デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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この話から本格的にこの章が始動します。

本章のメインヒロインの六華ちゃんをはじめ、新たな次元の守護者に、本作品のラスボスの一角など、この章は本作品の中でも特に重要な役割を果たすと思います。

それでは、本編です! どうぞ!


二話 どうやら異世界みたいです!

 

 

それはいつの記憶だろうか………一人の小さな少年が車から降り、地に足をつけた。

その少年の目の前に映った光景は、一戸建ての住宅とその玄関の前で微笑んでいる夫婦と、夫婦の陰からひょっこりと顔を出して少年を見つめる小さな赤毛の女の子の姿だった。

 

(………………)

 

少年は何も言わず、大人の男性に連れられるがままにその夫妻に預けられることになった。

………この少年のことを気に入った夫妻は引き取りたいと少年が預けられていた施設に申し出てくれたのだ。

どのようなプロセスを経てそうなったのかは、少年は知らなかった―――しかし、ここから少年の止まっていた時が動き出した。

 

(………こんにちは、私たちは今日から家族よ)

 

(………今日からキミは【五河士道】だ。私たちの息子―――五河士道だ!)

 

これから少年の父と母になる夫婦の言葉を聞いた少年からは、涙が溢れ出していた。真っ暗なトンネルを抜け、光が溢れる外に出た時のように―――彼の第二の人生はここから始まった。

 

(―――おとうさん、おかあさん………)

 

………全てを失い、壊れそうになっていた心に希望の光が見えた。自分を守ってくれる人。そして、自分が愛してもいい人。

その少年は、立ち上がることを決めた―――過去を忘れず、そして自分がこの愛すべき家族を守っていこうと。

 

この記憶は―――五河士道の始まりとも言える大切な記憶だった。

 

 

 

 

 

 

 

―――◇―――

 

 

 

 

 

 

「………………………」

 

五河少年が成長した姿である士道は、体を起こした。ぼんやりとする意識の中、少年は目の中の雫を拭い飛ばした。

次元の渦に巻き込まれ意識を失っていたが、誰かがベットの上まで運んでくれたらしく、士道はそのベットで眠っていたのだ。

自分が今いる部屋にはベットしかなく、他には特に目立つものはなかった。

 

『………目が覚めたか相棒―――とても良い家族に巡り会えたな』

 

左手の甲に円状の光が現れ、点滅を繰り返していた。相棒のドライグと士道は繋がっているため、夢を互いに共有することができる。―――前世ではイッセーの如何わしい夢を呆れながら溜息をついていたが、士道が先ほどまで見ていた夢は、ドライグも感慨深い様子で感想を述べていた。

 

「………ああ、万人に誇れる自慢の家族だからな」

 

士道も自分がどれだけ幸せであるかは理解している。彼が立派に成長できたことは、五河家に引き取られていなければ叶っていなかったかも知れない―――だからこそ、いずれ自分が守っていこうと誓ったのだ。

 

『そうか………それは結構なことだ――――――さて相棒………お客様が来たようだぞ?』

 

「………どうやら、そのようだな」

 

ガチャ………

 

士道がいる部屋のドアが開き、誰かが入ってきた。部屋に入ってきたのは、金色に輝く美しい髪が腰まで伸びている、アクアマリンを思わせる水色の瞳。身に纏っている衣装は袖と緋袴が長い巫女装束。年は士道と同じくらいの美少女だった。そして、士道が最も注目したのは、非常に成長している胸だった。令音に匹敵するほど豊かなものをその少女は持っていたのだ!!

 

「………お目覚めになられたみたいですね」

 

少女が士道を見て口を開いた。士道は左腕に宿るドライグに語りかける―――胸の中に宿る熱き思いを!!

 

(おい見てみろドライグ、アレは人類が産んだ至宝だ!!俺は今すぐあの素晴らしいお乳にむしゃぶりつきたい!!どうだドライグ、俺と一緒に揉まないか?)

 

部屋に入ってきた少女を見つめて(特に胸を)士道は卑猥に両手をわしゃわしゃと動かす!!

グヘヘヘヘヘ!!と犯罪者真っしぐらな笑みを浮かべて息を荒くしている!!

