デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

69 / 84
どもども、勇者の挑戦です。

書いてて思ったことが一点―――この章のメインヒロインって八舞姉妹だよね?と。
なぜかやたらと折紙が出ている気がするのは、気のせいでしょうか(確実に気のせいでは無い)

それでは、続きです!


九話 折紙の意地!

士道がエレンと激突する少し前の出来事だった。

十香が、士道を旅館の外へと引っ張って行く姿を、窓から確認した折紙は、裏口から靴を持って出て行った。

 

―――私の士道を取られてなるものか………

 

折紙はその一心で、闇が降りた世界へと駆けていった。数分ほど足を進めると、折紙は視界内に入ったオブジェクトを見て足を止めた。

 

「………随意領域を展開している?」

 

そのオブジェクトは、DD‐007〈バンダースナッチ〉。十香の捕獲作戦の際に、折紙への牽制として旅館の周囲に配置させていたもの。

折紙は魔術師以外で、随意領域を操る存在は知らなかった―――故に、燎子から預かった保険のネックレスへと触れ、全神経を研ぎ澄ませていた。

 

その時ある者がザッと周囲の傘を踏み潰す音と共に、歩み寄ってきた。

 

「………鳶一折紙?こんな所で何をしている。外はこの通り強風だ、早く宿舎に―――」

「―――あ、危ないっ」

 

折紙の力が感じられた瞬間に、バンダースナッチの頭部が光を放ち―――地面を蹴って上空へと飛び上がる!!

なんと、バンダースナッチは令音を目掛けて急降下して来た―――まるで先に邪魔者を始末さんとばかりに………

 

「間にッ、会えっ!」

「く―――ッ」

 

折紙は令音に体当たりをして、バンダースナッチが急降下してくる起動から、外す事に成功した。

令音は地面に擦れながら吹き飛び、足に裂傷を負っただけだった。

 

―――しかし、令音を庇った折紙は………

 

「か―――はっ………」

 

バンダースナッチの頭突きが胸部へと直撃し、近くの大木へと叩きつけられた。

衝撃のあまり吐瀉物を吐き出したのち、折紙は地に倒れ伏した。

胸だけでなく、肺にもダメージを受けたせいで呼吸が困難になり、意識が朦朧とし、目が霞む。

 

ザッザッ………

 

「………くっ、今度は私か」

 

バンダースナッチは、倒れた折紙を見て戦闘続行は困難と判断したのか、再び令音に向けて足を進めた。

 

―――令音を守らなければ。その思いから折紙は悲鳴をあげる身体に力を入れて、身体を起こすが………やはり、受けたダメージが大きく、再び倒れ伏した。

 

「私は………また、何もできずに―――ッ!!」

 

折紙は朦朧とする意識の中、強く拳を叩き付けた。

目の前で精霊に父と母を殺され、そして〈プリンセス〉や〈ナイトメア〉という精霊相手に歯が立たなかったという無力さが、頭の中で思い浮かぶ。

 

『―――邪魔だ、消え失せろッ!!』

 

『きひひひひひっ、その程度でわたくしを殺そうなんて………思い上がりましたわねぇ!』

 

大地を鳴動させ、空間を斬り裂く大剣を持つ精霊。空間振とは別に一〇〇〇〇人以上の人間を手にかけた、最凶最悪とも名高い精霊。

両親を殺した憎き仇を討つため、人類を脅かす未知の脅威から人々を守るため、折紙は身を粉にして超常に立ち向かった。

 

………しかし、超常の壁は非常に堅固で高かった。何度も挑み立ち向かったが、いつも跳ね返され虫のようにひっくり返った。

隊員たちは折紙のことを「才能がある」「天才だ」などと言うが、精霊の一人すら満足に倒せない自分に、日々悔しさが積るばかり。

 

「………っ!」

 

ギュゥィィィン!

