今回はくるみんです。原作では大人の魅力で士道を誘惑しタジタジにさせる狂三―――しかし!!
本作品では士道の欲望の餌食役となっている、くるみん!!
果たして今回はどんな辱めをうけるのか!?
※更新が遅れ大変申し訳ございません。
七月七日―――それは引き離された二つの星、牽牛星と織姫星が一年で最も見やすくなる一日だ。
これは、彦星と織姫が天の川を超え年に一度の会合を果たすことがこの現象を証明していると、伝説では語られている。
しかし、七月七日に雨が降ると天の川に現れる橋が消え、彦星と織姫は年に一度の会合を失うことになるとも伝えられている。
しかし………………そんなことは我関せずで、いつもの日常を過ごすものがいる。
それは――――――
「………おっぱい―――おっぱい、おっぱい!おっぱい!!」
真っ暗な暗闇に亀裂が入り暗闇は砕け散る。そして、辺りを眩い光が照らす早朝一発めから女性の胸を求める変態がいた―――乳龍帝おっぱいドラゴンこと、五河士道である。
士道はベットから抜け出し、カーテンを開け部屋に光を入れ、大きく伸びをする。
そして一呼吸入れた後、野望を胸にキッチンへと向かう。
「今日も一日、おっぱいの加護がありますように!!」
グヘヘヘヘヘ!と下品な笑みを浮かべて階段を降りる士道。完全に末期である。
『おっぱいの加護か………俺の心は砕け散りそうだ、グスン………』
士道の左手から力弱い声が聞こえてくる。―――彼の相棒のドライグである。
………ドライグは士道の乳ネタに随分と心労が絶えず、ここ最近では自慢のツッコミをなりを潜めている。
―――辛いだろうが頑張れドライグ!!
キッチンへと着いた士道は、フライパンを乗せて火を付ける。卵を割り、卵とベーコンを炒めていた。
その時、ふと冷蔵庫のカレンダーが目に入り、ボソッと呟く。
「そういや、今日は七夕だったな………ていうか、よく晴れたよなぁ〜。
五年前から去年までは連続して、どういうわけか七夕の日だけ日本全国大雨。去年なんかは七夕の日に日本史上最強の台風が観測されたぐらいだしな………」
―――この世界では五年前から七夕の日はずっと雨が降っていたのだが、今年は関東市は見事に晴れているのだ。
………毎年この日になると織姫と彦星が年に一度の会合をする。
彼氏がいない自分を横目に、イチャコラしているのが気に食わなかった『帝釈天タマちゃん』が意図的に雨を降らせていたのか、そうでないのか。
いずれにせよ、真実はわからない!
『………せっかくの七夕で今日は休日だ。精霊どものストレス解消に付き合ってやるのが賢明だろう――――――相棒、そろそろ目玉焼きが完成しそうだぞ?』
「あ、ほんとだ」
士道の左手からドライグが話しかけ、士道はフライパンの中の目玉焼きとベーコンを皿な盛りつける。最後にレタスとご飯をついで今日の朝食が完成した。
士道が完成した朝食を運んでいる時、ドライグは話を続ける。
『それで、今日の予定はどうするつもりだ?―――精霊たち全員を連れて街を歩くのか、誰か一人を選ぶのか………最近はデートが続いたから全員のストレスを一度に解消にかかるべきではないのか?』
ドライグのアドバイスに士道は首を縦に振り、下品な笑みを浮かべ、鼻の下を伸ばし始める!
