それと八百万百は主人公が居ることである程度変化が起こっております。
後、お気に入り登録、そして過分な高評価に感想有り難う御座います。
※読み直したら気になる所が多々見付かったので、8/6に内容を加筆、修正致しました。
冷たい風が吹いている。
既に2月も半ばを過ぎ、木々も新しい葉をつける準備を終え、もうしばらくすれば春が到来するのだが、それを感じさせない寒さが空を支配していた。
そんな季節でも、関係無いとばかりに学校の校舎内では、学生達は机に齧り付き、必死にペンを走らせ、教材に目を通して勉強に集中していた。いや今は受験が近い時期だ。寧ろ、今だからこそ学生達は追い込みに入っている。それ故に学生達には皆焦りの表情が浮かんでいる。
そんな中、
「あんなに頑張っていた彩人さんを差し置いて、私だけが雄英高校に推薦されたのは申し訳無いですわ…」
成績上では互角でしたのに…と呟いた女性は、長い黒髪をポニーテールにしている八百万百だった。
彼女は以前と比べて大きく成長していた。身長は同じ女性と比べても高く、それでいて身長の高さを感じさせないバランスの良い整った体格になっている。
それだけではなく、女性としても大きく成長していた。スラリと長い足に、細いウエスト。そして大きく膨らんでいる胸部、ややつり目がかっているが非常に整った顔つきも合わさり、中学生にして既に多くの女性が羨み、男性達が魅力的に感じるであろう容貌に成長していた。
それを証明するかのように彼女が今居る教室に入ったことで、勉強に励んでいた男子生徒達からは熱い視線が送られ、一部の女子生徒達からは感嘆するかのような溜め息が吐き出された。
「仕方ないよ。雄英高校は全国から推薦希望者が来るんだ。余りにも人数が多いから、より厳正な審査をしやすくするために各校一名迄って決まってるからね。…面接とか書類審査とか大変な事になると思うし。
それに僕は百さんと比べると生徒会や部活動に入っていた訳じゃないから内申点がそこまで良くなかったし、妥当な結果だと思うよ」
もう少し学校の事も考えれば良かったよ、と首を横に振り、現在は頭の赤い触手を揺らしながら答えたのは、人間と烏賊の要素が混ざった様な姿をした
髪の毛の替わりになっている背中程の長さの細めの4本の触手と、頭の横にある膝よりも長く、自分の腕以上の太さを持つ大きな触腕、横に尖った耳に目の周りを覆う隈取り、パッチリした大きめの眼、活発な印象を与える八重歯。幼い頃から中性的若しくは女性的な可愛らしい顔立ちだったのだが、男性ホルモンがあまり働いていないのか成長した現在に至っても男性的な姿には見えにくい。
寧ろ、顔立ちに合った撫で肩気味の細い体つきと、凡そ150cm程の同年代の男子中学生と比べると小さい背丈が合わさって、より女性的に見えるようになってしまっていた。
「それに努力してたのは百さんも一緒だよ。何年も一緒にヒーローを目指して勉強や訓練してたんだよ?
お互いに頑張ってたのは知ってるんだからさ、百さんの合格を喜ぶ事はあれど、申し訳無く思う必要は無いよ。
それだったら僕が合格するように応援してくれた方が嬉しいかな?」
彩人が言った言葉は本心から出たものだった。幼い頃から二人で勉強を教え合い、身体トレーニングに『個性』を使った模擬戦闘。お互いに時間が合えばその何れかを行い、お互いにアドバイスを送ったりしていた。
百もヒーローになるべく必死に努力しているのを知ってるからこそ何の忌避も無く今の言葉を言えたのだ。
「…確かにその通りですわね。でしたらこうしては居られませんわ!早速試験に向けて勉強致しましょう。私も微力ながら協力しますわ!」
「うん、勿論お願いするよ」
彩人の言葉に立ち直った百は口許を結び、両手を身体の前で握り締めた。先の百の発言の通り、今は彩人以上に張り切っているようだ。
「でしたら先ずは苦手な所…か…ら」
「…?どうしたの百さん?」
しかし、突如張り切っていた筈の百は話している内に言葉が淀み、小さくなってしまった。心なしかポニーテールも縮んでしまっている様にも感じる。
その様子を訝しんだ彩人は首を傾げながら百に話し掛けた。普段しっかりしている百が急にこんな様子になるのは珍しかったからだ。
「そう言えば、彩人さんに苦手な科目って有りましたでしょうか?」
「え…?…あぁそう言えば得意な科目は有っても苦手なのって特には無かったね」
そういうのはお互いに真っ先に勉強して無くしていってたし、と彩人が百に言葉を返した。
「全国模試に関しても僕達で1~2位を争っていたから、恐らく勉強に関しては今の調子で行けばあまり問題無いかもね」
百は『個性』の訓練も兼ねた膨大な勉強量、彩人は優秀な教師陣による恵まれた環境の中での指導。
二人は方向性は違えども学習面では他の学生達よりも大きなアドバンテージがあった。
その為今まで学校では小学校の頃から殆ど満点を取り、お互いが同率1位か、若しくはケアレスミス等で1位と2位を争った事しか無かった。競争相手が百と彩人の二人しか居なかったのだ。
そんな彼らが幼い頃から競うだけでなくお互いに指導し合った結果、今回の話題では裏目に出てしまっていた。
「どう致しましょう…?試験範囲では教えられることがありませんわ」
