先日、ネタ探しで健全ロボダイミダラーを見ていたのですが………この作品の士道くんって、真玉橋孝一そのものじゃね?と思いました。
それともう一つ、ロクなサブタイトルが浮かびませんでした!
七月二一日。一学期終了まで残り数日となり、学校の拘束時間も一日七時間から、四時間ちょっとのシフトへと変わっていた。
現在の時刻は午前一〇時五分。現在受けているのは英語のライティング。文法などを学び英訳などを主に行う授業。
………この授業は習熟度に合わせて三組と四組のメンバー三クラスに分け、それぞれ基礎を徹底的に行うクラス、普通のクラス、応用問題を解くクラスがあり、士道たちは応用問題を解くクラスだ。
士道くんは机に突っ伏して涎を垂れ流し、鼻からシャボン玉を作る事に勤しんでいた。
それが教師の目に写り、教師は次の英訳の問題を解かせる人物を決めた。
「―――五河くん。次の文を英訳してください………………五河くん!起きてください!」
「………………」
教師が士道くんを指名するが………
スピー………スピー………と寝息を立てるのみ!!士道くんは死ぬほど疲れていた。昨日も深夜まで有り余った若いエネルギーを六華に発散させて貰っていた。
その結果として今はエネルギー不足に陥り、絶賛爆睡中なのだ。
いつまでたっても起きようとしない士道くんを見た教師は、黒板に平手打ちをかます!!
バンッ!!
「―――五河くん!!起きてください!!」
「は、はい!!」
けたたましい音が教室内に響き渡ると、士道はびっくりして飛び上がった。
完全に意識を失っていたため、あたふたと辺りを見渡していると、後ろから助け舟が出された。
「士道よ、随分と気持ちよさそうに眠っておったな。お主が解くのはこの問題ぞ」
(悪りぃ耶倶矢。助かる)
後ろから耶倶矢がどの問題を解くのかを書いた紙を渡してくれた。その問題を士道は瞬時に答えた。
「sin^2xの微分か………えーと、sinxsinxにして考えると―――………答えは、sin2xです!!」
英語の時間に、全く見当違いのことを言う士道くん。これには教師も戸惑っていた。
「………えーと、五河くん?今は英語の時間ですよ。多分ですが、数学では今の答えは正解だと思います」
教師の答えを聞いて顔を真っ赤にする士道くん。ギロリと後ろを振り返ると―――………耶倶矢ちゃんは腹を抱えて大爆笑。
「ハハハハハハ!!士道が引っかかった!今は英語の時間なのに、チョー必死に解いてたし!」
「爆笑。プクククッ………お、お腹が………」
「………お、お前らっ!!」
士道の横に座る夕弦も腹を押さえて笑っていた。見事にしてやられた士道くんは、恥ずかしそうにその場で座り込んだ。
この時士道は誓った―――………必ず報復してやろうと!!
「よお五河。今は数学の時間やあらへんで〜」
「五河、夜ちゃんと寝てるか〜?夜更かしすんなよ〜」
「夜な夜な羨ましいことしてんなよ〜」
「授業中に寝る………まさかアレか!?昨日は夜遅くまで、星照さんとにゃんにゃんしてやがったな!?」
「そうだよ!!なんか文句あるか――――――あ………」
ガヤガヤとうるさくなるクラスメートたち。そして、士道が最後の質問を肯定した瞬間に、自分に刺さる視線が鋭くなった。
それに気付いた瞬間に、士道はしまったと言う表情をうかべた。
………特に、士道を取り囲むように席についている精霊たち―――耶倶矢、夕弦、十香、くるみんの四人と、想いを寄せる折紙と凛袮もしかりだ。
………ちなみに、修学旅行の夜に士道と六華が一線を越えたことは、すぐ全精霊たちにバレて士道は問い詰められた。その上、修学旅行に帰るなり令音が琴里にそれを報告して、フラクシナスの隔離部屋に押し込まれての緊急会議。
修学旅行の最終日の夜中に起きた事を、精霊たちを踏まえて洗いざらい喋らされた士道くんなのであった。
「士道、お主は既に我らのものぞ!」
「同調。士道はもう夕弦と耶倶矢の共有財産です。もっと自覚を持って下さい」
「シドー!私というものがありながら、なぜ六華なのだ―――乳か、やはりあの乳なのか!?」
「士道さん、しばらくわたくしの部屋で生活しませんこと?」
「………士道。その話を後で詳しく聞かせて欲しい」
「………士道」
『チクショウ!!なんで五河ばかりが!?」
授業中だというのに十香たちに机を取り囲まれ、顔を近くに寄せて迫られる士道くん。
ちなみに英語の担当の先生が何を言っても、十香たちは引き下がらなかったため残りの授業は自習となった。
チャイムがなるまで残り五分となったところで、動物園と化した二年三組にドヤンキータマちゃん先生が「うるさいんじゃボケナス共!!静かにしやがれええ!!」と怒鳴りに来たのは、また別のお話。
