頂きを夢見るイカ   作:オーレリア

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今回は、前回から大分時間軸を飛ばしております。

正直、これ以上オリジナルで話を考えるのは自分の無い頭では難しいと判断しました。
唯、何か思い付いたら閑話として作るかもしれません。

そんな感じですが宜しければどうぞお読みください。



第12話

 景色が凄まじい勢いで通り過ぎていく

 

 コンクリートで出来たビルに匹敵する巨大な柱が乱立し不規則に倒れ、まるで不格好な巨大アスレチックのような形相の中を人型の物体が二つ、まるでビデオを何倍にも早送りにしているかのように高速で飛び回っていた。

 

 

 片方は障害物の合間を縫うように、若しくは滑るかのように最小限の動きで飛び回っている。常人では目で追うことすらできない速度であるが、飛んでいる本人はまるでそれが当然とばかりに余裕がある動きだ。

 そして時折、もう片方の飛行するものに向かって、背中に生えた体を覆うほどの巨大な一対の翼から羽らしきものをいくつも射出していた。

 

 

 もう片方は反対に忙しないと表現すればいいだろうか。高速で飛んでいる為に同じく高速で迫ってくる巨大な柱などを時に直角に曲がり、また時には凄まじい速度でバックして再度加速することで回避する。その様はまるで跳ね回るスーパーボールの如く空中を縦横無尽に飛び回っていた。

 

 それだけでなく、四方八方から同じように高速で迫ってくる羽も躱しつつ、打ち落とすべく身体から空気砲の様な衝撃波を飛ばした。背後から迫る羽に右手を背後に回し、小さく散弾のようにバラけさせて飛ばす、上空から先回りしようとする羽を左の触腕を上に向け狙撃し、撃ち落とす。複数の方向から同時に迫ってきた場合は出力を絞らずに放出し、広範囲に暴風を撒き散らすことで周りの羽を吹き飛ばす。

 

 

 当然、空中という不安定な場所そんなことを何度も繰り返してしまえば身体が吹き飛び、体勢を崩し、そのまま地面にダイビングしてしまうものである。

 しかし、そうなる前に、攻撃に用いていた空気を身体の各部位から噴出させ姿勢を制御していた。

 

 

 戦況は羽を生やした人物の方が優勢だった。

 

 瞬間的な加速力では衝撃波を放っている人物の方が若干上回っているが、四方八方あらゆる方向から羽が迫って来るために、攻撃の糸口が掴めないでいた。

 時折、隙を見ては羽を持つ人物に向かって攻撃をしているが、相手は単発的な攻撃だからか簡単にのらりくらりと避けてしまっている。

 どうにか攻撃のチャンスが巡ってこないか探り続けてはいるものの、現状その対処だけで精一杯であった。

 

 

 

 しばらく応酬が続き、羽を生やした人物が柱の陰に入った。それは一瞬の事であるが、この状況を打破する千載一遇のチャンスだとこの時は思った。

 罠である、若しくは誘導されている可能性は勿論考えていた。しかし、それ以上にこの機会を逃す方が不味いと考えた。

 

 

ーーならば今まで一度も出していない高威力の技で意表を突くしかない!

 

 

 そう考えるやいなや、即座に長い触腕を後ろに向け、片手を柱の陰に隠れているであろう人物に向けた。 

 勿論この時点では、羽に対する迎撃を行っていないため、そんな事をすれば周囲から羽が殺到してくる。

 

 だが、今は気にしていられないとそのまま体勢を変えずに今この場所で出せる最高威力の衝撃波を放った。

 

 

 それは側にあった周りの柱ごと吹き飛ばすほどの威力があった。

 姿勢を保つ為に全身からも衝撃波を発していた為に、周囲から迫っていた羽は諸とも吹き飛んだ。

 前方に向けて放った衝撃は途中にある柱を崩れる音すら響かせること無く、まるで横から押し潰すかのようにへし折り、砕き、吹き飛ばした。

 そして同時に羽の人物が隠れているであろう柱も同様に吹き飛んでいた。

 

 

 

 強大な攻撃を放った事で広範囲にパラパラと舞っている瓦礫や砂埃に紛れて直ぐに身を隠し、荒れている呼吸を整え、息を潜める。あれで倒せたと思う様な楽観的な考えはしていないし、出来る訳がない。何しろ相手は現時点の自分より格上だ。

 その為、何があっても直ぐに次に繋げられるように行動する必要があった。

 

 

 

 砂埃が収まった事で露になった光景は凄惨足るものだった。

 

 恐らく余波だったのだろう場所にある柱は軒並みへし折れ、倒れている。攻撃の中心地だった場所は、まるでクレーターを横に引き伸ばしたかの様なと思える程に綺麗にくり貫かれていた。

 

 

ーー周りの様子を見ても特に動いてる様には見えない。千切れた羽が地面に落ちているだけ。

 

 

ーー一部無事な羽があるが、動く様子は無い。しかし、ブラフの可能性がある。警戒は続けよう。

 

 

 この光景を作り出した張本人は、そう考えながら周りを注意深く観察していた。

 そして、しばらくしても何の動きも見られないことに痺れを切らして、そろそろ別の場所に隠れる為に行動に移そうとした時。

 

 

 ひたり…と首筋に何かが当てられたのを感じた。

 

 

 突然の感触に一瞬ビクッと驚き、視線を下にずらすと、大きな羽が首もとに添えられているのが見えた。 

 

 

「いやー、さっきの攻撃は危なかった!お気に入りのゴーグルが割れちゃったよ。

 でも最後のあれは市街地じゃ使いどころが難しいからあんまりお勧めしないよ。彩人君?」

 

