いやー、休日は頑張れば一日一話いけますね(かなりキツイですけど)
無駄話はその辺にして、続きをどうぞ!
ビーチバレーが終わった後、士道は凛袮を担いで日陰までまで足を進めた。
………凛袮は、ビーチバレーの最中に熱中症を引き起こしたが、試合が終わるまではと、根性だけでプレーしていたのだ。
士道は氷結傀儡で用意した氷を袋に入れて、凛袮の頭と首へと当て団扇で風を送っている。
「………たく、こんなになるまで無茶しやがって」
「あ、ハハハ………私、体力には相当自信あったんだけどな………」
凛袮は元々運動は得意で、中学からはラクロス部に所属していた。そして、そのラクロスは転校してきてからも続けているのだ。
………どこかのお騒がせドラゴンが台風を吹き飛ばしたせいで、気温も上がり日差しも強い。
おまけに、この炎天下で全力のスポーツをやれば、人間の凛袮が耐えられないのも無理はなかった。
凛袮は乾いた笑みを浮かべると、ビニールシートに体を預けた。
「………ちょっと待ってろ、今追加のアクエリアスを取ってくるから」
「ごめんね士道。付き合わさちゃって」
「………気にするな、病人は大人しくしてろ」
士道はクーラーボックスからアクエリアスを取り出すと、紙コップに注いだものを手に、もう片方の腕で凛袮の身体を起こした。
「ちょっと士道!?これって………」
「うるせー、ほんの一瞬だから我慢しろ」
凛袮を片腕で抱き抱えながら、紙コップを凛袮の口へと当ててアクエリアスを流し込んだ。
何年も想いを寄せる幼なじみに、抱かれていることに顔を朱に染めた凛音ちゃん。
それを見た士道もまた、恥ずかしそうに顔を晒した。
アクエリアスを飲ませ終わって、凛袮を再びシートに寝かせようとした時、凛袮が士道の手を掴む。
「ねえ士道………おかわり、いいかな?」
「もちのろんだ」
凛袮が頬を染めて言った願いを士道は間髪いれずに許諾した。
今度は凛袮を抱えたまま、紙コップにアクエリアスを入れ、それを凛袮の口へと当てた。
「………まだ欲しいか?」
「ううん、もう大丈夫………ありがとう士道。でも、もう少しだけこのままでいさせてくれる?」
「このままじゃあ凛袮がきついだろう―――そうだ、ちょっと待ってろ」
攻めどころと判断した凛袮はグイグイと押しこむ。しかし、この体勢は凛袮も辛いと感じた士道は、正座をして自分の膝の上に凛袮の頭を置いて寝かせた。
―――膝枕である。
「………これなら凛袮も楽だろう?お前が回復するまでは俺がいてやるからさ」
「ありがとう士道」
士道は、氷が入った袋を再び凛袮の頭に当てなおし、団扇で風を送り続けた。
凛袮は希望を叶えてくれた士道に、完全に体を預けた。
遠く離れ離れになった幼なじみの二人だけの世界は、砂浜のさざなみの音や近くの木で無くセミの音すら置き去りにした。
「ねえ士道。聞きたいことがあるんだけど」
「どうした凛袮?そんなに改まって」
唐突な凛袮の声に、士道は凛袮の顔を見下ろすと凛袮は話し始める。
「―――何か私に隠し事してない?」
「………ッ!」
凛袮は、他人の感情には敏感なところがある。それに合わせた気遣いが出来る事から、クラスメートから人気がある。
バツの悪い顔を浮かべて黙り込んだ士道を見て、凛袮は続ける。
「昨日の暴風の中、資料館に出て行った十香ちゃんを探しに行った時は、本当に心配したんだよ?怪我とか行方不明にならないかとか、悪い思考がたくさん浮かんだ………それから村雨先生が十香ちゃん達に、話していたのを聞いちゃったんだけど―――修学旅行の前日に、太平洋を横断した台風を吹き飛ばしてくれたのも、士道だって………士道、話してくれないかな?何か危ない事に関わったり………してないよね?」