耶倶矢と夕弦は次の授業が始まる前に黒板を消していた。耶倶矢が左側を夕弦が右側を協力して消していた。
「♪♪♪♪〜とーあるくーにの隅っこに〜おっぱい大好きドラゴン住んでいる♪」
『ゴハッ!?』
「歌唱。ポチットポチットずむずむいやーん♪」
『ぐっはあっ!?』
耶倶矢と夕弦の二人がおっぱいドラゴンの歌を口ずさみながら、黒板の文字を消していた。その歌詞が聞こえてくるたびにドライグ先生が喀血。
………堕天使総督アザゼルが作詞したこの歌は、ドライグにとっては苦情案件そのものだ。
耶倶矢と夕弦がこの歌を知っているのは、くるみんに『ハイスクールdxd』を勧められたからだ。
その本にもこの歌はしっかりと記されており、歌詞を見た瞬間に二人とも大爆笑した。
今では、本なしでも歌えるレベルまでになっているのだ。
そして士道もまた教卓の下からその様子を微笑ましく見上げていた。
「絶景かな、絶景かな。スカートの中の景色は値千金万万両………耶倶矢の下着はピンク色なれど、夕弦の下着は――――――っておい、スパッツはないだろ!?なんで双子で下着を統一してないんだよ!!」
黒板を消している耶倶矢と夕弦のスカートの中を教壇から、膝を曲げて姿勢を低くした状態で眺めていた士道くん。
耶倶矢のスカートの中からは、ピンク色の布地がお尻に食い込む様子に、士道くんは思わず笑みが溢れた。
しかし夕弦のそれは大きな問題だった。体育がある事を見越して夕弦はスポーツ用のスパッツを履いていたのだ。彼の楽しみは肉付きの良い豊満な太ももと秘所を隠すように食い込む布地がご所望だったのだが、今の夕弦にはそれがなかった。
………夕弦のスパッツを見た士道くんは、あまりのショックでひっくり返って教壇から転がり落ちた。
「な、何見てんだし!?」
「同調。なぜ平然と夕弦たちのスカートを覗いているのですか!?」
耶倶矢と夕弦は顔を真っ赤にしてスカートを握って引っ張った。これを見た士道くんは、拳を教卓に叩き付けた。
「スパッツは滅びるべき悪い文明だ!いやスパッツだけじゃねえ、女子の体操着をブルマからクォーターパンツやらハーフパンツに変えやがったこともだ!こんな悪い文明、俺が破壊してやる!」
紅蓮のオーラが可視化するほど、夕弦のスパッツに衝撃を受けた士道くん。
………隠された見えない箇所を妄想するとき、直接裸体を晒されるよりも人の興奮は増すものだ。
それは脳内でイメージしたものと実際のものがどうかという―――『期待』と言う名のスパイスが、興奮をさらに加速させるからだ。
耶倶矢の下着には鼻血を出して見入っていた士道くんだったが、夕弦のスパッツには、大きく期待を削がれてしまった故に。
「―――いや、そもそもがおかしいでしょ!?」
「要求。まず夕弦たちのスカートを覗いた件について説明をお願いします」
平然とスカートを覗くという、大人がやれば逮捕間違いなしの行為に耶倶矢は意を唱え、夕弦は説明を要求する。
しかし、士道くん答えるつもりは一切ない!
「具体的には………スパッツを唱えた野郎とブルマを廃止した野郎を特定して消去するっきゃねえ。そしたら体育の授業はおっぱいのラインだけじゃなく、合法的に太ももという隠された領域を合法的に拝めるようになる―――最高じゃねえかッ、これで歴史を変えないという選択肢が消えた!」
―――まるで世界は俺様の手の中にある。そう言わんばかりに悪党ヅラを浮かべて胸の内を明かした士道くん。
封印した天使の中に時を操る天使『刻々帝』がある。士道は知っていた―――この天使の中に過去に戻る能力を有することに。
その天使を託した少女が士道の下劣な妄想を聞いて、声を荒げる。
「士道さん!そんな下らない事のために、『
くるみんだ。歴史を変えるという大それた事をスカートの中に着用するものと、体操着のパンツのために時間遡行をしようというのだ………こんな下らないことのために、霊力を注ぎ込むバカは士道くんだけである。
そして、再び夕弦に視線を戻してわしゃわしゃと両手を動かし始める!!暴走列車が煙を上げて発進しようとしていた。
「とりあえず近くにある悪い文明は破壊しておかなければ………さあ、夕弦。そのスパッツを脱ぐんだ―――大丈夫だ。下着の方は俺がとびきり可愛くてエッロいやつを用意しておくからよ………ぐへへへへへ!」
「恐、怖。ち、近寄らないで下さい!」
じわじわと迫り来る士道に、夕弦は怯える様子で距離を取り始める。暴走列車は、止まらない!モクモクと黒い煙を撒き散らしてもう突進!!
