デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

6 / 84
初めて評価をつけてもらいました。非常に高く評価して頂けて本当に嬉しい限りです!

これからも完結を目指して頑張っていきます!

あの魔法使い?はマーリンではありません!


三話 覚悟の時

士道が我に返ったときには、魔法使いの姿はなかった。

 

「―――あの魔法使いは一体どこの誰なんだ?まさか、元いた世界の誰か……なんてこともあるのか?」

 

士道の頭の中はあの魔法使いのことで一杯になっていた。

あの魔法使いの言ったことは士道がずっと目を背けていたことだった。

 

―――“未だ過去を引きずるキミがあの子を救うことなんてできるのかな?”

 

士道の―――いや、まだ『兵藤一誠』だった頃からトラウマになってしまったことがあった。

…………それは、女性を『信じる』と言うことだ。

『兵藤一誠』の時から彼には“ハーレム王になりたい”という野望があった。それは五河士道に転生してからもずっと思っていたことだ。

 

―――だが、その現実は女の子と仲良くなるのが怖く、あと一歩を……特別な関係になろうと一歩踏み込もうとすると、無意識にブレーキがかかるようになってしまっていたのだ。

 

士道はボサッと呟く。

 

「――――令音さんに頼めば、()()()()を消し去る薬をくれるのかな……」

 

士道本人も情けない限りだと言うことは分かっている―――けれど、士道は『もう二度とあんな思いはしたくない』と。いつまでも逃げ続けている自分がいることも確かだ。

 

『―――相棒、お前は何がしたい?』

 

ドライグが士道に訊く。

 

「……えっ?」

 

『どうしたいのか、と俺は訊いているんだ。相棒の心の中にはあの薄汚い鴉(レイナーレ)がいることは俺も分かっていた。人間にも悪魔にも、神にさえ過去を消し去るなんて出来ない……忘れることはできるがな。転生してからもう会えなくなった―――リアス•グレモリーやアーシア•アルジェントにしっかりと想いを伝えておけば良かったと………夜中に妹が眠ってからずっと泣いていたことは俺も知っていた。

…………相棒、俺も悔しいんだよ。相棒の心の傷を分かっていながらも、何も出来ないことに』

 

「―――いや、ドライグは何も悪くない!悪いのは……いつまでも目を背けていた俺自身だ。ドライグのせいじゃ―――」

 

『いいや、悪いのは俺も同じだ相棒。俺は相棒の心の闇を傍観していた。暇な時はいつでも相談相手になってやると言っておいて、何も出来なかった。いや、相棒が傷付くことを恐れて何もしなかった。お前は俺を道具ではなく、一つの存在として扱ってくれていたのに、俺は何もしなかった。―――だが、これからは俺も変わろうと思っている!例え相棒が傷付くことになっても、嫌われても全力でサポートしようと俺は思っている!相棒が妹の前で覚悟を決めたように、俺も覚悟を決めようと思う。―――前に進んでみたらどうだ相棒?お前はあの精霊をどうしてやりたいのだ?』

 

ドライグの言葉は士道にとって大きな力となるものだった。士道が閉じこもっていた心の闇の世界のガラスが割れ、暖かな光が差してきていた。

―――士道の心の中の闇は崩れ去ろうとしていた。

 

「俺は……俺はあの子を救いたい!絶対に……絶対に救いたい!!でも――――」

 

士道は自分の想いを声に出したが、士道は声を小さくして自分の弱みを口にする。

 

「やっぱり怖い……どうしようもなく怖いんだ……

部長や朱乃さん、アーシアもゼノヴィアもイリナ、それから小猫ちゃんもみんないい女性だ。俺のことが嫌いじゃないって事も知っていた。―――じゃあ、部長たちは“俺のことが好きなのか?”『好きです』って想いを伝えて、そうじゃなかった時のことを考えると、堪らなく怖かった……またバカにされるんじゃないかって…………。

―――もう二度とあんな想いをするのはいやなんだ。けど……もっと嫌なのは女性を知らない間に怖がるようになっていた俺なんだ……」

 

士道が言ったのは、転生前の『兵藤一誠』としての傷だった。士道は顔を両手で隠し、手の中でずっと涙を流し続けていた。

 

『―――怖くてもいいじゃないか』

 

「えっ?」

 

ドライグは泣いている士道に声をかけた。士道はその言葉を聞き、左腕を見つめる。

 

『怖いものが一つや二つあったっていいじゃないか。だがな相棒、傷つくことを恐れていたら何も成すことは出来ないぞ?