「な、何言ってんだよ凛袮―――俺に台風を吹き飛ばす力なんて、そんなのあるわけないだろ………」
士道は本当の事を、告げるわけにはいかなかった。大切な幼なじみを精霊という非日常がありふれた、危険な世界へ踏み込ませる事―――それだけは絶対に。
『村雨令音め、余計な事を―――恐らくだが昨晩、相棒の部屋に入り込もうとした精霊トリオに話したのだろう………その時、一緒に訪れていた園神凛袮に聞かれたと言ったところであろうな』
ドライグが述べた見解に、士道もそれしかないことを確信していた。
真実を伝えられないもどかしさから、歯を噛み締める様子を見た凛袮は、起き上がって士道をじっと見つめた。
「そっか………言えないんだ。士道には何か事情があるんだよね………でも、これだけは約束して―――私の見ていないところで無理はしないって。私、耐えられないよ………また士道を失うなんて絶対に」
「っ、凛袮………」
凛袮は最後の言葉を述べると、瞳から温かいものが漏れ出した。凛袮はハッと我に返りそれを払うが、たまらず溢れて止める術がない。
………凛袮にとっても、十香や六華同様に士道は掛け替えの無い存在だ。琴里と同様に家族と思うほど士道のことを思っているのだから。
士道は凛袮の肩に手を置き、言った。
「分かった………俺は凛袮の前からいなくなったりしない。絶対にお前のところに戻ってくるから………大丈夫だ、俺はここにいる」
ニカッと士道が笑い飛ばすと凛袮は、再び顔を覗き込む。
「本当に?絶対私の前からいなくなったりしない?」
「ああ、本当だ………俺の大丈夫は信用ねえか?」
凛袮は何度も首を左右に動かす。士道は小さい頃からずっと凛袮のヒーローを務めてきたのだから。
しばらくすると、凛袮の涙と熱中症の症状がだいぶ治まってきた所に、令音が六華と共に担架を持ってきた。
「凛袮、待たせたね………さあ」
令音が担架を指さすと、凛袮は首を傾げる。
「………あの村雨先生、これは?」
「キミは熱中症だろう?だから宿舎まで運ぼうと思ってね」
「凛袮さま、宿舎でお休み下さい。熱中症は休んでいれば治りますから」
「い、いえもう大丈夫です。士道の看病のおかげでだいぶ良くなりましたから………」
凛袮ちゃんまさかの拒否。何故なら、令音と六華が凄まじい嫉妬の視線を向けているからだ。
―――今すぐ士道から離れろ、と言わんばかりに。
ここで宿舎送りになれば、この修学旅行で士道と一緒にいられる時間は無くなる。
………自由時間は残り二時間も無い!!ここでリタイアする事は、ライバル達に大きく先を越される可能性があるからだ!!
「何を言う。熱中症は放っておくと命に関わる。教師として生徒に無理はさせられない。と言うか、今すぐシンから離れてくれると嬉しい」
「その通りです凛袮さま。早くお休みになって下さい。士道さまは、凛袮さまの分まで、たっぷりと可愛がらせていただきますから。と言うか、さっさと士道さまから離れてくれたら、六華は嬉しいのですが♪」
「村雨先生、星照さん!?本音ダダ漏れなのですがそれは!?」
否が応でも凛袮を宿舎に運ぼうとする令音と六華。肩にふるふるとしがみ付く凛袮に士道も言う。
「凛袮、担架が嫌なら―――俺のおんぶだ」
「―――村雨先生、星照さん。士道におんぶしてもらいます」
士道がしゃがみ込むと、凛袮は嬉しそうに士道の背中に体を預けた。
「決まりだな。じゃあ村雨先生、六華。凛袮を宿舎まで連れて行きますね」
「………」バキッ!
※↑担架の金属部分(六華ちゃん)
「………」ボキッ!!
※↑スイカ割り用のバット(くるみん)
「………」ビッシィッ!
※↑担架の布部分(令音)
「………」グッシャアッ!!