「ぐへへへへへ。嫌なら俺さまが脱がせて――――――ぎゃあああああああ!?」
夕弦を目掛けてルパンジャンプをした士道くんだったが、刹那に黒い影が通り過ぎると………両目を押さえて床へと叩き付けられた。
教室の床で悶絶する士道のすぐ隣には、妻を自称する少女が右手をチョキにして立っていた。
「あああがががががが!!目があああ!目があ痛いおおおおおお!!」
「浮気は許しません!」
六華が浮気と判断して、右手の人差し指と中指を士道の両目に突き刺した。その結果、士道は教壇の下でゴロゴロと転がりながら悶絶していた。
世界からスパッツの消滅と学生体操着のブルマ化計画は六華によって潰され、士道は六華に首根っこを掴まれ二年四組へと引っ張られていった。
夕弦は下着を剥ぎ取られなかった事に、ホッと一息ついた。
………こうして、チャイムがなり終わると次の授業が始まったのであった。
―――◇◆―――
カッキーン!
運動場に乾いた金属音が響き渡った。空へと高くまった白球が風を切り裂き飛んで行く………その白球は、追いかけるセンターを守る選手の遥先に弾んだ。
その打球を放った選手は風を纏うが如くに全力疾走。一塁ベースを強く踏み込むと、二塁そして三塁ベースを蹴ってホームベースを目指して突っ込んでくる!
ホームベースを目指して突っ込んでくるバッターランナーは耶倶矢ちゃんだ。現在は体育の授業でソフトボールを楽しんでいる。
プレイボール後の初球を、迷うことなく手に握るバットに力を込め鋭く腰を回転させた。その結果は………
「かかッ!先制点!」
耶倶矢がホームベースを強く踏むと、相手チームが盛り上がる。
「賞賛。ナイスバッティングです耶倶矢」
「お見事ですわ、耶倶矢さん」
「耶倶矢さま、お見事です」
「おおっ!やるではないか耶倶矢」
「耶倶矢ちゃんナイバッチ!」
上から順に夕弦、くるみん、六華、十香、桐生愛華が耶倶矢とハイタッチ。これにはマスクを被っている士道も思わず苦笑い。
「………球の体感速度は時速一五〇キロを超えてるはずなんだけどな。それを初見で捉えてホームランかよ」
『精霊であれば当然の結果だ。八舞百番勝負のどれかにバッティング対決があったのだろう』
驚きのあまり声が出た士道に対し、ドライグは正反対に冷静だった。
現在のソフトボールは男子VS女子を行なっている。これは十香たち―――精霊クインテットが『男子と試合をしたい』と願い出て実現したのだ。
男子と女子それぞれを二チームに分け、試合を行っているのだ。
投手を務める竹林へとボールが帰ってきたところで、夕弦が左打席に入る。
「会釈。よろしくお願いします士道」
「………お手柔らかにな」
投手の竹林が士道が構えたミットを見て、ボールを投げ込む。しかし、そのボールは士道の構えたコースとは逆のコースへと迫って行く!!
ボールを見た夕弦は、左足を落としその反動で下半身と腰を連動するように回転させ、バットを振り抜く!!
(―――逆球っ!?)
「強振。えいやー」
カッキーン!
インコースの膝下付近の難しいボールを、夕弦は肘を抜くようにバットを出した。すると甲高い金属音と共にライナー性の鋭い打球が、一塁ベース方向の白線付近にバウンドする。主審を務める体育教師が「フェア!」と声を上げると………
しかし、カットマンに入った一塁手の仁徳正義がボールを握った時には………夕弦はホームベースまで後三歩程にまで迫っており、正義はボールを捕手を務める士道に投げる事を諦めた。
………夕弦の走本で女子チームに追加点が入る。
「歓喜。これで二点目です」
「ナイスバッティング、夕弦!」
「夕弦ちゃんナイバッチ!」
「夕弦ちゃんホームランおめおめ〜」
またまた女子チームがわいわいと盛り上がる。外野からは「簡単に打たれすぎだろ!」とヤジが飛んでくるが、これは気にしない。
………士道が対戦しているチームは、恐らく全国の高校女子ソフトボールのチームの中では恐らく最強のチームだからだ。
そこからも女子チームの勢いはまだまだ止まらない。
「―――それっ!」
「やああああっ!」
カンっ!カッキーン!