―――なあ相棒、 別に失敗して傷付くことは恥ずかしいことじゃないさ。本当に恥じるべきことは、その苦しみから逃げることだ!相棒はもう一人じゃない。例えデートが失敗し、つまらないと笑われたとしても、気の利いた言葉はかけてやれないかもしれないが、俺が励ましてやる!俺だけじゃない、例え失敗したとしてもお前には妹の琴里や村雨令音が必ず相棒を立ち直らせてくれるさ』

 

ドライグの言葉は士道の心の中に巣くった闇をどんどん消していくものとなっていた。

士道は抑え込んでいた心の汗を止めるすべを知らなかったのか、瞳から大洪水が起きていた。

 

「……情けねえっ!本当に情けなさすぎて自分が嫌になる!!なんで俺はこんなにも身近にいた相棒に頼ることをしなかったんだよッ!!」

 

士道は感情を抑えることはせず、泣き続けた。ドライグの最後の一言が士道の心の闇を完全に消し去る言葉となる。

―――闇は終わったのだ。

 

『情けなくても無様でもいいじゃないか。何度倒れても立ち上がること―――それが冥界のヒーローと呼ばれた「おっぱいドラゴン」―――相棒の二つ名じゃないか。

さあ、十七年間の出口なき長い闇のトンネルもこれで終わりだ相棒!前に進もう、歴代最高の赤龍帝『兵藤一誠』―――否、五河士道ッ!!』

 

なぜか、二つ名だけは声をかなり小さくしてドライグが言っていたのは、気にしてはいけない。

けれど、ドライグも士道も―――お互いが変わる事が出来たのは誰が見ても分かった。

 

「―――ッ、ああ!!これからたくさん迷惑をかけると思うが、俺の切り開く未来を一緒に見てくれ、相棒!」

 

……ドライグの激励の言葉によって五河士道は救われた。

十七年に渡って士道を苦しめ続けてきた過去にようやく終止符を打つことができたのは、『兵藤一誠』と共に苦楽を共にした相棒のドライグのおかげだ。

そして現在の赤龍帝である、五河士道は本当になれるかも知れない。

ライバルである、過去、現在そして未来永劫、歴代最強の白龍皇と称される『ヴァーリ•ルシファー』と同じように、

『歴代史上最高の赤龍帝』―――五河士道と。

 

 

ドライグが何かを思い出したように士道に声をかける。

 

『あ、そうだ。ところで相棒』

 

「ん?なんだドライグ?」

 

『学校の方は大丈夫なのか?もうそろそろホームルームのチャイムが鳴るころだと思うが?』

 

ドライグの言葉に士道は慌ててケータイの時計を見る。時間はAM8:25だった。ホームルームのチャイムが鳴るのは8:30だ。今ある地点から歩いていけば、二十分ほどかかることに士道は気付き……

 

「―――だあああああああああああッ!!遅刻確定じゃねえかああああああ!!」

 

士道は五十メートル走を二秒を切るぐらいのスピードで全力疾走をし、学校まで休憩する事なく走り続けた。

―――8:29に学校に着き、なんとか遅刻を免れた士道くんなのであった。

 

 

 

 

 

――◆――

 

 

 

 

 

「ぜぇ……はぁ……ぜぇ……はぁ……」

 

まるで体育の水泳の授業で休む間も無く泳ぎ続けた後のように椅子にへばり付く五河士道。―――様々なことがあり、まあ仕方ないというのが一般的だが、時間には余裕を持って行動するべきだろう。

 

「あの魔法使いの童貞野郎、今度見つけたら一発殴らねえと気が済まねえぞ……」

 

―――士道の怒りの矛先はあの魔法使いに向いている。

 

『ごもっともだが、あの魔術師に一発入れるのは厳しいだろうな…………。

相棒がまだ『兵藤一誠』だった頃の『三叉成駒(トリアイナ)―――龍星の騎士(ウェルシュ•ソニックブースト•ナイト)』に昇格(プロモーション)しても、かすり傷を負わせるのがやっとだろうな』

 

怒っているイッセーとは違い、ドライグはかなり冷静にあの魔法使いについて分析していた。あの魔法使いは瞬間移動の魔法を使えるだけでなく、術式の展開は士道の目には映らなかったほどだ。

おまけに士道は、赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)の禁手にすら至れておらず、『悪魔の駒(イービル•ピース)』すら体の中には無い―――言うまでもなく、今の士道ではどう間違ってもあの魔法使いに触れることさえ不可能だ。

 

「―――五河士道」

 