しかし、少女はそんな士道を見て頭の上に?マークを浮かべて首を傾げている!自分が危険な状況に置かれていることを彼女は理解できていない!!

 

『………………相棒、あの小娘に今すぐ伝えてもいいか?お前が思っていることを今すぐあの小娘に伝えてもいいか!?目の前にいるこの男は―――女性の胸を触ることが趣味の変態クズ野郎だと!!』

 

(好きにしやがれ!どうせ俺があのおっぱいにむしゃぶりつく事実に変わりはねぇっ!!)

 

『あああああんまりだああああああああ!!!!巨乳、キョニュウム………はぁ、はぁ………俺は、俺は乳龍帝などではないのだあああああああ!!』

 

―――おっぱいあるところに乳ネタ有り!士道くんはブレない、本当にブレない!いつも通りの平常運転だった。

ドライグの一時停止を減速ではなく、加速をする事でブッチギリで無視をして、己の欲望を満たすためには危険を防止するための赤信号すら見向きもしない!!

 

「あ、あの………私の胸に何かついていますか?」

 

少女が胸を見つめる士道に危険を感じる様子もなく、平然とした様子で訊ねた。士道は次第に少女との距離を詰めていく!

 

「つきそうです、巫女装束の胸のところにすっげーハエがつきそうです!ここは全世界紳士グランプリ•ワールドチャンピオンに輝いた俺様がハエを落としてあげなければ、グッヘヘヘヘヘヘヘ!!―――素晴らしいお乳に感謝を込めて、いっただっきまああああああすっ!!」

 

『―――意味不明なグランプリだな!?ていうか、相棒は紳士ではなく変態だろ!?それも全世界最悪最低のな!!おいそこの小娘、相棒に胸を犯される前に逃げて、超逃げて!!』

 

ゾンビのように迫る士道に、正義感の強いドライグは全力で少女に警告をする!!

………ちなみに、子バエが一匹飛んでいることは事実もある―――しかし、それはただの口実に過ぎないことは言うまでもないだろう。

そして肝心の少女は士道に一切恐怖を感じていないのか、普通に立っているだけだった。

 

 

そんな時だった。少女の他にもう一人の人物が部屋の中に入ってきた。

今度の人物は顔にシワが寄っており、年齢は七十歳を超えているような老父だった。老父は部屋の中を見つめてため息を吐く。

 

「………やけに騒がしいと思えば―――倒れておった所を娘に介抱してもらった恩を仇で返そうとするはな………見下げ果てた精神をしとるのぉ少年」

 

老父は卑猥に手を動かしながら少女に迫る士道を見て心底軽蔑していた。

………それもそのはずだ。自分を助けてくれた恩人に、感謝するどころか更に胸を触ろうとするなどもってのほかだ。

 

(………おい、言われてんぞドライグ。いくらあの乳が素晴らしいからって暴走しちゃダメだろ?)

 

『お前だ相棒。あのご老体が言っているのは、俺ではなく相棒のことだ』

 

………士道くんのバカにも困ったものである。

士道は「あ、やっぱり………?」と恥ずかしそうに苦笑いを浮かべ、ドライグは『アホか………』と心底呆れていた。

………さて、この赤龍帝コンビはとりあえず置いておこう。老父が次に言い放つ言葉でザワザワとした空気が一瞬で変化する。

 

「………少年、目覚めたばかりで悪いのだが―――今すぐこの村から出て行ってくれ。お主のようなよそ者を村へ置いておくことはできんのじゃ」

 

老父は今すぐにでも士道をこの家から―――そして、この家がある村から追い出したいらしい。

士道は理由を聞こうとしたが、老父の目は一切自分と話し合いに応じるつもりはないことを悟った。

 

しかし、この中には一人だけ老父の意思とは反対の意思を持つものがいた………先ほどの少女である。

少女は丁寧な口調だが、強い声を出して老父に言う。

 

「お待ちください()()()()、よそ者だからといって、先程まで意識を失い倒れていた人をいきなり村から追い出すというやり方は間違っています!それにこの方は優しい心の持ち主です。この方を迎え入れたとしても、()()()()()()()()()は起こりません!」