桐生愛華が三球目の球をセンター前に運ぶ。そしてその後を打つ六華が真ん中外よりのボールを左中間フェンス直撃の
………打者四人でなんと男子チームは三点を失った。しかも、まだアウト一つも取れないというオマケ付きで。
「っ!」
カーンッ!
六華の次の打者である折紙がバットを振り抜くと、放たれた打球は三遊間を切り裂いて左翼前へとヒットを放つ………これで六華が生還して四点差。
男子たちは未だアウトひとつも取れていない………しかし、野球やソフトボールにはアンラッキーは付き物だ。
………それが次の打者である十香の時に発揮された。
「はああああっ!!」
カッキーン―――パシッ!
十香が裂帛の気合と共に振り抜いたバットは、一塁線に強烈なライナー性の打球を飛ばす!しかし、無情にも飛び付いた正義のグラブに入る!!
そして、正義はそのままベースへと着地すると、一塁から離れた折紙は戻れずダブルプレー。
そしてそれは次の打者のくるみんも同じだった。
「せいっ!」
カーン―――パシッ!
くるみんが放った打球もまた鋭いライナー性の打球が飛ぶが、
しかし、いずれのバッターも体感速度一五〇キロクラスのストレートに振りまける事なく、完璧に捉えてくる恐ろしい打線である事を男子チーム全員が認知していた。
………しかも、男子にはハンデとして非常に重たいものが課せられていた。それは―――………
ゴキィーン!
鈍い金属音を響かせながら、男子チームの一番バッターが初球を振り抜くと、大飛球になると思われた打球が途中で失速して、
二番の小川も似たような感じだった。
「―――ぐっ、重っ!?」
ギィン!
小川がアウトコースのストレートを流し打ち!しかし、バットが押し返されるようなずしっと重い打感に、思わず声を漏らした。
しかし、これは天へと打ち上がり左翼前に落ちそうな打球だ。しかし………
「とうっ!」
続く三番殿町も………
「おらっ―――いっでええ!!」
ギィン!
「送球。とうっ」
続く殿町も球威に押された力無いゴロが、二塁手を務める夕弦の真正面に転がり、夕弦が軽快に捌いてアウトに………これでスリーアウトチェンジ。
………男子が抱えるハンデは、打ってもろくに飛ばない低反発のバットを使用しなければならない事だ。
これは士道や正義の打球が他の生徒とは桁違いに速いため、通常のバットで投手にライナー性の打球が飛び、それが頭にでも当たると殺しかねないからだ。
「………こりゃあ思った以上にボコられそうだな」
『相棒や仁徳のガキならともかく、並の人間には重苦しいだろうな』
そして再び女子チームの攻撃。八番と九番は竹林は難なく三振に切って取ると、次の打者は―――前打席で
ここからは士道も本気の配球を披露しようとしていた。
(………大量得点差で負けたら、桐生や
士道の出したサインに頷き、竹林がボールを投げ込む。初球のストレートのタイミングでバットを出そうとした耶倶矢だったが、慌ててバットを止める。
「な―――ッ!」
パーンッ!と乾いた音と共に、竹林の投げたボールが士道のミットへと吸い込まれる。
耶倶矢はストレートが途中で止まった事に気付いて、振り出そうとしたバットを戻した―――………士道が投げさせた球種は打者のタイミングを外す『チェンジアップ』だ。
主審の手が上がりストライクの判定となった………これを見た桐生愛華はすかさずヤジを飛ばす。
「へいへーい!女子相手に初球変化球ってキ○タマついてんの?」
飛んで来たヤジを無視して士道は竹林にサインを出し、続くボールが投げ込まれる!
今度はアウトコース低めのフレームを球の端が掠れる絶妙なコースに投げ込まれ、これには耶倶矢もバットが出なかった。
しかし。
「ボール」
球審の判定はボール。これには堪らずマスクを取って士道は理由を訊ねる。
「………田中先生、コースですか、それとも高さですか?」
「コースだ」
士道は納得できない気持ちを表情に出す事なく、竹林へとボールを返した。審判によってストライクゾーンは大きく変わると言われている。全体的に広い審判もいればその逆も然り。
この球審の田中はコースが狭い事で非常に有名なのだ。しかし、球審もまた生き物だ。先程と全く同じコースに士道は構え、竹林は先程と寸分違わぬ場所へと投げ込んでみせた………耶倶矢は全くバットを出そうとする素振りを見せる事なく見逃した。
判定の結果は………
「ボール」
変わらなかった。これで士道はこのコースはどうやってもボールにしかならない事を理解して、球種を変える事を選んだ。
今度はアウトコースのフレームの枠内にミットを構えて初球と同じ球種を要求した。
竹林は士道のサインに頷き、チェンジアップを投げ込むが―――
「せいやーっ!」
カッキーン!
