デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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お気に入り数も、感想数も予想を遥かに上回るほどの多さに感動しています!

大変お待たせ致しました!ついに十香との会話まで到達しました。この話ではドライグも地味に活躍します!



四話 精霊との会話です!

 

ウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ…………

 

空間震警報が響き渡る。

…………ついにこの時がやってきた。この空間震警報が示す意味というのは、精霊が現れるということだ。

 

精霊の出現予想地点が士道たちの学び舎である来禅高校だったため、既に士道は琴里と令音共に『フラクシナス』に移動を終え、作戦の最終確認を行っていた。

今、士道はフラクシナスにあるモニターで精霊を確認していた。

 

「――――精霊の出現場所は来禅高校の校舎内……『プリンセス』ね」

 

『プリンセス』と言うのは、士道が遭遇した黒髪の少女の精霊に付けられた名称のようなものだ。

 

『士道、あんた相当運が良いわよ?『プリンセス』が校舎内に侵入したことはASTは想定していなかったはずよ。彼女たちは近くの森で待機しているだけ、今のところ動く気配は見えないわ』

 

「…………なぜASTは強攻手段を取らないんだ?ミサイルで校舎ごと精霊を攻撃するなり、強引に突入したりと方法はいくらでもあるだろうに…………』

 

士道が声に出した疑問を琴里が、呆れながら答える。

 

『あなたねえ、正義の味方のASTがテロまがいの行為をするとでも思っているわけ?相変わらず、あなたの頭はオオゴキブリ並みの知能ね。それじゃあやっていることは精霊と変わらないでしょう?……まあ、場合によりけりなのだけど、あっちにも色々都合ってもんがあるのよ。

―――まあ、それ以外にもちゃんとした理由があるのよ、ASTの武装である「CRユニット」は屋内での戦闘には向いていない。だからASTのメンバーは突入せずに近くの森で待機しているだけよ』

 

士道にとってはこの上ない好状況だと言うことが理解できた。士道はこのチャンスを必ずものにしようと燃えていた。

 

『士道、いきなり実戦になるけど…………やれるわね?」

 

琴里が士道に最終確認として訊いた。―――士道はモニターを強く見つめ、首を縦に振った。

 

「―――ああ、今の俺なら大丈夫だ……琴里、行ってくるよ」

 

士道はそれだけ言うと、フラクシナスから精霊の出現地点である来禅高校に転移した。

 

 

 

―――………………

 

 

 

来禅高校に士道がついた時には、来禅高校は精霊出現前とは全く別の姿に変貌していた。……それを見た士道は思わず息を呑む。

 

「…………空間震は本当に恐ろしいな」

 

既に来禅高校の校舎は半壊しており、ど真ん中に隕石が落下したかのような大穴が開いていた。

―――だが、士道の心は決して迷うことも、怯えることも無かった。士道の頭の中には、あの精霊の悲しみに満ちた表情が浮かんでいたからだ。

 

「…………もう二度とあんな表情はさせない―――いや、させるわけにはいかないんだ」

 

士道の決心に琴里は後押しをする。

 

『よく言ったわ!それでこそ私のおにーちゃんよ!•••••肩の力を抜いてリラックなさい士道。あなたには「フラクシナス」が誇る精鋭メンバーがあなたをサポートするわ!』

 

「……精鋭メンバー?」

 

―――ちなみに、士道をサポートするメンバーはこの六名だ。

 

“結婚四回、離婚も四回『早過ぎた倦怠期(バッドマリッジ)』川越”

 

“夜のお店で絶対的な人気を誇る『社長(シャチョサン)』幹本”

 

“恋のライバルに次々と不幸が。午前二時の女『藁人形(ネイルノッカー)』椎崎”

 

“百人の嫁を持つ男『次元を超える者(ディメンションブレイカー)』中津川”

 

“愛の深さ故、愛人の半径五百メートル以内に近づけなくなった女『保護観察処分(ディープラブ)』箕輪”

 

“そして、お馴染みの村雨解析官”

 

『―――相棒、もう俺たち二人で考えあった方が良くないか?』

 

ドライグはもう諦めモードだ。士道も「なんでこんな奴らしかいないんだ?」とボヤいていた。

 

『……心配要らないさシン。クルーたちの実力は本物だ―――大船に乗ったつもりで構えているといい』

 

「……泥船の間違いでは?」

 