 

少女の言葉を聞いた士道は目を丸くした。自分を庇ってくれたことがまず一つ。

しかし、それ以上に驚いたのは、彼女が言った「優しい心の持ち主」という言葉だ。士道は変態だが、困っている人に手を差し伸べる正義の味方のような一面もある。

まだ出会ったばかりだというのに、少女は士道を分かっているかのように述べたのだ。

 

「………六華(りっか)、お主がそう述べるのであれば、この少年は悪い人間ではないじゃろう―――じゃが、わしはこの村の村長じゃ。わしにはこの村を守る義務があるのじゃ………村の長たる者、あらゆる可能性を考慮し村を守らねばならんのじゃ。わしが作った掟を自ら破るわけにはゆかぬ―――わかってくれ………」

 

………少女の名前は六華という名前だそうだ。そして、六華とあの老父は親子関係らしいが、士道は疑念を抱いていた。

士道の疑念に関しては、相棒のドライグも感じていたことでもあり、ドライグ曰く『父と娘ではなく、祖父と孫娘にしか俺には見えん』だそうだ。

………士道は迷う間も無く出て行くか、村に留まることのできるように説得するかを決めた。士道は六華の肩に触れ首を横に振った。

 

「………六華さん、でしたか?倒れていた俺を助けてくれてありがとうございました。俺は貴女のお父さんの言うことに従います―――部外者の俺には黙って従う以外の選択はありませんからね」

 

士道の言葉に六華は目を丸くし、村長の老父も息を飲んで士道の態度に関心を示している様子だった。しかし、掟は掟だ。老父は士道に瞑目して頭を下げる。

 

「………すまんのぉ少年、六華の言う通りお主は本当に優しい心の持ち主のようじゃな―――せめてもの気持ちじゃ………六華よ、この少年を村の外まで案内してやりなさい」

 

「分かりました」

 

老父の言葉に六華は首を縦に振って頷いた。村の外までは六華が案内してくれるそうだ。

士道は六華と共に老父の家を後にし、六華の案内に従って村に出た。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 

村に出てからというもの、士道は六華の隣を歩きながら村の様子を見渡しながらゴールを目指して歩いていた。

キャーキャーと元気よく走り回っている子供や、田畑を耕している大人、そしてこの村のシンボルとも言える村の奥には巨大な神殿が立っており、この村を守護する守護神を祀るためのものだと六華が教えてくれた。

 

そして、士道は自分の境遇を六華に伝えた。自分がいた世界のことを話しても六華は知らないと答え、ここがすぐに自分のいた世界とは異なる世界―――異世界だということを士道は悟った。

 

六華と歩いてしばらくした時のことだった。駆け足で六華に近づいてくる小さな女の子の姿を士道は見た。

その女の子は花で作った冠を手に持ち、両手で六華に差し出した。

 

「六華おねぇちゃん、はい!」

 

少女は天真爛漫な笑顔で六華に手を伸ばしている。六華は少女からのプレゼントを受け取り、頭にかぶった。

 

「あら、ありがとう―――似合ってるかな?」

 

「うん!とっても似合ってる―――おにいさんもそう思うよね?」

 

女の子は六華の隣にいた士道にも笑顔で訊ねた。士道も女の子の言葉を首肯する。

 

「………ああ、よく似合ってる!六華おねぇちゃんも喜んでるぜ!」

 

士道が女の子に合わせるようにしゃがんで言うと、女の子は嬉しそうに微笑んだ。そして、女の子は手を振って駆けて行く。

 

「またね、六華おねぇちゃん!それからおにいさんも!」

 

「うん!またね」「おう、またな!」

 

士道と六華は手を振りながら少女を見送った。しかし、和やかな雰囲気も終わりを迎えようとしていた。村人たちが一斉に警戒を始めたのか、先ほどの女の子は母親らしき人物が家の中へと連れ込み、村の男たちが一斉に集まってきた。村の空気が変わったことを士道も感じとったのか、ボソッと呟いた。

 

「………ちょっと急いだ方が良さそうだな」

 

『ああ、先程のことで村の中に部外者がいることに連中が気付いたな………村人全員が相棒に視線を送っている』

 

ドライグも士道同様に村全体が緊張の空気に包まれたことを悟ったようだ。男たちはほぼ全員が武装しており、鍬や石を手に持って士道を威嚇している!!