金属音を轟かせると共に、耶倶矢の打球は左翼線に大飛球を打ち上げる!それは、見事に白線の真上へとバウンドした。
耶倶矢は五〇メートル走 五.八秒(霊力無し)の俊足を飛ばして、一塁ベースを力強く蹴り上げると、二塁ベースも蹴り三塁を狙う!!
「ボール三つ!」
しかし、これを予測していた左翼手は耶倶矢が二塁ベースに到着した時点で三塁に投げ込む―――しかし、結果は楽々のセーフ。それだけ耶倶矢の足が速い事を証明していた。
(サンキュー、耶倶矢の走本を防げただけで上出来だ)
士道が心の中で左翼を守る選手に感謝を送ると、次は夕弦が左打席に入ってくる。
「感心。変化球があったとは………士道は本気で夕弦たちに勝つつもりですね」
「ああ。お前たちは俺が手を抜いたら怒るだろ?」
「微笑。夕弦たちのことをよくわかっていますね」
それだけ言葉を交わすと、夕弦は足場をならしてボックス内で腰を落とした。
夕弦への初球は、耶倶矢が二球目と三球目に見逃したコースと全く同じところを要求し、竹林はそこに寸分違わず投げ込む。
夕弦はバットを全く動かす事なく見送る。
「ボール」
当然主審の手は上がらない。もう一球全く同じところへ要求するがこれも夕弦は手を出さない。
これを見た士道の顔は一気に険しくなった。
(………こいつら、どんな選球眼してんだよ)
『八舞耶倶矢にしてもそうだが、この二人は風を操る精霊だ。自身がとんでもないスピードで動く故に、他の精霊たちと比較しても動体視力が群を抜いて優れているのであろうな。
それに相棒、いくら甘く入れば打たれるとはいえ、〇ストライクからこんな―――ストライクかボールかの区別の付かん球に手を出す間抜けはいないぞ?それも得点圏ならなおさだ』
ドライグに言われた通り、士道はぐうの音一つ言えなかった。しかし、これが原因で竹林の制球力が大きく崩れる。
三球目は力みが生まれ地面に突き刺さると、四球目はとんでもない大暴投となる。
「―――ッ!!」
「ボールフォア!」
「溜息。打ちたかったです」
枠を大きく外れる球に、士道は堪らず飛び上がって後逸しないよう捕球した。夕弦は残念そうにバットを置くと一塁へと歩いた。
続く桐生も歩かせ、四番の六華を迎えた所で事件が起こった。
「―――あっ!?」
「きゃっ!?」
竹林はボールを離した瞬間に、嫌な予感がして声が漏れた。放たれたボールは六華の顔面―――それも鼻先を通過する危険な球が放り込まれた。
六華は腰を倒してボールを避けたが、これには敵味方問わず暴言の嵐が飛んで来る。
「竹林テメェ!どこ投げたんだ、星照さんだぞ!!」
「顔は女の命なのよ!?それを顔面スレスレに投げ込むなんて!!」
「下がれこのノーコンピッチャー!!」
「ぶつけるにしても他の奴にしろ!!」
このままではまずいと思った士道は、球審の田中先生にマスクを外して言う。
「すみません、タイムをお願いします」
「タイム!」
球審の田中が両手を広げると、士道はマウンドの竹林へと駆けて行った。士道はマスクで口を隠して二分ほど投手の竹林と話し込んだ。士道は竹林の胸をミットで叩くとすぐに元の位置に足をつけ、腰を落とした。
「プレイ!」
士道が取ったタイムによって………投手の竹林が息を吹き返した。竹林は大きくステップを踏み込んで鋭く腕を振り抜く!!
「っ!」
そのボールは六華の膝下へと投げ込まれ、六華が慌てて腰を引く!
ズドンッ!!
「ストライク!」
アウトコースを投げてくるであろうと読んでいた六華は、思い切り踏み込んでいたため、慌てて腰を引いたのだ。しかし結果はストライク。ここで六華に迷いが生まれた。
そして―――………
かぁん!
勝負を分けたのは四球目だった。二球目のドンピシャで決まったインコースのストレートの残像が残っており、六華は満足に踏み込む事が出来なかった。アウトコースギリギリの球にバットを出したが………結果は一塁へのファールフライでスリーアウトチェンジ。
二回の裏、男子チームの攻撃は四番の士道から始まる。ここで士道くんがまさかのパフォーマンス!
