夕弦「音読。士織は美九とデートをする中で彼女が価値観に疑問を覚えました。人間をオモチャにしか思わない美九―――士織は勝利し、美九を正しく人間と話させることはできるのでしょうか?」
耶倶矢「カカッ!ここから先はレクイエムぞ!我が魔性の声で貴様らの魂を永久の眠りに導こうぞ!」
夕弦「溜息。耶倶矢はボーカルでは有りませんよ?マスター折紙がいない今、ボーカルは凛袮のソロです。それに、耶倶矢の音程がズレまくりな歌(笑)では、凛袮の足を引っ張ります。耶倶矢はドラムの方に全集中して下さい」
耶倶矢「んだとコラッ!?我が音痴だとでも言いたいのか!?」
夕弦「驚愕。まさか知らなかったとは………さすがはバ耶倶矢」
耶倶矢「ちょっ、士道に続いてアンタまで!?良かろう、我が歌唱力ドラムを叩きながら響かせてやろうではないか!」
夕弦「静止。耶倶矢、考え直して下さい!このままでは夕弦達に敗北の二文字が―――」
士道「止めろ耶倶矢、凛袮の歌をぶち壊すつもりか!?」
耶倶矢「し、士道まで!?ううっ………うあああああああ!!皆が私をいじめるよおおおおお!!」
凛袮「ちょっと―――士道に夕弦ちゃん、耶倶矢ちゃんにそんな酷いこと言っちゃダメだよ!確かに耶倶矢ちゃんの歌は、音程がズレまくりだけどリズムは―――」
耶倶矢「やっぱり私って音痴なの!?音痴なのね!!」
凛袮「いや、そう言うわけで言ったんじゃ―――」
ドライグ『天然というのは恐ろしいな。さてさて茶番はこの辺りにして―――続きだ。待たせたな』
※JASRACで楽曲コード検索しようと思ったのですが、まさかのメンテ中で投稿が微妙に遅れました。 申し訳ございません!
「いよいよ始まるな」
照明の落とされたステージの中央に、五人の人影が闇の中を歩いて行く。美九と思しき少女がステージの中央に立つと………黄色の歓声が照明の落とされた客席からサイリウムの光が左右に振られる。
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
歓声と激しく揺れるサイリウムが止んだタイミングで―――曲の伴奏と共に、ステージがスポットライトで照らされる!
歌詞が始まるまでの伴奏の間に、美九の振り付けに合わせてバックダンサーも、踊りを披露する。
それに合わせて観客が合いの手を始め、サイリウムを激しく振る!それはまさにアイドルが行うライブそのもの。
そして、美九が歌詞を口ずさむと同時に会場のボルテージとサイリウムの振りがどんどん加速していく!!
そして曲がサビに入ると―――美九の歌声が大きく、そして強くなり会場全体に響き渡り、演出もより一層激しさを増す!
この会場は美九の声に会場は一つになり、異様な熱気に包まれていた。見渡す限りの人達が美九の歌に合わせてサイリウムを振るい、合いの手を行う。
「おおっ!なんだか楽しくなって来たぞ!」
「………す、凄い」
十香も美九の歌を聴いて購入したサイリウムを振り始め、凛袮はゴクリと喉を鳴らし、ただ美九の圧倒的な歌唱力とパフォーマンスに圧倒されていた。
そして美九が一曲目が終わりに合わせて、ウィンクを送ると―――再び割れんばかりの拍手と歓声が上がる!!