さっきまでの勢いは何処に行ったのか百は目元を伏せ、すっかり意気消沈してしまった。
その様子を見て、これはまずいと彩人が慌てて助け船を出した。
「…そうだ!だったら歴史なんてどうかな?世界大戦の色んな将軍達の戦略や戦術を勉強すれば、その武将や生きた時代についても理解が深まるし、もしかしたら雄英高校での試験の実技でも役に立つかもしれない」
「!良いですわね!そう致しましょう」
その言葉を聞いた百は今度は反対に花が咲いたかのようのな笑顔を見せる。
それから二人は試験に向けて一緒に勉強に取り組み始めた。
ーーああ、やっぱり彩人さんとこうしているのが一番落ち着きますわ。
百は視線を横にやり、複数の教材を見比べながら勉強している彩人の横顔を見る。その表情は真剣そのものであり、どんな些細なことでも自分の糧にしようと言う意思が感じられた。
ーー他の殿方は彩人さんの事を女々しいや男らしくないと仰っている方も居ますが、私から見れば彩人さん程に落ち着いても努力もしていないのによくそんなことを言えますわ。
高い能力と向上心を持つ百に、肉体面でも頭脳面でもついていく事が出来る同年代の人間は希である。競える相手となれば希少性は更に増す。もし、彩人が居なかったとしても百は自分一人だけでも己を高めた事だろう。しかし、ついていけない周りの人間は百の事を自然と住む世界が違うと認識し、離れ、近寄りがたく感じてしまっていただろう。
それは彩人という競いあえる他人がいたことで周囲の人間と交遊関係を築く余裕が生まれ、周りから親しみやすく思われるようになった。
そのお陰か小学校高学年に入るようになってから平均以上に身体の成長が著しくなり、女性としての魅力が増していった百は他の異性達から良く告白されるようになった、中学校に入ってからはその傾向はより強くなっている。
しかし、男子生徒は殆どは、百の顔か大きく成長している胸、腰つきといった身体的特徴ばかりを見て告白してくるものばかりであった。特に親しくもない顔と名前くらいしか知らない人物に、突然人気のないところに呼び出され、興奮で荒くなった鼻息、血走らせた目で自身の身体を厭らしく見やりながら告白される。
百にとってそれは、非常に嫌悪感を催す出来事であったのだが、それ以上に我慢ならなかったのが告白を断った時、若しくは告白する際の男子生徒達の台詞に含まれていた。
それは、百と最も親しく仲が良い幼馴染みである彩人に対する嫉妬による侮辱ともとれるものが大半であった。見た目が女に見える彩人より男らしい自分の方が良い、と言う者が多くを占めていたが、中には彩人が異形型である事を言及し自分の方が百の相手に相応しい、と誇らしげに言うものもいた。
それには理由があった。男子生徒達が百に告白しようとすれば、同性以上に仲の良い唯一の異性である彩人の存在が邪魔になる。実際に百が告白を断る際の理由の一つになっているのだから当然である。百自身に、異性の友人は彩人を除いて殆ど居ない。
近寄る異性の大半が下心を持っていた為、そういった輩は忌避していたからだ。
つまり、男子生徒達はそこまで親しくない百に、彩人以上に魅力的な男性であると積極的にアピールする必要があった。しかし、アピールするにも殆どの男子生徒では学力、身体能力、家柄、人脈全てが高い水準で揃っている彩人に遥かに見劣りしてしまう。
そんな中で、唯一勝てると思えたのが、彩人の異形型で且つ女性的な見た目だけだった為に、アピールするのに利用したのだ。
勿論そんな事を許す筈が無く、男達に百は真っ向から反論した。十年近く一緒に過ごしてきた自分を差し置いて特に親しくもない者が彩人の何を理解しているのか、と。
殆どの告白してきた生徒はこの言葉だけですごすごと退散していった。それでも引かない者には、もはや加減しなかった。徹底的に感情的になっている相手の言葉に対して理路整然と正論で返し、ぐぅの音も出ないほどに言葉で叩き潰した。
そうしているうちに、今では告白されることは未だあれど彩人に対する侮辱を混じらせるようなものはいなくなっている。
余談では有るが、そういった経緯があったお陰か、今ではこういった他人に相談しにくい事を百に相談する女子生徒が増えていた。
ーーそれにしても彩人さんは私の事をそういう目で見てくれませんわね。他の殿方から告白されることから私に女性としての魅力が無い訳ではないと思うのですが
ふと疑問に思い、徐に身体を彩人にくっつかない程度に近づけてみた。百の長い髪の毛がふぁさりと彩人の頭の触手に優しく触れる。小学生までは当たり前だった距離であったが母親に人前では、はしたないからお止めなさいと言われてから最近では殆どしなくなった距離感だ。
突然の行動に驚いて彩人は振り向いたが、百に離れる気が無いことを表情から悟ると直ぐに机に向かい直した。
それを見た男子生徒達は羨ましそうな視線を向け、特に反応した様子もない彩人に更に物量を伴いそうな程の嫉妬にまみれた視線を乗せる。因みに女子生徒達は百の行動にワクワクと楽しそうに、次に彩人の反応に残念そうな同情の視線を飛ばし、そして男子生徒達の様子を見て侮蔑の視線を送っていた。
ーー他の殿方達と違ってがっついた所が無いのは普段は良い事なのですが、もう少し意識して下さっても良いのですよ?
