頂きを夢見るイカ   作:オーレリア

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お待たせ致しました。

正直に言います。やり過ぎました。
しかし、幾ら手加減されていたとはいえ、ホークスを出してしまったのでこれ位はしないと無理があ…りますよね?

それと今作品初のSplatoon技が出ます。少しだけですが。

更に主人公の居る会場には、原作キャラは居なかったとさせて頂きます。

この様な稚拙な小説に高評価とお気に入り登録して頂き有り難う御座います。

後、態々誤字報告等もして頂き感謝しております。


第15話

 講堂から外に出て、バスに乗り暫く移動した所に『模擬市街地演習場』はあった。

それはまるで、十階建て近い高層ビルが立ち並ぶ区画一帯を切り取ったかのような場所であった。

 

 

「なんじゃこりゃぁ!!」

 

「町だ!町そのものが再現されてる!!」

 

「こんなものが会場として幾つもあんのかよ。雄英スゲェ!」

 

 この光景を見た受験生達の反応は様々だったが、等しく町が舞台そのものであることと、それを会場として複数を当たり前のように用意する雄英に皆驚いていた。

 

 

「よいしょっと...」

 

 バスの先頭に座っていた人たちが先に降り、目の前の光景に驚いている時に最後尾に座っていた彩人が、頭の黒い触手を揺らしつつ、ボンベの様なものを背負いながら降りてきた。降りた瞬間に小さくズンと音をたてて足が地面にめり込む。元々空の状態でも重かったのだが、バスで移動中にボンベにインクを補充していた為に更に重くなってしまっていた。

 

 

「おいおいあいつ見ろよ」

 

「あんな重いもん背負ってちゃ、ろくに走れないんじゃないか?」

 

「敵を早く見つけて倒した数を競うんだぞ。増強型に見える様なナリじゃ無いから相当不利だろうに」

 

「と言うかバスにいた時と頭の色が変わってるがなんの意味があるんだ?」

 

 こりゃ競争相手が一人減ったも同然だな。と誰かが喋った直後にその時が来た。

 

 

『ハイ、スタートー!』

 

 プレゼント・マイクの声が後方のやや上の方から響いたと同時に、同じく後方から強烈な風が吹き荒れた。

 

 一体何だと、受験生達が振り返った。その時、何人かが先程まで後ろに居た筈の、足をめり込ませるほどに重そうなボンベを背負った受験生の姿が何処にも無いのに気付く。

 

 続いて、疑問に感じながらも声がした方向へ皆が一斉に目を向けた。

 

 

『どうしたぁ!!実践じゃあ誰も態々カウントなんざしねぇんだよ!!』

 

『賽は既に投げられてんぞ!!』

 

 

 プレゼント・マイクの言葉で漸く実技試験が始まっていたことを理解した受験生達は、既に間断無く大きな破砕音が連続して響き渡っている演習場へ、それぞれが周りを押し退けるかの様に一斉に走り出した。その中でも何人かの彩人が居なくなった事に気付いた受験生達は特に焦りが大きかった。

 

ーー姿がないあの受験生が始まったと同時に何らかの『個性』を使って既に会場入りし、仮想敵と戦っている可能性が...いや実際に戦っているのだろう。先程から間断無く響いているこの破砕音が何よりの証拠だ。

 

 だとしたら既に獲得しているであろうポイント数は...と一人の受験生が考えたところで頭を振り、思考を止めた。今はそれを考えるより体を少しでも動かしてポイントを獲得するのが先決だと判断し、会場に走っていった。

 

 

 

 

 

 上空より2体居たミサイルポッドを背中に生やした仮想敵に衝撃波を叩き込む。試験用に作られたものだからか、その仮想敵は地面ごと押し潰され、ぺしゃんこになって完全に沈黙した。攻撃した直後に即座に移動し、続いて集団で居た首長竜の形をした四脚の仮想敵と足に車輪が取り付けられている仮想敵の群れの背後に回る。