………この男にシリアスが続くのは、ほんの数秒である。
「そうだな!うちの可愛い織姫ちゃんたちと七夕ごっこをするのも悪くないな!!紳士な彦星こと―――この俺様が純粋無垢な織姫ちゃんたちのおっぱい揉み放題………………や、ヤベェ!!想像しただけで興奮してきたぜ!!ぐへへへへへへへへへ!!」
『………………インドラ、この腐った変態に天の裁きを〜』
―――士道くんはブレない。両手が怪しい動きをしており、下品な笑みを浮かべ犯罪者道をまっしぐらである。
ドライグは疲れ果てたのか、棒読みでセリフを述べていた。
そんな時だった………
朝食を求めて一人の美少女が五河家へと入って来た。
「士道さん、おはようございますわ」
白いブラウスに白いスカート―――黒ではなく今日は白一色でコーディネートしてきた士道のゴッデス、くるみんだ。
靴を脱ぎ部屋へと入ってきたくるみんに、士道は朝食を取り付けた皿をテーブルへと持って行く。
くるみんも士道のお手伝いとして残りのお皿を持っていき、士道の隣に座る。
「おはようくるみん、今日はまた一段と輝いているな〜!」
白一色でコーディネートをしたこともあり、窓から入ってくる太陽の光がくるみんを際立たせている。
………その姿はまさに、光を放つ美少女―――いや、士道くんには女神と見えているのだろう。
士道の言葉にくるみんは手を口に置いて微笑む。
「あらあら、ありがとうございますわ。―――ところで士道さん、今日のわたくしはどのあたりが輝いていますの?」
くるみんが訊ねるなり、士道くんは鼻の下を伸ばして下品な笑みを浮かべながら答える!!
「おっぱい!!おっぱいおっぱいおっぱいおっぱいおっぱい!!!!今日のくるみんのおっぱいは光を放っている!!くるみん、その輝くおっぱいを揉ませて!!」
「―――ひっ!?け、結局は胸なんですの!?………あ、ああああああの士道さん!?」
「おう!!発光する女神の美乳―――そう、今日のくるみんのおっぱいは『
『………おっぱい、おっぱい―――しんにゅう………』ガクッ………
―――壊れた暴走列車は止まらない!!悲鳴をあげるくるみんに士道はゾンビのように両手を卑猥に動かしなが迫っていく!!終いには士道はくるみんの意思関係なく神乳めがけて全力前進!!
………ドライグは精神が限界に達し、士道が呟いた言葉を口ずさみ泡を吹いて気絶した。
「―――し、士道さん!ご飯にしませんこと!?冷めてしまわないうちに………」
迫り来る士道にくるみんはテーブルの上に運んだ朝食を指差す。士道は涎を垂れ流しながらも、テーブルへと視線を向けた。
「………そうだな、まずは飯にすっか」
士道がテーブルに着き、ホッと胸を撫で下ろしたくるみん。取り敢えずひと時の安全を得た犠牲者である。
士道とくるみんが朝食を食べ始めていた時、士道が話し出した。
「そういや、今日は七夕だよな――――――くるみん、何か予定とかはあるか?」
「………わたくしはこれと言った用事はございませんわ」
くるみんの答えを聞いた士道は、自分の心をありのままに伝える。
「それなら、俺と街にでも出かけないか?今日は五年ぶりに天宮七夕祭もやってるだろうし、イベントには事欠かないと思うぜ?」
「………っ!そ、それはデートのお誘いなんですの!?」
士道のお誘いに、くるみんは士道に顔を近づけて訊ねる。………くるみんの顔はパァっと明るい笑顔で士道に距離を詰めていた。
「まあ、そうとも言うかな―――それで、くるみんはどうだ?」
「もちろんですわ!わたくしも士道さんと行きたいところがございましたし、大歓迎ですわ!」
士道のお誘いをくるみんは満面の笑みで承諾した。くるみんは非常に嬉しそうに微笑んでいる。
………十香や四糸乃もいるなか、自分をデートに誘ってくれたのだ。嬉しく無いわけがないだろう。
「それじゃあくるみん、飯食ったら早速出かけるか」
「ええ、ええ!ご一緒しますわ士道さん!」
「―――楽しいデートになりそうだぜ、グヘヘヘヘヘヘヘヘヘ!!」
こうして士道とくるみんの七夕デートが始まろうとしていた。くるみんが承諾してくれたことに士道は下品な笑みを浮かべていたが、くるみんは敢えてそれを見ないようにしていた。
―――………
「五年ぶりに快晴の七夕だからな………どこも張り切ってやがる」
士道はくるみんと腕を組みながら天宮市の商店街をぶらぶらと歩いた。商店街には七夕の時にしか見られないものがあたり一面に出回っていた。提灯やら豪華な飾りなどがどの店にも飾られていた。
「士道さん、見てくださいまし。変わったものばかりありますわ―――ほら『笹の葉カステラ』に『織姫わたあめ』!あれは『牽牛ビーフジャーキー』もありますわ!」
『………最後の「牽牛ビーフジャーキー」はマズイのではないか?彦星が牛を食うのは色々と異議がある』
士道と腕を組んでいるくるみんが目をキラキラとさせながら商店街の商品を指差していた。
そして、ドライグのツッコミは今日も冴えている。ツッコミ要素は見逃さない!!
