デート•ア•ライブ 〜転生の赤龍帝〜   作:勇者の挑戦

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デートの内容も原作とはある程度変更をしていこうと思っています。

とりあえずここでもシリアスだけでなく、所々ギャグを挟んでいきたいと思っています。
仲を深めるには、笑いが絶対に必須ですからね!




六話 デートを楽しみます!

「シドー、このお店は一体なんだ!?―――なんだ!?なんだああああああ!!」

 

十香はとあるお店のガラスに顔をくっつけ、自分の吐息でガラスが曇るほど中の商品に夢中になっていた。

このお店は士道たち来禅高校に通う生徒たちの間では、知らない者はいないほど有名なパン屋さんなのだ。

 

「ここはパン屋だよ。十香、どのパンが食べたい?」

 

「―――あのきな粉パンとクリームパンとやらが食べたい!」

 

士道が十香に訊くと、十香は目を輝かせながら士道に答えた。士道はこのパン屋の中できな粉パンとクリームパンを買い、ついでに子供のいたずらとして()()()()()()も一緒に買ってから、十香のところに戻った。

 

「し、しし、し、シドー!………わ、罠ではなかろうな?」

 

十香はヨダレを滝のように流しながら士道が買ってきたパンを見つめていた。

 

「………違うよ。ほら、十香」

 

十香はきな粉パンにパクリと噛み付くと、トビウオが飛び上がるように叫ぶ。

 

「―――う、うまああああああいいいっ!」

 

「そうだろそうだろ!ここのパン屋さんは俺たちの学校に通う奴らの中では知らない者はいないと言われたほどの素晴らしいパン屋さんだ。ほら十香、まだクリームパンと()()()があるぞ」

 

「―――では、その『おまけ』とやらからいただこう」

 

十香は士道の予想とは反して『おまけ』の方から食べようとしたが、士道が十香を止める。

 

「ちょ、ちょ待てよ十香。こっちのクリームパンを食べてから『おまけ』の方が絶対いいって。この『おまけ』がここのパン屋の一押しなんだ。楽しみは最後まで取っておこうぜ」

 

「………うむ、そうだな。シドーがそう言うのならそうしよう」

 

十香はクリームパンを食べても先ほどと同じリアクションをしていた。

―――だが、最後の『おまけ』は他の二つのパンとは根本から異なるものだった。十香は士道が『おまけ』で買ったパンを口にしてしまい………涙目になっていた。

 

「ううっ―――」

 

(………そりゃ涙目になるだろうな!こいつはあのパン屋が有名になった躍進を支えた最強の激辛パン―――()()()()()()()()()()()だ!世界で一番辛いと言われる唐辛子をスパイスにして作られたカレーが中に入っている殺人パンだ!これを食べて叫び声を上げない奴は世界でも数えるほどしか―――)

 

「シドー、このパンは凄いぞ!辛さともちもちが絶妙に絡み合って別次元の旨味を引き出しているのだ!!このパンは最高だ!」

 

―――士道は十香があまりの辛さに泣き叫ぶことを想定していたが、十香はムシャムシャとまるでさっきの二つのパンと同じパンを食べるように食べる。これには士道くん、思わずビックリ!

 

「………ま、マジかよ!?」

 

『ハハハハハ、あてが外れたな相棒。人間と精霊では、辛さに対する耐久力が格段に違うのだろう。相棒、人間は脆弱だな』

 

ドライグは士道の失敗を笑っていた。だが、今度は士道に大きな試練が待ち構えていた………それは―――

 

「ほら、あーん」

 

「あーん!」

 

別のカップルがよくやるあのシーンを十香は興味深そうに見ていた。それを見て十香は士道に視線を向ける。

―――士道は恐怖で青ざめていた。その理由は至極簡単なことだ。それは十香が手に持っているパンにあった。

 

「シドー、あーん!」

 

十香は半分ほど食べたパンを半分にし、士道の口へと殺人パンを近づける。

 

「―――嫌だ!絶対に嫌だ!!」

 

………頑なに士道が否定をすると、十香は今にも泣きそうな顔で士道に訴える。

 

「………そんな!?シドー、私との『あーん』はそこまで嫌なのか!?」

 

