてドロップキック!!

しかし、士道は華麗に躱して琴里を空中で受け止める。

―――空中お姫様抱っこである。

 

「きゃっ!!ちょ、ちょっとなにすんのよ!?」

 

「―――ったく、最後まで聞けよ琴里………一人の()()()としても大好きだぞ!」

 

「………ッ!!!!!!」

 

士道が述べた言葉に、琴里は士道の腕の中で顔をカアアッと熱を発しながらユデダコの如く顔が真っ赤になった。

琴里は恥ずかしさと嬉しさのあまり、顎を引いて顔を隠した。

………その様子を見た士道は琴里をからかう!!

 

「お、その様子じゃあ信用されてないな―――よし!!ここは俺の気持ちが真実だと証明するために琴里のおっぱいを揉んでやるぜ!!」

 

「は、はあ!?」

 

士道の突然の言葉に琴里は慌てて顔を上げる。視界内に映ったのは、鼻の下を伸ばしスケベ面をし、下品な笑みを浮かべた士道の姿が!!

そして―――士道の右手が怪しい動きをしている!!

すぐさま琴里を立たせて背中から腕を回してパイタッチ!!

 

「ぐへ、ぐへへ、ぐへへへへへへへへへ!!うん、いいおっぱいです!!

琴里、デートん時は水着の上からだったが、今回は服の中から揉んでやるぜェェェェェェェ!!」

 

「ちょっ、やめ―――やめなさい、このド変態があああああああ!!!!」

 

今度は服の中に手を入れ始めた士道に、琴里は士道の腕の中から強引に抜け出し、空中で士道の顔面を狙って回し蹴り!!

―――しかし、士道は神速を発動し躱す!!

そして物凄いスピードで自分を目掛けてダイブしてくる変態兄の姿が!!

 

「恥ずかしがるなよ琴里ぃ〜!お兄ちゃん琴里のおっぱいは大好きだぞぉぉぉおおおおおお!!ぐへへへへへへへへへ!!」

 

「どうしてこの変態は、いつもいつもこうなのよぉぉぉおおおおおお!!!」

 

こうして天宮市の上空一五◯◯◯メートルに位置する空中艦『フラクシナス』の艦内でレベルの高い兄妹のジャレ合いは始まった。(士道がしているのは完全な犯罪である。」

両手を挙げて、下品な笑みを浮かべて全力疾走をする変態から全力で逃げ回る中学生司令官。

こうして、いつもの日常が戻ってきたのであった。

 




次元の守護者のキャラが酷い!?→次元の守護者でまともな子は一人もいません。

乳気について少し解説しようと思います。
―――乳気とは、士道くんの戦闘力に大きく影響するもので、乳気に満たされれば満たされるほど士道くんはパワーアップします。
女性から放たれる乳気は以下の通りで区分され、全てが滞りなく満たされれば士道くんは大幅にパワーアップをすることが可能です!!
乳気が枯渇してしまえば、士道くんは戦闘力が激減してしまいます。
※この乳気はこれからちょくちょく出てきます。

Bサイズ80以下―――ロリニュウム
※四糸乃、琴里

Bサイズ80〜90まで―――ビニュウム
※十香、くるみん

Bサイズ90以上―――キョニュウム
※令音

現時点ではこの五人ですね。椎崎と箕輪は入れてません。

ヒンニュウムではありません、ロリニュウムです。
士道くんはこだわりのないおっぱいドラゴンです。大きいおっぱいも、小さいおっぱいも大好物です!!
彼は貧乳とは言いません!!

番外編の二話が書き終われば設定を変更しようと思います。

次回は番外編 『くるみんスターフェスティバル』です!
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