頂きを夢見るイカ   作:オーレリア

2 / 18
話が一切進まず申し訳ないです。
それでもこの話が必要だと感じて書きました。

あと私自身医療系の知識がないので明らかな矛盾があると思いますが、指摘されてももしかしたら話の都合上変更ができない場合がございます。

そして今話が今作の最大のご都合展開に…なるといいなぁ…


後こんな小説に感想を書いてくださりありがとうございます。



第2話

気が付いたときは微睡みの中だった。

 

 ザー‥ザー‥という何かが流れる音が響き、他には時折早く又はゆっくりとドクン…ドクン…とリズミカルな音が子守唄として鳴り響く、まるで浮いているかのようなふわふわとした感覚が眠気を誘っていた。

 

 

 

 

 

 変化は唐突で劇的だった。

 

 

 

 

 

 最初は周りの音が変わった。変化は小さく微妙ではあったが本人にとっては急激な変化だった。

 

 

 

 続いて息苦しさが襲った。呼吸するための空気が徐々に減っていくような感覚に初めて死の恐怖が迫っていることを本能的に理解させられた。

 

 

 

 次に起こったのは初めて経験する光だった。未だ目は見えていないながらも黒に塗りつぶされた視界が突如真っ白に染まっていた。

 

 

 

 この時点でこの人物の精神は恐慌状態に陥っていた。微睡みしか知らない者にとって、この自分がいる世界が消えてしまう様に感じる程の急激な変化に、パニックを起こしてしまうのは無理もない話だった。

 

 

 

 最後に起こりかけていた全身を潰されるような圧迫感に襲われた事で恐怖が最高潮に達した。これ以上は耐えられないと本能が叫んだ。

 

 

 ーー怖い

 

 ーー死にたくない

 

 ーー助けて

 

 ーーどうすれば

 

 

 言葉を知っているわけではなかったが、本能若しくは感情的に助けを叫んでいた。

 

 そして、産まれる瞬間からこの状況を打開するために彼『烏墨彩人』は無自覚ながらも自らの『個性』を発動させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に気が付いた時には四角い小さな箱の様なものの中に居た。

 

 先程に感じていた息苦しさ今は無く、しかし唐突に強い寂しさを覚え、その寂しさを紛らわせる何かを求めて動き出した。

 

 その寂しさは母親等の比護してくれる対象を探す行為であったこと事に彼自身は気付いていなかった。

 

 

 

 暫く感触を頼りに探し回っていると硬い何かに囲まれていると気付いた。

 そして上を泳いでみると壁は無かったが覚えのある圧迫感に襲われた。

 再び感じた恐怖に慌てて下に潜った。

 潜ってから暫く経ちは今は安全であると何となく判断したらしい、安心したと同時に眠気が襲い掛かってきたため、彼はそのまま睡魔に身を委ねた。 

 

 

 

 

 

 それから暫くして、自分がいるこの四角い箱の中に何かが入って来たのに気が付いた。 

 その時はまた定期的に貰えるご飯の時間かなと彼は思っていた。

 

 入って来たのは誰かの手だった。

 それはご飯の度に体を水中で支えてもらいながら食べさせて貰っていたため、本来であれば別に珍しいものではなかった。

 

 しかし、今回彼にとっては全くの別物だった。

その手に体を撫でられた途端、強い安堵の感情が沸き上がってきた。彼は思わずその手をひしと(彼にとっては)強く握り締めた。 

 手は彼が握った時少しピクンッと動いたが直ぐにもう1つの手で彼を優しく撫でていた。

 

 

 暫くして名残惜しげに彼を撫でていた手と掴んでいた手は彼から離され、ゆっくりと外に出ようとしていた。

 短い時間ではあったが彼にとってそれは既にかけがえのない大切なものとして認識していた。それが今無くなるのは彼にとっては我慢できるものではなかった。

 直ぐ様追い掛け、手が水面に出た直後に手の指先を掴んだ。

 

 捕まえられた事に彼が喜んだのも束の間、彼の非力な手は滑り落ちた。

 

 

 

 その時彼が感じた喪失感はとても大きなものだった。

 彼は水槽の中で泣いた。液体の中であった為外に声が殆ど漏れ聞こえることはなかったがそれでも今まで以上に泣いていた。

 一頻り泣いた後、泣き疲れて泥の様に眠った。

 

 幼い彼はこの一件で漠然としたものではあったが小さな決意を抱く。

 

 

 ーー離れてしまうなら自分から触って貰いに行こうーー

 

 

 外に対する恐怖は今だあるものの、それ以上の憧れと好奇心が芽生えた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 「申し訳ありませんが烏墨さんそろそろ面会時間が…」

 

 隣に居た看護師に申し訳なさそうに諭され、女性…烏墨彩人の母である烏墨雨美(うずみうみ)は、今だ名残惜しげに自分の息子が居る無菌水槽に伸ばしていた手を引っ込めた。

 息子の容態が安定してきて漸く少しの時間だけなら触れる事が出来ると看護師に伝えられ即座に行くと伝えたのだ。

 

 そして思い出すのは息子が必死で離れたくないと嫌でも伝わるほど握られた手、そして最後の抵抗とばかりに握られた指の感触、思い出すだけでも胸が張り裂けそうになる。

 

 ……どうして自分はちゃんと生んであげられなかったのだろうと自分自身を何度呪ったことか

 

 それでも姿が見えないほどの赤色の水槽の中で触れた愛しい子の生きている感触に感動もしていた。

 手術後の医師から、息子が個性で体を流体に変化していなかったら自重で体が潰れ命は無かった可能性が有ったと説明された。

 まさに生きていること自体が奇跡と言える子だったのだ。

 

 でも今は息子が此れからちゃんとヒトとして生きていけることを祈るしかない。

 