令音の言葉に士道はため息をつきながら返した。

士道の心の中での失敗と成功の比率は8:2だった。……それでも、士道は逃げようとせず、琴里の案内のもと精霊の居場所を目指して足を進めた。

―――全ては、あの少女ともう一度話すために。……そして―――彼女と友達になるために。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

『士道、精霊の居場所は三階の手前から四番目の教室だから……その教室よ』

 

「っ…………いよいよか」

 

士道は階段を登りきり、精霊がいるであろう部屋の前までたどり着いた。その教室は、士道たちが生活を送る教室二年四組だった。士道は教室の扉を開ける前に深呼吸をする。

 

「―――ふぅ……ッ!!」

 

ガラララララッ…………

 

士道は教室の扉を開けると、校舎の壁が崩れ去り外から内部が丸見えの状態になっていた。そこに、外の夕陽を眺めながら佇むひとりの少女の姿があった。

 

「―――む?」

 

少女は教室内に入ってきた士道に気付き、振り返る。士道は彼女の元へと足を進める。

 

「…………やあ。俺のことを―――ッ!?」

 

ドガアアアアッ!!

 

歩み寄る士道に少女は無慈悲に腕を振り下ろす。―――その瞬間衝撃波のようなものが士道を目掛けて襲いかかる!

―――しかし、士道は自身の神器『赤龍帝の籠手』を出現させ、左腕で薙ぎ払うことで、衝撃波を消滅させた。

 

「―――ッ!!」

 

少女の牽制とも言える行為を士道が簡単に防いだことに少女は警戒を強めるが、士道は手を前に出して少女に言う。

 

「待ってくれ!俺はお前の敵じゃない!!とりあえず落ち着いてくれ!!」

 

士道は両手を頭の後ろに組み、彼女に近づこうとした。だが、

 

「―――止まれ」

 

今度は少女は士道に剣を突きつける。彼女は士道に一言だけ述べる。

 

「お前は何者だ」

 

「ッ…………そうだな、俺は―――」

 

『士道ストップ!選択肢が出たわ』

 

士道が答えようとしたときに、妹の琴里が待ったをかけた。現在『フラクシナス』では、精霊の脈拍や呼吸、精神状態から解析用装置のAIが導き出した三つの選択肢のうち、どれを士道が言うべきかを、選ばれようとしていた。

 

①「俺は五河士道。君を救いに来た!」

 

②「通りすがりの一般人ですやめて殺さないで」

 

③「人に名を訪ねる時は自分から名乗れ!」

 

琴里が『フラクシナス』のクルーに選択肢を選ばせようとしている中で、ドライグがすぐに士道に告げる。

 

『―――相棒、あのAIは無能だ。相棒の想いを素直に伝えればいい』

 

(とは言っても①は良いんじゃないか?単刀直入だし、説明もある程度は省けるだろう?)

 

士道の言葉にドライグは助言をくれる。

 

『たしかに相棒がやろうとしている目的は①だが、面識の少ない相手だと逆に怪しまれる。

②はその場凌ぎにしかならないだろうから論外だ。

③も捨てがたいが、明らかに格上の相手には言うべきセリフではない。格上の相手からすれば「いつでも殺せる虫ケラが何をぬかしてやがる」と相手をイラつかせるだけだ』

 

(遠回りをしてでも、『話をしに来た』がベストか……)

 

士道が声に出して目的を告げようとした時だった。

 

『士道、③よ―――』

 

『フラクシナス』のクルーが出した答えを無視して士道は精霊を見つめ、強く目的を述べる!

 

「俺は五河士道。俺はお前と話をするためにここに来た!」

 

『ちょっと士道!?命令違反よ―――』

 

琴里が士道に言おうとしたが、士道には聞こえていなかった。士道は琴里が全て言う前にインカムを外していた。

目の前の少女に完全に集中するためだ。―――少女は士道を見て思い出したようにして述べる。

 

「…………おまえ、前に一度会ったことがあるな?なにやら、おかしなことを言っていた奴だ」

 

少女は士道のことを覚えていたみたいだ。士道は表情を柔らかくして少女に言った―――だが…………

 

「…………覚えていてくれたのか?光栄だ!さっそく―――ガッ!?」

 

ドンッ!!