「どれも美味しそうだよなぁ。そして俺の目の前の女神の果実もこれまた………グッヘヘヘヘヘヘヘ!!」
………そして、一切ブレる事を知らない士道くんである。士道はくるみんの胸部に実った女神の果実に大喜びである!
腕を組んでいない反対側の手をわしゃわしゃと卑猥に動かし始めた士道くんに、くるみんは距離を取り小さく悲鳴をあげる。
「―――ひっ!?あ、あああああああの士道さん!?それはわたくしの胸ですわ!!」
「グヘヘへへへへヘヘヘ!!」
七夕だろうが、神々の黄昏だろうがそんなことは関係ない。士道くんの目の前におっぱいがそれは餌となる!!
………くるみんの苦労はまだまだ続くのである。
『………その辺にしておけ相棒。今は他にやるべきことがあるだろう?』
ドライグの言葉で士道はハッと我にかえる。………士道くんをシリアスに戻すこともドライグの仕事である。
「悪りぃくるみん、おっぱいに夢中になり過ぎた………それじゃあ、くるみんの目的地に行こうか」
「ええ、こちらですわ士道さん」
いつもの士道くんに戻った事を確認したくるみんは、士道と再び腕を組んで歩き出した。
十五分ほど歩くと、建物が見えてきた。その建物はプラネタリウムだった。
「おっ!プラネタリウムか………さすがはくるみん、こいつは一本取られた!全く予想してなかったよ」
「わたくし、一度ここに入ってみたかったんですの」
くるみんの目的地はここのようだ。それを聞いた士道は、自動販売機で二人分の入場券を買い、空いている席へと腰を下ろした。
しばらくすると会場が暗くなり、アナウンスが聞こえてきた。
『―――本日はプラネタリウムにご来場いただき、誠にありがとうございます。本日のプログラムは―――』
挨拶が終わると同時に半休系の天井に数多の星々が映し出される。
士道とくるみんは天井を見上げてそれを眺めていた。そして、その天井に星々によって形成された天の川が流れ、映し出されている星の中でひときわ大きな輝きを放つ星が二つ現れる。
『―――天の川のほとりに住んでいた天帝の娘•織姫は、美しい布を織る天女でした。しかし、牛飼いの彦星と結婚してからは、仕事を忘れ遊んでばかり。二人の様子を見かねた織姫の父・天帝は二人に仕事をさせるために、二人を引き離してしまいました―――』
今日のプラネタリウムのプログラムは七月七日らしい七夕の由来についてのプログラムのようだ。
そのプラグラムを聞いていた時、くるみんが士道の手を強く握ってきた。怪訝に思った士道はくるみんの方に顔を向ける。
くるみんは士道の顔を見ていたのだ。
「ん、どうかしたかくるみん………?」
「織姫と彦星は、天の川に遮られ、一年に一度しか会うことが許されないのですわよね?」
「そのように伝えられているな………他には、七月七日に雨が降れば天の川の橋が消えてその年は会えなくなるとかも聞いたことがあるぜ」
士道がくるみんの問いに答えると、くるみんは再び天井へと視線を戻した。くるみんはすぅっと息を吸った後、再び士道に訊ねる。
「もし………もしもですわ。何年も、何年も………七月七日に雨が降り続いて二人がずっと会えなくなるとしたら―――二人は、互いを想いあっていられるのでしょうか」
「う〜ん………これはまた難しい質問だな。でも、どうしてそんなことを?」
くるみんの質問に士道は返答に困り、眉根を寄せた。くるみんは話を続ける。
「時間はなによりも優しく、そして残酷ですわ。年に一度の逢瀬の機会を失った悲しみを癒し、そして永遠を誓い合った二人の愛でさえやがて風化させてしまう………お互いを確かめ合う時を失い続けた二人の心には、一体いつまでお互いが存在するのでしょう」
くるみんは再び視線を天井から士道の方へと戻した。くるみんは答えが欲しそうに士道を見つめていた。
それを見た士道は、手を額に当ててなんとか考えたのち、一つの答えに辿り着いた。
「―――織姫と彦星の二人なら、例えどれだけその時を失おうとも、お互いの心に愛はあるんじゃないかな?」
「………なぜそう思うんですの?」