『おい相棒、それは紳士として最低だ―――見てみろ、「()()()()()」が泣きそうになっているぞ!このままでいいのか女性を泣かせてしまってもよいのか、相棒!!』

 

ドライグは十香のことをアルトリアと読んで士道の行為に批判を入れる。

琴里もドライグと同じだ。

 

『―――ほらシドー、女の子からの「あーん」を断るなんて最低だわ。ほら、さっさと口にしなさいよ!』

 

―――ここには、どこを探しても士道の味方をしようとするものはいなかった。

士道は覚悟を決め、十香に言う。

 

「―――ああもう!分かったよ!」

 

「本当かシドー!はい、あーん」

 

「………あーん―――――んぎゃあああああああああああ!!」

 

………世の中には、自業自得という言葉があるが、今の士道にとってはこの言葉以外に適切な言葉はなかった。

 

 

 

 

 

―――………

 

 

 

 

 

日が当たらず、人気の少ない路地で士道と十香のデートを尾行する一人の少女がいた。―――鳶一折紙こと、折紙だ。

折紙は栄養価の高いウィダーインゼリーを飲みながら二人の観察を行っていた。折紙は手に持つ端末を確認し、現状を確認していた。

 

「………あの女は精霊の『プリンセス』に違いない。―――けど空間震警報が鳴っていないのはなぜ?」

 

………精霊が地上に現界すれば空間震が起こるのだが、今日は空間震が発生していないのだ。折紙が持っている端末にも、『環境状態、正常』と表示されていた。

―――折紙は上官である燎子一尉に通信を入れる。

 

「―――こちらAST、鳶一折紙一曹。A―0613」

 

折紙は簡潔に用件を述べる。

 

「観測機を一つ、こちらに回して」

 

 

 

 

――◆――

 

 

 

 

 

「………マジで死ぬかと思った。もう止めよう………他人の不幸を笑おうとするのは」

 

士道は自分の行為を心の底から反省していた。

 

「美味しかったなシドー。私はまたあの激辛ハバネロカレーパンを食べたいぞ!」

 

―――十香はいたずらをされたとは微塵もおもっていなかった。

 

「シドー、今度は私はアレが食べたいのだが!」

 

十香は売店のフランクフルトが売っている店に走っていった。士道もそれに合わせてフランクフルトを購入し、十香に手渡す。―――十香はフランクフルトを三本同時に食べていた。

ドライグは十香の食欲に感嘆の声を漏らす。

 

『………本当にいい食べっぷりだな。相棒よりも大食感なのではないかあの小娘?』

 

(………なるほど、だからあんな美乳になると?来禅高校の女子たちも十香の食べっぷりを見習ってどんどん美しい乳を持つ女性へと変貌して貰いたいよ)

 

『―――相棒、着眼点はそこではなかろう………』

 

ドライグは士道のおっぱい好きに困っている様子だった。

十香はフランクフルトを頬張りながら、とある親子のやり取りを目にしていた。

 

―――少年がフライドチキンを食べ終わり、ゴミをゴミ箱に捨てた。そして少年はお母さんと思われる人物のもとへと掛けて行く。

 

「お母さん!ぼくちゃんとゴミを捨てられたよ!」

 

「―――あら、えらいえらい」

 

少年はお母さんに頭を撫でてもらっていて、とても満足そうに笑っていた。―――十香は羨ましいと思ったのか、フランクフルト三本を一瞬で食べ終わり、そのゴミを『燃えるゴミ』と書かれたゴミ箱に捨て、士道に近づき、頭を出す。

 

「―――フン………フン!」

 

十香は鼻で声を出しながら士道に「早く頭を撫でろ」と言わないばかりに髪をくくっているリボンをフリフリと揺らす。士道は恥ずかしそうにしながらも十香の頭を優しく撫でた。

 

「♪」

 

十香はとてもご機嫌だ。だが、士道もどうにかしてデートを盛り上げようと、少ない経験値を生かしながら精一杯努力していた。

 

(―――や、ヤベェ!めっちゃドキってしたぞ―――今日の十香めちゃくちゃ可愛いよ………)

 

『………相棒も一人前になったなぁ。俺が隠居しても相棒は十分やっていけそうだな』

 

