後編は明日辺りに投稿する予定ですので、それまでお待ち頂ければと思います。
後、この様な稚拙な小説に高評価、お気に入り登録をして下さり、誠に有り難う御座います。
2月26日
この日全国で最も多くの卒業間近の中学生達がとある高校に多大な緊張感を伴い集まっていた。
世界人口の八割以上、超人社会と呼ばれるほどに超常の力『個性』を持つ人間が多くいるこの社会では、誰しもが自らの『個性』を生かし身を呈して人々を救う職業『ヒーロー』に夢を見て、憧れている。
だからこそそのヒーローを育成、養成する学校は最も人気が多い。今では多くの学校にヒーロー自らが教鞭を振るい、ヒーローの卵達を育成する学科、『ヒーロー科』が多く点在するようになった程である。
そのヒーロー科の卒業生の中でも最も多くのトップヒーローと呼ばれる者達を輩出している高校こそが『国立雄英高校』である。勿論トップヒーロー達を何人も輩出するだけあってその受験難易度も全国屈指と言えるほどに難しい。
何せその中でも『国立雄英高校ヒーロー科』は今年度の偏差値は79、倍率に至っては驚異の300倍を超える。合格人数がたったの36人に対して受験者の人数は一万人を優に超えているのだ。余りにも難しく、合格に至るまでの道は狭く壁は厚い、しかし、憧れから記念受験する者も後を絶たない程に人気のある高校であった。
そして現在そんな国立雄英高校に一人の少年が足を踏み入れた。
ーー漸くこの日を迎えることが出来た。この日が僕にとっての重要な分岐点...。
中学校の制服と襟にモコモコの付いた濃い緑のダッフルコートに身を包んだ少年...烏墨彩人は気合いを入れ直すかのように背中に背負っていた少し小さいガスボンベの様な物体を背負い直した。同時に手に持っている筆記用具とあるものが入った鞄と眼の光彩と表側がオレンジに染まっている特徴的な大きな触手達も揺れた。
「…?…えっ、何あれ?ガスボンベ?」
「あれ相当重いだろ」
「…つーか良く見たらアイツあの顔で男なのか」
周りの受験生にも異形型はいる為姿そのものは皆然程気にするものではなかったが、背中に背負う程あからさまに大きな道具を持ち込んでいる彩人の様子を見た受験生達は驚いたように二度見し、顔を見た者は女性的な風貌なのに着ている制服は男子生徒に気付き、あの見た目で男である事に更に驚いていた。
ーーそれにしても話にも聞いていたし資料でも見たけど町の中なのに本当に高校にしては異常に大きいな...下手な大学よりも大きいし敷地の広さでは農業系の学校以上じゃないかな。
そんな反応される事は分かっていた彩人は周りの反応を受け流しつつ自分がいるところを見渡し、頭の中にある見取り図を思い出し驚いていた。周りを隔てる厚く高い壁とまるで巨大なゲートのような校門に、正面から見るとそれ以上に大きな『H』の形に見えるガラス張りのビルのような校舎、更に多数の監視カメラとセンサーの類いが所々見受けられる。見渡せば見渡すほどに如何に国がヒーローを育成することに力を注いでいるのかが伺えた。
ーー先生達は僕の事は合格する可能性は高いと太鼓判を押してくれたけど油断は出来ない。確かに僕は他の人に恵まれているけど僕以上に努力して僕以上に優れた人だっているはず。現に僕以上に汎用性が高い百さんがここに合格しているんだ。他に優れた人が居ないなんて絶対にあり得ない。
家族や先生達、それに一緒に雄英に行こうと言った百さんの期待に答えるためにも全力で挑まなきゃ。
改めて自分に克を入れた彩人は校舎に向けて再び歩き出した。その足取りにブレは無く、堂々としいていて迷い等欠片も見られなかった。
『本日は俺のライブへようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
筆記試験が滞りなく終わり、試験会場である半分円形になっている講堂の教壇の上でどこか振り切れたかの様なハイテンションで受験生達に話し掛けているのは、オールバックにした髪の毛を後ろから天高く逆立たせ首にスピーカーを着けている人物、ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だ。ラジオ等に出演している彼の話は高いテンションも合間って非常に高い人気を誇っている。
テレビやラジオであれば次の瞬間に『Yokosoo!!!』と返答してくれていただろうが、しかしここは最難関高校の試験会場。真剣に試験に挑もうとする受験生達に、気を緩めて呑気に返答が出来るほどの余裕がある生徒は殆どいなかった。はりつめた空気の中で緊張感を少しほぐしてやろうという気持ちも有ったのだろうが盛大に滑ってしまっている。受験生としてはこれは縁起が悪いのではないだろうか。
ーーあのスピーカー多分大音量の声の指向性を高めるためにも使われているんだろうけど、その代わりかなり首を回し辛そうだ。近距離の戦闘の仕方が気になるなぁ。それに足元とかはどうやって見るんだろうか?
