デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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琴里「えーと、女体化した士道こと士織ちゃんは、誘宵美九といい感じになったんだけど………相変わらず攻められるとボロが出て、たじたじになってしまいましたとさ」

士織「仕方ないでしょ!?美九は俺と同じ顔をしてたんだぞ!?アレは服をひん剥かれて裸にされて―――パクリと行かれたはずだ!て言うか、性転換銃にムスコがそのまんまのバグがある以上、裸にされたらアウトよ!!」

琴里「だいぶ女の子らしい口調ができるようになってきたじゃない。その調子で頑張りなさい―――おねーちゃん!」

士道「お前………美九の攻略が終わったら『洋服崩壊』喰らわせてや―――ぬおおおおおおおよしのん!?」

ドゴオオオオオオオオオオ!!

琴里「………何か言ったかしら?」

四糸乃「士道さんは、よしのんの頭突きで眠ってしまわれたので、これにて終了です」

よしのん『いんやー本気出しちゃったよ。それじゃあ続きーッ!』



五話 祭りへのカウントダウン!

「で?何か申し開きはあるかしら?」

 

とある昼下がり、士道くんはフラクシナスの艦橋で正座をさせられていた。

そして目の前には腕を組んで仁王立ちをする妹司令官の琴里ちゃんの姿が。

 

「天宮スクエアで命を救った美九の好感度は、鰻登りで上昇。後一歩で封印できると思った矢先に………まさかの美九を全否定した挙げ句、霊力を封印してきた精霊たちを掛け物にして、勝ち目の薄い勝負を引き受けてきた。ここまで来ると怒りを通り越して憐れみの感情が湧くわよ」

 

「………………」

 

士道くんは、ぐうの音一つ言えなかった。この心底不機嫌な状態になった妹司令官様には原因があった。

 

美九を救った際に腕に傷を負った士道は、傷が悪化しないように美九が巻いてくれたハンカチを返そうと、竜胆寺女学院へと単身で乗り込んだ。(性転換銃で士織ちゃんに変装して)

 

案の定、士織ちゃんを見た美九は「士織さんタマリワセンワー!」と鼻息を荒げて大興奮!プライベートでお茶会をしていた取り巻きの少女たちを、自身の能力で追い払うと、美九の居城で楽しくお茶会が始まった。

 

ここまでは問題無く、事は順調に進んだ。いい感じの雰囲気になった所で美九が理性にさよならをした結果、アクシデントが発生した。

美九に―――明日から竜胆寺に転入して欲しい………と頼まれて当然士道は断った。

しかし、美九が言う事を聞かせるために霊力を使用したが、士道はそれを軽々と跳ね除けた事で、美九にただの人間ではない事がバレてしまった。

 

士道とドライグ、そして琴里も誤魔化しは効かない事を悟った。

性別は隠したままで、士道が精霊の霊力を封印する能力を有している事を伝えて交渉に臨んだ。

まずは封印した精霊に合わせる事、そして霊力が封印されればASTに狙われる心配が無くなる事を。

 

しかし………美九は他の精霊には会いたいが、霊力の封印は必要ないと言った。

 

―――自分は今のままで充分満足している。あえて力を差し出す必要はないない、と。

 

美九が精霊としての力を手放すつもりが無かったのは、明白だったが士道に後退と言う選択肢は無かった。

自分の力が制御出来ずに空間震を起こした事、そして霊力を封印するとASTに狙われる心配がない事など………その他の条件を伝えても美九が首を縦に振ることは無かった。

 

それどころか………

 

『あの空間震は私が()()()()()で引き起こしたものなんですぅ。私、天宮アリーナでは歌った事がなかったんですよー。私が歌いたかったから「えいやー」と。まあ、でもそのせいで私好みのおもちゃ(女の子)がなくなってしまうのは困りますねぇ。また新しいものを探すのに時間がかかってしまいますからぁ。でも、きっと彼女たちも本望ですよー………大好きな私のために死ねるんですからぁ』

 

………美九が呼吸をするように自然と言い放った言葉が士道の逆鱗に触れた。そしてそれを聞いていたドライグすら思わずドン引くほどに。

その様子をモニターしていた琴里が『落ち着きなさい』と声をかけるが、怒りが頂点に達した士道にブレーキは掛からなかった。

 