 

バンダースナッチは、頭部にエネルギーを集約させ翡翠の球体を作り出し、それを令音に向け放とうとしている。

そして、今も令音が殺されようとしている時に何もできない、自分の非力さに………また私は目の前で失うのか、と。

 

悔しさに打ち震えたその時、ある人物が刹那によぎった。その人物は全てを失った折紙の最後の砦ともある人物だ。

 

「………し、ど、う………っ!」

 

………折紙は知っている。どれほど打ちのめされても立ち上がった男を………命を賭してまで、自分の前に現れたその男を。

自分が仇と捉えた妹を守るため、差し違えてでも護り切ると、何かに取り憑かれたような執念で向かって来た。

その男なら………この状況でも迷わず立ち上がり、剣を取るであろうことを!!

 

「………っ、諦めてなる、もの………かっ!」

 

バンッ!と近くの地面から砂埃を上げるよう手をつき、全身に力を込めた。既に大きなダメージを受け、体は震える。

しかし、折紙は三度倒れる事はなかった………目の前の令音を守るためにレイザーブレードを杖に、立ち上がった。

 

自分から妹を守り切った士道のように―――この場は、必ず令音を守り切ってみせると!!

 

そして、朦朧とした視線がクリアになり、レイザーブレードを握りしめてバンダースナッチの前に立ち塞がる!

その時、背中から音声が響き渡る。

 

『………マスター、よく立ち上がりました』

「アルビオン………」

 

相棒の名前を呼ぶ折紙。その折紙の強い思いに、今度は神器は応えようとしていた。

 

『マスター、確かに今までの汝は一人でした。ですが、汝はもう一人ではありません。私はマスターが望む限りいつでも力を分け与えます―――行きましょうマスター、私の力を存分に振るうのです!』

 

「―――アルビオン………私に力をっ!」

 

カアアアアアアアアアッ!!

 

アルビオンの声を聞いた折紙は、歯を食いしばり、手と足に力を入れてゆっくりと立ち上がると、白い閃光が放たれる!!

その時―――白に縁取られた水色のエナジーウイングが顕現した。

それと同時に、手に持っていたネックレスが凄まじい輝きを放ち、一本のレーザーブレードが姿を表した。

 

………ネックレス型のレイザーブレードは燎子が保険として渡していた。謹慎を受けた折紙には、CRユニット関連の装備は使えない。現地で精霊等が現れた際の防衛手段として、渡していたものだったのだ。

 

『Vanishing Dragon Awaken―――Divide!!!!!!!』

 

ギュゥゥゥンッ!!

 

折紙の翼から、周囲の空気を歪ませる波動が放たれると―――バンダースナッチのエネルギーが急激に減少した。それと同時に、折紙の力が爆発的に膨れ上がり、レイザーブレードから溢れんばかりの力を放出させる!!

その時、翼が点滅を繰り返してアルビオンが声を出す!!

 

『マスター、今です!!』

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

ズドオオオオオオオオオオオッッ!!

 

折紙がレイザーブレードを振り下ろすと、地面を斬り裂きながら衝撃波がバンダースナッチへと襲いかかる!!

折紙が放った特大の一撃は、バンダースナッチの体を真っ二つに裂き、装甲および内部の部品ごと、木っ端微塵に吹き飛ばした。

 

「はっ………はっ………」

 

特大の一撃を放った折紙は、肩で息を数回したのち地面へと倒れ伏した。地面へと体が接触する前に、令音が優しく折紙を優しく受け止めた。

 

「………ありがとう鳶一折紙。キミに命を救われたよ」

 

「せ………先、生。よかった」

 

レイザーブレードをネックレスの状態に戻し、背中の翼が光の粒子となって消滅すると、折紙は令音の方に右腕をかけてゆっくりと歩き始めた。

このまま、何もなく終わる―――そう思ったその時だった。

 

パチパチパチパチパチパチ………

 

『マスター。残念ながら………このままでは終わらないようです』

 

素晴らしいものを観させてもらった時に送られる観劇の拍手が、この空間へと響き渡る。

令音は、折紙に肩を貸したまま拍手が聞こえてきた方向へ、首を動かす。

 