 

士道は少女に胸ぐらを掴まれ教室の壁に叩きつけられた。少女は士道に心中を明かす。

 

「…………敵ではないだと?―――ふざけたことをぬけぬけと…………何が狙いだ?油断させておいて背後から攻撃するつもりか?」

 

士道を壁に押し付けた少女の顔は、初めて会った時と同じで悲しみに満ちていた。

士道は恐怖を感じる前に、少女の孤独と絶望を理解していた。

現界しただけで過剰に攻撃され、人間とは少し違うだけなのに『バケモノ』などの暴言を浴びせられ、誰からも手を差し伸べられなかった孤独感を彼女は感じていた。

だから士道は彼女に手を差し伸べることを決心した。―――たとえ否定されたとしてもだ。

 

「どうしてだよ…………」

 

士道は少女にされた質問を質問で返した。少女は士道の胸ぐらをさらに強く握る。

 

「―――私が訊いているのだ!おまえは黙って―――」

 

「どうしてそんな顔するんだよ…………」

 

「っ…………」

 

士道の言葉に少女は士道の胸ぐらを握る力を弱めた。恐らく、士道の言葉に何か思うことがあってのことだろう。

 

「俺はおまえを攻撃するためにここに来たわけじゃない…………なにも狙ってなんかない。でも、これだけは分かって欲しい!!人間は―――人間はッ!おまえを殺そうとする奴らが全てじゃない!!」

 

士道は少女に胸ぐらを掴まれながらも、はっきりと言い切った。少女は士道の言葉を否定する。

 

「嘘をつくなッ!私が見てきた人間は皆『おまえは死なねばならない』と言ってきたぞ!」

 

「―――たしかに人間は自分たちよりも強い力を持つ者を恐怖し迫害する。同じ人間同士でも、分かり合えないような畜生だ……だが、数えられるほど少ないけれど、苦しむ人々を見て救おうと手を差し伸べる者もいるんだ。俺もその一人だ!!」

 

士道の言葉に少女は士道の胸ぐらから手を離し、少女は士道に訊く。

 

「……お前の言葉が正しいとした上で訊くが、私を殺すつもりがないのであれば、おまえは何をしにここに現れた?」

 

士道は少女の目を見て堂々と答えた。

 

「もちろんおまえに会うために……話をするために俺はここに来たッ!!」

 

「―――話、だと……」

 

「ああ、そうだ!!内容なんてなんでも良い、くだらないと思ったら無視してくれても構わない!でも、これだけは分かって欲しい―――俺はッ!!」

 

『士道、落ち着きなさい!』

 

外して制服の上着のポケットに入れたインカムから琴里の声が漏れて、聞こえるほどの声で士道に聞かせようとしていた。

だが、士道の目には迷いはなかった。

 

両親に捨てられたと知った時、士道は絶望をした。その時はドライグこそいなかったが、五河家に引き取られてからの父、母、琴里がいた………だが、少女には誰もいなかった。

だから士道は決意していた。

 

―――“自分が彼女に手を差し伸べると”

 

「俺は―――おまえを否定しない」

 

「……ッ!!」

 

士道の言葉に少女は目を大きく開け、少しの間黙った。そして少女は後ろを向いて小さな声を出した。

 

「……シドー。シドーと言ったな?」

 

「―――ああ」

 

「おまえは本当に私を否定しないのか?」

 

「ああ、本当だ!」

 

「本当の本当か?」

 

「本当の本当だ!」

 

「本当の本当の本当か?」

 

「本当の本当の本当だ!」

 

少女の言葉に士道は間髪入れずに答え切った。少女は前髪をくしゃくしゃとかき、腕を組み、少し恥ずかしそうにしながら士道に向き合う!

 

「―――ふん!誰がそんな言葉に惑わされるか、バーカバーカ!」

 

「……あれぇ?」

 

少女の反応に士道は反応に困っていた。士道は相棒(ドライグ)に訊く。

 

(お、おいドライグ!俺どこかでセリフを間違ったか!?)