『俺はお前、嫌いだけどな………傲岸で、不遜、鼻持ちならない!世界の誰もがお前を肯定しようが俺は、俺だけはその何倍も()()()()()()()()()()()()()!!』

 

この言葉は、かつて自分の目の前から消え去ろうとした十香に言ったものとは真逆。

これを聞いた美九は、余計に士道を自分のものにしようと意気込み勝負をふっかけてきた。

天央祭一日目に来禅高校が総合優勝を取れば、士道が美九の霊力を封印できる。

反対に竜胆寺が総合優勝をもぎ取れば、士織と封印してきた七人の精霊が美九の物になると言う勝負内容。

 

その上―――美九同様に士道もステージに立たなければならない………と言う条件付きで。

 

………しかもタチの悪いことに、天央祭の一日目は音楽関係の催しがメインとなるため、士道にとって条件はこの上なく悪い。

しかし、美九の霊力を封印する以上は避けては通れない道―――士道はその勝負に迷わず乗ったのだ。

 

「………どうするのよ?もしこれで負けたら、私たちは美九のものに―――って何よ、そのムッカツク顔は!?」

 

正座をしながら正座をしながら鼻の下を伸ばして見上げる士道に、琴里は堪らず怒鳴り声を上げる。

士道はトカゲが壁を這い上がるように、四足歩行をしながらじわじわと琴里に距離を詰める。

 

「パ、パンツ!パンツ見えそう。あと少し、あと少―――グエっ!?」

 

「覗くなッ!!」

 

パンツを見ようとする変態兄の頭を靴底で踏み潰してその顔面を地面に叩き付ける琴里ちゃん。しかし、士道くん止まらない!!

 

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ………!

 

顔面を踏まれた士道くんだったが、彼の辞書に『諦める』と言う言葉はない。踏まれる少し前に、スマホを取り出して琴里のスカートの中にフラッシュの嵐を巻き起こす!

美九攻略のためとはいえ、女装と女体化させられた恨みをぶつけるかのように琴里のスカートの中をまさかの連写!!

この一般人ドン引きの行為に、琴里ちゃん叩きつけた顔面をシュート!!

 

「と、撮るなあああああああ!!」

 

「―――ギャンッ!?」

 

某サッカーアニメの角間とか言う実況者がいれば、「ゴオオオオオオオルッッ!!」と叫んでいるに違いない。士道はフラクシナスの壁へと叩き付けられると、バウンドして再び地面に這いつくばった。

 

「………シン、それから琴里。兄妹愛の強いじゃれあいをしている場合ではない。今私たちが考えるべきは、どうやってシンを勝たせるか―――この一点に限ると思うが?」

 

既に賽は投げられている。令音の指摘は核心をついているのだが………

 

「にゅうううううううう♪」 

 

壁に激突した士道を慰めるように、令音は自分のおっぱいに士道を押し込んでいた。

士道くん、ここでもブレずにキョニュウムを吸収!乳気の吸収チャンスは絶対に逃さない!

 

「その通りよ令音―――でも、とりあえず胸に押し込んでいる士道を、今すぐに解放してくれないかしら………【(メギド)】の餌食にはなりたくないでしょ?」

 

「………分かった」チッ

 

それを見た琴里ちゃんは、嫉妬で『灼爛殲鬼(カマエル)』を顕現させて砲門を令音に向けると………怯えながらも小さく舌打ちをして士道を解放した。

 

「とにかくあなたがステージに立たない事には、勝負は始まらないわ。何とかステージに立てるよう交渉して来なさい」

 

「あいよ。それから、今回はフラクシナスの力を借りたい。正々堂々を謳う仁徳には悪いけど、まともにやり合っても勝てる相手じゃない。俺に力を貸してくれるか?」

 

士道が深々と頭を下げると、琴里を始めとしたクルーたちは首を縦に振った。

 

「素直に私たちを頼ってくれるなんて、嬉しいじゃない。言われなくても最大限のサポートを行うわ」

 

「すまないありがとう」

 

………こうして美九の霊力を封印する作戦が決行されようとしていた。果たして士道は、絶対王者の牙城を崩し、美九の霊力を封印する事ができるのか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――◇◆―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の日。

士道は、フラクシナスで性転換銃を撃ち込むと音楽室を目指して歩き始めた。既にホームルーム終了のお知らせは学校全体に鳴り響いている。ステージ部門に参加させて貰うため、亜衣麻依美依トリオに頭を下げに来たのだが………