 

 気付かれる前に一体の仮想敵に片方の触腕を貼り付け、体からインクを噴射させ、仮想敵ごと勢い良く振り回す。そのまま貼り付けている部分から、離す瞬間にインクを噴射させる事で遠心力と合わせて威力を上げ、集団を巻き込むように投げ飛ばした。

 

 吹き飛び、ぶつかった仮想敵達は悉くビルの壁に叩き付けられ、バラバラに砕け散る。先程までにロボットだったものがコード類や部品が剥き出しにされ、正にスクラップと言えるものに変容してしまった。

 

 

ーーやっぱり脆い。高校入学試験だからかも知れないけどそれでも脆すぎる。

 

 周辺に仮想敵が見当たらなくなったことを確認したら即座に演習場全体を見渡せる上空まで飛び上がり、序でに屋上や窓越しに見えた仮想敵を吹き飛ばし、破壊する。そして次に近くに居る仮想敵の集団を見つけ次第急降下、上空から強襲、全滅させる。他の受験生達が、試験が既に始まっている事に気付き、会場に走って入って来るまでにこの一連の行動は既に何度か繰り返されていた。その上、倒した仮想敵は疾うの昔に二桁を越えている。

 

 何度も上空での索敵、強襲、移動を繰り返している内に、恐らく数少ない移動能力に優れている個性持ちであろう受験生とかち合った事があった。しかし、移動能力に優れた個性は得てして範囲、攻撃能力に乏しいものが多い。応用すれば克服出来る者も居るが、今回は幸いそういった者と会うことは無かった。その為、かち合った時はその受験生が一体を倒そうとしている間に周辺の仮想敵を全滅させ、直ぐ様移動していた。

 

 

 そしてこの連続強襲は他の受験生が移動に時間の掛かる演習場の奥からでは無く、入り口付近から奥へ奥へと演習場全域を移動する様に行っていた。

 

 

 元より手加減されていたとはいえヒーロートップクラスの速度で飛び回れるウイングヒーロー”ホークス”に匹敵する加速力と迫る程の高速移動能力に、強力な攻撃能力まで有する黒のインクである。常人では視界に捉える事すら出来ないだろう。今は重いボンベを背負っているが、訓練で似たようなことをよくやっていた彩人にとっては大した支障も無い。

 

 高速で移動する手段を持たない者では、場に到着する頃には既に殆どの仮想敵が全滅し、鉄屑や残骸と化し散らばっている。その上それが何処に行っても続いている。正に悪夢のような光景が出来上がりつつあった。

 

 

 

 

ーー良し、これでかなりの撃破ポイントは獲得した筈。それに時間もまだ半分以上の余裕がある。後は有る可能性が高いもうひとつの採点基準のポイントの獲得だけど...

 

 演習場のほぼ全域を回り終えた彩人は一度受験生が多く居るエリアのビル屋上に降りて辺りを良く観察した。開けた広場になっている所を見下ろしてみるとやはり殆どの仮想敵を狩り尽くしていたからか、恐らくビル内部に配置されていたのであろう数少ない仮想敵を巡って、お互いに押し退けあってでも倒そうと躍起になっている様子が見えた。

 

ーーやっぱり、攻撃力がそこまで強くない個性持ちでも簡単に仮想敵を倒している。この分だと下手をしなくてもある程度の身体能力があれば工夫すれば倒せる位には弱いみたいだ。

 

 受験生達が押し退け合いながらも仮想敵を問題なく倒しているのを見て、彩人はほんの少しだけ思考を巡らせることに集中した。

 

ーー本当に戦闘能力だけを見ているならばこの仮想敵は耐久、移動、攻撃力、プログラム、全ての面で弱すぎる。これは想像通り別の採点基準が有ると見て良い筈。だとするとその内容は...ヒーローらしい採点基準と考えると”この状況でも競争相手である他人に対してどの様に対応するか”って所かな?