………ドライグも士道の頑張りを称えていた。しかし、ドライグもまだまだ頑張らなければならない。士道とドライグはセットで『乳龍帝おっぱいドラゴン』なのだから。

 

「………シドー、デートというものは良いものだな」

 

士道は十香の手を引っ張って宣言する。

 

「こんなものは、まだ序の口さ。さあ行くぞ十香、まだまだ知らない場所にお前を連れてってやるよ!」

 

「うむ!」

 

士道と十香は食べ歩きをしながら街をぶらぶらと歩いた。

 

 

 

―――………

 

 

 

 

『シドー、町の南を目指しなさい。あなたと十香ために面白いアトラクションを用意したわ』

 

士道のインカムに琴里からの通信が入る。士道は怪訝に思い、「町の南側は住宅街じゃなかったのか?」と琴里に返すが、琴里は『騙されたと思って行ってみなさい』と士道に告げた。

 

琴里に指示された通りに南に向かって数キロほど歩くと、なにやらおかしな入り口のような門が立っていた。その門には『ラタトスク』と書かれていた。

住宅街が、祭りの売店のような感じに変わっていたのだ。

 

(………おいおい、まさか俺たちのためにこんなものを用意してくれたのか?)

 

『まあ、「()()()()()」に暴れられて街を破壊されるよりは安くつくと思ってのことだろう。―――俺から言わせてもらえばお金の使い方を間違えているが、相棒たちにとっては有難い仕掛けだな。思いっきり楽しませてもらおうじゃないか』

 

ドライグは十香に『()()()()()』という名前が否定されたことをまだ根に持っているみたいだ。今も『アルトリア』と呼んでいるあたりから察すると、十香は絶対に頷くとドライグは思っていたのだろう。

 

士道が入り口の門を通ると、ファンファーレが鳴り、紙吹雪とクラッカーの音が鳴り響く。

士道と十香の前に祭り服を着た『早過ぎた倦怠期(バットマリッジ)』がベルを鳴らしながら近づいてくる。

 

「おめでとうございます!あなたたちは我が『ラタトスク商店街』の記念すべき十万人目のお客様でございます!本日は特別サービス!なにを食べても全て無料、タダでございます!」

 

(―――無茶苦茶だろ!?)

 

士道は早過ぎた倦怠期(バットマリッジ)』が言っていることに心の中で盛大にツッコむ。それに合わせて売店の店員たちが一斉に『いらっしゃいませ』と挨拶をする。

―――この人たちもラタトスク機関の人たちだ。

 

「シドー、ここは食べ物の宝庫だ!―――あ、アレはまだみたことがないぞ!!」

 

十香は売店に走っていった。士道は十香に一言だけ言う。

 

「いくらでも食べていいぞ十香。タダで食べさせてもらえるんだからさ!」

 

―――士道との食べ歩きでも相当な量の食べ物を食べたにも関わらず、十香はたこ焼きやお好み焼き、ハンバーガーやお寿司などをモリモリ食べていた。

 

『………これからあの小娘の名前は「アルトリア」ではなく、「胃袋ブラックホール」に変えた方が良さそうだな………そういえば、「アルトリア」も空腹王だったな………懐かしいものを思い出させてくれる』

 

ドライグはボサッと自分が語られている地域の昔の伝承を思い出しては耽っていた。

 

一通りの売店を回って次はどうしようかと考えていた時だった。

 

「―――ドー………シドー」

 

士道はなんとか次のプランを真剣に考えていたため、十香の声は聞こえていなかった。

 

「シドー!!」

 

「―――うわッ!?ご、ゴメン十香。ちょっと考え事をしてて………」

 

士道は自分のことで精一杯になっていた。いきなり十香に大声で自分の声を呼ばれたことにびっくりして、十香に謝る。

 

「―――その、シドー………楽しくないか?」

 

「―――ッ!!」

 

士道は十香にいきなり言われて士道は目を見開く。

 

「その………私ばかりが盛り上がってしまっている気がしてな………シドーは私とのデェトは楽しくないか?」

 

パンッ!