「………それは、何に対しての拍手かい?」

 

令音が言うと、拍手を送ったであろう者が夜闇に包まれる森から姿を表した。

 

それは整った栗色の髪に、それと同じ色の瞳。バトルスーツのようなものを纏った青年だった。

士道よりも体は少し小さいが、死線を幾度となく潜り抜けた強者のようなオーラを放つ異常に思える少年だった。

 

「そちらのお嬢さんの健闘を称えての拍手だよ………こんなに早く『白い龍(バニシング•ドラゴン)』が目醒めるとは。最初は貧乏籤引いたと思ったけど、来て良かった」

 

ザッザッ………

 

その少年がパチンッ!と指を弾くと、背後からゾロゾロとバンダースナッチが現れた。

夜闇から姿を表したバンダースナッチ―――その数は、少年の背後からそれぞれ二体ずつの計四体。

 

先程の機体の攻撃をまともに受け、体に順応しきっていないアルビオンの力を使った結果、折紙は大きく消耗している。

この状況は、折紙にとっては絶体絶命の大ピンチだ。

 

「さっきの、人形………っ」

 

「くっ………逃げ道を塞がれたか」

 

折紙が後ろを見たその時―――少年の右翼に展開されていたバンダースナッチが、行手を塞がんばかりに突如として現れた。

そして、左翼に展開されていたものが、前に出てきて再び両翼に展開した。

 

「残念だけど、このまま逃すと隊長に怒られるんでね。大人しく僕に着いてきて欲しいのだけど………どうやらそれは無理そうだね。まあ、消耗しきった今のキミなら、わざわざ僕が手を下す必要はなさそうだ」

 

少年が手招きをするが、折紙と令音がそれに従わない事を少年は分かっていた。

その上で、少年はバンダースナッチを折紙と令音へとけしかける!

 

「くっ………アルビオン!」

『はっ!』

 

少年が手を倒すと―――四体のバンダースナッチがジワジワと押し寄せてくる!

迫り来るバンダースナッチを見た瞬間に、折紙は令音から離れて背中にエナジーウイングを、そして両腕にレイザーブレードを顕現させる!

 

………しかし、折紙は既に立っているのがやっとの状態。令音は堪らず声を上げる。

 

「………鳶一折紙、私に構わず逃げるんだ。キミ一人ならまだ―――」

 

ギィィィィィィン!!

 

令音が全てを言う前に、折紙は最も近くまで迫ったバンダースナッチをレイザーブレードで、横薙ぎの斬撃を放つ!

その一撃は、二体を巻き込み一体の上体を斬り落とし、もう一体を吹き飛ばした。

 

ドシュ!ドシュ!

 

背後の機体二つが、頭部からビームを放った。折紙はレイザーブレードの腹を体に前に構える!

 

「はあああああっ!」

 

ドオオオオオンン!!

 

放たれた二つのビームは、折紙のレーザーブレードに直撃し折紙と令音を避けるよう、V字に広がり背後で爆発を起こした。

しかし、完全に防ぎ切ることは出来ず折紙の両肩からは煙が上がっていた。

 

「………鳶一折紙。なぜキミはそこまで」

 

「村雨先生、私は―――私のような人間を作らせないために、この力を振るいます。私が戦う理由はそれだけです………貴方が傷付けば、士道が悲しみます」

 

令音を捨て置けば、確かに折紙は逃げる事はできたのかも知れない。だが、一人のASTの隊員として―――精霊という未曾有の災害から、人々を守ると誓ったあの日から、戦う覚悟を決めていた。

 

その上、折紙の両親を殺した存在はおそらく精霊だ。それを倒そうというのに―――危険に晒される女の一人救えないで、それが倒せるものかと!

 

「………さすがは、伝説の龍に選ばれた少女と言った所だね。じゃあ、こちらも一気に決めさせてもらおうか」

 

ブウウンッ!!

