頂きを夢見るイカ   作:オーレリア

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今回時間が飛びます。

そして、初めて主人公の『個性』の詳細がが出ます。

正直、凄いやり過ぎました。そしてとても見辛いです。
拒否反応が出る人も多いと思います。

それでもという方はどうぞ読んでやってください。


第4話

烏墨彩人が生まれて3年の月日が経った。

 

 およそ生後一年目で陸上でも問題なく活動が出来るようになった彼は、一歳の頃に病院から家での育児も問題ないと太鼓判を押され、今では勉強と運動に明け暮れていた。

 

 彼の家は大きく、広い庭には芝生が敷き詰められていて、庭の一画にはアスレチックのようなものがあった。

 

 

「彩人いくぞー」

 

「はーい!」

 

 そんな広い庭では、甚兵衛が投げたボールを追いかけ彩人と一匹の犬が駆ける。犬は素早く走っているが、反対に彩人の走る速度は遅く少しふらついた動きだった。

 そして犬の方が遠くから追い掛けていたのにあっという間に追い付かれ、ボールが犬の口に咥えられた。

 

「あー!またコジロウにとられたー!」

 

 犬に先を越された彩人は悔しそうに叫んだ。その声は独特でほにゃほにゃとまるで水の中で喋っているような少し聞き取りづらい声だった。

 

 そんなのは知らんとばかりにコジロウ…茶色の豆柴犬は一直線に甚兵衛の元に行き、誉めてと言いたげに尻尾を振りながら彼の足元にボールを置いた。

 

 

「残念だったなー、次は取れるかもしれないぞ。さ、早く戻っておいで、コジロウはもっと後ろからスタートさせるからな」

 

 はーいと彩人は甚兵衛に向かって走りながら返事をしたがその声は不満げだった。やはり悔しかったのだろう。

 

「インクのなかだったらかてるのにぃ」

 

「ははは、ずるは駄目だぞーコジロウも足で走ってるんだから一緒に走らないとな!」

 

「コジロウはあしが4ほんもあるもん!」

 

「父さんは足が2本しかないがコジロウよりも速いぞ。彩人もいっぱい走れば必ず勝てるようになる。ほらいくぞー!」

 

 また甚兵衛がボールを投げ、1人と一匹が追い掛ける。何度も繰り返される光景を二人の女性が微笑ましげに見守っていた。

 

 

 

 

「こうして一緒にお茶を飲むのは本当にお久し振りですわね雨美さん」

 

「ええ、お互い慌ただしかったから本当に久し振りね千花さん」

 

 白いサマードレスを着た腰まである長い黒髪した女性…八百万千花『やおよろずちか』が、水色のワンピースに白いガウンを羽織った烏墨雨美にそう話し掛けた。

 彼女達は学生時代からの友人だった。共に学力がトップクラスだったことからお互いをライバル視していたが、両方とも上流階級だったため何度か社交パーティ等で話をしていく内に意気投合し、今ではすっかり打ち解け友人となった間柄である。

 

「百ちゃん…だったかしら、呼び出しておいて申し訳ないけどその子を家に残して来てるけど大丈夫?」

 

「問題ありませんわ。今あの娘はお稽古中ですもの。それに貴女ほど大変ではありませんわ」

 

 此方もお久し振りにお話ししたかったのですからむしろ好都合でしたわ。と千花は言葉を続けた。

 何年も会っていなかった為に疎遠になっていたのではないかと不安に思っていたために彼女のその言葉に雨美は嬉しくなった。

 

 

 

 

「それとだけど…」

 

 暫く会話していた時、雨美は突如居住まいを正し、千花に改めて向き合った。

 

「あの子のサポーターの件本当にありがとう。此方でも探したけど貴女が紹介してくれたメーカーが一番あの子に合っていたわ」

 

 そう言って二人は庭を正確には彩人に視線を送った。

 

 彩人の格好は異様なものだった。雨美はサポーターと言っていたがサポーターとは基本的に関節等を保護するために付けられる道具である。

 しかし彼に付けられたサポーターはもし彼に関節があった事を仮定すると、真逆の首以外の関節の無い部位にのみ全身に渡ってサポーターがつけられていた。

 

 

「あのサポーターがあるお陰であの子は人間としての体の動かし方を慣れさせることが出来、尚且つサポーターそのものが骨の代わりになってくれる。

 あれのお陰であの子はヒトとしての生活にまた一歩進められる」

 

 あなたのお陰よ。と雨美は千花に頭を下げた。

それを見た千花は、少し慌てたように返答した。

 

「頭を上げてください!前にお礼は頂きましたし、親友なのですから此のくらい当たり前ですわ。それにあの子の話を聞いたら私も手を差し向けたくなりますわ。」

 

 そこから暫く、それでもありがとう。いいえ!もう結構ですから!という言葉の応酬が続いた。

 

 

 

「それで、話は変わりますけどあの子のサポーターの重さ、あれで大丈夫ですの?」

 