※↑スチール缶の缶コーヒー(折紙)
『わー、相棒すっごいねー。女の嫉妬って金属物を簡単に破壊するんだねー』
士道のおんぶを選んだ凛袮ちゃん。そして、凛袮に麦わら帽子を被せておんぶする士道を見た、六華、くるみん、令音、折紙はそれぞれ手に持っていたものを破壊した。
士道は凄まじい視線を感じるとスタスタと逃げるように宿舎へと向かった。
ドライグは、未だに頭ワルインジャー状態になっており、戻るまでもう少しかかるようだ。
「ねぇ夕弦、あの凛袮も?」
「確信。強力なライバルですね」
耶倶矢と夕弦も凛袮を強力なライバルとして認めた。そして、耶倶矢と夕弦の作戦も次のフェーズへと移行しようとしていた。
―――◆◇―――
凛袮を部屋で寝かせた後は、士道は再び耶倶矢と夕弦の攻略に向けて神経を研ぎ澄ませていた。
………リミットは、残り一日。つまり、士道は明日までに真の八舞にふさわしい精霊を選ばなければいけないのだ。
『………片方を選ぶともう片方が必ず暴れるであろうな。なると―――』
「ドライグ、俺は最初からそのつもりだ。何とかして両方とも力を封印して、耶倶矢と夕弦の二人を生き残らせる………この選択肢以外を取るつもりはねえ」
士道は結末をしっかりと決めていた。何がなんでも耶倶矢と夕弦の両方を救って見せると。
近くの自販機でコーヒーを買ったのち、ビーチに戻ろうとした時だった。
「―――耶倶矢、そこにいるのバレてるぞ」
………近くの曲がり角に、人間とは異なるオーラを持つ存在に気付くと、士道が声を出して指を刺した。士道はそのオーラの正体が耶倶矢と分かっていた。
シーン………
しかし、曲がり角から耶倶矢は出てくる事はなく、声すら返ってくる事は無かった………これには士道くん、盛大に息を吐き出す。
「やれやれ………耶倶矢、三秒以内に出てこい。じゃないとその場でお前のおっぱいを揉む―――はい、いーち!にー!さ―――」
「ほんの僅かギリギリというところで、我参じょ―――ちょっ、何すんだし!?」
士道がカウントダウンを始めると、最後の数字をいいから少し前に、耶倶矢が現れた。先程のビキニ姿から一点、浴衣へと着替えていた。
そして、耶倶矢が出てくるなり、士道は神速を発動して耶倶矢の背後に回り込み、パイタッチ!
「デデーン!耶倶矢、OUT!」
「なんで!?私、士道が『さん』って言う前に出たし!」
「………俺の体内時計で0.01秒遅かったからです」
「なにそれ、理不尽過ぎるんですけど!?」
「理不尽もクソもあるか。ルールはルールだ―――と言うわけで、レッツおっぱい☆」
「や、やめ―――やんッ!ふぁぁっ!」
ぐへへへへへ!と士道くんが笑みを浮かべると、士道は耶倶矢の胸を弄り始めた。
スレンダーで小ぶりなおっぱいを、浴衣の上から鷲掴みにして上下に手を動かしながら、おっぱいを中央に寄せたりと欲望の限りをつくしていく!
………耶倶矢のおっぱいは、小ぶりだが柔らかさは十香や六華にも劣らない。もちもちと少し硬めの水風船のように手に吸い付く感触に、士道くん大興奮!!
一方の耶倶矢は、士道の拘束をほどくため抵抗するが、背中が密着し力を入れて押しつけてくる腕を簡単に振りほどく事ができず、おっぱい全体を大きな舌で舐め回されるような士道の手つきに、堪らず矯正を漏らした。
………幸い、まだ自由時間は後一時間ほど残っているため、宿舎のひと気は少ないことに助けられ、士道くんやりたい放題!