 

少年が指を弾くと、残りの三体のバンダースナッチ、頭部の眼光を光らせ随意領域を展開した。

そして、折紙を倒さんとばかりに一気に迫ってくる。

 

「………一撃で、終わらせるっ」

 

クリアになった視線が再び霞み始め、ヒィィィィン!と身体の中で甲高い音が鳴り響くと同時に、激しい頭痛に襲われた。

もう折紙が剣を触れるのは、恐らくこれが最後………故に、内に宿る伝説のドラゴンに折紙は、強く願った。

 

―――この絶体絶命のピンチを乗り切るだけの力が欲しいと!!

 

「アルビオン………私に、最後の力をッ!!」

『はっ―――Vanishment Additional Effect!!!!!!!!』

 

カアアアアアアアアアッ!!

 

エナジーウイングが、水色の強い輝きを放つと―――バンダースナッチの随意領域が消滅し、さらに全身に供給されるエネルギーが尽きたかのように機能停止し、その場で微動だにしなくなった。

………こうなってしまえば、ただの鉄屑同然だ。折紙にそれを砕けない道理はなかった。

 

「先生、伏せて―――はああああっ!!」

「………っ」

 

ズドオオオオオオオオオオオッッ!!

 

折紙の言葉と共に、令音はその場にうつ伏せで頭を抱えた。その後、折紙は全パワーを込めた一撃をバンダースナッチ及び、その後ろで待機する少年へと放った。

 

折紙が放った渾身の一撃は、周囲の木々を何本も切り倒して、令音以外の全てを吹き飛ばした。

 

「はっ………はっ………―――」

 

ドサッ………

 

力を完全に使い果たした折紙は、今度こそ意識を失いその場で力なく倒れ伏した。

その倒れた折紙を令音は、抱きかかえた。

 

「………私のためにここまで。本当にありがとう、鳶一折紙」

 

バンダースナッチとそれを従えた少年が消えた事を確認した令音は、宿舎を目指して足を進めた。

このまま何もなく、折紙を寝かせたのち士道とベルセルク攻略の作戦を再び練る。令音はそんな事を考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――これが地上最強と謳われた二天龍の一角。生身で受ければ間違いなく即死だったよ。いやー、ウェストコットのおっさんが、あの子に肩入れするのもわからぁ」

 

「………っ!その姿は」

 

少年が、漆黒に彩られたCRユニットを装着し、煙を吹き飛ばして戦場へと復帰した。

少年のCRユニットは、頭には布のターバンを有し、そのほかの部位は騎士の甲冑のような金属装甲に覆われ、腰には黒い布がひらひらの舞っていた。

そして、両手には巨大な死神が持つような鎌が握られ、クルクルと鎌を回しながら、それを令音に突き付けた。

 

「そのお嬢さんは、僕が貰っていくよ。ウェストコットのおっさんには、丁度いい見上げになるだろうからさ………あのおっさん女子高校生に手を出すの大好きだな変態だからね。おまけにそれが『白い龍』を宿してると知ったら―――嬉しすぎて発狂するんじゃないかな?

ちなみに、お姉さんも少し痛い目に遭ってもらうよ?CRユニット、バンダースナッチ………これらは、一般人の知っていいものじゃないからね」

 

「………っ」

 

まるで死神になったかのようなCRユニットに身を包んだ少年が、二人を捕獲しようと迫り来る。

令音は、折紙を抱えて走るが少年はすぐに令音を追い抜き、行手を阻むように仁王立ち。

それを見た令音は、すぐに足を止めてその少年を睨みつける。

 

「………そんな怖い顔しないでよ、お姉さんはここ数分の記憶の処理をするだけだから。そんな顔してたら、せっかくの美人が台無しだよ?」

 

「………キミはDEM社の魔術師か。ならば覚えておくといい―――例え私は、記憶を消されようともDEMへの怒りを、恨みを忘れることはない」

 

「ウェストコットのおっさん、このお姉さんに何やったんだろ?親戚でも犯したのかな?んまあ、そんな事はどうでもいいけど」

 

少年は、それだけを言うと釜を振り上げた。逃げても無駄だと悟った令音は少年に背中を向けた。

 

―――折紙だけは守ってみせると………

 

そして―――………少年は振り上げた釜を振り下ろす!!

