頂きを夢見るイカ   作:オーレリア

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話が飛び飛びになっている気がします。でも話の上手い切り方が分からないです。


拙いですが宜しければどうぞご覧下さい。


第5話

 『個性学』の権威、識深泰介はアポイントメントを取った後、烏墨家に訪れた。

 

「あなた方の息子さんの『個性』を調べさせていただいた結果なのですが、非常に複雑な個性であると判明しました。この個性を制御するのは正に至難の技であると同時に訓練するにも大変危険を孕んでおります」

 

 烏墨夫婦はその言葉に暗い表情を浮かべた。漸く彩人が成長し、サポーターありではあるが歩けるようになった。

 正にこれからだと思っていた所でこれだ。暗くなるなと言うのが無理な話だった。

 

 急に変わった夫婦の表情を見た識深教授は、慌てた様子で咳払いし、話を続けた。

 

「この『個性』は個人で制御するのは非常に難しい、ヒーローが親であってもまだ厳しいでしょう。

 そこでです。どうかこの『個性』を制御する訓練や指導、私に任せて頂きたいのです」

 

「!…本当ですか!?」

 

「是非お願い致します!」

 

 その話を聞いた夫婦は驚いた様に聞き返した。識深教授と言えば『個性学』の権威、有名なヒーローも講義を聞きに来る程の人物、多忙で無い筈がない。

 今回検査をして貰えただけでも有り難かったのにこの言葉だ。飛び付かない訳が無かった。

 

「寧ろ此方からお願いしたいのです。

 私情になりますが、息子さんの『個性』に私の知識欲が大いに刺激されました。

 此処までの複雑な『個性』を完璧に制御、使いこなし、尚且つ成長したら、その過程は私の研究を大きく前進させることになるでしょう。

 そう思うと居ても立っても居られ無かったのです。」

 

 ですので…と識深教授は更に言葉を続けた。

 

「もう一度言わせて頂きます。

息子さんの『個性』の制御の指導、私に任せて下さい。

 その為に、息子さんの体の問題、此方でも全面的に協力致します」

 

 そう識深教授は言い切り、頭を下げた。

 

 それを聞いた烏墨夫妻は嬉しさのあまり涙を流していた。息子の彩人は生まれるのも、生きるのも大変だけど、人には恵まれていた子だと考え、また嬉しくなった。

 

「是非もないです。息子を…彩人をお願いします。」

 

「有り難う御座います。…ただ、此処まで仰って頂いて差し出がましいのですが…」

 

 夫妻は揃って頭を下げた後、雨美が申し訳無さそうに言葉を発した。

 

「何でしょうか?」

 

「息子の『個性』を指導して頂くのは有り難いのですが、その…『個性』を公表する様な事は控えて頂きたいのです。」

 

 雨美の発言は親として、そして人として最もな発言だった。個性が持て囃される現代、『個性』は自分そのものを表す個人情報だ。

 それを広められたら息子の将来に悪影響が出るのではと心配になるのは当たり前の話だった。

 

 その事に気づいたのだろう。甚兵衛もはっとした顔をして直ぐに恐る恐る識深教授の方を見た。

 もしかしたら、「でしたら今のは無かったことに…」なんて言われることを恐れたからだ。

 

「その事でしたら御心配為さらず。

 私が研究に役立てたいのは、『個性』そのものではなく制御するための訓練等の過程です。

 未来の為の研究に子供の将来を犠牲にする事などあってはならないことです。

 息子さんの将来を曇らせる真似は決してしないと誓いましょう。

 そうですね、契約書を書きましょう。此れで御二人の気が紛れると宜しいのですが…」

 

 識深教授の言葉に二人はほっと胸を撫で下ろした。そしてこの人は自分達の息子を預けるに相応しい信頼に値する人物であると判断した。

 

「何から何まで有り難う御座います。」

 

「疑ってしまい申し訳ありません…息子を宜しく御願い致します」

 

「いえ、息子さんの事を想えばこそ、それを咎めることは出来ません。

 さて暗い話は一先ず置いておきまして、息子さんの話をお聞かせくれませんか?」

 

 識深教授が話しはこれでお仕舞いとばかりに話題を変え様とし、烏墨夫妻もそれに乗り、ここから三人は談笑に花を咲かせる事にした。

 

 そしてこの日から数日後、烏墨彩人の『個性』制御の特訓の日々が始まった

 

 

 

 

 

 

 識深教授が最初に行ったことは、体を安定して動かせる様にするための体の動かし方の指導とトレーニング方法の確立、成長する体を作る為の食事メニューの作成だった。

 『個性』を制御するにはまず、不安定な肉体を制御しない事には始まらないと判断したからだ。

 

 

ーー最初は食事

 

 個性により体質、体の成長度合いによる必要な栄養素、エネルギー量は個人によって全く違う。

 まさに千差万別であるため、到底個性の無い昔の様な、人を平均化させたメニューを食べさせるなど愚の骨頂である!、と彼は鳥墨夫妻に力説した。

 

 そしてメニューを作る際、教授としての伝で、同大学の栄養学や遺伝科学等の他の教授と入念に相談し、烏墨彩人の為だけの特別な食事メニューが作成された。

 

 彩人は食卓に並んだメニューに好物であった烏賊ではなく苦手なタコが出る様になった事で、嫌だと駄々を捏ねたが、時々少しではあるが、おやつにスルメイカを貰える様になった事で我慢するようになった。

 

 

 なお、教授達でメニュー作りで相談していた際、「これぞ(科学的に)究極のメニューだ!」、「いいや、これが(科学的に)至高のメニューだ‼️」なんて言い争う声が研究室で響いていたが、それはまた別のお話である。

 

 

 

 

ーー次に肉体

 