『美九お姉様ああああああ!!』
『美九たん最高おおおおおおおお!!』
『美九!愛してるぞおおおおおおおおおお!!』
次の曲が始まる前の僅かな間。その間にも観客の熱は冷めることを知らない!そして、そこから一〇秒ほど経つと―――次の曲の伴奏が始まり、美九がダンスを始めたその時、急に照明が落ちて真っ暗になってしまう。
否、それだけではない!大型のスピーカーから流れていた曲も、照明が落ちると共にプッツンという音を鳴らして途絶えた。
「む!?停電か!?」
「え、それちょっとマズくない!?」
急にステージのスポットライトやらが一斉に停止したことを見て、十香や凛袮を筆頭に観客席にどよめきが広がって行く。
皆が混乱を始めると同時に、一つの可能性というか確信にたどり着いた士織ちゃんは、額に手を当てて盛大にため息を吐く。
「………琴里、余計な事はするなって言ったろ?」
『はて?なんの事かしら?ステージの方で何か起こったの―――ああ、なんかステージのスポットライトとスピーカーが壊れただけでしょ?まぁ、程よく白けたらまた再開させてあげるわよ。勿論、また盛り上がったタイミングでブッチンするケド』
「知ってるじゃねえかッ!?ったく、どうなっても知らねえからな」
士織ちゃんは、やれやれと両手をあげて手を振るとステージの方へと再び視線を戻す。
時間が経つにつれて、盛り上がっていたステージのテンションは下降を始めていた。
確かに如何に素晴らしいステージであろうと、見えなくすれば意味はなくなる。その素晴らしい美声も聞こえなくしてしまえば、会場のボルテージは維持できない。
しかし………美九はかつてトップアイドル―――『宵待月乃』として世間にその名を轟かせたプロ中のプロ。この程度のアクシデントで引き下がるような経験値ではない!
スポットライトを殺され、ステージを暗闇が包まれてから少し経過したその時、小さな光が現れる………濃密な霊力の波動によるものだ。
「………言わんこっちゃねえ」
『獣の巣を突いた結果だな。相変わらず役に立たないな「フラクシナス」は………』
士織ちゃんは、美九が何をするかを瞬時に見抜いた。そしてドライグ先生が墓穴を掘った琴里に溜息と共に罵声を浴びせた。
―――琴里がやったのはステージの妨害だが、これが美九を本気にさせてしまったのだ。美九から放たれる濃密な霊力の波動は美九の体を包み込んで行く!
「―――『
美九が会場のどよめきを押さえつけるように、小さく霊装の真名を謳うと放たれた光が光のドレスを形成する!
身体のラインに張り付いたトップス。ボリュームのある袖。それらを包み込むように展開したボレロ状の光の帯。そして―――光のフリルが幾重にも折り重なった煌びやかなスカート。
『まさか、こんな人目につく場所で霊装を顕現させるなんて―――』
「だから言っただろ、余計なことをするなって………人間に危害を加えるつもりは無さそうだし、万が一何かあった時は、責任を持って処理するから心配いらない」
士織ちゃんはそこまで言うと、美九から放たれる力を明鏡止水で探った。その力は誰にも矛先を向けられておらず、危害を加えるつもりで霊装を纏ったわけではない。
そして観客達は、突如美九が光を放って衣装を変えたことを特殊な演出だと思ったのか、会場を包み込む歓声がより一層大きくなる!
「―――上げていきますよぉ!ここからが本番です!!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
美九が小さくステップを踏み、顔の前に両手が上下するように腕を上げると死んだはずのスポットライトが光を放ち、さらにはスピーカーが曲を流し始める!
『そ、そんな―――まさかこれも美九の能力だって言うの!?』
殺した筈のスポットライトが、美九の歌に呼応するかのように光を放ち、スピーカーが曲を会場の隅から隅まで響かせる!
琴里は再び会場の設備を落としに掛かるが―――効果は無かった………
曲が始まると美九が踊りと自慢の歌声を披露し、会場のボルテージは一曲目とは比較にならないほどの高まって行く!!
これを見た士織ちゃんは、引き攣らせた笑みを浮かべた。
「………中津川のおっさんに一杯食わされたな。美九の力はあの時のビデオで計算していたけど―――今の美九はあのビデオよりも数段凄みが増している。歌にしても響きが良くなってるし、ダンスにもキレが出ている。プロは日々進化していくって言われるけど………美九を見てると改めて納得した」
『ああ………しかし、いい歌だな。聞いていて癒される「聞く麻薬」の二つ名は、伊達ではないというわけだな』
思わず士織ちゃんも、近くのフェンスから体を乗り出すように歌に夢中になっており、士織ちゃんを通して聴こえてくる歌声にドライグ先生も思わずニッコリ。
観客の誰もが先程の一件をアクシデントだとは思っていない。全ては―――美九の輝きを増すための演出。美九のパフォーマンスをより際立たせるための小道具として処理された。
再び合いの手が聞こえ、振られるサイリウムは激しさを増した。美九の存在感は会場の全てを自分の世界へと染め上げて行く!