 

しかし、肝心のドライグは――――………

 

『すぴー……すぴー……すぴー……』

 

―――眠っているううぅぅぅぅ!!肝心なところで役に立たないドライグなのであった。

 

「だがまああれだ。どんな腹があるかは知らんが、まともに会話をしようという人間は初めてだ。この世界を知るために少し利用してやろう。……うむ、大事。情報超大事」

 

少女は少しくらいは士道を信じてもいいと思えているみたいだ。士道は彼女に名前を訊く。

 

「ええっと―――名前は?」

 

「―――名か、そんなものは無い。だが、会話の相手がいるのであれば、必要だな。シドー、おまえは私をどのように呼びたい」

 

「……へ?」

 

「へ?ではない。私に名前をつけろと言っているのだ」

 

「はいいいいいいいいいいい!?」

 

士道は少女の言葉に素っ頓狂な声を上げた。

……それは無理もない。いきなり名付け親になれと言われたようなものだからだ。

士道はインカムを着け、小さな声で「助けて下さい」と言った。琴里たちもここまでは予想していなかったらしく、『フラクシナス』のクルーたちも頭を悩ませていた。

……そんな中、琴里が士道のインカムに名前を言う。その名前は―――

 

「『トメ』だ。キミの名前は『トメ』だ!」

 

士道が告げた名前に『フラクシナス』の隊員の一人が叫ぶ。

 

『精霊の精神状態はブルーです。かなり不機嫌になっています!』

 

士道の言葉に少女は……かなり不機嫌な表情を見せ―――ズドンッ!!と士道の足元の床をビームで撃ち抜く!

 

「ひいいいいぃぃぃぃぃぃ!!」

 

士道は尻餅をつき青ざめていた。恐怖に青ざめる士道とは違い、琴里は士道の様子を楽しむかのように知らん顔で言う。

 

『あんれぇ?おっかしいなぁ』

 

青ざめる士道に少女は額に血管を浮かばせていた。

 

「何故かは分からんが、無性にバカにされた気がした」

 

『……彼女の怒りは当然だ相棒。無能なクルーに助けを求めるからこうなるのだ。俺が助けてやるぞ、相棒!』

 

ドライグは自信満々に士道に言う。士道は藁にもすがる思いでドライグに訊くと、ドライグは答える。

 

『―――「アルトリア」だ!相棒!』

 

(よし、絶対に大丈夫だ!)

 

士道はドライグが自信満々に出した名前を信じ、堂々と口にする。

 

「じゃ、じゃあ『アルトリア』ならどうだ!?」

 

『士道、少しはマシになったわ!―――精神状態は、青緑色に変化したわ!』

 

……要するに、()()()()()()()が少女はまだ不機嫌というわけだ。―――つまり……

 

ズガアァァァン!!

 

「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!!」

 

今度は少女は手に持った剣を振り下ろした。なんとか士道は避けたが、その斬撃は近くの森にまで届き、新たな道が作られていた。

 

「―――まあ『トメ』よりはマシだが、それも却下だ。今の名前はシドーが考えた名前ではないような気がした」

 

(ば、バレた!?)

 

『ば、バカな!?「アルトリア」でもダメなのか!?かの有名な騎士王『アーサー•ペンドラゴン』の幼名だぞ!?この小娘には過ぎたものだと思っていたのにそれを一蹴しただとぉ!?』

 

ドライグは自信満々でいたため、少女に否定されたため籠手のなかでプンスカと怒っていた。

進退極まったなかで、士道は思い付いた名前を口にする。

 

「―――なら、『十香』ってのはどうだ?」

 

『お、おい相棒、今度こそ殺されるぞ!?「アルトリア」でもダメだったのにそんな今さっき思い付いたような名前では―――』

 

ドライグは士道の身を心配するが、士道はこれでダメならどうしようもないと考えていた―――訂正しよう、諦めていた。

だが、少女の反応は予想外のものだった。

 

「―――『十香』か…………まあ、『トメ』や『アルトリア』よりはマシだ」

 

「……そうか、良かった」

 

士道が付けた名前を少女は気に入ってくれたようだ。今、少女は教室の黒板にビームで自分の名前を書いている。

 

『――――な、なんだとぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!?ありえん!こんなことがありえて良いはずがないだろおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』

 

……ドライグだけはこの現実をどうにか否定しようとしていた。

少女―――十香は自分の名前を黒板に書き終えた後、士道を呼ぶ。

 

「シドー、『十香』私の名だ」

 

「―――ああ『十香』。素敵な名前だと俺は思うよ」

 

士道と十香は良い感じの雰囲気になって来ていた。

 

『認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない認めない』

 

……ドライグは念仏のごとく『認めない』を連呼していた。そう、天龍は病んでいた。

その時だった。良い感じの雰囲気になって来たところに、士道のインカムに琴里からの通信が入る。その声は非常に焦っていた。

 

『―――士道、伏せなさい!!』

 

「ッ……そう言うことかよッ!!」

 

士道は何かを感じ、床に伏せる。―――次の瞬間

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドッッ…………

 