へばりつく士道に目線を合わせる女性がいた。―――鳶一折紙だ。ちなみにお互いの鼻が触れ合う距離にまで鳶一は士道に近づいている。

 

「うわあッ!と、鳶一ッ!脅かすなよ…………」

 

士道はビックリして鳶一折紙と距離をとる。鳶一折紙は士道に昨日の出来事について訊ねる。

 

「……昨日どうしてあんな危険な場所にいたの?」

 

再び距離を縮めてくる鳶一折紙に士道は目を逸らして答える。

 

「あ、いや……その。―――妹を探していたんだ……」

 

「―――それで見つかったの?」

 

「あ、はい……俺も妹の琴里も怪我とかはしてなかったから―――って、ちょっと!?」

 

鳶一折紙は士道を抱き寄せ、士道の後頭部を触っていた。……鳶一折紙は士道が瓦礫に後頭部をぶつけて気絶するところを見ていたのだ。

 

「…………嘘。士道は昨日、後頭部をぶつけて気絶していた。―――もうあんな危険な場所にはもう二度と近づかないで」

 

「…………」

 

士道は何も答えることが出来なかった。―――沈黙は肯定を意味するが、士道が沈黙したのは肯定するためではなかった。士道は精霊と会話をすることを心に決めていたため、どう答えていいか分からなかったからだ。

…………士道は鳶一折紙から離れると、また彼女は士道に訊く。

 

「―――士道」

 

「ん。どうした?まだ何かあるのか?」

 

「…………もう一回ギュってしていい?」

 

再び鳶一折紙は士道に近づき、両腕を広げる。―――流石に変態の士道でも、クラスメイトが見ている前では流石に控えた。

 

「ダメに決まってんだろ―――って、おいいいいいいいい!?」

 

鳶一折紙は士道の言葉を無視して再び士道を抱きしめた。

 

「―――な、何をしているのですか!?五河くん、鳶一さん!学校でそんな破廉恥な行為は禁止です!!」

 

担任のタマちゃんが来るまで士道は鳶一折紙に抱きしめられていた。……そしてタマちゃんが生徒たちが席に着いたことを確認して口を開く。

 

「―――さて、今日はこのクラスに副担任の先生が付くことになったので紹介しまーす!」

 

ガラララッ…………

 

教室のドアが開かれ、教室に入ってきたのは――――

 

「…………村雨令音だ。今日からこのクラスの副担任を勤めることになった。担当する科目は物理だ。よろしく頼む……」

 

ドサッ……

 

自己紹介を終えると、令音は盛大に倒れた。

 

「む、村雨先生!しっかりしてください!」

 

『…………』

 

ドライグは目を点にして無言を貫いていた。令音がフラフラと立ち上がると、タマちゃんは士道を見て言う。

 

「―――あ、五河くんにもお客さんがいるんですよ!ちょっときてくださーい!」

 

「……お、俺に、ですか?」

 

士道はタマちゃんに呼ばれ、廊下に出ると、秒速三十メートルで走って来る小柄な赤い髪の少女が…………

 

「おにーちゃぁぁぁぁぁん!!」

 

ドタドタドタドタドタドタ――――ドゴオオッ!

 

「―――ゲオルギウスッ!」

 

走ってきた少女が士道のお腹に見事な膝蹴りを決めた。士道は堪らず宙に浮かび上がり、倒れこんだ。

 

「わあ、ゲオルギウスだってー!聖ジョージかな?それともアスカロンかな?……かな?」

 

「こ、琴里よ、可愛い、俺の妹よ。作品が、違うから……ど、どうして……琴里が……高校、に?」

 

士道は琴里の攻撃に大ダメージを受けたらしく、生き絶えた耐えで言葉を発していた。

 

「……さて、シン。早速だが、昼休みに物理準備室に来てくれ。話したいことがある」

 

おそらく、今日のことで色々と話があるのだろう。士道は倒れた体を起こし、令音に返事をする。

 

「わ、わかりました…………」

 

 

その後士道は午前の授業を終え、物理準備室に向かったが、その道中に、鳶一折紙ファンクラブ『VOC(ヴィーナス•オリガミ•クラブ)』のメンバーから襲撃を受けたが、全て迎撃してしまい、『VOC』のメンバーは五河士道の怖さをその身に刻み込んだ。

 

 

 

 

――…………

 

 

 

 

 

物理準備室に着いた士道はその扉を勢いよく開ける。

 

「たのもー!」

 

『いやいや相棒、道場破りに来たわけじゃないぞ!?』

 