 

―――その時だった!士道と同じくらいの歳の少年が、死角から士道をめがけて先が尖った大きな石を投げつけてきた!!

しかし、少し手先が狂ったのか少年が投げた石は士道ではなく、六華の顔面へと軌道が変わる!

 

「―――っ!?」

 

六華は自分に当たると思って目を閉じたが、自分の顔に石は当たらなかった………恐る恐る目を開けると―――自分の目の前で飛んできた石を素手で受け止めている士道の姿が目に映った。

 

「………ったく、これじゃあ俺は厄病神じゃねえかッ!?早いこと村を出た方が良さそうだ―――さて………」

 

「………………」

 

士道は石を投げつけてきた少年を睨み付けると―――少年は絶望した表情で崩れ落ちた。

………士道が庇わなければ、自分の手で六華を傷つけていたとことを理解したのだろう。

士道はその少年に報復はしようとせず、受け止めた石ころを地面に転がした。

 

「だ、大丈夫ですか!?お怪我は―――」

 

六華が慌てて士道の手を確認しようとするが、士道は石を止めた手を腰の後ろに隠す。

 

「心配ないですよ、これくらいならツバつけときゃ治りますから―――急ぎましょう、いつ第二撃が飛んでくるやもしれませんからね………」

 

士道は苦笑いをしながら六華に答えた。ちなみに人間が投げる石程度では士道が怪我をすることはない………士道の手のひらは出血しているが、十秒もあれば『灼爛殲鬼(カマエル)』の炎で完治するからだ。

 

「………っ!!」

 

六華はこんなことは間違っていると歯をくいしばり手を強く握りしめ、大きな声で訴えようとしたが、士道が六華の肩を掴んで首を横に振る。

 

「―――六華さん、村人たちの気持ちは俺にも分かります。大丈夫です、俺は気にしてませんから」

 

「で、ですが………」

 

六華は士道の言葉に面を食らったのか、言葉が詰まった。士道は「それに………」と話を続ける。

 

「俺が向こうの立場だとしたら、家族や仲間を守る為に同じ事をしたと思います。だから文句を言うつもりはありません」

 

士道の言葉を聞いた村人たち全員が武装を解除した。士道の言葉が効いたのだろう。

………どんな理由があれ、何の罪もない人をいきなり攻撃することは許される事ではない。だが、攻撃を受けた士道はやり返すどころかむしろ『気にしていない』と言い切ったのだ。

士道の広い心が彼らの心に響いた結果だった。

 

「………貴方は本当にお優しい方なのですね。―――度重なるご無礼を本当に申し訳ございませんでした」

 

六華は深々と頭を下げた。彼女にも譲れないところがあったのか、士道がどう言おうとも謝罪だけはするつもりだったのだ。

 

「………いいです、気にしてませんから。それじゃあ六華さん、案内よろしくお願いします」

 

「分かりました、参りましょう」

 

六華の案内に任せて、士道は村の外を目指して歩き続けた。村人たちも、先ほどの蛮行を悔いたのか追い討ちを仕掛けてくることは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました六華さん。色々お世話になりました」

 

村の外れまで来たところで士道は六華に頭を下げた。まず倒れていた自分を助けてもらったことがまず一つ、そして二つ目にこの村から西に進めば町がある事を、士道は六華に教えてもらったのだ。

 

「………いえ、私はお礼を言われるべき立場ではございません。本来なら貴方を村に迎え入れるべき立場なのですが………」

 

申し訳なさそうに表情を陰らせる六華を見た士道は「掟じゃ仕方ありませんよ」と割り切り、気にしていないと首を横に振った。

 

「あ、最後に一つだけ聞いてもいいですか?」

 

士道は心に引っかかっていたことを一つ思い出した。士道の言葉に六華は頷く。

 

「ええ、どうぞ」

 

「………六華さんはさっき『俺を招いても惨劇は起きない』と言っていましたが………もしかしてあの村に何か悲しい出来事でもあったのですか?」

 