 

 

「それじゃあ、おつかれ―――ッ!?」

 

少年はその鎌で令音を気絶させた後、この数分間の記憶を消去し、折紙を連れ去る予定だった。

しかし、その予定が大きく狂ってしまった。何故なら――――――

 

ゴオオオオオオオッッ!!

 

一陣の凄まじい風の刃が竜巻を形成して、令音を守るように展開された。

少年は竜巻に飲まれないよう、慌ててその場から飛び退いた。

 

竜巻が止むと一人の大男が、両腕にオレンジ色の光を放つ籠手を纏い、前後両方に刃がある刀を手に、令音の前に突如として現れたからだ。

 

その大男の名は仁徳正義。

 

「………村雨先生、お怪我はありませんか?」

 

仁徳が背中越しに言うと、令音は首を縦に振ってその背中を見上げた。

 

「ああ。なんとかね………それにしても仁徳正義―――今のは、キミが?」

 

仁徳には、令音の言葉が聞こえていなかった………なぜなら、彼は既にCRユニットを纏った少年へと意識を集中していたからだ。

 

「村雨先生、折紙さま!ご無事ですか!?」

「六華………キミまできてくれるとは。これで、何とかなりそうだ」

 

神雷を纏う槍を片手に、霊装を纏った六華が駆け寄ってきてくれた。これには令音もホッと息を撫で下ろした。

 

「やれやれ、今日は驚きの連続だ。捕獲対象の〈プリンセス〉に、突如現れた〈ベルセルク〉。さらに新種の精霊に、謎の力を持つ大男ときたか。命令を受けてやって来て本当によかったよ」

 

少年が歓喜の笑みを浮かべたところで、仁徳が背中越しに六華へと言う。

 

「星照さん、行ってくれ………ここは俺一人で十分だ」

「………わかりました。正義さま、ご武運を―――村雨先生、行きましょう」

 

六華は令音を先に行かせると、その背中を守るように宿舎の方へと足を進めた。

しかし、少年はこれを許す事はなかった。

―――バンダースナッチを見られた者は、誰であろうと記憶を消す義務がある!少年は更なる力を解放する!

 

「逃がすか―――『リュカオン』ッ!」

 

オオオオオオンッ!!

 

少年が指を弾くと、何か黒い物体が、令音と六華を目掛けて飛びかかった。それは、頭部に刃を持った狼のような四足歩行の漆黒の獣が、風を切り裂きながら迫ってくる!

 

「………ッ!」

 

六華は迎撃しようとアイギスを構えるが―――獣が六華まで迫ることはなかった。

 

何故なら―――………

 

「フンッ!!」

 

仁徳が神速を発動して、漆黒の獣の行手に先回りをして顔面を掴む!

 

そして―――

 

ドゴオオオンッ!!

 

仁徳はそのまま情け容赦なく、腕を振り上げる。そのまま上げた腕を地面へと振り下ろし、漆黒の獣を地面へ叩きつけた。

仁徳の剛腕は、轟音とともに周囲の地面を陥没させた。叩きつけられた獣はキュウッ………という鳴き音を上げ、動かなくなった。

 

「………この通り、俺のことは心配いらない。安心して行ってくれ」

 

六華は首を縦に振ると、令音から折紙を受け取りそのまま走っていった。六華と令音が消えたことを確認した仁徳は、叩きつけた獣を拾って本人へと返した。

 

「これはお前のものだよな?返してやる」

 

「………それは複製されたとはいえ、紛れもなく神滅具。こんな男がノーマークだったとは、捜索班は飛んだ手抜き仕事をしてくれたもんだ」

 

少年が言うと、仁徳が剣を構えて手招きをする。

 

「………来いよ小僧。仲間を傷つけたツケはキッチリ払ってもらう」

「良い覚悟してんじゃん―――『リュカオン』この男に手加減は要らない、全力で殺せ!!」

 

オオオオオオンン!!

