光が目の中に入ってすごく痛い中、僕はいまだに状況をつかめていない。
なんか近くに大きな壁画あるけど、誰この人。 なんか、見ただけ宗教の神ぽいっ立ち位置ということは分かる。
まぁ、そんなことはどうでもよくて。
どうやら、僕たちは大きな広場にいるらしい。滑らかな白い石作りの建築物のようで、彫刻が彫られた巨大な柱に支えられ、天井はドーム状になっている。 僕は宗教については詳しくないが、ドラマとかで見る所謂聖堂というところなのだろう。 その広間の最奥あたりに僕たちはいるらしく、なんか周りよりも少し高い位置にいる。 これはあれかな、崇めたてられるやつ。 ほらっ、神様のご登場だ。 崇めよ讃えよそしてひれ伏せ! …………バカバカしくなってきた。
先ほどからチラチラと見えてはいたが、教室にいた生徒全員がこの状況に巻き込まれたらしい。 さらに、僕たちを囲うように配置されている、あの変な人達。 アレだ。 たくさんの先生に怒られるときの状況に似ている。にしても不気味だね。30人近くの人達に祈りを捧げられる光景って。 どこの宗教かな。 正直急に拉致られたあげく、こんな意味不明な人達に囲まれているんだ。 訴えてやる。 そんなことを思っている中、いかにもその集団のトップといわんばかりの格好をした人が僕たちの前に出てきた。 なるほど、こいつを訴えればいいのか。 あと、その持っている錫杖うるさい。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてその同胞の皆様。 歓迎しますぞ。 私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。 以後宜しくお願い致しますぞ」
そういった、イシュタルと名乗ったこの人は好々爺然と微笑を見せた。
めっちゃ、胡散くさそうな人だと思った。
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現在、僕たちは場所を移り、10メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通された。 ハリー・ポッ○ーで見たような気がする。 晩餐会会場みたいだ。
白崎さん、八重樫さん、天之川君、坂上君の4人組と畑山先生が座って、その4人組の取り巻きの順に座っている。 僕とハジメ君は後ろの方だ。
「ハジメ君ハジメ君。 前の方に行かないの? 白崎さんの隣とか超おすすめ」
「え、遠慮しておくよ。 この場だと、殺気と視線がセットでついてきそうだしね」
「そう。 それは残念だ」
「それにしても、浅利君凄く落ち着いてられるね。 僕には何がなんだか」
「ん? そう見えるのか。 うーん、僕も内心結構焦っているんだよ。 ここはどんなどころか、何をされるのか、なんて考えがずっと止まらない。 もしかしたら、殺されるかもしれないしね」
「こ、殺されるって、いくらなんでもそこまでするかなぁ……」
「いやいや、まだ知らないことばかりなんだ。 用心はした方がいいんだよ」
ハジメ君とそんな話をしていた。 おそらくだけど、ハジメ君はこの状況をある程度察しがついているのではないのだろうか。 話がスムーズに進んでいるし、何よりこの状況でも、近くのメイドさんを見ていたからだ。 なんやかんやいってそういったことに対してはしっかりしている。 僕? 僕はいいかな。 だって、この人について知らないからね。周りというか前の男子たちもメイドさんを見ていた。 そして、それを見ていた女子の目が冷たかった。液体窒素並だね。 見られるだけで凍りそう。
「ッ⁈」
「どうしたの?」
「いや、なにかものすごい悪寒を感じたから」
「じゃあ、前の方見て。 原因が分かるから」
ゆっくり、ハジメ君が顔を前に向けるとそこには満面の笑み浮かべた白崎さんがジッと見ていた。 ハジメ君はこちらを見て
「何あれ」
「あれはきっと悪魔の類だよ」
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あの人話長すぎ……まだ、校長先生の方が短かったよ。
半ば寝かけてしまったが、話の要約はこう。
この世界は、トータスと言われており、ここには大きく3種族がいる。 人間属、魔人族、亜人族である。
この内、人間族と魔人族が何百年も戦争していて、魔人族は人間に数では負けているが個人の力が大きく、人間族はその力の差を数で補ってきたらしい。 戦争は拮抗していて、ここ数10年大規模な戦争は起きていないが、最近、異常事態が多発しているという。それが魔人族による魔物の使役。