 

「もう付き合いきれない!」

 

「あなたたちで勝手にやりなさいよ!!」

 

プンスカと憤怒の表情を浮かべながらドシドシと靴音を響かせながら、音楽室から役五人ほど女子達が出て来た。

室内を伺うと、目の下を人差し指で引っ張り舌を出す亜衣の姿が。

 

「バーロー、やる気のねえ奴はこっちから願い下げだぃ!」

 

メンバーの大半が去っていく中、必死に強がる亜衣。しかし残ったもう二人のメンバーは、亜衣ほど心臓は強くはなかった。

 

「ってどうするのよ、もう私たち三人しかメンバーは残ってないじゃない!?」

 

「マジ引くわ〜」

 

この通り、麻依が状況を分析してどうにかできないかを真剣に考え、美依が平常運転。

しかし、これは士道―――士織ちゃんにとっては願ってもないチャンスだった。士織は音楽室に入って亜衣に声をかける。

 

「あの………山吹さん。お願いがあるんですけど」

 

「おおっ、五河くんの従兄弟の士織ちゃんじゃあないですか。それで、お願いとは?」

 

「私をステージ部門のバンドメンバーに加えていただけ―――ちょっ!?何を………」

 

ガシッ!

 

士織ちゃんがペコリと頭を下げると―――亜衣麻依美依トリオが逃がさないように両腕を拘束して来た。

バンドメンバーが大量離別した今、亜衣麻依美依トリオにとって士織ちゃんは得難い人材―――もっと言えば、ネギを背負って飛んで来たカモ。

 

………亜衣麻依美依トリオは死んでも士織ちゃんを逃すわけにはいなかったのだ!

 

「ああ、神は私たちを見捨てなかった」

「歓迎するよ、士織ちゃん」

「マジ引くわ、マジ引くわ」

 

「あ、ありがとう………ござい、ます」

 

キラキラと目を輝かせる亜衣麻依美依トリオに、士織は引き攣らせた笑みを浮かべていた。

しかし、ステージ部門の参加希望者はまだ居たようで………

 

「おおっ、この前見たドンドコがあるではないか、是非とも私も参加させてくれ!」

 

「士織が参加するなら、私も参加する」

 

「なんだか面白そう………私も参加していいかな?」

 

同じクラスを代表する三人の美少女―――十香、折紙、凛袮の三人もステージ部門への出馬を表明。これには亜衣麻依美依トリオ、思わず感涙!

………ちなみにドンドコはドラムだ。十香は前日に見た、誘宵美九のミュージックステージでのドラムを叩いたみたいと思っていた。

そしてドラムを見るなり、歯止めが効かなくなってしまったのだ。

 

「うおおおおおおお!神様ありがとう!」

「奇跡って何度も起きるのね!?」

「マジ引くわマジ引くわマジ引くわ―――マジ、引くわ〜」

 

メンバーがほぼ元通りになった所で、早速楽器の内訳を決めようとしていた。

 

「んじゃあ、みんな使える楽器はある?」

 

「ギターなら、少々」

『少々どころか、此奴らの倍以上の経験があるではないか?中学の野球部の部活動紹介で弾いて見せたり、小遣い稼ぎで路上での投げ銭―――「おい止めろドライグ!!」』

 

ちなみに亜衣はベース。麻依はドラム。美依はキーボード。ドライグ先生に黒歴史をバラされそうになり、慌てて思念を送ってその口を塞がせた。

 

………ちなみにドラムが予約済みなのを見て十香は「おおおおおおおおおおお………」と嘆きの声を上げてペタリと頭を抱えて地面に膝を突いた。

 

それを見た亜衣が音楽室の奥から小さな箱を引っ張り出して、中身を取り出して十香にそれを差し出した。

 

「十香ちゃん………あなたには、これを託すわ」

「常人には到底扱いきれない、伝説の楽器よ」

「マジ引くわ〜」

 

「おお………これが伝説の楽器、とやらか!?」

 

亜衣から十日に手渡されたのは―――シャンシャンと言う綺麗な音が鳴る楽器、タンバリンだ。

十香ちゃん、渡されたタンバリンを手に楽しげな表情を浮かべてシャンシャンシャンシャン鳴らしていた。

 