上空から弾丸の雨が降り注いでいたからだ。―――ASTが精霊を外におびき寄せるために攻撃を仕掛けてきたのだ。

床に伏せる士道を見て十香は口を開く。

 

「シドー、早く逃げろ。私と一緒にいては同胞の手によって殺されることになるぞ」

 

十香は士道の身を案じた。だが、士道はその場から一歩たりとも動こうとはしなかった。

 

「シドー、何をしているのだ!?早く―――」

 

「そんなもん知らねえよ!!今は俺が十香と話をしているんだ!!あんな奴らは無視して構わねえ!!この世界のことを知りたいんだろう?だったら俺が教えてやる!俺のことは気にする必要はない!!」

 

「っ…………シドー、おまえはそこまで私のことを…………」

 

十香は士道と向かい合うように座り、十香と士道は語り合った。

 

 

 

 

 

 

――◆――

 

 

 

 

 

 

 

 

森に待機していたASTも現在は攻撃に転じていた。

…………恐らく、士道が口にした『アルトリア』という名前に十香が剣を振るったことがASTを攻撃に転じさせた最大の理由だろう。

―――ASTとしては、『攻撃を受けたからやり返した』という言い分で通すつもりなのだろう。

 

鳶一折紙たちはASTのメンバーと共に精霊をめがけてライフルを掃射していた。

 

ASTの本作戦のリーダーである日下部燎子(くさかべりょうこ)一尉がメンバーに訊く。

 

「―――精霊の様子は?」

 

燎子の言葉に折紙は「まだ確認できていない」と答える。ちなみに燎子は指揮をするだけで、ライフルは持っていなかった。

 

精霊をめがけてライフルを掃射していた時だった。弾丸が校舎壁を破壊し、その壁が剥がれ落ちた。精霊の姿ともう一つ人間の姿を確認した。

―――燎子は慌ててメンバーに指示を出す。

 

「あの子、精霊に囚われているの!?―――攻撃を中止しなさい!!」

 

ASTのメンバーはライフルの掃射を一斉にやめた。―――だが、精霊に囚われている人物を見て折紙の様子が急変する。

………目が変わっていたのだ。

 

「―――折紙?」

 

折紙は対精霊レイザー•ブレード『ノーペイン』を引き抜き、精霊の元へと突っ込んでいった。

 

「ちょっと待ちなさい折紙、折紙!!」

 

…………燎子もそうだが、ASTのメンバーに彼女を止められる者は誰一人としていなかったはずだ。あの精霊に囚われてい人物は、折紙のよく知る人物だった。その人物は、彼女が想いを寄せている存在―――五河士道だったのだから。

 

 

 

 

――◇◆――

 

 

 

銃弾の雨が降り注ぐ中、士道と十香は語り合っていた。

 

まず士道は十香がどういう存在であるかを訊いたが、それは当人である十香ですら詳しくは分かっていないらしく、いきなりこの世界に現界し、さらに記憶も曖昧だったために、自分がどのような存在かもわからなかったそうだ。

―――後は知っての通り、メカメカ団ことASTの連中とドンパチの繰り返しだったそうだ。

 

……今度は十香が士道に訊く。

 

「私も一つ訊いてもよいか?」

 

「……なんだい、十香?」

 

「―――シドーはどうして私と話がしたいと思ったのだ?人間であるおまえからすれば私は『バケモノ』と呼ばれるべき存在なのであろう―――おまえは私が怖くはないのか?」

 

…………十香は多くの人間から畏怖され、精霊として恐れられ『バケモノ』と罵られていた。

だが、士道は十香が見てきた人間から根本から異なる人間だった。

 

「……俺は別に十香が怖いと思ったことはないぜ?」

 

「―――え?」

 

「そりゃあ、最初の出会いではいきなり攻撃されたからちょっとビビったけど、十香が怖いと思ったことは一度もなかったよ」

 

十香は士道の言葉に完全に我を忘れて士道の話に夢中になっていた。さらに士道は続ける。

 

「そりゃあ一般の人間たちと比べれば、とんでもない力を持っているけど、それはただ『力が強いだけ』だろ?