 

士道は自分の不甲斐なさに苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、自分の頰を自分の手でひっぱたいた。

 

「―――シドー!?一体どうしたのだ!?」

 

十香が士道を心配して声をかけるが、士道は十香に深く頭を下げる。

 

「………ゴメン!自分のことで精一杯になってた。俺が十香を引っ張ってあげないといけないって思い過ぎててな………。心配かけてゴメン。―――でも、もう大丈夫だ」

 

「シドー………」

 

「十香、今日のデート俺は本当に楽しいんだ。だからもっと楽しいものにしたいと本気で考えてたんだ。でも、それで精一杯になってたらダメだよな………本当にゴメン」

 

「うむ、気にするなシドー。シドーが楽しければそれで良いのだ!」

 

十香は再び笑顔を取り戻してくれた。そして、士道は大きく息を吐いた。少し、肩が軽くしたかったのだろう。

 

「―――なあ十香、あの福引に挑戦してみないか?」

 

「その―――ふくびき?とはなんだ、シドー?」

 

「あのガラガラだよ。アレを一回だけ回して中に入っている玉を出すんだ。―――これは別料金が発生しますか?」

 

士道が福引のお姉さんこと、『藁人形(ネイルノッカー)』椎崎に訊くと、椎崎は「一回だけならタダです」と言った。

士道が十香に福引を回させようとすると、十香が士道の手を握る。

 

「ん?どうした―――なるほど、分かったよ」

 

「うむ!さすが私のシドーだ!」

 

士道と十香は二人で福引を回した。そして―――

 

チリンチリン!チリンチリン!

 

「大当たり!特等です!特等はドリームランド全施設無料ペアチケットがプレゼントされます!」

 

「ま、マジかよ!?ていうかなんだよ!?その『ドリームランド』って!?」

 

『夢の島だな』

 

(そのまま訳してんじゃねえ!!)

 

まさか、士道と十香は福引一回で特賞を当ててしまったらしい。流石に無料で引かせてもらっていきなり特賞を当ててしまうのは、どこか悪いと士道は感じていた。

 

「シドー、早速言ってみようではないか!」

 

「―――ああ、そうだな!」

 

士道と十香は手を繋いでそのドリームランドまで歩いた。

 

 

 

―――………

 

 

 

「―――な、なん………だ、と!?」

 

「おおっ、見てみろシドー!こんなところに城が建っているぞ!」

 

『ドリームランド』と思われる建物に士道と十香は辿り着いた。士道は凍りつき、十香は大はしゃぎだ。

………これも作戦と思われるのだろうが、士道はここが何をする建物なのかは、すぐに理解できた。

『休憩四千円、宿泊八千円』と書かれた看板があり、その横に今さっき作りましたと言わないばかりの『ここにデートの真髄あり』と書かれた小さな木でできた看板もその横に建てられていた。こんなものがあれば、何も知らない無垢な十香を誘導するには充分すぎる代物だった。

―――そう、ここはR18の愛を育むホテルだったのだ。

 

『………相棒、気張れよ!念願の童貞を卒業するところは、俺もしっかりと見届けてやるからな!』

 

ドライグは士道が大人になる姿をしかと見届けるつもりらしい。

 

「………さあ、仲の良いお二方、心ゆくまでお楽しみ下さい!」

 

ラタトスク機関の職員の一人が普通に呟く。そこに『早過ぎた倦怠期(バットマリッジ)』こと川越が士道の耳に囁いた。

 

(………さあ、士道くん!男を見せる時だ!)

 

ところが囁いた川越とは違い、士道は川越の胸ぐらを掴んで宙に浮かす。

 

「ざけんな!アンタこの小説のタイトルを『セ◯クス•ア•ライブ』に変更する気か!?」

 

………もう川越は囁くことはせず、そのまま大胆に告げた。

 

「何を言っているのかね、士道くん!全国約四千万人のアダルティの皆様はこの展開を望んで―――」

 

「ねえよ!!」

 

士道は川越を真っ向から否定した。十香はこの建物を見て、目を輝かせていた。

 

「シドー、ここに入ろう!私にデェトの真髄を教えてくれ!」

 

―――十香は入る気満々だ。………だが、士道は十香の手を引っ張って別の場所に移動しようとする。

 