士道が出した答えにくるみんは首を傾げていた。その理由を士道は簡潔に述べる。
「―――どれだけ時が流れようとも忘れる事のできないものも俺はあると思うんだ。
―――俺で言うなら家族、そして十香や四糸乃、くるみんたちとの日常さ。今の俺にとっては毎日が宝物なんだぜ?初めは琴里と二人での生活だったけど、今では三人も家族が増えたんだ………そんでもってどんどん笑顔が増えて、賑やかになっていく―――そんな生活が堪らなく嬉しいんだ。
天の川の例じゃないけど、例えお前たちに会えなくなったとしても、俺の心の中で一生消えることはない。万人に誇ることのできる俺だけの宝物さ」
「士道さん………………」
くるみんは士道の答えを目を丸くして聞いていた。士道は「それに………」と話を続ける。
「―――もう一個理由がある。世の中には忘れちゃいけねえこともある………年に一度しか逢うことのできない織姫と彦星なら尚更だろう」
士道はプラネタリウムの天井の数多の星々を見上げながらくるみんに言った。士道が挙げた二人の場合なら、二人で過ごした数々の思い出がいい例だろう。
その時、くるみんは士道にまた訊ずねる。
「………士道さんにも、それはありますの?」
「ああ、当然だ。俺の場合はもう会えなくなっちまった仲間やダチだな………………俺さえ忘れなければ、俺の心の中で生き続けることができる―――俺はそう信じてる」
士道の顔はどこか儚げな表情でプラネタリウムの天井を見上げていた。懐かしそうに、そしてどこか悲しそうな表情を浮かべて………士道の中で忘れてはならないもの―――それは前世の記憶だ。もう彼は兵藤一誠ではなく、五河士道だ。
しかし、前世での生活を忘れることをどうしても許せなかった。かつての大切な友を………そして仲間たちを自ら消してしまう行為だと彼は思っていたのだ。
「―――なんか随分と脱線しちまったけど………俺は絶対に忘れないぜ?お前たちとの出会いと日常を。どんだけ時が流れようが絶対に忘れやしない!………転生しようが関係ねえ、絶対に思い出してやるぜ!!」
士道は席から立ち上がって堂々とくるみんに宣言をした。その結果、静かなプラネタリウム内に大きな声が響き渡る!
注目を一身に集めることさえ、彼は厭わなかった。
………ちなみに、士道の宣言を聞いたくるみんはクスクスと笑っていた。
『………相棒、時と場所を考えろよな?見てみろ、会場の視線が全て注がれているぞ?―――もう子供で誤魔化せる年齢ではないだろうに………そろそろ成長したらどうなのだ?』
―――ドライグさん、ごもっともでございます!!しかし、士道も負けじと猛反発をする!!
「うるへー!俺はまだ子供だよ!高校生は立派な子供だ!」
言い合いを続ける士道とドライグにくるみんは士道の腕を引っ張る。………これ以上ここに留まるのはまずいと思っての行動だった。
「士道さん、そろそろ出ませんこと?わたくし、もう十分ですわ」
「………ん?いいのかくるみん、最後まで見なくて」
「ええ、満足しましたわ」
くるみんの一言で士道たちはプラネタリウムから出て行った。士道は腕時計をみると、時刻はすでに正午を回っていた。
「………取り敢えずどっかで飯でも食うか。くるみん、次は短冊でも書きに商店街に戻るか?それとも、天宮クインテットで買い物にでも行くか?」
「短冊を書いてみたいですわ」
「よし、決まりだな。んじゃあ行こうか、近くに美味いレストランがあるんだ。そこで飯を済ませて書きに行こうか」
「ええ!」
士道とくるみんは再び腕を組んで歩き始めた。二人とも心の底からデートを楽しんでおり、いい笑顔をしていた。
―――ところが………
「――――――ねぇ、あれ腕組んでない?」
士道とくるみんがプラネタリウムを出た頃、電信柱の陰から二人を伺う一人の少女とまぶたにクマを作った眠そうな女性がいた。
………少女の方は嫉妬で目から光が消えており、電信柱にヒビを入れながら二人の様子を眺めていた。
「………ああ、見せつけているかのようにね」
眠そうな女性があくびをしながら答えた。少女はさらに電信柱に入ったヒビを加速させる!