―――今の美九を表現する言葉は、トップアイドル以外に見つからないほどそのパフォーマンスは圧倒的だった。
そして両手を挙げると同時に、曲が終わる。
今までよりも一層凄まじい拍手と大歓声が、会場を包み込んだ。
会場の誰もが美九の名前を口にして、そのパフォーマンスに感激して祝福するように。
そして気付けば十香も最高にボルテージが高まった状態で拍手を送っていた。
「………たく、こんなパフォーマンスが出来るなら、汚い真似なんざするなよな。楽に勝てる相手だと思っていた自分が馬鹿らしくなるってんだ」
『まさか、これほどまでとはな。ここまで闘志に火をつけてもらった〈ディーヴァ〉に、次は相棒達が応える番だ………と言いたい所だが、肝心のボーカル担当はプレッシャーで大きく震えている様子だぞ?』
「………………」
ドライグ先生に言われて、ボーカルを担当する凛袮に視線を向けると―――呼吸が整っていない凛袮の姿があった。
学年で誓った総合優勝を背負って戦うプレッシャー。さらには、ラクロスで慣れ親しんだコートではなく、ステージで大勢の観客を前に歌を披露するという経験したことのない重圧が、凛袮にプレッシャーとして乗っているようだ。
そして………バンドメンバーが抜けた穴を埋めるべく士織ちゃんが呼んだ助っ人が、凛袮の肩に両手を落とした。
「どうした凛袮………固まっておるではないか。もしや、あの歌に呑まれたか?我らに『士道は渡さん!』と向かって来たお主は何処へ行った?」
「脱力。凛袮、肩の力を抜いて下さい。それではいつもの美声は出ませんよ?」
「耶倶矢ちゃん、夕弦ちゃん!?ちょっと―――痛い、かな?でもありがとう………少し楽になったよ」
助っ人に呼んだ八舞ツインズがここに降臨した。耶倶矢が肩に入った力を剥がすように揉み、夕弦は首筋を親指で押していた。不意に変な感触が現れて、
これでバンドのメンバーは揃った。これを見た士織ちゃんは、下品な笑みを浮かべて手をわしゃわしゃと動かす!
「よし、景気付けだ!お前らのおっぱいに入った力を俺様が特別に抜いてやるぜ、ぐへへへへへへ!」
―――士道くんの姿でやれば、逮捕待った無しの犯罪臭全開の笑みで、メンバーのおっぱいを揉みしだく士織ちゃん!
「も、揉むな!」
「あ、コラやめんか!」
「淫猥。やめて下さい!」
「もう士道、怒るよ!?」
背後からこっそりと忍び寄り、そして大胆にメイド服の上からおっぱいを鷲掴みにして欲望の限りに蹂躙していく士織ちゃん!
十香、耶倶矢、夕弦、凛袮の順番で緊張をほぐす(自分の)名目で息を荒げながら、大好物を揉みしだくその姿は………やはり士道くんそのものだ。
さらに!!この乳揉みには、先程四糸乃にドン引き待ったなしの嘘を吹き込もうとした、ドライグ先生への報復も兼ねていた。
『おい相棒―――何故、籠手で乳を揉んでいるのだああああああああ!?』
「お前が四糸乃に嘘を信じ込ませようとした報いだ!遠慮せずにたっぷり味わえ、ステージが始まるまで、永遠と続く乳揉みツアーだ!」
『うおおおおおんん!!うわああああ!!うおおおおんん!!悪かった、反省します、もう二度としませんから許して下さい相棒さまああああああ!!』
「Too Little Too Late(もう手遅れだ)!!うんうん!みんな日々成長してるな〜!お兄さんご機嫌だ!!」
ドライグ先生の悲鳴に聞く耳を持たず、メンバーの乳をやりたい放題に犯す士織ちゃん。
しかし、十香たちも当然無抵抗ではない!肘打ちやら、ビンタやら、スネに踵をぶつけられたり、鼻に後頭部をぶつけて来たりと、乳を揉むたびに猛反撃が飛んで来た。
バギ!パンッ!ズガッ!ゴンッ!