士道が訊ねたのは、六華とのファーストコンタクトの時に六華が父に言っていた言葉だ。

士道の問いを聞いた六華は、辛そうな表情を浮かべて心苦しいような様子が伺えた。

苦しげな表情を浮かべる六華を見た士道は、慌てて手を横に振る。

 

「―――す、すみません!俺、なんか悪いこと聞いたみたいで………六華さんが話したくない内容だというのであれば、俺は詮索しません」

 

「大丈夫です。むしろ、貴方には話しておく必要があると私も思っていましたから―――その出来事は、まだこの村を誰もが自由に出入りできていた一年ほど前に起こりました」

 

六華は話し始めた。士道は六華の目を見て真剣に六華の話に耳を傾けた。

 

「………父が村の近くに倒れていた男を発見し、その男を私と父で介抱しました。そこからその男はこの村で生活をするようになり、数ヶ月は平凡な日々が続きましたが………………」

 

六華は最後まで言わず下を向いた。ぎゅっと手を強く握りしめ悲しそうな表情を露わにして黙り込んだ。

士道は一つの考えが頭に浮かび六華に問う。

 

「………その介抱した男が村で何か騒ぎを起こしたのですか?」

 

士道の問いを六華は首肯する。

 

「………はい。年に一度のお祭りで、酒が入ったその男が酔った勢いで私の姉に迫りました。姉はこの村を管理する領主の家に嫁ぐことが決まっていたので、父や村の男性たちがその男を止めて村から追い出しました。

しかし、男は数日のうちに村へと舞い戻り、報復として村に魔獣の群れを放ちました………」

 

「なっ―――」

 

六華の話を聞いた士道は頭を鈍器で殴られるほどの衝撃を受けた。六華は涙を啜りながら話を続ける。

 

「その男が放った魔獣は、私の姉を始めとする多くの者の命を奪いました。多くの者が目の前で魔獣に食い殺され、私の姉も父の目の前で犠牲になりました。

―――すぐに騒ぎを聞きつけた領主が、援軍の部隊を送ってくれたこともあり、なんとか魔獣を迎撃することができましたが………私たちだけでは皆殺しになっていたかも知れません。

―――その時からです『よそ者は惨劇を起こすから、村へ入れてはならない』という掟を父が作ったのは………」

 

「………………っ」

 

六華の話を聞いた士道はどうにもやりきれない気持ちになった。………助けてもらったにも関わらず男は恩を仇で返すという最悪の報復を行なってしまった。

士道は感じた憤りに歯を食いしばり、拳を強く握りしめながら聞いていた。―――そうでなければ我慢ができなかったからだ。

 

「………本当に申し訳ございません。本来なら貴方のお力になってあげたいのですが―――」

 

申し訳なさそうに表情を曇らせる六華に士道は首輪横に振った。

 

「いえ、六華さんは悪くないですよ!真に悪いのは、貴女の姉と村人たちを虐殺しやがったそのクズ野郎だ………」

 

士道は六華の姉と村人たちを虐殺した男に憎悪を最大限に込めた低い声で怨みを吐いた。

………一通り聞きたかったことを聞けた士道は六華に背中を向ける。

 

「本当にありがとうございました六華さん、これから俺は貴女に教えてもらった町に行って情報を集めて来ようと思います。………今度またお礼をさせてください」

 

「―――!ま、待ってください………!」

 

そう言い残して士道はこの場から去ろうとしたが、六華に足を止められる。

 

「―――なんでしょうか?」

 

「………貴方の名前を教えて下さい」

 

六華が士道の足を止めた理由は名前を聞くためだった。士道は振り返り、六華に言う。

 

「俺は士道―――五河士道です」

 

「………そうですか、素敵なお名前ですね。―――またいつか会えますか、士道さん?」

 

「ええ―――また何処かで会いましょう六華さん」

 

士道は今度こそ六華に別れを告げて、西にあると言う町を目指して歩いた。

六華は士道の姿が完全に見えなくなるまでずっと見守っていた。

 

 

 

 

 

 

―――◆◆―――

 

 

 

 

 

 