光の失った瞳で迫力のある笑みを浮かべ、何処からか炎を纏った斧を取り出し、二人に構えた。
「フフフフフフフフ、見間違いじゃないんだ―――よし、殺すわ。令音、後始末は任せたわよ………」
「………落ち着きたまえ琴里。キミが苛立っても仕方がないだろう」
そう、この二人は琴里と令音だ。琴里は朝起きたら士道がいない事を怪訝に思い、探していたら―――くるみんとデートを楽しんでいたのだ!
………ちなみに、士道からは事前の報告も無かったため、何をしているのかと思えば―――この通りである。
大事なおにーちゃんを泥棒猫に掻っ攫われてしまったのだ!!
これを黙って見過ごせるほど琴里のおにーちゃんに対する劣情は生易しいものではない!!
「『
………どうやら琴里ちゃんの忍耐力は限界値に達したらしい。それを見た令音は慌てて琴里を止める。
「………琴里、シンが一番愛している女性はキミさ。シンも言ってたじゃないか『琴里のことを宇宙で一番愛している』と」
「―――おにーちゃん大好き!」
「………………」
―――ちょろいもんである。士道の言葉を思い出した琴里はすぐに武装を解除し、二人を見守ることに決めた。
その様子を見た令音はやれやれとした表情を浮かべ黙り込んだ。
………士道くんのデートにはお邪魔虫が着くのはいつものことである。
―――◇―――
士道とくるみんの二人が商店街を目指した歩いている時だった。
一緒に歩いていたくるみんの足が止まる。士道はくるみんに視線を向けた。
「………ん、くるみん、一体どうしたんだ?急に足を止めて………」
「士道さん、あれを」
士道の言葉にくるみんは指を差した。くるみんの指が差していたいたのは小さな結婚式場と『ウエディングドレス試着無料!』と書かれた看板だった。
士道はくるみんに訊く。
「―――えーとだなくるみん、まさかウエディングドレスを着たい………だなんて言わないよな?」
士道が言うと、くるみんは手を口に当て寂しげに目を潤わせた。
「え!?駄目、ですの………」
「―――ああ、もうわかったよ!!」
悲しげに瞳を潤わせているくるみんに士道はすっかり折れてしまった。
乙女の涙は男の意思を挫くことにおいては最強の武器である!
―――特にこのおっぱいドラゴンには効果抜群だ!!士道はくるみんの思いを酌むことにした。
「くるみんが着たいって言うなら、どんな手を尽くしてでも着させてやる!!受付のお姉さんがダメって言おうが心配すんな。拒否すれば受付のお姉さんを全裸にしてやればいいし、それでもだめなら式場を爆破するぞって脅しをかければ一発でOK出してくれるさ………それに、くるみんのウエディングドレス姿――――――グへへへへへへへへ!!!これで一ヶ月はオカズに困らないぜ!!」
「―――ひっ!?」
いつもの表情でとんでもないことを言っている士道くん。彼の頭の中には精霊の願いが成就することを最優先にしているのだ!!
ちなみにくるみんが悲鳴を上げたのは、士道の最後のセリフである。
くるみんは分かっていなかったのだ―――自分がおっぱいドラゴンに極上の
「んじゃあ待ってろなくるみん!許可もらってくるからよ!グへへへへへへへ!!!!」
士道はくるみんに手を振りながら式場の受付へと向かって行った。
「―――わたくし、選択を間違えてません………わよね?」
くるみんはどうやら後悔していたのか、心配で気が気で無かった。
………そして、式場の受付の方に視線を向けると――――――受付のお姉さんが一人、服が木っ端微塵に吹き飛び全裸になっていた。
士道くんが『
『うおおおおおおおおおおおおおんんっっ!!!』
「………ま、まさか本当にやるとは思いませんでしたわよ、士道さん!?」
くるみんは士道の行為にドン引いていたのは言うまでもない。そして、式場内から聞こえてくるとドライグの悲鳴!!
そして、鼻から鼻血を垂れ流し、満足そうな笑みを浮かべて式場から出てくる士道くんの姿が!!