 

 案外そう間違ってないんじゃないかと考えた彩人は、自らの考えを実行に移すべくビルから飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

「目標発見!!ぶっ殺っ...」

 

「へっ?!...うわぁ!!」

 

 一体の仮想敵がビルの角から出会い頭に突如現れ、偶々側に居た一人の男子学生に襲いかかる。彼は探すために全力で走っていた為に突然の事に対応できず、驚いた事も相まって反応が遅れてしまった。その上最悪なことに近くには他の受験生が誰も居なかった。

 

ーー攻撃される...!

 

 『個性』を発動する余裕もなく、彼は恐怖で目を閉じてしまった。その瞬間パァン!と大きな破裂音とバシャン!と液体を打ち付けた様な音がほぼ同時に鳴る。

 

 本来であればその目を閉じる行為は悪手も良い所であったが、しかし何時まで経っても攻撃された衝撃と痛みがやってこない。それに状況に不釣り合いな音がしたのもおかしかった。不思議に思い目を開けると、そこには機体をバチバチとスパークさせながら倒れ込んだ仮想敵の姿があった。

 立ち上がって良く見ると背中に当たる部分には黄色い液体が掛かっており、そこから電気が出ているように見える。

 

 

「た、助かった...?何が起こった?」

 

 誰が助けてくれたのか周りを見渡すも近くには誰も居ない。誰かが遠距離攻撃したのかと周辺に居る受験生を見てみるもそのような『個性』を持った人間は見える範囲にも居なかった。

 

「いや、そんな事よりポイントを取らなくちゃ...。ちくしょうっ!、このまま0ポイントで終わるなんて冗談じゃない!!」

 

 不思議に思ったが直ぐに今は試験中であることを思いだし、誰かに助けられたことを頭の片隅に追いやった。只でさえ、誰かに大量に掻っ攫われて少なくなっているポイントを少しでも稼ぐべく仮想敵を探しに全力で駆け出した。

 

 

 

 

ーー良かった。助けられただけじゃなく、運良く敵ポイントも稼げたぞ

 

 一石二鳥だ、と考えながら、仮想敵に攻撃されそうになっている受験生を助けた彩人は再び上空に移動していた。上手く行ったからかその顔に浮かぶ表情はとても機嫌が良さそうだ。

 

 

ーーそれに耐圧、耐電性のボンベと耐電性の風船が漸く役に立った。他の受験生が複数居た場合、衝撃波や瓦礫で巻き込まない為に代わりの攻撃手段として用意してたけど、何でか他の人達のスタートが遅れてたお陰で、巻き込むことを気にせずに大半のポイントが取れたから危うく無駄になる所だった。

 

 

 背中にあるボンベに視線を移す。そのボンベの中身は衝撃や摩擦により大量の電気を発生、帯電する性質を持つ黄色のインクで満たされていた。彩人は背中にあるボンベに黄色のインクを予め満たして置き、大型のポケット部分に入れていた同じく耐電性の風船にボンベのインクを移す。後は出来たインク入り水風船を仮想敵に勢い良くぶつける事で、中に入っているインクが衝撃で大量の電気が発生、仮想敵をショートさせる事で行動不能にしたのだ。

 

 

ーーこの調子で仮想敵を撃破しつつ、危なそうな受験生を救出する方針で行こう。徒労に終わる可能性もあるけどこの経験は無駄にはならない筈。...それにまだ姿を現して無い0ポイントの仮想敵が気掛かりだ。もし、予想通り対処するのが難しい天災ポジションの仮想敵だった場合、救助する事によるポイントの加算はほぼ間違いないかな。 

 

 取り合えず、先ずは行動あるのみ、と次の瞬間には彩人の姿は掻き消え、移動した痕跡である強風のみが残された。

 

 

 

 

 