バッターボックスに入るなり、青空を指さした。
「………何やってんのアンタ?」
怪訝な行動をする士道を見て、キャッチャーズボックスに座る桐生愛華は訊ねた。
すると士道はドヤ顔で告げる。
「ホームラン予告だ。いや十香がよ、ホームラン打ったらおっぱいを好きに触らせてくれるって言ってくれたんだ。そりゃあ狙うしかないよな?」
「し、シドー!?なぜ桐生にそれを伝えるのだ!」
士道に暴露された事で、十香は顔から熱を放出して耳まで真っ赤になった。
………遡る事授業が始まる役二分ほど前。いきなり十香ちゃんが駆け寄ってきて耳打ちしてきた。
―――ホームランを打ったら私の胸を好きに触らせてやると………
これで燃えない漢がいるだろうか―――いやいない!!
十香の大胆な発言は、一線を超えた六華に対しての対抗心の現れだ。これから先、精霊が増えようとも、きっと自分が士道の中で最も特別だと………心の中でその想いが十香にあった。
しかし、その思い込みが六華に先を越されてしまうことに繋がってしまった。
故に心の中で誓った。これ以上差を付けられてなるものかと………
さらに、チームメートは全員が応援してくれた。
「五河、絶対打てよ!!」
「十香ちゃんが女を見せたんだ、これで打てなかったら四番下すからな!!」
「死んでも打て五河!!それで保健室やら、家やらでゴールインしてこい!」
などなど男子はこんな感じだ。しかし、十香を除いた精霊カルテット及び折紙は違った。
―――死んでも士道を打ち取ってくれ。
こんな感じで二つの思惑が交錯していた。そしてその勝負は一球で決まった。
ガッキィィィィンンッッ!!バンッ!!
投手の手先が狂ったのか、投げられた球がアウトコースの高めへと浮いてしまう―――そのコースは、バットの遠心力をフルで使えるコースだった。
士道は腰を回転させ、さらにインパクトの瞬間にボールに回転をかけるように手首を使って振り抜いた。
―――士道が放った打球は、フェンスを軽々と超え場外へと消えていった。
士道はその場にバットを置くと、拳を突き上げながらゆっくりとベースを回った。
そしてベースを踏むと………ネクストバッターズサークルに立っていた正義以外のチームメートに激しく出迎えられた。
『ナイスバッチだこの野郎!!』
激しくもみくちゃにされながらも、士道は十香へと視線を送った。
「―――っ!」
十香はホームランを打ってくれた士道への憧れ及び感謝と、おっぱいを欲望のままに好き放題されることへの期待と不安が入り混じり、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
男子チームの攻撃はさらに続く。
「―――ブンッ!!」
ガッキィィィィンンッッ!!
続くロリコン及び負けず嫌い世界代表の正義も、初球のストレートを迷わず振り抜き、裏山に突き刺さる場外アーチ。
………正義は、体育の授業では激しく士道を意識している。士道がホームランを打てば、この男もまた負けずとホームランを打ち返す。
今度はホームランを打った正義を士道が出迎えた。
「ナイスまぐれ仁徳」
「まぐれじゃねえ」
パチンッ!
士道が出した手を仁徳はビンタをするように振り抜いた。この二発のホームランが男子チームを一気に勢いに乗せる。
ギィン!ギィン!ガギィン!
怒濤の三連打で満塁のチャンスを作ると、九番及び一番バッターの二者連続で押し出しのフォアボールで同点に追いつく。
「おっらああああ!!」
ギィン!
さらに二番の小川
このまま一気に男子チームに流れがいくかに思われたが、ここで歴史的スーパープレーが生まれる。
「この押せ押せムード―――俺も乗っかるぜ!」
ギィン!パシッ!
三番の殿町が放った打球が、投手の足元を抜けヒットになるかと思われたが―――耶倶矢が飛び込み、その打球を素手で止めたのだ。
「夕弦!」
耶倶矢は体が地面につく前に、ベースの真上にトスをして、二遊間のコンビを組む相棒の名前を呼び、ベースカバーに走らせる。
「了承―――送球。とりゃー」
夕弦はそれを素手で受け取ると、ベースを踏んでジャンピングスロー!夕弦の送球は一塁を守る十香のミットに綺麗に収まりダブルプレー。
「桐生!!」
さらに、二塁ランナーが三塁を蹴ってホームに突っ込んできた事を確認した十香は、すぐにボールをキャッチャーの桐生愛華へと送球する!!