「くるみ〜ん、OK貰えたぞおおおお!」
「………………」
ウェディングドレスを着たかったくるみんなのだが、どうにもすっきりしなかった最悪の精霊『ナイトメア』の分身体、くるみんなのであった。
―――………………
「すっげ〜楽しみだなドライグ!ウェディングくるみん!!」
『ううっ、ぐすん………相棒、もう少し俺の心を労ってくれ。神器の奥深くに引きこもってやるぞ!?』
ドライグの心は疲弊していたようだ。今日だけでも相当の乳ネタを受けたのだ。ドライグは本当によく頑張っているだろう。
………さて、現状はこんな感じだ。
受付に行った士道くんだったが、案の定『学生では無理です』と丁重に断られてしまったのだ。しかし、彼はこの程度で諦めるほど出来た人間ではない!
二人いた受付の女性の片方が着ていた服を下着ごと『
そして、彼は今控え室で花嫁のくるみんの準備が整うのを心待ちにしている状態である。
『………このまま相棒が牢屋に直行のシナリオが完成しつつあるのは俺の勘違いか?』
「そう心配することないぜドライグ、余計なことすりゃドカンだからなぁ。バカな真似はしねぇだろ」
………暇な時はよく話し合っているこの二人である。そして、数分が経過したのち、受付のお姉さん(全裸にされてない方)がやって来た―――なぜかやたらとやる気満々で………
「ささ、新婦の準備ができましたよ!新郎さん、こちらへ!」
「は、はあ………」
受付のお姉さんの態度を怪訝に思いながらも士道は扉に手をかけ、開ける。
失礼な事+脅しをかけるような真似をしたのに、このやる気………一体どうしたことなのやら。
眩い光とともに現れたのは―――女神と呼ぶべき神秘的な美少女の姿があった。
「――――――」
士道はその女神の美しさに魅入られ、硬直してしまった。
日頃とは対照的な今日の白一色でコーディネートされたくるみんも綺麗だったが、今のくるみんはそれすら凌駕していた。
自ら光を放っているかのような純白のドレスがくるみんの華奢な肢体を包んでいる。
さらに、身体のラインに沿うように縫製された上半身部分に、手触りの良さそうな長手袋。腰元からのびた長いスカートには、隙間なく精緻な衣装が施されていた。
くるみんの特徴とも言える長い黒髪は綺麗に結い上げられ、これまた真っ白なベールに飾られている。
貌にはうっすらと化粧が施されており、そのあまりの美しさに士道は魅了されてしまったのであった。
「あ、あの………そ、そんなに見つめられると、照れてしまいますわ」
「!………最高に綺麗だ」
「――――――ッ!!」
士道がさりげなく言った一言に、くるみんはボンッ!と真っ赤に顔を染めてしまった。
くるみんは恥ずかしそうに「あぅぅ………」と下を向いていた。
「ささ、もしよろしければチャペルの方まで。写真もサービスしちゃいます!」
「え!?よろしいのですか!?流石にそれは別料金になるのでは―――」
「何を言ってるんですか!!これが………これが最後になるかも知れないのですよッ!」
女性の神対応に士道は疑問を隠せなかった。取り敢えず女性に従うことにし、写真を撮ることを決めたのだが士道の表情は気難しいものだった。その時、くるみんが耳打ちしてきた。
(………わたくしがフォローを入れておきましたわ。『彼の先ほどの行動はわたくしのためを思っての行動ですの。わたくしは難病に冒されており、余命幾ばくもございません。彼はそんなわたくしに、せめて花嫁衣装だけでも着させてあげたい』と)
(………すまないくるみん、ありがとな)
くるみんは士道の行為にフォローをしてくれていたからの、この対応を呼び込んだのだ。
受付のお姉さんはくるみんに気を遣ってくれたのだ。もちろんくるみんのフォローは士道の行為を正当化するための誤魔化しなのは言うまでもないが………………
そして、祭壇に上がった士道とくるみんに、受付のお姉さんがデジタル一眼レフを手に取り、シャッターに指を合わせた。
「ささっ!撮りますよお!」
パシャッ!