「わ、我を舐めるなッ!」
「ガハッ!?」
振り解けないとなれば、体が密着しているのを良いことに、腕を振り上げて肘を思いっきり士道の腹部にぶつけた。
士道は堪らず、腹部を押さえて地面に膝をつき、耶倶矢は士道の魔の手から逃れる事に成功した。
「い、いっでえ!?某大晦日の笑ったらケツ叩かれるやつでも、お仕置き役に反撃する奴いねえだろ!?」
「う、うっさい!!許可なく我に触れた報いぞ!」
顔を真っ赤にして胸を両腕を抑える耶倶矢ちゃんと、腹部を襲う激痛に耐える士道くん。
痛みと共に込み上げてくる吐き気を我慢しながら、耶倶矢に訊ねる。
「………それでなんでまた、こんなところに来たんだよ?凛袮のお見舞いってわけでも無いだろ?」
「ああ。ちょっと士道に話があってね」
「話―――まさか、さっきの続きか!?俺に好き放題おっぱいを触らせてくれるって言うのか!?よっしゃ、やってやるぜ!!」
「ち、違うから!最後まで聞けし!!」
『相棒、その辺にしておけ。この小娘の話を聞いてみよう』
わしゃわしゃと卑猥に手を動かし、じわじわと距離を詰めてくる士道くんに、恐怖する耶倶矢ちゃん。
しかし、耶倶矢の願いは士道が妄想で出したものとは違った。ドライグが割り込んで来たのもあり、再び耶倶矢に問う。
「なんだよ改まって………」
士道が訊ねると耶倶矢は口を開け話し始める。
「今私さ、夕弦とあんたをかけて競ってるわけじゃん?明日には、それも決着がつく」
「ああ………忘れていない」
耶倶矢が言ったことを士道は目を細めて首を縦に振った。自分に根回しをするのだろうなと思ったその時だった―――
「士道。あんた明日―――
「―――っ!?す、すまん耶倶矢もう一回言ってくれないか………」
「はあ、聞こえなかったの?だから、夕弦を選べって言ってんのよ」
聞き間違いでは無かったようだ。士道は慌てて耶倶矢の真意を問いただす。
「ちょ、ちょっと待て!!真の八舞に戻った時には、両方の人格は維持できないだろ!?俺が夕弦を選べばお前は―――」
「そりゃもちろん消えるでしょうね………でも、夕弦にはこの世界で知らないことを知って欲しいし、楽しんでもらいたいの。
それに夕弦は、あんた好みの巨乳のグラマーだし、断る理由なんてないでしょ………本当は私も消えたくは、無いんだけどね」
「―――耶倶矢………」
耶倶矢が語ったのは、心の底からの願いだった。そして最後の言葉には目にうっすらと雫を浮かべて………
しかし、耶倶矢は士道に人差し指を突き立て力強く言葉を発した。
「とにかく、明日は夕弦を選んでよね………でないとあんたの仲間ごとこの島を吹き飛ばしてやるんだから!話は終わりよ、短い間だったけど楽しかったわ士道」
「お、おい―――待て耶倶矢!!」
耶倶矢は士道の静止を聞くことなく、そそくさと足を進めて行った。その時、籠手から音声が聞こえてくる。
『あの小娘がそんな事を………いや、待て―――あの小娘共の勝敗成績は確か勝敗が付いたものより、引き分けた物の方が多かった。まさかそれは―――』
「―――ああ、そう言う事だろうよッ!!」
士道は拳を握りしめた………それも、血が出るほど強く。しばらく佇んでいると、夕弦が背後から迫ってきた。
そして、夕弦も開口一番に明日、士道が選ぶ真の八舞をかけた勝負の事を述べた。
「請願。士道、この勝負、是非
「………それは、耶倶矢が自分よりも大切だからか?」
「肯定。はい」
士道の問いに夕弦は間髪いれずに答えた。夕弦は続ける。
「説明。耶倶矢は夕弦よりも遥かに優れています。悩む余地は有りません。士道も一度は思ったはずです―――あの折れそうな華奢な体を抱きしめてみたいと………」
「ま、まあ………それは………」
士道が肯定すると、夕弦の表情はニパァッと明るいものへと変わった。
「安堵。よかったです。士道がそう言ってくれるのであれば、未練はありません。
請願。士道、明日は是非、耶倶矢を選んであげて下さい―――さもなければ、士道の友人たちに不幸が訪れますよ?」