 

漆黒の獣が雄叫びを上げると―――その姿が大きく変わった。

 

頭部に角のような刃を持った狼のような顔面はそのままだが、両腕に二つの刃が上下に二つ、背中と尻尾には針山のように無数の刃が生えた、四足歩行のものへと変貌を遂げた。

 

―――それはまさに人狼とも呼べる姿へと変貌した。

 

「ゆけ―――『リュカオン』」

 

オオオオオオンン!!

 

漆黒の獣―――リュカオンが雄叫びを上げると、背中および尾から刃が伸びて、四方八方から刃の嵐が仁徳を襲う!!

 

「面白いッ!!」

 

ドガガガガガガガガガガガガ!!

 

仁徳は迫り来る攻撃に笑みを浮かべると、刀を振るい迫り来る刃を片っ端から弾き返して行く。しかし、リュカオンの放つ刃は数千、数万に迫るほどだ。弾き返さないものは、飛び跳ね、ムーンサルト、宙返りなどの体術で掠ることすら赦さない!

その身のこなし及び、刀の使い方は風と戯れる妖精の如き舞だった。

仁徳の刀は、前後両方に刃を持つため、一振りで二度相手を斬ることが可能だ。

さらに、前後両方の刃には風の力を持つ魔法玉が埋め込まれているため、それを解放する事で周囲に竜巻を呼び起こす事も可能だ。

 

「こ、この男―――人間なのか!?」

 

リュカオンの刃は、地上だけでなく頭上や側面、背後や足場―――至る所から無尽蔵に迫る剣戟の極地に等しい。

その怒涛の攻撃ですら、仁徳には未だに傷一つ付けられないことを見た少年は、驚きを隠せなかった。

 

「風よ―――天へと舞えッ!」

 

仁徳は刀を回転させ周囲に竜巻を呼びよせると、リュカオンの刃を消滅させると同時に、天へと舞い上がる!!

 

「今度はこちらの番だな」

 

仁徳は刀を体の前で回転させ、リュカオンの刃を竜巻で全て切り刻んだ。そして、神速を発動させ懐へと入り込む!!

 

そして、渾身の一撃が放たれる!!

 

「―――疾風連斬•五連」

 

ヒュン―――ジジジジジ………ズドオオオオオオオオオオオッッ!!

 

すれ違い様に斬りあげるよう一閃!

すると僅かコンマ何秒かの時間差で、リュカオンの胸部に幾重にも縦横、それから斜めと幾重に斬撃が入り―――爆発と共にリュカオンの姿が消えた。

 

「………こんな小物で俺の相手が務まるものか。俺を殺したければ貴様自身で挑んで来い―――全力でな!!」

 

「気に入った!!キミは僕が直接殺してあげるよ!」

 

仁徳の挑発じみた言葉に、少年は地面を蹴り鎌を回しながら仁徳へと迫る。

 

「はあっ!」

 

少年は小手調に鎌を縦に振り下ろすが、仁徳は鎌の刃を籠手で容易く受け止める。

 

「まだ分かっていないようだな………この程度で俺を取れると思っているのか?」

 

仁徳が鎌を握りしめ、力を込めるとビシビシと鎌に罅が入り始めた。しかし、少年の狙いはこれだった。

 

「いいや、取れるさ―――アクセラレーターッ!!」

『Starting Acceleration!!!!!!!!』

 

少年が強く叫ぶと、CRユニットが音声を放つと共に、漆黒の輝きが周囲を照らす!!

それと同時に、少年の力が爆発的に跳ね上がる!!