十香の送球は見事にベースの上にコントロールされ、桐生愛華は突っ込んできたランナーに無駄なくタッチができた。
そして―――………
「アウト―――スリーアウトチェンジ!!」
………まさかの全てのランナーをアウトにするという離れ技が、体育の授業で起こってしまった。
球審を務める田中はこの時、なぜ自分は冷静にコールできたのかを後になって考え始めた。
………最終的に試合は8-10でギリギリ男子チームが勝利を収めたものの、非常に内容の良い試合となった。
勝った男子チームも負けた女子チームも、一学期最後の体育の授業で非常に良い試合ができたことに、満足していたのであった。
―――◇◆◇―――
「うわああああ悔しい!」
「屈辱。くっ、最後に夕弦が打てていれば………」
士道は耶倶矢と夕弦を従えて帰路についていた。ちなみに先程の試合で最後のバッターになったのは夕弦だ。
最終回に二死満塁のピンチで投手が竹林から正義へと変わり、正義の全力投球に押し切られ、
「男子相手にそれだけ悔しがれているなら上出来さ。俺も最初は負けると思ったからな………それに二人とも攻守で大活躍だったじゃないか」
ポンポンと二人の頭を叩くと、余計に悔しがっていた。
「次は絶対に私たちが勝つからね!!」
「雪辱。次は夕弦と耶倶矢でバッテリーを組んで士道に立ち向かいます。その時は、必ず士道を三振に切って取ります」
「そいつは楽しみだ」
士道はその機会がある事を楽しみに待つことに決めた。そして、向かっているのは家ではなく、琴里が通う中学校だ。
………とある事情があり、琴里を迎えに行く必要があったのだ。正門へと向かうと、琴里がドタバタと駆けてきた。
「もうおにーちゃん!おっそいぞ!」
「悪りぃ。思った以上に試合が盛り上がっちまってよ………」
駆けてきた琴里の近くにたつ先生へと言う。
「それじゃあ先生。失礼します」
「せんせー、まったねー」
「はいさようなら」
琴里は担任の教師に手を振りながら、帰路へとついた。ここで八舞ツインズが疑問をぶつける。
「………でもなんで士道が琴里を迎えに行ってるの?」
「同調。琴里はいつも一人で帰っていましたよね?」
「ああ………最近この辺りに不審者が出るんだわ。しかも狙われているのは、小学六年生〜中学二年生くらいの男子がな。目撃情報では、金髪と黒髪の怪しいお姉さんの二人組らしくてな。
なんでも、そのまま何処かに連れて行かれた後に、裸にされ襲われるんだと………それを阻止するために、帰る時は保護者同伴に学校側はしたんだよ」
士道の説明を聞いて二人はなるほどと相槌を打った。この七月あたりから、金髪と黒髪の女性不審者は現れるようになり、目撃者の証言では連れ込まれた少年は裸にされて襲われていたらしいのだ。
………その目撃情報がたった十日ほどで十件以上あったことから、学校側は緊急で措置を取ったのだ。
「………この話はまだ続きがある。そのお姉さんに襲われた少年は、どいつもこいつも自慢げに話すんだよ。
『俺は大人になった』だとか、『男して一皮剥けた』とか。全く持って羨ま―――ゲフンゲフン、羨ましい」
「おにーちゃん今羨ましいって言った?」
「結局言い直せて無いし!?」
「嘆息。士道は少しばかり自重して下さい」
士道が全くエロを妥協しない事に、琴里と八舞ツインズは大きくため息を吐いていた。
そこから約十分ほど歩くと―――………精霊マンションと五河家が見えてきた。
「んじゃ私たちはこれで」
「会釈。それではまた夕飯を食べにきます」
「おう、またな」
「んじゃね〜」
そして士道と琴里は五河家に入ろうとしたそのとき、怪しげな魔法使いと話し込む六華の姿があった。それを見た士道は琴里に言う。
「琴里、おにーちゃんちょっと用事があるから先に入ってろ」
「はーい!」
それだけ言うと、六華の元まで士道は駆けて行った。そしてその魔法使いは士道を見て言う。
「やあ士道くん、童貞卒業おめでとう!初めての相手が六華ちゃんなんて羨ましいものだよ………ちなみに、六華ちゃんとの熱い夜の件がバレて、他の精霊たちに相当詰められたんじゃないかな?」
「開口一番がそれですか!!まあ、酷い目に遭いましたよ。隔離部屋で精霊六人に詰められましたから………それが三時間もですよ!?三時間も!!」
「それは大変だったね………ああ、僕はアテナを通して聞かされてね。ちなみに、六華ちゃんに押し倒すまでの流れを教授したのはアテナとアルテミスなんだ。六華ちゃんは、それはそれは真剣な表情で教わった事をメモメモしてたから」
「ソロモンさま!?」
士道がソロモンに愚痴ると、あの夜のことの詳細を話してくれた。それを聞くなり、六華は顔を真っ赤に染めた。