『………滑稽だな。しかし、夜刀神十香はそれでいい』

「あ、ははははは………」

 

微笑ましく見つめるドライグ先生と乾いた笑みを送る凛袮。これで士道と十香の楽器は決まった。今度は亜衣が凛袮と折紙に迫り寄る。

 

「後は鳶一さんと園神さんね―――ねぇお二人さん、是非ともボーカルをやって欲しいの。実は私たち三人の中でまともなボーカルが居なくて………」

 

「………………」

「ボーカルか………私、トランペットやフルートならできるんだけど」

 

折紙は何かを考えて黙り込み、凛袮は自分の弾ける楽器をアピールした………ちなみに凛袮は母が吹奏楽のエリートでもあったため、楽器は親にそれなりに叩き込まれたのだ(現在はラクロス一本で全速前進中)

亜衣がキラキラとした目でお願いをすると、士織ちゃんは何かを思い出したかのように手をポンと叩く。

 

「………確か、凛袮―――ンンッ!園神さんは歌が凄く上手だって士道から聞いてるんだけど、歌ってくれませんか?」

 

「ええっ!?」

 

いきなり士織ちゃんから歌を振られてひっくり返ったような声を上げる凛袮。そして、士織ちゃんは凛袮が大好きなアーティストの曲をスマホから流す!

 

「それじゃあ園神さん―――ミュージック、スタート!」

 

「ちょっ―――」

 

いきなり曲が再生され、伴奏が始まった。それに合わせて―――凛袮が歌い始める。楽しげな表情を浮かべて歌う凛袮の姿は―――聞いていた士織ちゃん達を魅了させた。

 

『――――――』

 

『………大したものだ。綺麗な声という天から与えられた才能が大きいのだろうが、この少女の歌は聴いていると、何処か元気が湧いてくる。それはこの少女は歌う事が好きなのだろうな』

 

ドライグ先生もお墨付きを与えるほど、凛袮の歌は素晴らしかった。そしてこの歌なら―――今を輝くミステリアスアイドル、誘宵美九とも十分に渡り合えると。

 

そして曲が終わると、拍手と歓声が上がった。

 

「ヤバい!ヤバすぎる!これカラオケバトルに呼ばれるレベルでしょ!?」

「園神さん凄い!凄いよ!!これなら竜胆寺とも互角に渡り合えるよ!!」

「マッッッッッッッッッッッジ、引くわあああああああ!!」

「凄いです園神さん!」

「よく分からんが、凄いではないか凛袮!」

 

「みんな、大袈裟だよ………」

 

拍手と歓声に凛袮は照れ臭そうに笑みを浮かべていた。これで凛袮のボーカルが決定しようとしたその時――――――もう一人のボーカル候補がスマホから音楽を流して、それを歌い始めた。

 

「………え?」

 

士織ちゃん思わず折紙の歌を聴き入っていた。いや、士織ちゃんだけではなく、亜衣麻依美依トリオに十香、そして先程大歓声を上げさせた凛袮までもが、折紙の歌に心を奪われていた。

 

折紙の心は一つ―――士道を取り合うライバルとして負けるわけにはいかない!これだけだ!!

 

「鳶一さんの歌………凄く力がある」

 

凛袮が歌の邪魔をしないようにボソッと小声で言うと、士織も首を縦に振った。そして最後の一節を歌い上げると………再び拍手と歓声が上がる!

 

「うっわ、なに、すっご!?」

「鳶一さんそんなに上手かったの!?」

「マジマジマジマジマジ引くわ〜」

「これは、園神さんと折紙さんのデュエットで決まりだな」

「おのれ鳶一折紙!こんな特技があったか!」

 

『………この小娘に出来ない事はないのか?勉強できるわ、スポーツも完璧でおまけに家事に戦闘力まで兼ね備える。ここまで来ると、一般人ドン引きのレベルだぞ』

 

そして、士織ちゃんは凛袮と折紙に深々と頭を下げる。

 

「園神さん、折紙さん―――二人ともボーカルをやってくれませんか?」

 

士織だけでは無い。亜衣麻依美依トリオも士織に続いて「お願い」と頼み込む。

 

「士織の勝利のためならば」

「そこまでされたら、断れないよ………私、ボーカルやります!」

 