俺は十香のことを普通の女の子として見ているぜ?ちょっと怒りっぽくて素直じゃないけど、空前絶後の超絶美少女なだけのどこにでもいる普通の女の子としか俺はおまえを見ていないぜ?」

 

「―――なっ!!ななななななななな、ちょ、超絶美少女!?」

 

士道の言葉に十香は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしていた。

 

『……相棒も女性の扱いがかなり上手くなったな。さすがは天性の女たらしだ―――童貞だがな』

 

ドライグの言葉に士道は「うるせえ!余計なお世話だ」と返した。

 

『それは良しとして、相棒。そろそろ頃合いじゃないのか?』

 

―――士道は十香との仲に一歩踏み込もうとしていた。士道は一度空を見上げ、目を瞑る。そして………

 

「―――なあ十香、俺とデートしないか?」

 

 

 

 

―――一方、その頃の『フラクシナス』

 

 

「―――まさかシドーが私たちのサポートなしで精霊の好感度を九十%以上まで上げるなんて……」

 

司令官の琴里は士道の実力に度肝を抜かれていた。

 

「……シンの会話のサポートは今後一切の必要ないね。これを見る限りだと、女性の扱いには相当慣れていると見て間違いない……私たちはシンのデートのサポートだけを考えることに集中するべきだ」

 

令音も琴里同様に士道を称えていた。

 

「司令、疲れていませんか?この神無月恭平が肩を揉んで差し上げましょう!」

 

神無月が琴里に近づくが、琴里は…………

 

「必要ないわよ、このおたんこなす!!」

 

「―――アベシッ!!」

 

琴里のアッパーが神無月を宙に浮かせた。

 

『―――なあ十香、俺とデートしないか?』

 

士道の言葉を聞いたフラクシナスのクルーたちは、全員大声を上げた。

 

「「「「「「「「ついにきたああああああああ!!!!!!」」」」」」」」

 

 

 

―――その頃の『フラクシナス』終了

 

 

 

「……デェト?デェトとは一体なんだ?」

 

十香は士道の誘いに、キョトンとした顔をする。

 

「特別に仲を深めたい相手と一緒に遊ぶことだよ。俺の場合は……十香にこの街を案内してやりたいと思ってね。それを通じて俺という人間を十香に知ってほしい。―――十香さえ良ければ、俺に街を案内させてくれないか?」

 

「それは本当かシドー!私に街を案内してくれるのか!?」

 

「―――ああ!男に二言はない!!………どうだ十香?」

 

士道が十香の返事を聞こうとしたその時だった。

 

『―――士道、ASTが動いたわ!』

 

「くっ!こんな時にッ!!」

 

士道は完全に油断していたため、周囲の気配を探ろうとはしなかった。士道が校舎の外へと視線を向けると、士道の視界内には折紙の姿が映っていた。

 

「―――無粋ッ!」

 

十香は折紙のレーザー•ブレードを素手で受け止め、折紙ごと吹き飛ばした。……折紙は受け身を取り、士道のすぐそばに着地する。

 

「―――また貴様かッ」

 

十香が折紙を見て吐き捨てるかのように言った。だが、折紙の目は殺意に満ちていた。

 

「よくも私の士道を人質にッ!」

 

折紙の殺気を感じ取った十香は地面に踵を叩きつけた。

 

「―――『塵殺公(サンダルフォン)』!」

 

その瞬間、十香の前の床から亜空間が現れ、そこから現れたのは、あの幅広の刃が特徴の剣だった。そして次の瞬間―――

 

ズドオオオオオオンンッッ!!

 

十香は無慈悲にも手に持つ剣を振り下ろした。凄まじい斬撃が折紙を襲うが、士道が鳶一を庇う。

 

「―――ッ!鳶一ッ!!」

 

士道は『赤龍帝の籠手(ブーステッド•ギア)』を出し、鳶一の前に立ち、どうにか鳶一を守ろうと腕をクロスして踏ん張るが、()()()()では十香の攻撃を受けきることができるわけもなく、後ろにいた折紙ごと吹き飛ばされた。

 

―――士道はその後、『フラクシナス』によって回収された。

 

 

 




ドライグ『ううっ•••••なぜ「アルトリア」がダメだったのだ!?俺は認めん!絶対に認めんぞおおおおおおおお!!』

士道「いや、仕方ないじゃん!章名に『十香』って入ってるだろ!もう諦めろよドライグ•••••」

ドライグ『うおおおおおおおおおおんっっ!!!!』

DDの原作でイッセーのヒーローアニメが『乳龍帝おっぱいドラゴン』に決まった時と同じくらいにドライグは大泣きしていた。

やはり、優先すべきは原作っしょ!ゴメンよドライグ!!

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