 

「―――ッ!?」

 

悪寒を感じた仁徳は、すぐさま鎌から手を離して距離を取った。しかし、漆黒の光と共に神速に迫る速度で動く少年は、先程までとは別人だった。

 

「………ちぃッ!装備の能力か!?」

 

距離をとった瞬間、背後にいきなり少年が現れ、鎌で首を落とさんばかりに刃が迫る!!仁徳は間一髪で体を倒して避ける事に成功したが、少年の攻撃は止まらない!!

 

「そらそらそらそらッ!!」

「機械仕掛けがッ!!」

 

攻撃は鋭さを増し、神速で対応せざるを得なくなった仁徳は、苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。

二人の戦いは目にも映らぬスピードで行われており、仁徳の持つ刀と少年の鎌が何度もぶつかり、その度に衝撃波が突き抜け周囲の森を揺らした。

 

激しい剣戟の応酬で既に周囲の森の半分が、切り株だらけになるという大きな自然破壊が行われた。

 

「………本当にキミは人間なのか?アクセラレーターを使った僕とここまでやり合った人間はいない。下手すれば僕らの隊長とも良い勝負するんじゃないかな?」

「俺を舐めているようだな。お前はもちろん、お前らの隊長とやらにも、俺は勝つぞ」

 

仁徳の言葉に少年は冷や汗をかいた。今のアクセラレーターは、少年の切り札だった。しかし、それを使用してでさえ、攻撃が掠りもしないこの男を見て事実である事を悟ったのだ。

それを見た少年は鎌を背中へと仕舞った。それを見た仁徳は声を上げる。

 

「おい、まだ勝負は付いていないぞ?途中で勝負を投げる事は、戦士同士の戦いでは最大の侮辱行為だぞ」

「よく言うよ、力の一欠片しかろくに見せない男が―――『お前には全力に見せるに値しない』と全力を隠す事もまた、侮辱行為だと思うけど?

………まあ、お互いに此処じゃあ全力を出せないと言うのが、正しいか」

「………………」

 

少年の言葉に仁徳も黙り込んだ。仁徳は少年が先程のリュカオンを使わない事を疑問に思っていた。身に纏うなり、攻撃回避後に合わせて攻撃をされたら、仁徳は全く無傷とはいかなかったからだ。

 

また、少年も仁徳が籠手の力を一切使わない事を見切っていた。仁徳の場合は、全力を出そうとなると、力の余波で周囲が吹き飛ぶため、近くに宿舎があるこの場所では、とてもできなかったのだ。

 

「………此処らで痛み分けと行こうかな。僕のところの隊長がやられちゃったみたいだから、僕はソレの回収に向かうよ。今回はこの辺で切り上げさせて欲しい―――次は本気で殺し合える事を願おう!

そうだ、自己紹介が遅れていたね―――僕はDEMインダストリーの魔術師『グレン•レオ•カザード』だ」

 

「俺は来禅高校二年三組、仁徳正義。鬼神の力を宿すものだ」

 

お互いに名乗り終わると、グレンは空へと飛び上がる。そして仁徳へと拳を突き出した。

 

「またやり合おうジントクマサヨシ。次に戦うときは、お互い全力で」

「そうある事を俺も願おう!さらばだグレン!」

 

グレンが天へと羽ばたいたタイミングで仁徳も刀を消滅させた。あの刀は仁徳が持つ籠手の力の一部だ。

 

「………五河、俺は務めを果たしたぞ?お前も負けるなよ」

 

仁徳は、漆黒の嵐に覆われた天を見上げて言葉を送った。その言葉は、士道にしっかりと届いていた。

 

 

 

 




感想だ、感想をよこせ!

折紙と仁徳だけで一話を使い切る事になりましたが、アルバテルとフラクシナスの空中艦バトルは、割愛させていただきます!

グレンの神器はお分かりかも知れませんが『黒刃の狗神』です。
グレンは『ジン』ではなくそのまま『リュカオン』と名前をつけています。

これである程度お分かりになったかと思いますが、DEMのバックには奴がいます。一話でもちょこっと出しましたっけ?

仁徳の力は宝具と言う形にしようと考えています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。