二人とも快く引き受けてくれた。この七人が初日のステージ部門への出場申請への書類を作成して、士織ちゃんは教員に提出したのであった。

 

「Ready Perfectly―――準備は完全に整った。このメンツなら天央祭のステージ部門制覇だけでなく、バンド界に革命も起こせるんじゃないか?」

 

『相棒―――それ、言いすぎ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――◇◆―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美九を擁する竜胆寺女学院との決戦に備えて、バンドの練習が熱を帯び始めてから数日。午後からの時間を天央祭の準備にフルで当てられていた、短縮授業が終わりを迎え再び通常授業が始まった。

そして時刻は一五時三〇分。ホームルームが終わって靴を履き替えるお時間だ。

 

「今日は亜衣麻依美依トリオと仁徳が、模擬店部門の交渉に行ってくれたおかげで俺はフリー。さあ、楽しいことやってやるぜ――――――って時に雨なんざ降ってんじゃねえ!!」

 

実行委員長に任命されてから約二週間、日曜日以外は八時帰宅が続いていた士道くんだったが、今日は実行委員の仕事とバンド練習から解放された。しかし、天気は悪く大粒の雨が横殴りで降っているのだ。

 

「くっそー、十香たちの誰かを誘って楽しくお出かけと思ったんだがなぁ………しゃあねえ、神奈月さんから借りたエロゲーでもやるか」

 

自分のロッカーに上履きを入れて、カバンから折り畳み傘を出して帰ろうとしていた時、昇降口で何かソワソワした様子で佇む、黒髪を二つに結わえた少女の姿が。

 

「くるみん?どうしたんだ―――まさか、傘忘れたのか?」

 

その少女は、最悪の精霊〈ナイトメア〉の分身体の一人―――くるみんだ。士道の言葉にくるみんは首を縦に振る。

 

「そうなんですの………今朝は少し寝坊をしてしまって、荷物の確認ができなかったもので」

 

「そうか―――じゃあ、一緒に帰ろうぜくるみん。女神に風邪なんざ引かさられないからな」

 

士道は傘を指すと、笑顔で手を差し出してくれた。くるみんはその手を笑顔で取った。

 

「ええ!」

 

傘を忘れた事で訪れた久しぶりの士道との時間。くるみんは士道の腕に身を寄せて、抱きつくように体を押し当てた。

髪から感じられる甘い匂いと、腕に押し付けられた柔らかな感触に士道くん、思わずニッコリ。

 

「くるみんは天才かッ!?おひさまのような匂いに、おっぱいが当たって―――ぐへへへへへへ!」

「喜んでもらえて嬉しいですわ!それでは………士道さんにサービスですの」

 

『………今日はいつにも増して強気だな。相棒の下品な笑みを見て、いつもなら悲鳴を上げているのだが』

 

グヘグヘと下品な笑みを浮かべる士道に、くるみんはさらに強く自分の体を押し当てる。六華に八舞ツインズといった新たな精霊たちが加わり、士道へのアピール合戦はさらに激しさを増した。

傘を忘れた事で訪れたこのチャンスを必ず物にしようと、くるみんは燃えていたのだ。

 

「くるみんはゴッデスだ!俺様の欲望を叶えてくれるエロゴッデスさまだ!さぁて、今日はどんな下着を穿いているのでしょうかねぇ………ぐへへへへへ!」

「士道さん、わたくしエロくなんかありま―――ひっ!?」

 

『………ああなんだ。いつも通りか』

 

珍しく攻めに出たくるみんだったが、おっぱいを押し当てた事によって士道くんが欲情!そして下着を見ようとスカートへと手を伸ばす姿を見て、小さく悲鳴をあげて距離を取った。

これを見たドライグ先生は、平常運転である事に気付き微笑ましい様子で見守っていた。

 

その時だった――――――

 

ビイイイイイイ―――バシャアッ!

 

くるみんが恐怖を感じて士道から距離を取ったその時、運悪くトラックがクラクションを鳴り響かせた。

それを聞き取った士道がくるみんを抱きしめ、近くのブロック塀に押し付けた。

士道のすぐ横を通り抜けたトラックは、水飛沫を士道に掛けると―――そのまま止まる事なく走り去った。

 

「くるみん、大丈夫か?」

 

「はい………ありがとうございますわ、士道さん」

 

士道がくるみんを抱きしめた事で、くるみんはトラックと接触することも、体に水飛沫が掛かることもなかったのだ。

だが、相棒の一言が士道くんの理性にガソリンとライターを同時に投げ込む!