シャッターが切られると、本当の新婚夫婦を思わせる二人の写真が撮れていた。
その写真に士道もくるみんも満足そうに見つめていた。そして、傷が付かないように包装してカバンに入れた。
………この写真が現実の光景になる日が来ることは、そう遠くではないのかもしれない。
―――◆―――
士道とくるみんが着替えて、結婚式場を後にした時にはすでに夕焼けが強い輝きを放つ時間となっていた。
そんな中、二人は商店街を再び訪れていた。その理由はくるみんの「短冊を書きたい」という最後のやりたいことを完遂するためである。
士道はどの笹に短冊をくくりつけるかを見ていた時、他の人が書いた願い事を見ていた。
『可愛い彼女が欲しいです!―――殿町宏人』
『十香ちゃんが幸せになれますように。―――桐生愛華』
『リア充モンスター五河士道に天罰が降りますように!―――浅井』
『シドー、カツカレーが食べたいぞ。―――夜刀神十香』
『人の目を見て話せるようになりたいです。―――四糸乃』
『四糸乃が幸せになれますように。―――よしのん』
『またいつか彼との日常を過ごせますように。―――村雨令音』
『おにーちゃんの変態が少しはマシになりますように。―――五河琴里』
などなどたくさんの願いが飾られていた。その中で士道が最も注目したのは、この短冊だ。
「―――なあドライグ、『村雨令音 彼氏』ってフラクシナスの捜索エンジンに引っ掛けたら、その人物特定できるかな?」
『………その短冊ではなかろう。相棒が最も気にするべきは――――――それで、仮に特定できたとしてどうするつもりだ?』
ドライグが士道の左手の甲に光を点滅させながら士道に訊いた。士道は間髪入れずに返答する。
「消すに決まってんだろ!?―――俺からあの極上おっぱいを奪う輩は全員死刑だ!あのおっぱいは俺だけのもんだ!!」
………ちなみにだが、士道の身近なメンバーの中で最も士道が狙っているおっぱいは令音のそれである。
それを何処の馬の骨に取られることになると分かれば、消しにかかることは必定だ!!
―――地味に彼は令音が精霊になることを願ってたり、願っていなかったりしているのだ!!
ちなみにこれの理由は至ってシンプルだ“理由さえあれば琴里から暴力を振るわれる心配は無い”これである!!
学校では昼休みに物理準備室で、休日はフラクシナスの休憩ルームで令音の、膝枕やらおっぱいやらを堪能している時、琴里にバレれば鉄拳やら殺人キックやら
しかし、万が一令音が精霊なれば理由ができる。その結果攻略のために好き放題やってもお咎めなしなのだ!!
………やり過ぎれば鉄拳やら殺人キックが飛んでくるかもしれないが。
『―――存外、相棒の願いは叶うかもしれんな………………相棒、お前がくだらん事を考えているうちに、時崎狂三は短冊を書き終えたみたいだぞ?』
ドライグが言った通り、士道の方へと足を進めるくるみんの姿があった。くるみんは小走りをしながら士道にたずねる。
「士道さん、短冊はくくりましたの?」
「………ああ、俺はもうここにくくりつけたぜ?」
士道が自分がくくりつけた短冊を指差した。彼の短冊には、『みんなが笑顔で幸せに暮らせますように。―――五河士道』といかにも彼らしい願いが書かれていた。
「くるみんもこれからどっかに短冊をくくりつけるだろ?書かれてることが見られたくないなら俺は向こうに行くけど………」
士道が気を利かせて、離れようとするがくるみんは首輪横に振った。
「いえ、構いませんわよ士道さん」
そう言ったのち、くるみんは士道に背中を向けて自分の願いを書いた短冊を士道の短冊の横にくくりつけた。
『士道さんと一緒に笑っていられますように。―――時崎狂三』
短冊をくくり終えたくるみんに士道は手を差し出す。
「そろそろ暗くなってくるし、帰ろうかくるみん」
「ええ、今日はありがとうございましたわ。士道さん」
こうして士道とくるみんの七夕デートは終了した。くるみんが例えた天の川の例のように、何年も雨が降り続け、二人が会えなくなったとしても、今日のこの日を決して忘れることのない素敵な一日になったことだろう。
原作では最後に『ナイトメア』本体の狂三が現れ、分身体の狂三が回収されるシーンがあり、そのシーンで士道がくるみんを守るためにジャガーノートドライブを発動させることも考えましたが、必要無いと思いカットしました。
次回も番外編で『働く琴里さま』です。
この章のメインヒロインの琴里ちゃんです。