 

 掛けられた言葉に今度は首ごと視線を後ろに向けると、先程まで自分が探していた人物がそこにいた。

 巨大な翼を背中に生やしたその人物は、先程自己申告した通り、額に着けたゴーグルも半分以上が割れていた。その他、所々服が破れ翼の羽も幾らか千切れている。

 

 

「はい、分かってはいたんですが、範囲が狭い攻撃ですとほぼ間違いなく避けてましたよね?『ホークス』さん」

 

 

「はっは、さーてどうだかなー」

 

 

 彩人に忠告した人物…ヒーロー『ホークス』に彩人は質問を含めて返すとホークスは身体に着いた砂埃を払いながら、惚けるような返事をした。

 

 

 ウィングヒーロー『ホークス』

 18歳で早くも自分の事務所を建て、その年にはヒーローランキングでトップ10にランクインした人物である。

 誰もが順々に段階を踏んでいく中で、誰よりも早く独立、活躍していっていることから、彼自身の『個性』も相まって彼は周りから『速すぎる男』とも言われている。

 

 そして彼の『個性』は『豪翼』

 大きな翼の一枚一枚の羽をを自分の腕の様に空中に射出、遠隔操作出来、攻撃や救助にも用いることが出来る。

 但し、あくまで羽のため耐久力の高い相手だとあまりダメージが見込めない。

 勿論翼で飛ぶ事も出来、その速さは並み居る『個性』の中でも最上位に近い所に位置している。

 

 

「それに、いくら空中での高速戦闘に慣れてないからって、あんな無駄の大きい動きは駄目だよ?

 君の『個性』は許容量があるタイプなんだから、幾ら君の容量が多くても無駄は省くべきだ。

 撹乱にはなると思うけど、やり過ぎると相手が君の動きに慣れてしまうからね。

 特に僕みたいな高速戦闘するタイプ相手では尚更だよ」

 

 

 ホークスの尤もな発言に彩人は頷いた。ホークスに言われた通りの動きが出来ないわけではなかったが、先の戦闘では、あらゆる方向からくる攻撃の対処に追われ、雑な動きになってしまっていた。

 

 

「はい、肝に命じます。…それで、もう一度お相手をお願いしても良いでしょうか」

 

 

「良いよ良いよ。次からはそれプラスさっき以上の全方位からの攻撃にも対処出来る様になるのを期待するよ。

 それに、ここまでの高速戦闘は中々出来ないからね。俺並みに速い『個性』持ちが居るって話を聞いた時は半信半疑だったけど…、いや本当にホントに速い、お陰でこっちも良い訓練になるよ」

 

 

 答えたホークスの表情は嬉しそうだった。ホークスに匹敵するスピードを持つ者は、居ない訳ではないが非常に少ない。その為、同じ速度に迫れる者との訓練は貴重だった。

 

 じゃあ、今すぐに始めようか、とホークスが言ったがそれに彩人は待ったを掛けた。

 

 

「ちょっと待ってください。一度、ここの柱を新しく作ります」

 

 

 彩人がそう発言して直ぐに彩人の身体の色が変化した。黒に染まっていた頭の触手が白に染まり、目の虹彩も同じく黒から白に近い色に変化した。

 

 

 そして腕を地面に向け掌から、さっきまでの空気砲では無く、今度は白色の液体が噴出した。

 それは一見、接着剤のボンドの様にドロリとしているが、地面に着くと同時に固まり、噴出する量と固まる速度や角度等を絶妙に調節する事で、あっという間に訓練する前に有ったビルの様な巨大な四角い柱を造り上げる。

 そして一本造り上げたそばから次の柱を造り、僅か15分足らずで色は違うが、先程までに有った数十本の柱で出来たアスレチックが再現された。

 

 

「出来ました。コンクリートよりは固いので勝手は違いますが、やはりこの訓練するには障害物はあった方が良いでしょう」

 

 

 地面に塗った灰色に近いインクに潜り、インクを補充した彩人が汗を拭う動作をしながらホークスに話しかけた。

 

 

 その様子を見ていたホークスは感心するような表情をしながら返事をした。

 

 

「おー、話には聞いてたけど、こりゃまた便利な個性だ。それに君は雄英志望だったよね?君の能力なら活躍するだろうからネームバリューも申し分無い。

 どうだい、ヒーロー資格を取ったらウチの事務所に来ないかい?」

 

 

 ホークスの突然の勧誘に彩人は驚いたが直ぐに申し訳なさそうに返答した。

 

 

「誘って下さるのは嬉しいのですが、僕はもっと経験と知識を積んでからと考えているんです。

 せめて高校を卒業してからでないと決められないです」

 

 

「そっかそっか、じゃあ仕方ないね。でも気が変わったらいつでも連絡して良いよ。

 じゃあ、時間が勿体ないから続きやろっか」

 

 

 断られたホークスは少し残念そうな顔をしたが、特に気を悪くした様子もなく、あっさりと引き下がった。

 特に深い理由があったからではない。便利な個性だし、相棒(サイドキック)に来てくれたら良いな、位の気持ちで誘ったからだ。

 

 そしてホークスが促す事で再び戦闘訓練は再開された。

 

 

 これは彩人が15歳、中学3年生になったばかりの時の話である。

 




読了有り難う御座います。

 話数を重ねれば重ねるほど小説を書く難しさを実感しております。世の作者様方はこれを良く書け続けられるものだと頭が下がる思いです。

 こんな風にした方が良いという指摘等ございましたら是非お願い致します。
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