 確か結構な重さでしたわよね?と千花は疑問に思っていたことを雨美に聞いた。

 

「医師と相談した結果だから問題ないわ。それにあの子、ああ見えて高校生の平均位の筋力があるらしいから。

 今は全部で20キロ位あるけど重ければ重いほどあの子には都合がいいのよ」

 

 筋力がつくほど体と『個性』が安定するらしいしね。と雨美は言葉を締めくくった。

 

「…増強型の『個性』ではないですわよね?それと『個性』も安定するってどういうことですの?」

 

 千花が疑問に思うのも無理はなかった。ぱっと見た限りでは彩人の体つきは普通の3歳児と変わらなかったからだ。

 

「医師からは増強型並みに力が強くなっていってるけど違うってはっきり言われたわ。それとあの子は、鍛えるほど体の頑強さとインク…あの子が出す液体ね。

 血液の代わりにそれが流れてるんだけど器が丈夫になってより多くインクを体に溜められるらしいのよ」

 

 凄い『個性』でしょ?と雨美は自分の事のように誇らしげに語った。

 

「ええ、とても個性的で、とても良い『個性』ですわ」

 

 

 所で今度は貴女の娘の話を聞きたいのだけど…、勿論ですわ。と女性達の会話は途切れることなく日が傾くまで続いていった。

 

 

 

 

 

 夕暮れまで父に遊んでもらった彩人は今度は母に家庭教師として本などを読み聞かせて貰っていた。

 彩人はおとぎ話や童話よりもファーブル昆虫記等の様々な生き物が登場する話が好きだった。

 流石に子供に読み聞かせるには文章量が膨大過ぎたので、予め雨美が読み、読んだ内容を要約して彩人に読み聞かせていた。

 母からされる内容は分かり安く、未知に溢れていた。自分の知らないことを知るのが楽しかった。

 そして話の中で自分が出来そうだと思ったことを実践するのが特に好きだった。 

 

 ある日、壁をタコが登った話を聞いた次の日、彩人は自分の頭にある触手を使って実際に壁を、最終的に天井を登ったり。

 

 またある日、体で化学物質を混ぜ爆発を発生させる虫の話を聞き、自分のインクでも出来るかなと思った彼が体の中のインク変化させて見て、初めて作れた色に興奮してインクを出した途端爆発が起こり吹っ飛ばされたり。

 

 どちらも最後は両親に怒られて終わり、それからというもの、こういうことをする時は両親同伴の時のみと言われたのは彩人には少し不満だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 芝生で囲まれた広い庭を駆け回り、勉強している日々を過ごしている内に月日が流れ、彼が4歳になった頃、1つの転機が訪れた。

 

 

 ある日、甚兵衛はそろそろある程度制御が出来ている息子の個性届けを出さなければならないと考えた。

 しかし彩人の個性は非常に複雑な為個人で判断するのは難しいと考えている。

 ならば専門家に頼むしかないと『個性』を研究しているとある大学の教授に診て貰うことにした。

 

 

 

 

 

 

甚兵衛が教授に検査を依頼した日から3ヶ月程経った頃、烏墨彩人の個性の検査を担当した教授は検査結果に頭を抱えていた。

 現代では様々な『個性』が存在しており、それらを研究し、今では『個性』研究の権威と呼ばれる彼自身『個性』については相当な知識があると自負している。

 一見複雑な『個性』であろうと、本質を見極めれば大抵の『個性』を理解するのはそう難しくもないと言い切れるほどだったのだ。

 

 ーーこれは何だ?姿形はイカの異形型、しかし、それ以外の、本質とも言える部分が全く分からない、こんな『個性』は初めてだ。その上、一個人が持てるとは思えないほど効果と種類が多すぎる。

 

 

 教授は彩人の検査結果を改めてみた。

 

 

 

烏墨彩人

 

 個性『???』

 

 人型とイカ型の二つの形態に自由にほぼ一瞬で姿を変えられる

 

 インクの色を変更すると頭の触手の色も変わる

 

 インクは血液の代わりも兼ねている

 

 一部を除き、インクの色と同じ特性を獲得する

 

 現在の色以外の色のインクを踏んでいる間、動きが著しく遅くなり、イカ化で潜ることもできない

 

 インクの色を変更するのにタイムラグがある。その間変更する前のインクを踏むと動きが著しく遅くなり、上記と同じくイカ化で潜ることもできない

 

 

 

 イカ型

 

 

・陸上では動きが緩慢だが、基本的に物理的干渉は体が流体の為すり抜ける

 

・水の中では体からインクが溶け出すので泳ぎ続けるのは難しい。但し、泳ぎそのものは速い。

 

・インクの上なら非常に素早く移動が出来、例えインクを塗っただけの浅さでも沈むように潜り、壁や天井でも自由に移動することが可能。

 また、面積が小さくとも頭ほどの面積であれば潜ることが可能   

  