 

『相棒、時崎狂三を抱きしめるのではなく、そのまま引き寄せていれば―――二人ともずぶ濡れになって一緒にシャワーを楽しめたのに………残念だったな』

 

ドライグ先生がケラケラと笑いながら言った言葉に、士道くん巨大な時計と右手に銃を顕現!

このセットは、くるみんが士道に託した天使―――『刻々帝(ザフキエル)』だ。この中には、過去に行くものや意識だけを過去に送る物も存在する。

士道くんは、その能力を使って二人ともずぶ濡れになる事象を選択するため、タイムループをしようと考えたのだ!

 

「来やがれ『刻々帝(ザフキエル)』―――俺は今の場面、やり直しを要求する!!」

「ひっ―――あ、ああああああの士道さん!?ほ、本気なんですの!?」

 

最高に下品な笑みと鼻血を垂れ流しながら、顳顬に霊力を込めた弾丸を撃ち込もうとしている士道くんに、くるみんが悲鳴じみた声で確認をとる。

しかし、くるみんはすぐに士道が本気だという事に気付いた。

 

―――この男は、エロが絡むと冗談という行為が無くなることを分かっていたから。

 

ここままでは、トラックにびしょ濡れにされる未来が見えたくるみん―――慌てて士道の凶行を阻止!

 

「ああもう!そんなにわたくしとシャワーがご所望なら、叶えて差し上げますわよ!わたくしが士道さんのお背中、流してあげますわ!」

 

「マジで!?くるみん、今の言葉録音したからな!」

 

「ひっ、いつの間に!?士道さん、もう少し欲望を抑えて下さいまし………」

 

「断る!断あああああある!!くるみんのような美少女の誘いを断るなんざ、漢の風上にも置けない非情な行為だ」

 

「はあ………本当に、士道さんは、いつでもどこでも士道さんですわね」

 

この男が自分の欲望に嘘をつく事はない。全くブレることを知らない士道くんを見て吐いた、盛大な溜息と共に改めてそれをくるみんは理解したのであった。

 

そして、そこから約五分ほど歩いて五河家に到着すると、士道くんは濡れた服を洗濯機に叩き込み、浴室でシャワーを浴びていた………現在はバスチェアに腰を落とし、髪をシャンプーで洗っている最中だ。

 

「くるみんとシャワーか。やっべえ!めちゃくちゃ滾ってきた!!」

『はぁ………本当に来ると思うのか相棒。あの小娘は今日来るとは言っては―――………まさか、本当に来るとはな』

 

ガチャ………

 

士道がシャワーで髪を洗浄したシャンプーを流したタイミングで、くるみんが扉を開けて士道がシャワーを浴びる浴室へと侵入。バスタオルを体に巻いた状態で入って来たため、女性の象徴たる部分は隠れているが、自分が約束した事をこの通り果たしに来た。

律儀に約束を守りに来たくるみんを見て、ドライグ先生は目を点にするように驚いていた。

 

「士道さん………お背中、流しますわ」

 

「おおっくるみん!俺は来てくれると信じてたぜ、ぐへへへへへ!」

 

くるみんは、膝を曲げてバスチェアに腰を落とす士道に高さを合わせて、ボディーソープをスポンジに付けて、優しく士道の背中を擦った。

………布巾で水を拭き取るようゴツゴツとした鍛え上げられた背中に、泡を纏わせていく。

 

「士道さん、痒くはありませんか?」

 

「ちょうど良い感じだ………続けてくれ」

 

士道の言葉を聞いたくるみんは、今までと同じ加減で士道の体をスポンジで擦る。腕や肩………そして足へと泡を纏わせていく。

逞しい士道の体を見ながらくるみんは、頬を染めて欲望と理性の狭間をうろうろしながらも、順調に作業を進めた。

 

くるみんは何とか理性が欲望を押し殺す事に成功したが………士道は欲望を抑え込む事は敵わなかった。

それはこの後の二人の会話が証明している。

 

「んしょ………んふっ………士道さん、気持ちいいですの?」

「ああ。控えめに言っても最高だ」

 

現在くるみんは士道の前側………胸やらお腹を優しく擦っているのだが、背中腰に自分の体を押し当てながら、それを行なっている。

くるみんは、擦り加減を聞いていたのだが、士道くんは押し当てられるおっぱいの感触について返しているのだ!