…………ドライグのツッコミは冴え渡っている。一流の刀職人が作る日本刀のように。

…………それはさておき、物理準備室に入札した士道を待っていたのは、令音と琴里だった。

 

「…………やあシン、待っていたよ」

 

「シドー遅い!昼休みのチャイムが鳴る前に来なさいよ!五分遅刻よ」

 

令音とは違い、琴里の言うことは無茶苦茶だ。チャイムの鳴る前は授業中だ。琴里の言葉にがっくりとしながらも士道は要件を訊く。

 

「……それで、俺は何をすれば?」

 

士道の問いに琴里が言う。

 

「まずはあの魔法使いよ。シドー、貴方はあの魔法使いと知り合いなの?」

 

「いいや、全く知らない。……でも、あの魔法使いは俺のことを当事者のように知っていたんだ…………『フラクシナス』での会話のことも知っていた。―――ごめんな、琴里。お兄ちゃん、あの魔法使いを捕まえられなかった」

 

士道は琴里に頭を下げる。……遥かに格上の相手でも、任務の失敗には変わりはない。だから士道は素直に謝った。

 

「……シドーが知らないのに、シドーのことをあたかも自分ことのように知っていたの?―――不気味ね。あんた不運よね。あんな変なストーカーがついてるなんて」

 

「その通りだ!できるものなら美人なお姉さんのストーカーが良かったよ!!なんで俺にはあんないけすかない魔法使いの童貞野郎なんだよコンチクショーッ!!」

 

士道は物理準備室の床を蹴り上げる。士道の回答に二人は若干引き気味だ。令音は何も言わなかったが、琴里はそのまま意見する。

 

「…………キモいわ」

 

『―――上に同じく』

 

ドライグからも呆れられていた。そんな中、令音が再び質問を切り出す。

 

「…………シンはどうして泣いていたんだい?」

 

「あの魔法使いにどうにかして忘れようとしていた過去の傷を見せられまして……」

 

…………()()()()()というのは間違いだが、完全に否定できるかといえば、答えはNOだ。だが、士道はその壁を乗り越えることができたこともまた事実だ。

 

「……シン、これだけは覚えていてほしい。私も琴里も―――『フラクシナス』のクルーたちはキミをバカにすることなんてしないし、嫌いになることもない。私たちは出来る限りシンをサポートするつもりだ」

 

「…………令音さん」

 

令音もドライグが言った通りだった。琴里も「私もあんたを嫌いになんかならないわよ」と士道に伝えた。士道にはもう心の中に闇はなかった。

 

「…………シン、私が少しだけ慰めてやろう」

 

令音は士道を抱きしめ、士道の頭を胸に当てた。

 

(―――こ、こ、ここ、これはああああああああ!!)

 

士道のテンションはスーパーハイテンションになっていた。

いま士道の頭は令音の胸の中だ。士道はただひたすらにおっぱいの感触を楽しんでいた。

 

(柔らかく、大きな極上のおっぱい!ハリとツヤはまさに最強の二文字に他ならない!さらにもちっとした柔らかさの上に弾力もある超おっぱい!ボディソープの甘い匂いがさらに俺の興奮を掻き立てる!!ああ〜、もう一生このままでいたい!)

 

「…………シン。いいこ、いいこ」

 

令音は士道を我が子のように可愛がっていた。―――一分ほど経っても離れない士道と全く士道を離す気がない令音を見て、琴里は我慢の限界になったのか鍛えに鍛え上げた必殺の『超•回し蹴り』が士道の脇腹を捉え、士道を吹き飛ばす。

 

「いつまで抱きついているのよ!このおっぱいドラゴン!!」

 

「ぐふおぅ!?」

 

ドゴッ!!

 

琴里に吹き飛ばされた士道は物理準備室のドアを突き破って外まで吹き飛んだ。

士道は吹き飛ばされたことにイラっとしたが、二人にしっかりと頭を下げる。

 

「―――ありがとうございます。令音さん、琴里」

 

士道が二人に感謝を伝えた時だった…………

 

ウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ………………

 

空間震警報が天宮市内になりひびいた。




私がDDを読んでいて思ったことは、アーシアや朱乃たちではなく、ドライグがイッセーの心の傷を癒してあげることもできるのでは?と思い、私の作品ではドライグを選びました。

ドライグはイッセーのことを歴代最高の赤龍帝と称しているので、全く可能性がないわけではないと私は考えていました。

•••••もう少し後の十香や精霊たちが増えてきてからも良かったですかね?イッセーのトラウマ克服は。

感想もかなり書いて頂いているので、嬉しい限りです。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。