………一〇分ほどすると、士織ちゃんの顔面はハチに刺されたごとくボコボコ状態になっていた。
「よ、よし!お前ら大分緊張がほぐれたみたいだな」
瞼の片方は腫れ上がり、右側の頬にはくっきりと平手打ちされた痕が残り、さらに鼻血まで垂れ流した、可愛さが残っていない顔面で士織ちゃんが言うと、四人は胸元を隠して、顔を赤く染めながら鋭い視線を向ける!
「ああ、お陰様でな!!」
「ううっ………私、お尻まで触られたんだけど!?」
「同調。夕弦もです。夕弦は服の中にまで手を入れられました」
「士道、やっていい事と悪い事があるんだよ?少しは反省して!」
士織ちゃんがやりたい放題やったおかげで、凛袮の緊張もかなり和らいだ様子だ。そして最後に士織ちゃんがメンバーに言う。
「正直言って美九のステージは圧倒的だった。歌、衣装、パフォーマンス………どれをとっても俺たちよりも上だと思う。でも、俺たちもその美九に勝つ為に今日までやって来たんだ。縮こまる必要は無い―――俺たちの演奏で、会場に嵐を巻き起こしてやろうぜ!」
「うむ!私は精一杯ステージを楽しむぞ!」
「カカッ!我が一年をかけて極めた音色の極地!余さず披露してくれようぞ!」
「出陣。夕弦の泣く子も黙るベースを会場の隅から隅まで届けます!」
「士道らしいな………私もやるよ!」
メンバーの想いはこれで一つになった。仙城大付属の吹奏楽部の演奏が終わると、来禅高校のバンド演奏―――士織ちゃん達の晴れ舞台が始まろうとしていた。
―――◇◆―――
天宮スクエアの上空一五〇〇〇メートル上空では、空中艦フラクシナスは士織ちゃんのステージを見守っていた。
艦橋の中央にある司令席に座る士道の妹であり、司令官でもある琴里は艦橋のモニターを眺めていた。
「………後は士道が竜胆寺に勝ってくれれば良いんだけど、それは期待できそうにないわね」
琴里は士道達の演奏を見ていた………士道達の演奏は、プロのバンドと比較しても遜色ないレベルにまで到達している。
しかし、先程の美九のアクシデントで動じないどころか、パフォーマンスを際立たせる要因にしてしまう圧倒的な力を見て、相手が悪過ぎることを思い知った。
―――その全力を出させる要因を作ってしまった事に琴里は責任を感じていた。
「………結果で取り戻してやるわよ!このまま士道の足を引っ張ったままで終われるもんですか!」
自分の失態は、自分で取り返す………琴里はそう言わんばかりに燃えていた。そして、士道達のステージが始まる五分前―――時刻は一四時五五分になったその時に艦内にアラームが鳴り響く!!
