頂きを夢見るイカ   作:オーレリア

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 どうしよう…酔った勢いでチラ裏から普通投稿に変えたらとんでもないことになってる……

しかも、話の進行遅くて主人公原作処か小学校にも入ってないのにランキング入ってる…
プレッシャーヤバい、緊張する…
 
あ、この小説に誤字報告してくださった方々有り難う御座います。


第6話

 識深泰介教授や時折訪れる他の大学教授達からの指導を受け、トレーニングをしながら様々な事を学びとっていく日々。

 彩人は、自分に与えられたトレーニングメニューを一度もサボるようなこともなく、忠実に守り続けていた。

 辛くなかったわけではない。だがそれ以上に楽しかった。頑張るほどに体が軽くなり視界が広がる様な感覚、結果を出すほど誉めてくれる周りの大人達、狭い世界しか知らない彩人にとって今の生活が幸せだった。

 そんな日々を送って行く内に5歳を過ぎた頃、両親にとっては念願の、しかし彩人自身にとってはまた新しく出来るようになったくらいにしか思ってはいないが、1つの目標が達成され様としていた。

 

 

 

 

 

 

 烏墨雨美と烏墨甚兵衛は、目の前の景色に感動で涙が止まらなかった。

 息子が生まれてからずっと夢見ていた風景、それが今目の前にあるからだ。

 

 彩人は、愛犬のコジロウと一緒になって走り回っている。それだけなら三年前にも見ている、しかし大きな違いがあった。

 

 彩人が飛び跳ねながら走っている?…違う。

 コジロウよりも速く走り回っている…それも違う。

 

 彩人の姿は動きやすいよう、半袖と短パンの格好をしている。そして今、丁度走っているコジロウを捕まえ転がっている所だった。

 動きが止まり、そこから覗く白い肌には何も着けていない。

 

 そう、今はサポーターを一切着けずに走り回っているのだ。

 

 

 

 識深教授や他に協力していた学者達が涙を流している二人に近づいた。

 

 

「息子さんは凄まじい勢いで我々が与えていたトレーニングメニュー等をこなしていきました。

 息子さんは楽しそうにこなしておりましたが、我々が課したメニューは、ギリギリ迄頑張れば出来ると言うものばかりでした。下手をすると大人でも投げ出すかも知れないほどです。それを簡単そうに見える程に次々やり遂げるのは尋常なことではありません」

 

 ですので、と言ってから話を続けた。識深教授も周りの学者達も誰もがやりきった、若しくは誇らしげな表情を浮かべていた。

 

「この結果は息子さんが勝ち取ったものです。

 沢山誉めて上げて下さい。今まで行けなかった所、出来なかった事をさせて上げて下さい。

 個性制御訓練はそれからでも良いでしょう

 息子さんはそれだけ頑張ったのですから」

 

 そう言葉を切り識深教授達は、今回はこれで…と帰って行った。家族水入らずで過ごして欲しいと言う気遣いだろうと思い至るのにあまり時間が掛からなかった。

 

 二人は既に背を向けている識深教授達に頭を下げた。

 戻っていた彩人も二人を真似して並んで頭を下げていた。

 

 

 

 

 次の日から烏墨家は、すぐに家族3人で外に出掛ける様になった。

 場所は服飾店や遊園地、水族館、温泉など、両親も行ったことがなかった場所もあったが、そこは予め子供が喜ぶ施設やスポーツ等を家の者にピックアップさせていたので、スケジュールでの問題は起こらなかった。

 

 彩人は最初に遊園地に行った時、多くの大人、子供が施設毎にひしめきあっている様子を見て固まってしまっていた。

 今まで病院と家の庭周辺までが自分の世界の全てだったのだ。どんな道をを通ったかも分からない程の遠くの地で、恐ろしく成る程の人がいる状況に怖くなったのだ。

 

 その様子を見た両親は、彩人を抱き上げて彩人が落ち着くのを待った。

 

 しばらくして彩人が落ち着いてからは、それは大忙しだった。元々非常に強い好奇心を持っていたこともあってか視線をあっちこっちに飛ばす。

 目に見えるもの全てが初めて見るものばかり、周りの人も大人子供問わず楽しそうにしているのを見て、何かは分からないが楽しい所なのだろうとは彩人は理解した。

 

 そう判断したらもう我慢出来なかった。あれは何?彼処に行きたい!あれをやってみたい!とアトラクション等を終えた側から次のアトラクション、と間断なく言うものだから両親は1日を終える頃にはくたくただった。

 

 両親の様子を見てしまった彩人は少し反省し、次の日以降からは両親の様子を一度見てからあっちに行きたいと、控えめに希望を出す様になったのだが疲れきっていた二人は出掛けている間は気づく事はなかった。

 

 

 

 

 

 

「それはそれは、大変だったでしょう」

 