 現在、各試験会場内ではまだまだ現れる仮想敵を受験生達が競い会うように倒しあっている。しかし、とある会場だけが、全く違う異様な事態になっていた。

 

 

「敵は何処だぁぁ!!!」

 

「せめて、せめて1ポイントだけでもっ…!!」

 

「何で半分近く時間残ってんのに見つからねぇんだよぉお!?一体どうなってんだぁぁぁ!!!」

 

 何人かがまるで血を吐くかの様に叫んだ。最早パニックとも言える形相だ。それはそうだろう、彼らは未だにポイントをろくに得ることが出来ていない。その上、0点の者の方が多くいる程なのだから。

 

 

 彼らはこの全国屈指の最難関高校に望むことが出来る程に優秀だ。少なくとも各学校内では成績等で1、2位を争っている者達が大半を占めている。全員では無いかもしれないが、皆学力や『個性』の強さ、両方に自信があった。特にこの実技試験を受ける直前までは、自分が合格を勝ち取るのだと信じて疑わなかった程に。

 

 

 そんな気持ちで挑んだ演習場内には、動いている仮想敵が全くと言えるほどに居なかった。既に試験開始から数分は経過しているの筈なのに、である。このままでは何も出来ず不合格になるという思考が脳裏にチラついているのか、皆焦りが頂点に達している。必死で、全力で、最早がむしゃらと言えるほどに走り回り、目をこれでもかと思う程に凝らしていた。しかし、いくら探しても見つからない。見付かるのは仮想敵らしき鉄屑と化した残骸ばかりである。今は、遇にビル内から飛び出した仮想敵を即座に取り合うように倒すのみとなってしまっている。時間そのものはまだ余裕があるのにも関わらずだ。

 最早、受験生達はこの寒空の中で自分の体が汗みずくになっている事にも気付いていない。

 

 その様な状況では当然自分の事で頭が埋め尽くされ、他人の事など頭の片隅に置く事すら出来ないだろう。だからこそ、仮想敵が見つかった時には倒そうとする人達の波に押し流され、転んで踏み潰されそうになる人が続出する。

 或いは危険を侵してでも仮想敵を探そうと、崩れそうな瓦礫の山を登ろうとしては転げ落ち、怪我を負いそうになる者も居た。

 

 それを彩人が救助、安全な所に移動させている。助けた人の中には、この状況の元凶を察していた受験生に睨まれることもあった。事実、この状況になったのは自分のせいであるので、その時は何か言われる前に逃げるように素早く離れている。

 

 

ーー救助してはいるんだけど、やっている事は限り無くマッチポンプに近いんだよね…

 

 阿鼻叫喚とも言える様子に申し訳なさや罪悪感が湧いたが、今は試験中だと頭を振り、この事については思考するのは直ぐに止めた。既に後の祭りだからだ。

 

 

 そして彩人が再び移動を開始しようとした時、それは起きた。

 

 

 まるで巨大な何かかが動いたかの様な大きな地響きが聞こえた。下の様子を覗いてみると、あまりの揺れから受験生達はバランスを取ろうと揺れに抵抗している様な動きをして居るのが見える。空中に居たからか音でしか分からなかったが、どうやら相当な揺れのようだ。

 

 一体何だ、と彩人が現在居る場所からさらに全体を見渡せるほどに高度を上げた所で、それを漸く確認できた。

 

 

 

 

 それは鋼鉄で出来た数十メートルにも及ぶ巨大な怪獣、若しくは巨大な建造物に手足や関節をつけた様とでも形容できる姿だった。

 

 一歩踏みしめるだけでも地面を踏み砕き、地響きを響かせ、クレーターを作った。隣にあった建造物に手を添え、掴もうとした。唯それだけでその建造物は角砂糖が崩れるように容易く破壊された。

 