今の行動は誰にでもやっているわけではない。異性処か同性の友人にもしない行動だ。しかし、あまり意に介した様子の無い彩人の反応に百は少しばかりショックを受けた。
ーー私以上に親しい女性が居ないことは私の情報網からも間違いないはずですけれども…
因みに情報源は、他の女子グループと烏墨、八百万両家の母達女性陣から得ている。
ーー一体どうすれば良いのでしょう……?彩人さんの体温が上がっている?……あら、今度は色が緑に変わりましたわ。一体どうしたのでしょう?
唐突に、百が偶々触れていた彩人の後ろの触手から体温が上昇したのを感じ取った。(元々インクの中でも基礎温度が高く、衝撃と振動によって温度が上昇する赤のインク)今の彩人は対して動いているわけでなかったのに、だ。
覗き混んでみたが特に表情の変化などは見られなかった。
彩人が普段インクを変化させる事事態は対して珍しい事ではなった。問いかけるほどではないと思ったが、しかし変化させた状況が少しばかり不自然に感じたため百は首を傾げるのだった。
ーー危なかった。百さんは違和感を感じているみたいだけど何とか誤魔化せたみたいだ。
隣で百と共に試験に向けて勉強していた彩人は内心ほっとしていた。はた目では見えないが彩人の掌はじっとりと汗が湿り、心臓の鼓動ががバクバクと高鳴っている。体温が上がった理由は、血の替わりを果たしている赤のインクが極度の緊張状態から早く流れてしまった結果である。
ーー急に一体どうしたんだろうか?昔ならともかく最近は人前でこんなことしなくなったのに
ーーそれに百さんは最近はますます女性として魅力的になってるからそういうことされると凄く辛いんだけどなぁ。
百は彩人が気にしていないと思っていたようだがそんなことは無い。実際は彩人も成長著しい百のことを気にし始めていた。唯、表面上では出さないようにしていただけである。
ーーでも百さんは男子の目を凄く気にしてるから我慢しないと。
彩人の変化に百が気づくことが出来なかったのは、百が男子からの性的な視線を気に始めるようになってから。
その頃から彩人も精神的に成長し男として異性を、特に最も親しい女性である百を意識するようになっていた。しかし、ここで理性が待ったをかけた。
彩人は男性が異性を性的に気にするのは自然なことであると考えている。唯、周りの男子生徒達を見て、あからさまに女性を性的な目で見るのには強い抵抗感を覚えたのだ。
なまじ見た目と態度が落ち着いていて中性的であることで、普段男子達より女子生徒達と距離が近いことも影響している。女子達からよく愚痴られるのだ、男子の視線が変わり始めて不快感や恐怖感を感じると。
特に百はその傾向が強かった。身体が成長し、周りの女子達より発育が良かったことで多くの男子達から嫌らしい目で見られるようになっている。その事が辛いと百に相談されたことさえあった。そんな状態の家族以外で最も親しい親友に、自分も他の男子生徒と同じ反応等出来るわけが無かった。
その時から彩人は自分だけでも百にはそういう目を向けないように、若しくは気づいて不快感を与えないように出来る限り理性で押さえようとする様になった。思春期男子である彩人には凄く難しい事であったが。
ーーそのお陰か、精神的な距離感は昔の様に近いままなのは良かったけど。
ーーでも、百さん僕が男だって分かってるのかなぁ。他の親しい女子達より距離が近い気がするんだけど。
ーーもしかして本当に僕は男として見られてないんだろうか?百さんの男女感は凄く厳しい筈だし。そうだったらちょっと嫌だなぁ
因みに百が彩人にしたことは、異性はおろか仲の良い同性にも殆どしたことがなかった。
その事は分かっていたがそれが自分に対して同性の様に扱われた結果なのか、それともそこまで親しい異性として扱われたからなのか判断出来なかった彩人は悶々とした状態のまま百と勉強を続け、あまり頭に入らなかった事を少し後悔しながら夜に自宅にて百とやった部分を復習し直して一日を終えたのだった。
読了有り難う御座います。
恋愛描写を書いてますがこれで良いのか未だに良く分かっておりません。
そして次回から漸く原作に入ります。
本当は3、4話位で原作入りするつもりだったのですがこんな話が必要かなと思ったらこうなってしまいました。