 現在の彩人はサポーター無しでは立ち上がるのが精一杯ではあったが、それでも筋力のみで体を支えることは出来る様になっていた。

 ここまで出来るならそこまで難しくはない、今度はサポーター無しで走り回れる様、指導とトレーニングを徹底するまでだと、彼は全国大学に連絡し、ヒーローに肉体面でのトレーニングを指導する事があるほどのスポーツ科学等の教授達に、協力を申し込んだ。

 何人かは忙しい事を理由に断られたが烏墨彩人の事情を伝えると快く聞き入れてくれる人達が数人いた。

 

 そして彼等は指導する上で、サポーターを使って体を動かすのと、サポーターを外した状態で体を動かすのを交互に行うのを最初に提案し、そこからどういった、そして何処を重点的に鍛えていくのかを相談しあった上でトレーニングメニューを煮詰めていった。

 

 そうして彼らがトレーニングメニューを完成させた後、本格的にトレーニングが始まり、彩人は体の動かし方を学んでいった。

 

 

 

 

 

 2か月程経った頃、識深教授は彩人の成長振りに舌を巻いていた。

 

ーーまさかここまで動きを理解するのが早いとは…

 

 識深教授の目の前には庭に設置されていたアスレチックを頭の触手も利用しながら、まるでパルクールの様に飛び回り走破している彩人の姿があった。

 

ーーまだサポーターありで、アスレチックには安全のため緑のインクで塗り潰し本人も緑のままとはいえ、あれは無謀にもがむしゃらに動いているのではなく、体の状態を動きながらでも把握している動きだ。

 

 アスレチックを周回している彩人の動きにぎこちなさは見られない。速いわけではないものの、流れるような動きで障害物を走り、飛び越えている。

 正に舞い踊るような動きと言う表現にぴったりだった。

 

 

「あの子がこんなにも元気に走る姿だけでなく、飛び回る姿をたった数ヶ月で見れるなんて…!」

 

「ああ、やっぱり識深先生は凄い方だ。先生に指導して頂けて本当に良かった!」

 

 少し離れた所では烏墨夫妻が最高レベルの指導は自分の息子を短期間でもここまで成長させてくれるのか!と感動していた。

 

 

 識深教授は違うと答えたかったが以前に似たような事があった時、違うと答えてもいやいやご謙遜をと言われ、結局信じて貰えなかった為、そのまま口を閉じた。

 

 

「幾ら教えた事を直ぐに覚えるからってこれはやりすぎだろうに」

 

 識深教授は隣にいたスポーツ医学の教授に話し掛けた。

 

「いやぁ、流石にここまで教えた事をあっという間にものにするなんて思わないですって」

 

 まだ4歳ですよ、と言う言葉に識深教授はまた口を閉じた。そう、隣の教授の言う通りまだ4歳だ。

 当初の予定ではもっとゆっくり進んでいたはずだったのだ。しかし、動画等を見せつつ「ここの動きをやってごらん」と教えれば、動画内の全ての動きを再現するのだ。

 時々つまづく動きがあるものの、次に訪れた時には既にマスターしているなんて事がざらだった。

 これは教えがいがあるとスポーツ系の教授達複数来ていた時、面白がって少しレベルの高い動きを要求する。

 いつの間にかマスターしている。

 また少しレベルの高い動きを教え、またマスターするを繰り返している内にここまでになってしまったのだ。

 自分から「教えて、教えて!」と毎回知らない動きを見せるのをせがんでくるのも後押ししていた。

 正に才能と言う他無いだろう。

 

「あの子は力自体は増強型の『個性』並みに強いからな。寧ろ、あれがあの子本来の動きとも言える。

 だが、その代わりサポーター無しではあまり進んでないじゃないか」

 

 識深教授の言葉に隣にいた教授はばつが悪そうな顔をした。

 

「確かにそうなんです。何度か此方でも撮影した動画を解析してシミュレートしたんですけど、恐らくまだ歩くのに必要な筋肉等が足りないのではないか?と言うのが私達の見解です。

 こればかりは鍛えて筋肉量を増やし、成長に期待するとしか。ただ、あれを見たら条件さえ満たせれば、サポーター無しでも簡単にあのレベルに到達すると思いますけどね。」

 

 識深教授は隣の教授の言葉に頷いた。

 今の彩人は、サポーター無しでは1、2歩歩くのが限界だった。それもふらふらと非常にバランスが悪い動きだった。

 

「確かに、此方の大学でも同じ意見が出た。となると今以上にもっと細かい部分的なトレーニングが必要だな。

 幾つかその部位のトレーニングがあるが、あの子が飽きないよう複数用意したい。

 そちらのトレーニング内容と照らし合わせても宜しいか?」

 

 分かりました、と教授達は彩人から離れ、話し合いが始まった。

 

 

 

 

ーーああ、すごくたのしい!

 

ーーとんだり、たかいところをはしるとみえる。しらないけしきがおもしろい!

 

ーーとんでいるときの、ふわっとしたふしぎなきもちがおもしろい!

 

ーーせんせいがおしえてくれる、しらないことをしるのがたのしい!

 

ーーしらなかったことをするのがたのしい!

 

ーーそしておかあさんとおとうさんが、とんでるぼくをみて、うれしそうにわらってほめてくれるのが、いちばんたのしい!

 

ーーもっとしりたい、もっとしらないをしりたい!

 

 

 

 

 

ーーそうすればもう、おとうさんとおかあさんもなかなくなるから

 




読了ありがとうございます。

今さらですが主人公の姿はゲーム準拠ではなく、某pixivのような人に限り無く近い体型です。

流石にあの体型で、凡そ150cm程の身長は横幅が大きすぎると判断いたしました。
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