 もし、あれと正面からまともに戦うならば、振り下ろされる巨大さに見あった広範囲の攻撃を避けられる、若しくは防ぐ事が出来る手段と、分厚い装甲を突破出来る攻撃手段、他にも色々あるだろうが最低でもそれだけの事が出来る強力な『個性』が必要だろう。

 

 正に、常人ごときがどんな些細な抵抗等しても無意味である、と視覚で叩きつけてくる天災と呼べる程に脅威に満ちた仮想敵だった。

 

 

「で、出たぁぁ!!」

 

「嘘だろ!?あんなの用意してるとか雄英は正気か!?」

 

「つーか、こっからあれを避けながらポイントを稼げってか!?冗談じゃねぇぞ!!」

 

 その仮想敵を見た受験生達の反応は様々であったが、とった行動はほぼ全員一貫していた。

 

 

 三十六計逃げるにしかず。つまり逃げに徹するより他になかったのである。

 

 

 それも仕方ないだろう。ここにいる全員十代前半の学生だ。これ程の事態に陥る程に危険と隣り合わせの生活を送っていたわけでも、軍隊のように不測の事態でも動揺しないためのトレーニングを積んでいたわけでも、ましてや何でも出来ると勘違いしている程に自分の力に自惚れているわけでもないのだから。

 寧ろ自分の力をきちんと理解しているからこそ、撤退しているのである。

 

 

 

ーー一応予想通りではあるけど、流石にここまでするのは予想外だ。最高峰と言われるのに納得せざるを得ない程にめちゃくちゃやるなぁ...。

 

ーーでも幸い、皆広範囲にバラけていたお陰かあの仮想敵の近くにいる人は居ないようで良かった。それとパニック状態だったのが、あのあからさまに巨大な仮想敵を見て、我に返ってくれたのも良かった。あのままだったらどうなっていたことか...。

 

 その仮想敵と逃げている受験生達の一部始終を見ていた彩人は、大暴れして町を破壊している巨大仮想敵に対して受験生達の無事な様子を見て一安心していた。もしもの時は救出するつもりだったからだ。

 

 

ーーインク残量はまだ十分以上にある。問題は無い

 

 自分の状態を一度、細部まで確認する。特に問題となる箇所は見当たらなかった。強いて言えば耐電性の風船とボンベの中身が想定以上に余りすぎているくらいである。

 

 

ーーさて、本来なら確かに倒す意味は全く無い、0ポイント敵だけど...

 

 巨大仮想敵の近くの屋上に降り立った彩人は、『個性』を行使した。何時もの事であるが、行使する際に体内に意識を向けたせいかドクンッと心臓が何時もより大きく跳ねたような気がした。そして、心臓から血管を巡り、末端の触手や手足の指先等の体全体に順々に行き渡るように変化していく、若しくは体が作り変えられるかの様な独特の感覚が彩人の体内を支配していった。そして数秒も経たずに見た目では分からなかった変化が外見にも表れた。

 

 変化自体はそう多くは無い。真っ黒だった光彩が鮮やかな赤色に染まり、人で言えば髪の毛に当たる頭の表側の触手部分が同じく赤色に変化した。

 

 

ーーもし、あれ程の強大な敵を損害を抑えつつ倒せたら、それを評価しないヒーロー科が本当にあるのかな....?

 

 

 体の変化を終えた彩人は直ぐ様巨大仮想敵に向かって、ビルの屋上から空中に赤色の帯を作りつつ跳躍した。

 

 

 

 

 

 

 巨大仮想敵は無作為に暴れるようにはプログラムされていない。他の通常の仮想敵と同じく、近くにいる受験生に近づき、攻撃するように命令されている。

 

 

 現在、近くには受験生が居ない。大きいわりに遅い足のせいで近づく前に逃げられているからだ。そのお陰で受験生達はパニックを起こすことなく離れている。

 