「………十香、また今度にしないか―――いや、俺も本当は入りたいんだけど、今日はやめておこう!」

 

「なぜだシドー?私とデェトの真髄だ!デェトの―――!!」

 

「―――また今度必ず行ってやるから、な?」

 

とにかくなかなかこの場を動こうとしなかった十香を士道は強引に引っ張って移動させた。

 

 

 

―――その頃の『フラクシナス』③

 

 

 

「さすがシドーね。相変わらず期待を裏切らないわねぇ………」

 

琴里は士道のチキンっぷりに頭を抱えていた。令音は琴里に言う。

 

「………きちんと段階を踏むあたりはシンらしいじゃないか。………まあ、シンもまんざらではなかったのだろうけどね。心拍数が大幅に跳ね上がっていたし、鼻の下も伸ばしていた」

 

―――令音は見るところはしっかりと見ていた。そこに神無月が熱い詩を歌う。

 

「………『童貞』それは男の子にとって重要なステータス。童貞であることは恥じることではない!本当に恥じるべきなのは、『本当に好きな人ができるまで童貞を守り通すことのできない野郎』なのだ!自分の童貞すら守り通せないものに何も守れはしない!!」

 

パチンッ

 

琴里が指を鳴らすと、黒服のSP二人が神無月の両腕を掴んで退出していく。

 

「司令、お慈悲を!お慈悲をおおおおおおおおおお!!!」

 

その時令音が小さくだが、何かをつぶやいた。

 

「………いずれシンの貞操は私が貰う」

 

 

 

 

 

―――その頃の『フラクシナス』③終了

 

 

 

 

 

「うわッ!雨が降るなんて聞いてねえぞ!今日は降水確率は『降矢零』%じゃなかったのかよ!?」

 

『いやいや相棒、だれがうまく言えと言った?』

 

十香をどうにかあの『ドリームランド』から引き離せた士道だったが、予想外の雨に打たれてくだらない親父ギャグを漏らす………そこに変わらずドライグの日本刀並みの鋭いツッコミが冴え渡る。

 

「―――十香、ゲーセンに寄って行こうぜ。雨宿りもできるし、ちょっとやりたいことがあるんだ」

 

「了解した。シドー、それはなんだ?」

 

シドーがやりたかったこと―――それはプリクラだ。二人のデートの記念でどうしても士道が残しておきたかったものなのだ。

―――士道が『兵藤一誠』の時にアーシアや朱乃とデートをした時に自分に残る想い出の保存として必ずやることがこのプリクラだった。

 

「おおっ、シドー見てくれ!文字が書けるぞ!」

 

「―――ああ。こんな感じでいいだろう」

 

士道は十香に機械から出てきたプリクラを渡した。写真の中の一つには、『ずっと一緒』と士道が書いたものもあった。―――士道の気持ちが現れた一枚だった。

 

「………私もシドーとずっと一緒にいられたらいいのだがな」

 

十香はボソリと呟いたが、士道には聞こえていなかった。

 

最後は、きな粉パンのクッションを士道がクレーンゲームで一発でとってあげ、十香にプレゼントした。十香はこの上なく喜んでいて、その時の笑顔は士道にとって最高のお礼として心の中に残った。

 

 

 

 

―――………

 

 

 

士道と十香がゲーセンを出た時には、すでに雨は上がり、空は夕日に染まっていた。

士道と十香は町が見渡せる高台へと移動をした。

 

「おお、絶景だな!」

 

十香は落下防止の柵から身を乗り出し、黄昏の天宮の街並みを眺めていた。

 

「………ここは俺のお気に入りの場所なんだ。何かあって悩んだりしたら、いつもここに来て夕日を眺めたりして心を落ち着かせていたんだ。―――いい場所だろ?」

 

士道は自信を持って十香に言った。士道はよく琴里を連れてここに遊びに来ていた。いずれは仲の良くなった女性とここに来たいと思っていたのだ。

 

「シドー!あれはどのように変形するのだ!?」

 

十香が遠くを走る電車に指をさして、目を輝かせながら士道に訊く。

 

「―――変形はしないかな?………まあ、連結はするかな」

 

「おお、合体タイプなのだな!」

 