但し彩人はこの間、有名であるが故に知っているプレゼント・マイクの『個性』とその見た目による戦力分析をしていた。
なお彩人はプレゼント・マイクの事を知ってはいたがラジオを友人経由でしか聞いた事がなかった為、先程の問い掛けにどう返答すれば良いか純粋に分からなかった。知っていてもあの空気の中では後が怖そうなので出来なかっただろうが。
『こいつはシヴィー!!じゃあ受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!』
『YEAHHH!!!』という掛け声と共に説明された内容はこうだ。
・各ブロック分けされている『模擬市街地演習場』にて制限時間10分間で行われる
・目的は市街地に現れる三種の仮想敵の行動不能、方法は問わない
・倒した仮想敵によって貰えるポイントが違い、その合計値を競う
・実技試験での持ち込みは基本的に自由である
・他人への攻撃等の道徳的に反する行為は禁止
と言うものである。
事前に持ち込みが可能であると伝えられると同時に、実技試験では戦闘が絡んだ内容が有ると説明を受けていたが、プレゼント・マイクの説明を受けた彩人の中では疑問が膨れ上がってくるのを感じた。
ーーヒーローを育成する学校の中でも最高峰と謳われる雄英高校が戦闘面だけで合否を決めるのはおかしい。確かに強さも大事だけどヒーローを育てるならそれと同時にその人の資質も見る筈...。もしかして説明してないだけで他にも採点基準がある?
「...質問宜しいでしょうか?」
だとしたらその採点基準は、と彩人が考えた所で制服を殆どの乱れもなくきっちり着こなした、メガネを掛けた生真面目そうな受験生がプレゼント・マイクに質問を投げ掛けたことで一時中断されることとなった。
「資料には四種の敵と記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき恥態!!我々受験者は規範となるヒーローの御指導を求めてこの場に座しているのです!!」
確かにメガネを掛けた受験者の言う通りプレゼント・マイクは三種と言っていたが渡された資料には四種類の仮想敵の写真が載っていた。
次にその受験者は「ついでにそこの縮毛の君!!」と自分の近くの席に指差した。指差した方に目を向けるとそこには確かに突然自分を指された事でビックリしたのだろう、驚いた表情をした緑がかった黒髪が縮れている、そばかすの付いた気の弱そうな少年が座っていた。
「先程からボソボソと気が散る!!物見遊山のつもりで来たのなら即刻ここから去りたまえ!!」
ハキハキとした大声で話している彼を、遠い端の席で見聞きしていた彩人は彼はかなりの真面目な人物なのだなと感じた。遠くでも良く見える視力を持つ彩人には彼の睫毛の一本一本もくっきりと見えている。
そんな彩人が見た彼の表情には純粋に怒りの感情が見てとれた。真剣に試験に望んでいるが故に注意したのだろう。メガネの彼の目ははっきりと、注意している少年の目を見て話していたのも信憑性を上げていた。
唯、少々真面目すぎる嫌いがありそうだ。本当に迷惑行為をしたのであれば庇うことが出来ないが、状況も相俟って非常に居たたまれない気持ちをソバカスの受験生は感じているのだろうなと、実際に両手で口を閉じ萎縮してしまっている彼を見て少し同情した。
プレゼント・マイクは空気を変える意味合いを含ませつつ彼をなだめながら先程の質問に答えた。それは倒しても一切のポイントが入らない仮想敵、例えるならばスーパーマリオブラザーズのドッスンのようなお邪魔虫とも形容出来る敵である、それが各会場に一体ずつ存在すると。
その説明を受けて彩人は考えた。プレゼント・マイクの例えたゲームは有名なため知っていたが、やったことがないため詳しくは知らない。しかし、敵を避け倒しつつ進むゲームであるとだけは知っている。敵を避けても良いゲームなのに態々お邪魔虫と例えた。つまり避けざるを得ない程の敵、寧ろ災害ポジションの仮想敵なのでないかと考え付いた辺りでプレゼント・マイクは話を締めくくった。
『最後にリスナー諸君にわが校の校訓をプレゼントしよう』
『かの英雄ナポレオン=ボナパルトはこう名言を残した。「真の英雄は人生の不幸を乗り越えて行く者」であると!!』
『"Plus Ultra"!!それでは皆さん良い受難を!!』
読了有り難う御座います。
次回は強個性の主人公が無双するという在り来たりな描写が多々御座います。苦手な方はお気を付け下さい。