耶倶矢とほとんど変わらない脅し文句を残して、夕弦もスタスタと視界から消えていった。
『随分と厄介な事になったね。シン、大丈夫かい?』
士道のインカムから令音が状況を聞くなり、通信を飛ばしてきた。
あのような話を聞いて、士道が大人しくしていられない事を分かって、令音は先手を打ったのだ。
「大丈夫ですよ令音さん………俺のやる事は変わりませんから」
『心配するな村雨令音、この男はこう見えても冷静だ。相棒は必ず〈ベルセルク〉を説得する………貴様は不安要素の方を頼む』
士道とドライグの言葉に令音は『心得た』と言うと、通信を切った。
………士道は大きく息を吸い込むと、宿舎から見える青空を見つめ、誓う。
「………待ってろ耶倶矢、夕弦。俺がお前らを必ず助ける。これは救うための戦いだ」
士道は困難に挑む事を決意した。お互いを愛し、お互いを生かす事を望む精霊を前に、士道は強く拳を握りしめ作戦を立てるのであった。
―――◇◆◇―――
「ここ………は………」
短く息を吐いて、ゆっくりと目を開けると―――崇宮真那は意識を取り戻した。
朦朧とする意識が徐々にクリアになると、最初に白い天井と灯りがはっきりと見えた。
体の至る所に包帯が巻かれ、左腕には点滴、口元には酸素マスクが取り付けられ、真那の鼓動に合わせて心電図が規則的に音を鳴らしていた。
「なんで私は………っ、七月………一八日!?」
真那は首を横に倒すと、視界内に時計が入ってきた。
………その時計には、14:00 7/18 TUE と書かれていた。この時計が確かなら、最悪の精霊〈ナイトメア〉との死闘から、ひと月以上経過している事を示している。
あの空間には、真那と狂三を除くと、士道、十香、折紙、それから士道が抱えていたもう一人の〈ナイトメア〉くるみんの四人。
………そして、あの時士道が凄まじい力を解き放った事を真那は知った。
その力は、自分が手も足も出なかった〈ナイトメア〉を圧倒するほどの………もし、DEMやASTに知られれば、兄の士道に災いが降りかかる事は、避けられないこと故に!
「に、兄様………ッ!兄様は―――」
ひと月もの間、横になっていたせいで、鉛のように重い体を起こし、身体に付けられた医療器具を強引に取り外す。
そして、床へと足をつけて部屋から出ようとしたその時―――
「………お前が、崇宮真那だな?」
ガラララッと言う音と共に扉が開かれ、黒服の男たちが部屋へと入り込んで来た。
真那は目線をチラチラと動かし、周囲の気配を慎重に探っていた。
(部屋の外に二人………階段付近に二人………下の階と地上にそれぞれ五人ずつ………おまけに病院周辺にはニ〇人近くも―――これは、ガチでやがりますね)
部屋に入ってきた黒服の数は五人。そして、部屋の外に待機している黒服が四人。そして、一階と真下の地上で待機している、黒服の一味と思われる人間が合計十人、さらに建物の外には四方に人員を張り巡らせた、万全な包囲態勢が敷かれていた。
真那はこの黒服たちを見た瞬間に、相当の実力者である事を察知した。それも最前線で戦う戦闘のプロ集団であることを………
………何者かが自分を捕獲しにきたと思った真那は、黒服たちの動きを一挙手一投足、注意深く観察する。
「―――誰でやがりますか?」
真那が目を細めて訊くと、リーダーと思われる黒服が一歩前に出た。
―――そして次の瞬間、予想外のことが起こった。
「我々は『ラタトスク』の者です。五河琴里司令のご指示のもと、お迎えに上がりました」
黒服のリーダー格の男が片膝を地面につけると、後ろの四人も同様に片膝をつく。これには、真那も自然と声が漏れた。
………自分を強引に捕獲しようと、先頭になると思った矢先に黒服たちが一斉に膝跨いだのだ。これで驚かない方が無理だろう。
「………琴里さんが、私を?」
真那がポカンとした表情を浮かべると、黒服のリーダーが黒いケースを真那へと差し出す。
「ええ。以前あなたは、五河司令に『ラタトスクでお世話になる』と仰られてたと聞き、我々はあなたがお目覚めになられるのを、お待ちしておりました………こちらが契約書及び、この一ヶ月間で起きた事象をまとめた、報告書にございます」