「し、司令!天宮スクエア上空にASTと思しき反応が!!その数三〇!!」
「何ですって!?至急モニターに写して!」
「了解―――これは、DEMのウィザードに士道くんから報告のあったバンダースナッチです!」
箕輪がモニターを天宮スクエア上空の映像に切り替えると、ワイヤリングスーツを纏って宙に佇む魔術師と、バンダースナッチが展開されていた。
………琴里は事象をいくつも展開しながら、頭を回転させ一つの答えにたどり着いた。
「………エレン•メイザースでしょうね。恐らく、あの女は士道の宿った力を見抜いて上に報告したんでしょう。士道が宿す『
こんな人が集まる場所で戦闘を行えば、屍の山ができる事など子供でも理解するに容易いだろう。しかし、DEMや日本の陸上自衛隊も『軍事目的のための致し方ない犠牲だ』とでも言えば、お咎めなしになる事実もある。
―――地上最強のドラゴンに、天災を呼ぶ精霊。これらは、民間人の生活を脅かす脅威だ………積み重なった屍は、それを討滅するための小さな犠牲として、世論は処理されてしまう事を琴里は理解していたから。
「―――司令、良ければ私が出ましょうか?」
「それしか無いわね。頼ん―――」
琴里が最後まで言おうとしたその時、再びアラームが館内に鳴り響いた。
「―――今度は何!?」
「天宮スクエア上空にもう一つ巨大な反応が現れました!これは―――」
クルーの狼狽と共に、現れたもう一つの方の反応へとモニターを切り替えると………凄まじい斬撃が雲を斬り裂いた。
そして、雲が払われたことで新たな反応の主が姿を現した。
「まさか、アレが士道の言っていた『
現れた白い太陽を見て、琴里はごくりと唾液を飲み下した。
―――◇◆―――
「あっちゃー………どうやら、向こうが当たりのようだな」
天宮スクエアから、少し離れた雑木林の中で、DEM社が誇る魔術師グレンは、天宮スクエア上空に現れた巨大な反応を見て声を漏らした。
上空ではジェシカが率いる第三戦闘分隊が天宮スクエアに突入をかけようとしていたのだが、どうやら邪魔が入ったらしい。
そして、グレンの部隊は地上から天宮スクエアを抑える部隊だ。グレンはジェシカのフォローで此処で待機を命じられているのだ。
「グレン様、如何なさいますか?」
部隊の女性魔術師がグレンに訊ねると、グレンは言う。
「そうだね………感じ取れるオーラから察するに、現れたのは『白い龍』を宿したトビイチオリガミだろう。これは、僕たちが突撃した方が良いかも知れないね」
グレンは状況を上官に報告すると―――突撃命令が降りた。グレンはその命令を確認すると、レイザーブレードとビームウェポンを装備すると、高らかに命令を下した。
「エレン隊長の命令だ―――突撃だ、行くぞッ!!」
『イエス、マイロード!』
雑木林の中から、グレンが指揮する地上部隊が飛び出そうとしたその時―――
ゴオオオオオオオオオオオッッ!!
「きゃあああああああああああ!?」
「な、なんだこれはッ!?」
「身動きが取れません!」
先行しようとした魔術師三人と、バンダースナッチ七機を突如発生した竜巻に飲み込まれた。
竜巻に飲まれた魔術師達とバンダースナッチ防御随意領域を発動するが、竜巻の風刃の方が一歩上を行き、CRユニットを切り裂かれ、地面へと落下した。魔術師達はワイヤリングスーツにも、亀裂が入ってしまい戦闘続行は不可能。
そしてバンダースナッチも体の大半を粉々に切り刻まれ、地面に叩きつけられると、衝撃によって爆発して全て戦闘不能に追い込まれた。
「………すまんなグレン。いつぞや預けた、勝負の続きといこうじゃないか」
竜巻が止むと………或美島で勝負を預けた正義が現れた。彼は前回と同じ武装―――オレンジ色の籠手と妖しい緑色のオーラを放つ前後両方に刃を持った刀を手に現れた。
グレンはそれを見て嬉々とした笑みを浮かべる!
「そう言えばキミも来禅高校の生徒だったっけ?まさか、あの時の借りをここまで早く返せるとは………来い『リュカオン』ッ!!」
グレンは正義を見るなり、自分の影から漆黒の刃を持つ人狼―――リュカオンを召喚した。
それを見た正義は、刀を振り回して切先をグレンに突きつける!
「この先には俺の仲間が、敬愛する幼女がいる………元気一杯の天真爛漫幼女に、歪んで育ったひねくれ幼女、そしてお嬢様系幼女!俺は今この時をもって幼女たちの盾となる!!ここから先に進みたくば、俺を超えていけッ!!」
「キミの属性は幼女なんだね………しかし、そんな事は今はどうだって良い!!上等だ!心行くまで殺し合おうじゃないかッ、ジントクマサヨシッ!!」
正義は来禅高校の生徒を守る為に、DEM社の魔術師の行く手を阻んだ。ちなみにだが、来禅高校の生徒はついで。
彼が真に守るべき本命は幼女だ。勇気五%、元気五%、欲望九〇%を満たしてくれている未成熟なつるぺたボディを守る為に!