・来ている服、そして自分の腕で持てるものであれば生物以外すべて保持した状態でイカ形態になり、インクに潜ることが可能。

 ただし、重量によりイカ化している時の動きが遅くなる

 

・インクの中にいる間潜っているインクを消費する事なく数秒で限界までインクを補充可能。

 

・インクを噴出し高く跳躍する事が可能

 

 

 

 

 

 ヒト型

 

 

 

・体からインクを放出することができる

 

・頭にイカのゲソのような部分があり、自由に動かせる。また力も強く重い物を持ったり、吸盤で壁や天井を移動可能

 

・骨がなく肉体は細身ながら見た目より遥かに力が強い、筋肉が高密度で圧縮されている

 

・体はしなやかで丈夫、柔軟性が高く衝撃に強い

 

・100m先の小さな文字でもはっきり見える視力をもつ

 

・水の中でもインクが溶け出さない為、イカ形態程ではないが速く泳ぐ事が可能。

 

・骨がないため全体的に瞬発力に乏しい

 

 

 

 インクの性質

 

 

・白、黒、以外の全ての色は水溶性が高いため、大量の水で溶かし、洗い流せる。

 

 

・緑・高い粘性を持ち、衝撃と圧力を吸収する性質を持つ。粘着力が強く、くっついたら引き剥がすのが困難。耐冷、耐火性ともに低い

 

・青・緑ほどではないが粘性がある。温度を吸収し続ける性質があり、温度が高ければ高いほど比例して吸収する速度が速くなる。

 温度を溜め込むことが出来ず、強制的に外気に触れている部分で最も温度が低い部分から熱が放出される    

 

・赤・青と同じ粘性を持ち、衝撃若しくは振動を与えるほどその強さに比例して温度が急激に上昇し続ける。強い熱ほどインクが蒸発し、蒸発にかかる時間も早くなる。

 ヒト形態でも動けば動くほど温度が高くなり、揮発していく。

 

・黄・粘性はあまり強くはない。このインク同士が摩擦を起こす事で強く帯電する。

 強い衝撃、振動を与えるほど電気を纏うが、放電は出来ない。

 ヒト形態でも動けば動くほど体の中のインクも帯電する。

 

 

・白・非常に粘性が高いためこの色になっている間はヒト、イカ型問わず動きが遅くなる。

 このインクが純色に近いほど体の外に出た瞬間に固形化する時間が早くなる。現在はこの色のみ自由に色の調節が可能。

 固形化したインクは非常に固く、各種高い耐性を持つ。

          

・黒・体の外に出た瞬間即座に揮発する。水以上の膨張率で一瞬で揮発し膨れ上がるため、少量でも爆発のような衝撃波が発生する。粘性は非常に低い。

 この色のみヒト型で固定される。

 

・橙・粘性は強くなく、5分ほどで蒸発する。その他に特に目立った効果はない。

 

 

 

 

ーー意味が分からない

 

 いったい何人分の『個性』を合わせれば、こんな突拍子もない『個性』になるのかと教授は頭をかきむしった。

 

ーー確かにこれは一般人では理解出来るわけがない、あまりにも複雑すぎる。まだ4歳でこれだ、今後成長することも考えると一体どうなるのか…

 

 この子の将来を考えると教授は強い不安を覚えた、こんな『個性』コントロールするのは相当難しい筈だ。

 もし、何かほんの少しでも間違えば、致命的な事故に繋がってしまうだろう。

 どうすれば良いだろう、と考えたところで彼にとって天啓とも言えるものが閃いた。

 

ーーだったら私が『個性』を制御する術を学術的に指導すれば良いではないか!

 そして実践的な事は知り合いのヒーローや元教え子達に頼み、さらに私の知識で補強すれば良いではないか!

 ここまで複雑な『個性』を完璧に制御出来るよう指導出来たならば、その過程は私の『個性』の研究にとって大きな貢献になる筈だ。

 

 

 こうしてはいられないとばかりに携帯電話を遮っていた資料をひっくり返し、烏墨家の電話番号を叩くような勢いで押し始めた。

 

 

 これは『個性学の権威』識深泰介『しきみたいすけ』が烏墨彩人の師となる切っ掛けとなった出来事である。

 




読了有り難う御座います。

大分やり過ぎましたが、ここまですれば個性を研究してる人なら目をつけて貰えそうだと考えました。

後、熱血物の特訓も良いですが、こういう形も面白そうだなと思い書きました。

 そして、主人公のインク、基本的に物理的な効果のみで酸や毒等の科学的なものは出来ないようにしております。
 そしてこれ以上は考え付きませんでした



最後にタグの男の娘ですが、出来ればイカボーイでやりたかったのです。
 ただ、長いゲソを生かした三次元的な動きとかやってみたかったのです。でも、ボーイだと長いゲソの髪型?が想像出来ませんでした。
 だったら女主人公なのですが、女性を表現し続けられる気がまるでしませんでした。
 その為、このような形になっております。
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