 

町を目指して歩いていたときのことだった。士道とドライグは足を進めながら会話をしていた。

 

「………変な渦に飲み込まれて、目が覚めたら全く別の異世界―――まるでマンガやラノベの世界にある光景そのものじゃねえか、まあこれが()()ってわけでもねえけど」

 

『確かにな。俺たちの場合はこれが二度目―――とは言っても最初の一度は転生だから数に入れて良いのかは知らんなな………』

 

「―――とは言ってもどうにかして元の世界に戻らねえと………十香がお腹すかせて『塵殺公(サンダルフォン)』を振り回されたらどえりゃあ事になっちまう」

 

十香が「うがああああああ!!お腹が空いたのだあああああああ!!」と大暴れしている姿がふと頭に浮かんだ士道は、どうにかして元の世界に戻ろうとバカな頭をフル回転させていた。

………先程歩いている女性に士道は話しかけたのだが、その女性は士道の言葉が分かっていなかったのか、眉を八の字にして困り果てた表情を浮かべていた。ちなみに女性が言った言葉を士道も何を言っているのか分からない状態だった。

 

『………六華と先程の女の対応を見る限りここが俺たちがいた世界と異なることは明白だ。

―――だが、どうにも俺には引っかかることがある』

 

「引っかかること?それは一体なんだよドライグ………」

 

『―――あの胡散臭い次元の守護者(笑)の魔術師「ソロモン」のことだ』

 

「(笑)って………まあ、初めて聞いた時は俺もそう思ったけど―――でも、ソロモンさんの何処に引っかかるところがあったんだよ?」

 

ソロモンのことを完全に小馬鹿にしているドライグ。そして、それに便乗する士道―――まあ、これは無視でいいだろう。

ドライグは怪訝に思ったことを順番に述べていく。

 

『推測した俺の結論から言おう―――ソロモンたちは相棒を何処か別世界に飛ばしたかったのではないのだろうか?

………仮に相棒が死んだ時は、精霊たちの霊力が暴走して国の壊滅の恐れがある。それを阻止するための方法は一つ―――最悪の結末を迎える前に全精霊を始末する………これだけだ。

相棒が別の世界に飛ばされた今は、ソロモンたちにとっては願っても無い絶好の機会だろう』

 

「今回ソロモンさんが用意した修行空間―――アレは手抜きで用意したものを俺の修行に使った………それがドライグの見解か?」

 

『ああ、恐らくな。そして空間が壊れた時にはあの渦が発生するようにプログラムを組んでいた―――こう考えれば今回の一連の現象が全て線で繋がる』

 

ドライグは思っていたことを正直に言ってみせた。………確かにドライグの話は理に適っている。

ソロモンたち『次元の守護者』は世界の均衡を保つ―――これが彼らの存在意義である。現に士道が攻略している特殊災害指定生命体の精霊は、まさしく世界を滅ぼす力を持つ稀代の怪物そのものだ。

例え霊力を封印したところでそれは一時的な処置に過ぎず、感情が不安定になると霊力が逆流して暴走を起こす危険がある。

それなら、いっそのこと消してしまえば万事終了となり、危険に晒されることはないからだ。

 

しかし、士道の考えはドライグの物とは完全に違った。士道はドライグに疑問をぶつける。

 

「………仮にそうだとしても、あまりに手際が悪過ぎる。―――そもそもあの人たちなら、俺を殺そうと思えばいつでも殺すことが出来る。わざわざ別世界に飛ばす意味は無いだろ?

それに、俺はまだ全精霊を攻略出来ていない。仮に精霊の始末が目的なら、俺が全ての精霊を攻略した後に、まとめて一網打尽にする方が遥かに効率的じゃないのか?」

 

『言われてみればその通りだ………だが、どうにもスッキリせんのだ―――ソロモンほどの強者が相棒の実力を見誤るとも俺は思えん。あの男は意図的に俺たちをこの世界に送り込んだとしか考えられん。連絡が取れん今、確認のしようがないが』

 

ドライグはまだ納得していないようだ。士道もドライグの言葉を聞いて深々と思考を張り巡らせていた。

………確認する術がない今、真実はソロモンのみぞ知ると言ったところだが。

 