真那はケースを開けて、契約書を見る前に報告書の方へと目を通した。
真那は、その報告書を見ると―――ガタガタと手が震え始めた。
「兄様があの〈ナイトメア〉を撃退した!?それから、精霊を超越する兵装を纏って琴里さんを襲撃した鳶一一曹を撃破し、さらに新たな精霊〈ガーディアン〉星照六華を封印―――これは、全て本当の事象でやがりますか!?」
真那が一通り報告書に目を通した後、黒服を見ると首を縦に振った。
「あなた様の兄君―――五河士道殿と精霊〈ナイトメア〉の戦闘及び、鳶一折紙を撃破した時の戦闘映像は、こちらに有ります。しかし、精霊〈ガーディアン〉のデータは、我々には知らされておりません。
………この二つで良ければ、契約が成立次第、真那さまに提供するようにと、五河司令から伺っております。
ご懸念されている兄君―――五河士道殿はご無事ですよ」
とりあえず実の兄である士道の無事を聞いた真那は、ホッと大きく息を吐き出した。
………次に真那は、ここにいない二人の人物についても問いただす。
「では、兄様。それから琴里さんは今どちらへ?」
「兄君の士道殿は、現在は修学旅行で或美島を訪れております。五河司令は本日、ラタトスクの会議へとご出席されております」
黒服の言葉を聞いた真那は、今度は契約書の方へと目を通した。目を上下左右に動かしながら、数分ほど経過したのち、真那は立ち上がる。
「………契約書の方は、琴里さんとのご相談の後、サインをするということにしていただけねえでしょうか。こちらも幾つか質問事項がありやがりますので」
「―――承知しました。五河司令もそのように仰ると言われておりましたので、異論はございません………ああ、お体が優れないのであれば、日程の方を調整させて頂きますが―――」
「もう大丈夫でやがります。傷も癒えていますし、これ以上ここに留まる理由がねえですから」
「結構。では、真那さまの宿泊先へとご案内させて戴きます。さあ、どうぞこちらへ」
黒服と真那は、そそくさと陸自の病院を後にした。そして、真那の宿泊先は―――十香たちが利用する精霊マンションの空き部屋となったのであった。
こうして、琴里はDEM社が誇る最強の魔術師の一角―――
この崇宮真那の加入がラタトスクの戦力向上そして、士道を求めた義妹実妹によるガチンコ対決の幕開けはすぐそこまで迫っているのであった。
お気づきかも知れませんが、DEM側は相当な強化を施します。
近いうちに―――と言うか、もう何がDEMのバックにいるかは想像が付いていると思いますが、そのうち公開させて戴きます。
ドライグの頭ワルインジャー状態。
ツッコミが一定回数を超える―――または、士道がおっぱいに触れすぎると、精神消耗の結果陥る突発性の病。
………完治まで約一時間程かかる。
☆おまけ
真那「フッフーン!復活の真那でやがります!今日から兄様をガンガン攻略していきやがりますのでよろしくお願いしやがります!」
六華「あなたが士道さまの実妹の真那様ですか。私は士道さまと結婚を前提にお付き合いさせていただいております六華です」
真那「なんですと〜!?あのハーレム王を目指す兄様が結婚を申し出やがりましたのか!?」
六華「はい。プロポーズは士道さまからされました。『お前の居場所になってやる、抱きしめてやる、愛している』と。私は、士道さまと何度も一緒の布団で眠らせていただいておられます」
真那「な、なななななな!?たった一ヶ月でここまで差が開くとは………それで六華さんは、もう兄様とその………アレはしやがったのですか!?」
六華「アレは、まだです………最近村雨先生と琴里さまが士道さまの部屋の前を監視されております故、私も簡単に手は出せず………ですが、修学旅行の最後の夜には、士道さまの貞操をいただくおつもりです」
真那「作者さんすみません、今すぐ私を或美島まで運びやがってくだせえ!!このままでは兄様が―――」
ごめんよ、真那ちゃん。作者である私もそれはできません。