「大変所じゃ無かったわ。まさかあの子が箍が外れるとあそこまで暴走するなんて思いもしなかったわよ」

 

 でも、あの子の意外な一面が見れたのだから後悔はしてないわ、と雨美は目の前にいる八百万千花に答えた。

 

 烏墨家が彩人と今まで出来なかった事を取り戻す為に、様々な所に出掛け、一先ず一段落ついた後、烏墨雨美は、彩人を引き連れ八百万家を訪ねた。

 先に彩人が体の問題を克服したことは伝えており、お礼と、八百万家の娘との顔合わせを兼ねての訪問だった。

 

 

 

「初めまして八百万百『やおよろずもも』と申します。

 宜しくお願い致しますわ」

 

「こ、こちらこそ初めまして烏墨彩人です。宜しくお願いします。」

 

 母親二人の隣では、子供達同士で挨拶を交わしていた。

 

「ふふ、緊張なさらなくてもよろしいんですのよ?

 それにもっと砕けた口調でも構いませんわ」

 

「…ごめんね、同じ年の人と本格的に話すのは今日が初めてで、どうすれば良いか分からなかったんだ。

 後、この声は地声なんだ。だから声については、気にしないでね」

 

 彩人は今まで父と母、家にいるお手伝いさん後は、識深教授等の遥か年上の人としか話したことがなかった。

 その場合は失礼の無いよう敬語を心がければ良かったが、同年代の場合の接し方を知らないため、緊張してしまっていた。

 もう1つ、彩人の震えるような声も勘違いでは無かったが、緊張しているように見えるのに拍車をかけていた。

 

 

「それについてもお母様からお話は聞いておりますから大丈夫ですわ

 お母様、お部屋で彩人さんとお話ししても宜しいですか?」

 

「ええ、良いですわよ。彩人君もゆっくりしてって下さいな」

 

「はい、ではお邪魔させて頂きます」

 

 そう言って子供組二人は部屋の中に入って行った。

 

 

「聞いていたより積極的な子なのね百ちゃんは」

 

「ええ、あの子は前々から彩人君のことを聞いておりましたから。何時か会ってみたいと私が彩人君の話をする度言っておりましたわ」

 

「成る程ね。確かに中々珍しい境遇の子だものね。」

 

「そう言うのとはちょっと違うのですが…まあ積もる話は部屋でお話ししましょう。」

 

 それもそうね、と雨美は返答し、部屋に案内されていった。

 

 

 

 

 彩人は八百万百に部屋に連れられ、会話に花を咲かせていた。

 

「まあ、そういうトレーニング方法もあるのですか!彩人さんは博識ですのね」

 

「そういう百さんだってこんな身近な物の構造を知ってるなんて凄い知識だよ!

 それに僕は凄い先生達に体の事や生き物の事を教えてもらう事が多かったけど、百さんは自分で調べたりもしてるんだよ?

 僕はそっちの方が凄いと思うよ」

 

 

 八百万百は物質の構造等の科学的な、彩人は生物の生態や特徴、人体構造を把握したトレーニング方法と言う、会話の内容に子供らしさがなかったが。

 

 普通の子供であれば、このような会話は出来ないだろう。

 しかし、二人とも上流階級の生まれであり、教師や大人に囲まれた環境、そして学び鍛えなければならない多様性に富んだ特殊な個性、これらの共通した境遇がお互いの精神的なズレを生じさせない会話が成立していた。

 

 

「それにしても、彩人さんは女性みたいな出で立ちですわね。服装も相まってボーイッシュで可愛らしく見えますわ」

 

 八百万百が口にした言葉に彩人は一瞬体を強ばらせた。確かに彩人の顔立ちは可愛らしいと言える女性的なものだった。更に長い髪の様に見える触手も相まって余計に女性らしく見えていた。

 家のお手伝いさん達にも可愛いと言われた事も一度や二度とでは無かったが、会ったばかりの人に突然言われて少しビックリしていた。

 

「…まあどうしてもそう見えるよね。僕としてはお父さんや先生方みたいな大きくて立派な大人の男性になりたいんだけどね。

 特に、頭とか男性っぽく出来れば良いんだけど、僕の場合は髪の毛と言うより手や足と同じだからあまり弄ったりする事は出来ないからちょっと悩んでるんだ」

 

「あ…」

 

 彩人のその返答で自分が失言したことに気づいたのだろう。八百万百は非常に申し訳なさそうな顔をして彩人に頭を下げた。

 

「失礼な事を言ってしまい申し訳ありません。人のコンプレックスの話題を軽々しく出してしまうのは最低な事でしたわ」

 

 八百万百の行動に今度は彩人が慌てた、彼にとっては本当にちょっとだけ悩んでいる軽いものと言う認識だったのだが、そこまで重く受け止められるとは思わなかったのだ。

 

 彩人は無理矢理とは分かっていても話題を変えることにした。

 

「そんな謝らなくていいよ!見た目なんてこれから成長すればきっと大丈夫だと思うから!だから気にしないで!