「………とにかく、ソロモンさんの件は取り敢えず置いておこう。俺たちが第一に考えなければならないことは、『どうやって元の世界に戻るか』だ。こうしている間にも十香たちは不安がってるかも知れないから――――――ん?なんか変な人が………」

 

『―――こいつもまさか………』

 

士道は目の前に突如現れた謎の人物が視界に入り、思考が止まる。頭に三度笠を被り、戦国時代の武士の甲冑をその身に纏い、腰には立派な日本刀を三本携え、口には木の枝を挟んでいる風来人の姿が。

………士道とドライグはこの風来人を見て思った―――“こいつもソロモンたちの仲間なのではないか”………と。

士道とドライグがそんなことを考えていると、風来人が声をかけてきた。

 

「………おやおや、大した武器も持っていないのにこんな町外れを歩くのは危ないよ?この辺りは物騒だ、せいぜい刀一本くらい――――――ああ、ちょっと!?待って、無視しないで!!」

 

風来人を横目に士道は先を急ごうとしたが、目の前で両手を広げて風来人が通せんぼしてきた。

 

「………何なんですか?俺は急いでいるので―――」

 

「ああ、私は通りすがりの行商人でね。本を作って売ることが本業なんだ」

 

「………そうですか、それじゃあ」

 

目の前にいる風来人は、自分が作った本を売っている行商人のようだ。本が欲しいわけでもなかった士道は風来人を避けて先を目指したが、またまた通せんぼされる。

 

「待つんだ、待つんだ少年よ!私の本を買わないと一生後悔するよ!?私の本は全世界共通でアニメ化が決定した実績があるんだ!………今なら六四八〇〇〇〇円で原作一巻から七巻までプレゼントしよう!サービス特価だ、持ってけ泥棒!」

 

「―――高過ぎるわ!!普通の原作小説って新品でも六四八円だろ!?七巻纏め買いしても普通は五〇〇〇円超えねえよ!!」

 

悪徳業者を一刀両断する士道くん。彼は家の生計は一人で管理している。この程度の悪徳業者では彼を騙すことはできない!!

 

「ちょっと待て、少年はこの私を知らないのかい!?」

 

「知らねえよ!何なんだよアンタはッ!?」

 

「よくぞ聞いてくれた、私は『ハイスクールDxD』の著者―――『次元の守護者•ヘルメス』というものです、ハイ!

この『ハイスクールDxD』という本は、平凡な高校生活を送っていた兵藤一誠という少年が上級悪魔•リアス•グレモリーと出会い、悪魔に転生して新たな物語を切り開いていくという物語を書いているものなんですよ!

アニメ化決定してますし、稀代の名作とも称される伝説の一品ですよ!」

 

………くるみんが絶賛どハマりしているイッセーの壮絶な過去を作品化したのは、この男ようだ。

左手からドライグではなく、イッセーの声が聞こえてくる!!

 

(………士道、やっちまおうぜ!)

 

聞こえてきたイッセーの言葉に士道は頷く!!『赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)』を左手に纏い、ヘルメスに突進!!

 

「勝手に人の過去を作品にしてんじゃねえよッッ!!」

 

「―――ぐふぉうッ!?」

 

士道の渾身の拳がヘルメスの顔面に突き刺さり、ヘルメスは地面を何度もバウンドしながら吹き飛んでいった。

 

『おいお前ら、ツッコミどころはそこではなかろう!?まずはこの男から色々と聞き出すべきではないのか!!』

 

ドライグが士道にツッコミを入れるが、勝手に人の過去を作品化したヘルメスをぶん殴れて満足そうな笑顔を浮かべていた。その頃、ヘルメスは近くの田んぼに頭から突き刺さり、下半身だけ田んぼから飛び出していた。

 

 





六華のイメージ声優は田村ゆかりさん、次元の守護者•ヘルメスのイメージCVは諏訪部順一さんです。

士道の理性が吹き飛びかけた六華ちゃんのスリーサイズはこんな感じです。

六華のスリーサイズ 92―56―88

三話の設定を一部更新しておきました。良ければお読み下さい!
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