正義は、鬼神となって刀を振るった。その姿はまさにマジキチと呼ばれた最強の存在―――人修羅の名に恥じない戦舞だった。
―――◇◆◇―――
時刻は一五時〇〇分。天央祭のパンフレットでは、士織ちゃん達のバンド演奏が始まる時間だ。士織ちゃんたちはステージの近くの幕の中で待機をしていた。
(………おいおい、外で何が起こったんだ?上空で戦ってるのは折紙とAST―――いや、このオーラはDEMの魔術師か。それに、地上では仁徳と、これもDEMか?俺も加勢に向かった方が良いか?)
士道はステージが始まる前に大きく息を吸い込み、精神を統一していた。その時、周囲のオーラを探ると上空と地上で巨大なオーラを放出する存在が二つ確認できた。
一つは士道が宿す『赤龍帝の籠手』と相反する神器―――『
『相棒。その気持ちは分からないでもないが、今は〈ディーヴァ〉との勝負がある。それを片付けてから救援に向かっても十分に間に合う筈だ。仁徳正義と鳶一折紙の強さは、その身で体感した相棒が誰よりも知っている………凡百の魔術師程度に敗れはしないさ』
『士道、ドライグの言う通りよ。あなたはまず美九とのステージ対決がある。そっちに集中なさい。仁徳正義と鳶一折紙に万が一の事があった時は―――
「分かった。もしもの時は頼むぞ。それから琴里、一つだけ準備して貰いたいものがある――――――」
『………なるほどね。了解よ、言われた通りにするわ』
相棒と愛する妹の言葉を聞いて地上と上空で行われている戦闘の事は、二人に任せた。そして、琴里に備えをしてもらった所でレディーパーフェクトリー、準備は完全に整った。
そして、士織ちゃん達の演奏が始まるアナウンスが流れ始める。
『次は、来禅高校によるバンド演奏です!』
「さあ、俺たちの番だ、行くぞお前たち」
士織ちゃんの言葉に十香たちは首を縦に振り、その後ろに続いて歩き始めた。
パチパチパチパチ!!ピー!ピーピーピーピー!!
アナウンスが流れると、拍手と指笛の音が聞こえてくる!恐らく指笛は来禅高校の生徒によるものだろうが………
士織ちゃん達は、薄暗いステージの中を進んで行く。そしてそれぞれが各持ち場に着いた所で、スポットライトがステージを照らす。
ステージからは、幾人もの観客が来禅高校の演奏を心待ちにしている様子だった。そして客席の中段からは、四糸乃がサイリウムとよしのんを振っている姿も確認できた。
………不思議な事に士織ちゃんに緊張は無かった。それもそのはず―――精霊たちとの極限状態でのデート。自分の実力を大幅に上回る存在との戦闘が、彼の心を大きく鍛えたからだ。
ステージもよく見え、メンバーたちの顔もしっかりと認識できている!視界に曇りも無ければ狭まってもいない!
そしてドラムを叩く耶倶矢がスティックを叩きながら合図を出す!
「クク………奏でようでは無いか、此奴ら(観客)全員を冥府に誘う死の旋律をッ!」
どこでも厨二病全開な耶倶矢ちゃんを見て、耶倶矢をよく知る人物たちはハハハ!と笑い声が聞こえてきた。それにしても相変わらず物騒な事を平気で言うなと士織ちゃんは思ったが、口に出す事は無かった。
耶倶矢がスティックをカチカチカチッ!と三回叩くと伴奏が始まり、それに合わせて士織がギターを響かせ、夕弦のベースが会場に轟く!そして十香が楽しそうにタンバリンをシャンシャンと鳴らすと、来禅高校の生徒たちがリズム良くサイリウムを振り、合いの手を始める!
そして、伴奏が進むと来禅高校が誇る歌姫――――――凛袮の美しい歌声が会場全体にこだまする!
『―――交わり合う線と 遠く呼びかける空 十字の下で舞う戦慄の声』
凛袮の美しい歌声が響き渡ると、美九の時同様に会場が熱気に包まれて行く!そして次の歌詞からは、楽しそうにタンバリンを鳴らしていた十香までもが、リズミカルに歌詞を口ずさむ!