十香は士道の言葉を興味深く聞いていた。………今度は士道が十香に話を切り出した。

 

「………十香、今日はどうだった?―――楽しかった………か?」

 

士道が訊くと、十香はこれ以上ない満面の笑みで答える。

 

「ああ、最高に楽しかったぞ、シドー!」

 

「―――ッ!!………そうか」

 

士道は溢れ出そうになった感情を強引に抑え込んだ。………十香の目の前で涙を流さないと決めていたのだ。

………だが、十香は少しだけ寂しそうな表情をしながら士道に言う。

 

「………あんなにも多くの人間が私に優しくしてくれた。世界がこんなにも優しく、綺麗だなんて………思いもしなかった。………だから―――」

 

十香は顔を上げ、笑顔を作って士道に告げる。

 

「シドー。私は………この世界には不要らしい」

 

「っ………!!」

 

シドーは十香の言葉に返す言葉が詰まった。十香の笑顔は、まるで生きている感じがまるでない死人のような作られた笑顔だったからだ。

………だから士道は拳を強く握り、ひときわ大きな声で十香を怒鳴った。

 

「―――そんな悲しいこと言うなよッ!!」

 

「………シドー?」

 

いきなり士道が声を荒げたことに十香は反応に困っていた。だが、士道は止まることなく自分の想いを伝えた。

 

「お前のことを不要だなんて思っている人間はいない!どうしてそんな悲しいことを平気で言うんだよッ………」

 

「シドーは何もわかっていない!私のせいで一体どれだけの美しいものが壊されてきたかシドーもわかっているはずだ!!だからこんな………誰の利益にもならない私のような存在は―――」

 

「―――ここにいるだろ!!お前と………『十香』と一緒にいたいと思っている人間がお前の目の前にいるじゃねえか!!」

 

「………っ!!」

 

士道の言葉に今度は十香が言葉を詰まらせた。士道は自分中の想いを十香に伝える。

 

「………今日は空間震が発生していないじゃないか。………それはつまり、『お前が向こうの世界に帰って、こちらの世界に戻って来なければ』空間震は起きないってことじゃねえか。―――だったらずっとこの世界に居ればいいだけのことじゃねえか」

 

「だが、それは私の意思ではどうにも………それにそんなことが可能になるはずが―――」

 

十香は信じられないと言わないばかりに表情を陰らせていたが、士道は間髪入れずに十香に言う。

 

「―――俺を頼ればいいじゃねえか、十香。俺と十香はもう友達だ。お互いに困っている時は頼り合う………それが『友達』だ。いくらでも迷惑をかけてもいい。俺が全て解決してやる!―――だから十香………『私は不要だ』なんてそんな悲しいことを言うなよ」

 

「………そんなことを言ってくれるのはシドーだけだぞ。メカメカ団や他の人間もこんな危険な存在が自分たちの生活空間にいれば、嫌に決まっている」

 

士道は思っていた。『こんなに他人想いの優しい少女に救いがないことは絶対に間違っている』………と。だから士道は十香を強く見つめて言う。

 

「………他の人間や、ASTの連中なんざ無視して構わねえ!関係のねえ部外者どもが十香のことを否定しても、俺がそいつら以上に十香のことを肯定してやる!!」

 

士道は十香に手を差し出した。十香の肩が小さく震えていた。

 

「俺の手を取れ十香。………お前はこの世界にいてもいい―――いや、いなければならないんだ。………俺と一緒にいてくれないか、十香?」

 

陰らせていた十香の表情はどんどん明るくなっていき、十香は士道が伸ばすてを取ろうと手を伸ばす。

 

「シドー………ッ!」

 

だが、十香が士道の手を取ろうとした時、士道は突然十香を庇うようにして突き飛ばす。

そして士道は―――大量の血を地面に広げながら地面に力なく倒れこんだ。

 

「な、何をするのだ!?」

 

十香は突き飛ばした士道を見て、何が起こったのかが理解できなかった。倒れた士道を見て十香は足を進めるが

 

「―――シドー?」

 

十香の呼び声に士道は答えることはなかった。

 

 




次回で一章は終わりです!

次回「友達、助けます!」

ドライグ『Welsh Dragon Over Booster!!!!!!!』





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