 

 母は息子に何もしてあげられない事に無力感にも似たものを感じながら、看護師に連れられ病室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 …………これは彼、彩人が産まれて間もなく、彼にとっては死が満ち溢れた外の世界に飛び出し、母に抱き締めて貰う事を目標にした、小さくとも誰よりも早く努力することを決意した切っ掛けとなる出来事である。

 

 

 

 

 

 

 その日から彩人は自分が居る水槽からどうやって出るかを模索し始めていた。

 そもそも彼は今居る場所や状況すら理解していない。

 目も開いていない今は肌に触れる感触でしか周りを把握できなかった。

特に深く考えたわけでは無かったが、取り敢えず周りがどんなところかを触りながら考えようとしていた。

 しかし何の経験も無い赤ん坊では物事を認識し考えるという芸当はまず不可能である。

 

 

 実はこの小さな頃から思考すると言う行為は脳を活性化させ、尚且つ脳の働きを大きく成長させる事になっているなど無自覚に行っていた彩人には気付く筈も無かった。

 

 

 彼は取り敢えず今いる水槽の中で探し回る事にした。

 何度も何度も繰り返し水槽の中でぐるぐる回っているうちに彼は漠然とではあったが疑問に思うようになっていた。

 

 --もしかして上以外ではあの手には出会えないのではないだろうか?

 

 赤ん坊の頭脳ではそれを認識するのに非常に時間がかかっていた。

 

 --だったら上に行こう。いろんな手……あの手が来た上に。

 

 思いついてすぐに彼は水槽の上を目指すことにした。

彼にとって死に満ち溢れた外の世界に対する恐怖はある。しかしそれ以上にまたあの手に触れてもらいたいという気持ちが今は遥かに凌駕していた。

 彼は、水面に向かい泳ぎ、水面ほんの少しだけ顔を出した。水面から顔を出した途端に出した部位から恐怖していたあの圧迫感が彼を襲う。思わず水中に顔を引っ込めた。

 しかし、このくらいなら大丈夫、このくらいなら我慢できると自分に言い聞かせ、彼はもう一度水面に顔出した、今度はもっと顔を水面から出せるように。

 今度は、先程よりも顔を出せた。しかし、今度はそれ以上上に進めなかった。恐怖で進めなかったのではない、問題は彼自身の身体能力の低さにあった。

 現在、彼の赤ん坊の身体能力では水面から顔を出すだけで精いっぱいだったのである。

 

 それでも顔を出すことができた。それに彼は達成感を感じつつもう一度水面に顔を出した。今度もさっきと同じくらいしか顔を出せなかったが彼は諦めなかった。

 

 

 --今まで阻まれたところは何度挑戦しても進むことすらできなかった。でも少しだけでも進められた此処ならいつかきっと……

 

 

 彼はもはや上に向かうことにのみに希望を見出していた。囲まれた水槽の壁は固く、いくら進もうとしてもできなかった。しかし、上には壁などない、頑張ればほんの少しだけでも外に出ることができる。その思いが今の彼を支配していた。

 

 

 

 

 

 何度も何度も上に向かっておよぐ、水面から顔を出すたびに限界がきて水中に戻される。何度か行った後疲れて眠る。そのサイクルをひたすらに繰り返す。

 

 途中その様子を見た看護師が不安になって医師に相談しに呼びに行った。医師もその様子をしばらく見て、彼の行動に何かしらの危険は今のところないと判断し、看護師たちに伝えた。

 但し、今は危険がないだけでどうなるかわからないため看護師たちには、彼に特に注意してなおかつ定期的に様子を見るようには伝えた。何かがあった後に気づいても遅いからだ。

 それに彼の行動は彼自身にとっても良い傾向だと医師は思っていた。あの子は体に骨がない、だからそれを補うためには常人の何倍もの筋肉が必要だし、もしかしたらあの子の『個性』がこのことを切っ掛けに良い方向に向かう可能性があると考えている。

 医師はそのことも看護師に伝え何かが起こらない限りは彼に自由にさせておくように伝えた。

 

 

 この医師の予想が正しかったことを知るのはもう少し先の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 何度も水面に向かって泳いでは水中に戻され、疲れてはまた泳ぐを繰り返して数日が経った頃、彼自身に変化が起こり始めていた。

 まず彼の動きがほんのかすかではあったが動きが最適化され、筋肉がちょっぴりついてきたのか泳ぎの速度が速くなっている。

 そして最も大きな変化が彼の姿が水面に上がる瞬間と水中にいるときとで変わってきているのだ。今まではまるでイカと人間が中途半端に組み合わさったような姿だったのが、水中ではイカの姿に、水面に出る直前にはヒトの姿に少しずつではあるが変化するようになってきたのだ。

 

 この変化はすぐに様子を見ていた看護師から医師に伝わり、すぐに精密な検査が行われ、その結果彼の肉体が水中と陸上で形態を変化させていっていると判明した。

 

 

 

 これは彼が両親ともに会うことができるようになる少し前の話である。

 

 

 




因みに裏話として「世界中で医者を探せるほどの家柄」、「生まれる前から自我が芽生える」同じく「生まれた直後から個性を発動させられた」というご都合展開ですが

・「世界中で医者を探せるほどの家柄」…ベテランの医師がいないと生まれてすぐイカ化している時見つかるまでに対処が遅れて高確率で死亡

・「生まれる前から自我が芽生える」、「生まれた直後から個性を発動させられた」…生まれる前はヒト型、形態変化は任意で発動するタイプの為、自我が芽生えてないと追い詰められてイカ化出来ない為自重に潰されて死亡
の為ご都合展開にせざるをえませんでした。

※因みに現在の主人公の姿はイカと人の中間の為泳ぐことができているという設定です。(考えたらこれもご都合展開でした)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。