そして、なぜソロモンと六華が話し込んでいるのかを士道は訊ねた。
「………それでソロモンさんはどうして六華と話していたんですか?」
「ああ、六華ちゃんのお願いでこれを預かる事になってね」
ソロモンは異空間から、一本の黄金の斧を取り出した。それは六華が死闘を繰り広げたレグルスを封印したものだった。
『それはリンドヴルムが召喚したネメアの獅子を封印したものだな。しかし何故それをソロモンに預けるのだ?』
ドライグが六華に訊ねると、六華は言う。
「何度かこの斧を使用したのですが、どうにも力が安定しないのです。一応ではありますが、この斧は獅子の姿に変化はできます。
しかし私を主人として認めていないのか暴走状態になる事が多く、今のままでは使い物にならないのです。故に士道さまが頂いた『龍醒石』のようなもので安定させることは、可能かと相談していたのです」
『………その斧は神滅具に分類されるものだ。未だにリンドヴルムを主人として認めているのやもしれんな。それでソロモンよ、力を安定させる事は可能なのか?』
ドライグの問いにソロモンは首を縦に振る。
「勿論可能さ。ネメアの獅子には『龍醒石』の獣バージョン『獣醒石』なら可能だ。埋め込んでみて調整を施せば力が安定するはずだ………キミたちには本当に迷惑をかけたからね。それに、六華ちゃんの頼みを断ると、アテナに何を言われるか分かったもんじゃないからね」
ソロモンが冷や汗を垂らしながら、アテナの事を思い浮かべていた。それに、ソロモンの中にも、士道と六華にはリンドヴルムの件という大きな借りがある故に力を貸してくれるのだ。
そしてソロモンが斧を異空間にしまった時だった。耶倶矢と夕弦がドタバタと士道を目指して駆けてきたのだ。
「おーい、士道」
「呼掛。士道」
私服に着替えた耶倶矢と夕弦が手を振りながら駆けてくる。士道はソロモンに一礼すると、二人の方へと足を進めた。
「二人ともどうしたんだ?晩飯まで時間はあるけど――――――」
二人は士道の両手を取ると、自分たちの方へと引き寄せる。
「私たちってさ、まだアレしてないじゃん?だからさ、ちょっと付き合ってよ」
「請願。先日十香と狂三から聞きました。精霊たちは士道とデートをしていたと。故に今からデートしましょう」
「そんなことか………お安い御用さ――――――っ!?」
カチャッ………
八舞ツインズとデートをしようとした士道にアイギスが突き付けられる。犯人は六華ちゃんだ。
六華は二人の手を士道から強引に引き剥がして言う。
「士道さま、浮気は許しませんよ?士道さまには、昼食を済ませた後には『三時のおっぱい』が控えています。耶倶矢さま、夕弦さまどうかご理解ください。このお方は私の夫です」
「―――控えろ下郎が!これは我と夕弦の共有財産であるぞ」
「同調。六華は常に士道から半径一メートル以上の距離を取ってください。それから『三時のおっぱい』は、これから夕弦が請け負わせていただきます」
六華の命令に対して八舞ツインズ一歩も退かない!そして耶倶矢と夕弦はお互いに頷き合うと、再び士道の手を取って風の如く走り出した。
「あ―――おい!?」
「そうまで欲しければ、我らから士道を奪ってみせよ!」
「逃走。士道はいただいていきます」
「この………っ!逃しませんよ、耶倶矢さま夕弦さま!」
逃走した八舞ツインズを、神雷を放出する槍を片手に六華は追いかけた。先程は同じチームで協力しあった仲だが、士道絡みになるとそうは行かない。
「ぎゃあああああ!!あの槍から雷が飛んでくるんですけど!?」
「恐怖。六華は本気です、しかし士道を渡すわけにはいきません」
「アイギス、汝の力を我に与えよ―――神雷強化ッ!!」
六華はアイギスの神雷を体に纏い、身体能力を大幅に向上させて耶倶矢と夕弦へと迫る!!
「おいお前ら、後で琴里からとばっちり受けるのは俺なんだからな―――んぎゃあああああああ!?」
耶倶矢と夕弦に腕を引っ張られる士道に、神雷が襲いかかる!!士道はこれをジャンプして避ける!
この繰り返しが永遠に続くのであった。結局騒ぎを聞きつけた琴里がフラクシナスで四人を回収して、言葉通り士道が大目玉を受けたのであった。
「―――不幸だァァァァァァァァァァ!!」
理不尽に巻き込まれた士道の悲痛な叫び声が艦内に響き渡ったのであった。
本話で八舞編は完全終了です。次話から美九編が始まります。
正直な話、次章はまだネタが固まりきってないので、投稿ペースが落ちると思います。
それでも週に一話は出せるよう頑張っていきます。
※設定に八舞ツインズ及び園神凛袮、仁徳正義を追加しました。良ければご覧下さい!