『―――弱さなど君に見せたくないから』
十香が歌い始めると、凛袮は驚いた表情で十香を見た―――そして、十香はステージの中央で歌う凛袮の所まで走ると―――背中を合わせる!
『『風を受けて 振り切って進め―――』』
ステージで歌う十香と凛袮は、美九同様にリズミカルにポーズを取りながら歌を会場全体に響かせる!
………きっと十香は、凛袮と折紙が歌っていたものを朧げながらに覚えてしまったのだ。
「あいつらッ………上げてくれる!」
気が付けば十香と凛袮のデュエットになってしまっているものの、十香の歌は凛袮にも劣らないほどのレベルで仕上がっていた。
朧げで覚えたものに自分のアレンジを加えて歌う十香の歌は、聴こえてくる士織ちゃんと八舞ツインズのテンションをブーストして行く!!
『『―――衝動を解き放て! 駆け巡り積もる意志その眼を忘れはしない
記憶を揺らす Draw×Delete 明日に代える今を また輪廻する灯 そっと頬を伝う紅』』
そしてサビに入ると、会場全体が一つになった。来禅高校の生徒だけでなく観客全員を巻き込んでヒートアップ!
今まさに彼女達は『音』を『楽』しんでいるのだから!来禅高校の総合優勝をとると言う重荷も、美九に勝たなければならないという責任も、頭の外へとほっぽり出して!!
そして曲はさらに進んで行く!しかし、彼らの演奏は衰える事なく会場のボルテージを維持したまま最後のメロディーへと突入する!
『『―――不確かな永遠と希望重ねたら めぐる想い胸にそっと触れた―――』』
観客のサイリウムは激しく振られ、合いの手もどんどん激しくなっていく!五人とも光る雫を飛ばしながら、最後の瞬間まで各々の役割を果たし続ける!
『『―――衝動を解き放て!駆け巡り積もる意志 その眼を忘れはしない
記憶を揺らす Draw×Delete 光に立ち向かおう さぁ 戦いの幕開け そっと胸に伝う紅』』
彼女達の頭の中は、一つの感情が支配していた。
―――楽しい!
――――――楽しい!
―――――――――楽しいッ!!
そして曲は最後の一節へと入る!
『『―――そう 絶対負けられない』』
そして最後の伴奏を奏でると―――曲は終了した。曲が終わり、士織ちゃんがギターを肩にかけて、マイクで声を届ける!
「ありがとうございました!!」
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
士織ちゃんが感謝の意を示すように手を振ると、インカム関係なしに拍手と大歓声が巻き起こり、それはステージを震わせるほどに凄まじく、それを聞いたステージにいた全員が笑顔になった。
「シドー!」「士道ッ!」
「おうッ!」
眩い笑顔で十香と凛袮が駆け寄ってきて、士織ちゃんが両手を挙げると、二人ともパチン!と叩きつけてきた。
士織ちゃん達の演奏は、会場を一つにした。
どもども、勇者の挑戦です。
最後のバンド演奏なのですが、美九編二話でやった『My Treasure』同様に、何かしたいなと思っておりましてアニメDxD(一期)のOP『Trip -innocent of D-』を選曲しましたが、これは本当に悩みました。
美九に人間の団結を証明するためにアイマスの『The world is all one』や、凛袮の声優(花澤香菜さん)の持ち歌、アニメデアラの一期、二期のOPなどなど色々考えましたが―――どうでしょうか?
正直これに関しては正解が分かっておりませんが、私はバンド演奏とした以上選曲に誤りはなかったと思っています。
感想及び意見等あれば是非、お聞かせ願いたいです!
ドライグ先生の次回予告
ドライグ『ステージ部門での対決も終わり、いよいよ一日目の各部門での成績発表が始まった。果たして、相棒達は〈ディーヴァ〉こと誘宵美九擁する竜胆寺女学院に勝利する事はできるのか!?
次回 デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜
九話「波乱の表彰式!!」
精霊に愛されし女帝よ、勝者となれ―――絶対読んでくれよなッ!』
士織「カカロットやめぃ!」