くるみんはバスタオルを纏ってはいるものの、大好物がフニフニと押し付けてくる―――しかも、くるみんが動くたびにその感触が変化する。

 

一生懸命に士道の体を洗おうとする度に訪れる、柔らかな重みに士道くんは猛りに猛っていく!!

 

しかし………そこから時間を数えるほど約数分程で、幸せな感触は突如として去っていった。

くるみんは、士道の体に洗い残しが無いことを確認すると―――バルブを回してシャワーをかけて士道の体の泡を落としていく。

 

全ての泡を士道の体から落とすと、くるみんは立ち上がって浴室のドアノブへと手を触れた………これで果たすべき約束は果たした故に。

 

「それでは士道さん………ごきげんよう」

 

くるみんがドアノブを倒し、外に出ようとしたその時だった。士道は立ち上がってくるみんを抱きしめた………くるみんをこのまま行かせないために。

 

「あ、あの………士道さん?どうしたんですの、わたくしはもう―――」

 

「―――今度は俺がくるみんの背中を流したい」

 

「………ッ!」

 

士道が耳元で囁くように言った言葉に、くるみんは顔に熱を持った。それも士道の背中を擦っていた時とは、比較にならないほど熱く。

士道は腕に込める力をさらに強め、狂おしい程にくるみんを抱きしめる。

 

「ここまでして貰って俺だけってのは嫌だ………俺にもさせてくれないか?」

 

「士道さん、ズルいですわよ。そんな言い方されたら………誰だって断れませんわ」

 

士道が耳元で囁いた願いを聞いて、くるみんは振り返って体に巻くバスタオルを床へと解放した………その結果、真珠のような透き通った白い肌が隠される事なく士道に晒された。

 

「くるみん………綺麗だ」

 

「―――ッ!ほ、ほら士道さん、早くして下さいまし!琴里さんや六華さんが帰って来られると面倒ですわ!」

 

士道から放たれた「綺麗だ」という言葉に、くるみんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いてバスチェアへと腰を落とした。

………これはテレ隠しだ。想いを寄せる男にこのような言葉をかけられた今の顔を見られたくなかったのだ。

 

今の自分の顔は―――これまでで一度もした事がないものに相違ないから。

 

「ああ。分かった………優しくするよ、くるみん」

 

士道はボディーソープを手につけると………そのままくるみんの肩へと触れた。スポンジのような柔らかい感触ではなく、ゴツゴツとした硬い感触が撫でるように、広がっていくことにくるみんは嬌声が漏れる!

 

「ふあっ!?し、士道さん。どうしてスポンジではなく直接触れているんですの!?」

 

「肌は髪同様に女の命。肌を傷付けないためには、直接手で洗うのが一番良い」

 

「そ、それは分かりましたわ………で、ですが―――ああっ!ひぃっ!一言言って―――ああああっ!!」

 

くるみんの言葉を聞きながら、士道はくるみんの体に手を滑らせていく。浴室からはくるみんの甘い吐息が何度も漏れ出て、這い回る逞しい漢の手の感触に嬌声を我慢する事ができなかった。

 

「し、士道さん―――あっ!ぃやっ!す、少しペースを―――んんっ!んああああああああっ!!」

 

士道くんによる愛と欲望に塗れた体洗いによって、くるみんは何度も嬌声を漏らしたのであった。

 




最後の方は完全にくるみんだけの流れになりましたが、前章ではあまり出番が無かったので、この話で見せ場を作りました。

極力全ヒロインが当分で活躍できるよう、描いて参ります!

………最後のシーンに関しては、その後の展開は各自のご想像にお任せします!

ドライグ先生の次回予告

ドライグ「さあさあ始まりました天央祭。来禅高校の相棒たち二年の模擬店は男子が執事喫茶、女子はメイド喫茶だ。それぞれ学年を代表するイケメンと美少女で布陣を固め、死角は何処にもない!
相棒たちは、総合優勝を勝ち取る事ができるのか!?

次回 デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜

六話 「決戦、天央祭 前編!」

精霊に愛されし女帝よ、冷静沈着であれ!楽しみにしておけよ?』

※次回以降はシリアス展開が続きます。

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