 そうだ、大人になったらどんな事をしたいか考えたことある?僕は先生方みたいにいっぱい勉強して強くなって、ヒーローになって知識でも困っている人を助けたいと思っているんだ。勿論普通のヒーローが駄目って訳じゃないよ。でも只ヒーローっていうだけじゃ出来ないことだってきっとあるはずだよ。僕はそういう色んなことで困っている人助けたいんだ!だから、その…えっと…」

 

 彩人は大分慌てていた。慌てすぎて捲し立てるように言ったはいいが、途中から何を話したら良いか分からなくなったのだろう。後半はしどろもどろになっていた。

 

 

 

 

 しかし、彩人が言ったことは本心であった。以前、両親から自分は色んな人に助けられて今を生きているのだと教えられた。

 テレビでヒーロー特集を見た後の話だった事もあって、尚更憧れた。産まれた時の医師達、今も自分を指導している学者達、彼等が自分にとってのヒーローなんだと子供ながらに認識した。

 その時、自分も困っている人を助けられる人になりたいと思った。でも、学者でも医師でもヒーローでも、憧れてもどちらかしか成れない。そう両親から言われ、彩人は悩んだ。

 

 次の日今度は歴代のヒーロー特集という番組をやっていた。そんな時に見つけたのだ。未だに現役で医師とヒーローの両方で活動をやっていた人物を。

 そのヒーローは『リカバリーガール』、彼女の事を知ったとき彩人の脳内に衝撃が走った。

 

ーーヒーローは他のものを兼ねてもいいんだ…

 

 それから彩人は医師も学者も兼ねる、より多くの人を助けられるヒーローになりたいと思うようになった。

 

 因みにその事もあって、彩人が一番憧れるヒーローは『リカバリーガール』となった瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 そんな彩人の様子を見た八百万百は、最初は驚いた表情をしていたが、自分のフォローをしようとしてくれたことに気づいたのだろう。

 八百万百は、くすりと笑うと彩人に微笑んで優しく話し掛けた。

 

「…彩人さんありがとうございます。そうですわね、私も誰かのお役に立てる様な人になりたいですわ。

 その為にヒーローになりたいと思っておりましたが、彩人さんのお考えもとても素敵だと思いますわ」

 

 そう八百万百に答えられた彩人が、今度は自分が気遣われたと気付いた。彩人は照れたように自分の頭を少し撫で、心の中で感謝するに止め、そのまま話題を続けることにした。

 

 

 

 

 

 

 しばらく彩人と八百万百が談笑していると、八百万千花と烏墨雨美が二人を呼んでいた。時計を見るとそろそろ夕方になる時間に差し掛かっている。

 

 

「予定より長居してしまって申し訳ないわね」

 

「良いんですのよ。百も楽しそうに彩人君と話しておりましたから。宜しければまた彩人君と一緒に来て欲しいですわ」

 

「ええ、こちらも彩人の初めての同年代の子とお話出来て嬉しそうだったもの。

 また、機会があれば連れてくるわ」

 

 母親二人は帰り際にそう会話していた。その横では、二人の子供も名残惜しげに同じく会話していた。

 

 

「もっと一緒にお話ししたかったですわ…」

 

「僕もだよ。百さんとの話は凄く勉強になったよ。良ければまた、機会があったら教えてくれないかな?」

 

「勿論ですわ!彩人さんもトレーニングや生き物お話はとても面白かったですわ。

 私も今度、体の上手な動かし方を教えて下さいませんか?」

 

「勿論良いよ」

 

 

 約束ですわよ、うん約束しよう、と二人が仲良く話しているのを途中から母親二人は微笑ましそうに見ていた。

 

「すっかり仲良くなった様ね」

 

「そうですわね。とても良いことですわ。これからも宜しくお願いしますわ」

 

「ええ、こちらこそ」

 

 

 失礼するわね、という言葉を最後に烏墨雨美と彩人は八百万宅を後にした。

 

 

 

 それからと言うもの、八百万家と烏墨家は時折お互いの家に訪ね、八百万百と鳥墨彩人は、お互いの足りないところを補うように、お互いに様々な事を教え合い、切磋琢磨していく友人関係になっていくのだった。

 




読了有り難う御座います。

初めて小説を書いてみましたが。過分な評価をしてくださり有り難う御座います。

前書きではああ書きましたが、凄く嬉しいです。これからも楽しんで貰えるよう頑張ります。


後、主人公のインクですが、基本的に「水」をモデルに拡大解釈して能力を落とし込んでおります。

「液体は衝撃を吸収する」、「温度を吸収、又は放熱」、「水粒子の帯電」、「液体の凝固」、「揮発すると体積が凡そ1700倍で増える」、これ等を色に当てはめました。

但し、橙色だけはスプラトゥーンの名残を入れたくて入れました。
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