 しかし、大きい体のお陰でビルの上から見下ろす事が出来るので、見失うこと無くゆっくりと追い詰めるように移動していた。巨大な怪獣が自分目掛けてゆっくりと確実に迫ってくる光景は映画のワンシーンの様であるが、現実で起こっていればそれは恐怖その物だろう。事実、迫ってくる仮想敵を見て何名かの受験生達は顔を青ざめさせている。

 

 

「…?、何だあれ?」

 

 このままでは何れ追い詰められるんじゃ...。と思考がちらつき始めた時、巨大仮想敵に遠目で赤いなにかが飛来していくのが見えた。

 

 

 そして巨大仮想敵を見ていた受験生全員は呆然と次に起こった光景を眺めることになった。

 

 

 

 

 

 

 

ーー先ずは小手調べ

 

 仮想敵の頭上より上を飛んでいる彩人は右腕の拳を強く握りしめ、頭上高く振り上げた。

 

 次に振り上げた拳に大量のインクを体全体から集め圧縮していく。更に圧縮したインクに高速回転を加える。高密度に圧縮されているからか、右腕が赤くインク化し始めているが構うことなく圧縮を続ける。

 

 そして圧縮を終えた彩人は、落下による勢いを利用して仮想敵の頭目掛け、その拳を振り下ろした。

 

 

 それは、彩人に近い存在が人間の代わりに支配しているとある世界で、「スーパーチャクチ」と呼ばれている必殺技に酷似していた。

 

 

 

 

 外から見たその様子は凄まじいものであった。

 

 仮想敵の頭上に赤い帯を作りながら何か飛んできたかと思えば、着弾と同時に赤い大爆発を起こしたのだ。

 

 着弾した衝撃で頭部分を大きく凹ませ、足が地面にめり込み、仮想敵の動きを封じた。爆発は回転に合わせ球体を描く様に広がり、仮想敵をその凄まじい回転の勢いで表面の装甲をガリガリと剥がし削り取る。最終的に、着弾した頭だけでなく、猫背に近い体勢だった仮想敵の背中全体迄もが真っ赤に塗り潰された。

 

 赤く染まった仮想敵は動きを止め、地響きを鳴らしながらうつ伏せになるかの様に倒れ込む。良く見ると、赤い液体が付着している部分からジュウジュウと焼けるような音を立てながら熔け始めている。

 

 更に驚くべきはそれほどの爆発を起こしたというのに周囲には、全くといっていいほどにその赤い液体が撒き散らされていなかった。どうやら回転しながら爆発した影響か、爆発が綺麗な半球体の形を保ったまま、外に液体が漏れ出さないようになっていたらしい。

 

 

 周囲が驚きつつも近寄ってみると、熔けて原型を失いつつあった仮想敵の頭上部分から、ゆらりと人の形をした何かが立ち上がったのが見えた。眼を凝らしてみるが仮想敵が出している煙と高温による空気の揺らぎで良く見えない。

 

 暫くすると煙の向こうからその人型は出てきた。身体の一部の色が赤色に変わっているが、見覚えのある人物だった。その顔は女性に見えるが受験生達はここに来る前に、一度更衣室で着替えたため全員彼が男である事を知っていた。

 

 彼は周りが驚くようなことをやって見せたというのに何故か悔しげな表情をしている。

 

 

 彼は煙から出てきて早々。

 

「.....やりすぎた」

 

 

 そんな周りからすれば意味不明な一言を呟いた。

 

 

『終・了~~~!!!!』

 

 

 直後に試験終了のアナウンスが鳴り響いた事で、今年の雄英高校ヒーロー科実技試験は終わりを告げたのだった。




読了有り難う御座います。

漸くSplatoon要素を見た目以外で出せて感無量です。

今作品の実技試験は原作でも発言がありましたが、予め会場に配置するのみで、後から投入出来るのは0ポイント敵だけとさせて頂きました。

その為公式チートの轟等に対抗出来るキャラクターならこうなると思い、描写致しました。
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