魔物とは、通常の野生動物が魔力を取り入れ変質した異形のことだ、と言われている。この世界の人々も正確な魔物の生体は分かっていないらしい。それぞれ強力な種族固有の魔法が使えるらしく強力で凶悪な害獣とのことだ。
今まで本能のまま活動する彼等を使役できる者はほとんど居なかった。使役できても、せいぜい一、二匹程度だという。その常識が覆されたのである。これの意味するところは、人間族側の“数”というアドバンテージが崩れたということ。つまり、人間族は滅びの危機を迎えているのだ。
長い。 長すぎる。 こんなのハジメ君と確かめながら聞かなかったら、分からなかったよ。 テストより長いし。
で、僕たちを召喚したのはエヒトという神らしく、このままでは人間族が滅んでしまう。 それを回避するために僕たちが呼ばれたらしい。 僕たちはこの世界より上位であり、例外なく強力な力を持っているから、その力を使って魔人族を打倒して人間族を救ってくれということ。
正直身勝手だと思った。 僕たちが無理やり召喚されることは100万歩譲って、魔人族の打倒ということに。 これでは、バランスが崩れてしまう。 むこうが力がつけたからこちらはさらに強力な力で圧倒しようみたいな。 何より、そんな脅威がきたから、僕たちを召喚した? なんで、今なんだ? 戦争するぐらいなんだ。 人間族を守るためだったら、もっと早くに対処すればいいものを何百年と経ち今になって人間族が危ないから? 人間族が危ないのは今に始まったことではないだろう。 なにはともあれその説明を聞いた僕は納得できなかった。
さらにここにもう1人納得できない人が
「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることは唯の誘拐ですよ!」
生徒のために言ったのにまわりあの反応はほんわかした気持ちでイシュタルさんに食ってかかる畑山先生を眺められていた。 憐れ。
「お気持ちはお察しします。 …………しかし、あなた方の帰還は現状は不可能です」
場が先ほどまでとは打って変わる。 重たく冷たい空気を身に感じる。 皆、なにを言っているのか分からないという表情でイシュタルさんを見ていた。 なんとまぁ、間抜けな顔している。 携帯が手元にあったら写真に収めているね。
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」
まぁ、もうだいたい察したから早々に切り上げて寝たい。
「一旦落ち着いてください先生。 僕たちを呼んだのはエヒト様。 つまり、彼らじゃない。 だから、帰れない。 そういうことですよね?」
「あぁ、そこの方が言われた通り。 我らは異世界に干渉する魔法を持っていませんし、使えません。 あなた方の帰還はエヒト様しだいということです」
「そ、そんな……」
「うそだろ? 帰れないってなんだよ」
「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」
「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」
わぁ、凄いこれが阿鼻叫喚ってやつ? 初めて見たね。 それにしても本当にハジメ君の反応は微妙だな。 そして、パニック中の中、バンッという音が鳴り響いてパニックは収まる。 音が鳴った方を見ると天之川君が立ち上がっていた。 そして、自分に視線が集まったのを確認したのを確認すると話始めた。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無碍にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
ギュッと握り拳を作りそう宣言した天之川君の歯が無駄にキラッて光ったような気がした。
パニックに陥っていた人たちは彼の宣言に感化され、だんだんと活気と冷静さを取り戻したみたいだ。
「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな。……俺もやるぜ?」
「龍太郎……」
「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど……私もやるわ」
「雫……」
「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」
「香織……」
ほらっ、少なくとも流れに乗ってしまったのが3人。 さらにどんどんその人数は増していき、クラス全員でみたいな雰囲気の完成。 ここで拒否すれば、戦わなくて済むかもなのに。 えっ? 僕? 参加するよ? これは人生の転機だと思うからね。
少なくともこれからはむこうよりも波乱万丈になるんだろうね。