頂きを夢見るイカ   作:オーレリア

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感想での指摘等で自分が如何に浅慮だったか思い知らされます。

少しずつでも改善していきますので宜しければお付き合いください。

今回は日常回となります。



第8話

4月10日

 気温が暖かくなり、木や草が生い茂る。早ければそろそろ桜が咲き始める季節。

 

 

 この日、彩人は晴れて小学一年生になった。

 

 

 

「彩人さんと一緒のクラスじゃなくて残念です。でも、これから学校でも宜しくお願いしますわ」

 

 愛知県にある掘須磨大付属小学校にて、入学式やガイダンスが終わり、新入生や保護者達が帰り始める頃、ポニーテールを揺らしながら、八百万百は彩人に話しかけた。

 

 

「うん、此方こそよろしくね」

 

 

 彩人と百が初めて会ったときから烏墨家と八百万家は家族ぐるみの付き合いを続けていた。一緒になって遊ぶ事もあれば、自分達の教師達から教わった事を教えあったりもしていた。

 彩人にとっては努力して学んではいるものの、彩人自身の知識に偏りがあった為、百の範囲の広い知識は有り難かったし、百は百で満遍なく多くの事を学んでいたが彩人の専門的な知識は新鮮だった。

 

 

「でも、休みの時間に会えるから問題ないかな」

 

「それもそうですわね。…それにしても彩人さんは制服が似合っておりますわ。…相変わらず可愛らしいという方に、ですけど。」

 

 

 小学校から送られた彩人の制服は白のポロシャツに赤いネクタイ、紺のカーディガンと同色の半ズボンという出で立ちだった。

 普通の小学生男子ならまだわんぱくというイメージが持てたが、彩人の風貌では橙色の触手と相まって、ボーイッシュ、若しくはお転婆というイメージが先行してしまっていた。

 

 

「あはは…やっぱりそうなっちゃうよね。でも僕には百さんの方が可愛らしく見えると思うよ?」

 

「そ、そうですか?」

 

 少し気恥ずかしくなった彩人は百に誉め返した。誉められた百は嬉しそうに頬を薄く染めた、今度は百が照れる番だ。

 

 百の服装は彩人と同じ、白のポロシャツに赤い蝶ネクタイ、紺のカーディガンと同色のスカートに白いソックスだ。此方は小学生女子らしく可愛らしい出で立ちだった。

 

 

「うん、普段会う時は一緒に運動もするからあまりスカートを履いている所は見てないからね。新鮮で可愛らしく見えるよ」

 

 その言葉に百は照れるのを通り越して恥ずかしくなったらしい。そっぽを向きながら照れ隠しに話題を変えた。

 その横顔は先程よりも顔が赤くなっていた。

 

「あ、ありがとうございます。…そう言えば彩人さんはいい加減頭の触手を私みたいに結んだらどうですか?

 もう触手無しでもパルクールは平気でしょう?」

 

 

 百の言葉通り、彩人は百と出会ったばかりの頃、彩人は触手を使わない状態では、まだあまり上手に動き回れなかった。体に対して大きく重い触手は、バランスを取る補助輪兼第二第三の腕の様な役目を果たしていたからだ。

 

 

「いやっ、でもあの縛られる感じが嫌でさ。…ほら、自分の手とか足とか、お洒落で縛るっておかしいでしょ?

 それに動かし難くって嫌なんだ」

 

 彩人は取り付くように言ったが、百が訝しむ様な表情を作り言葉を返した。

 

「以前、触手を結ばずに形を変えて固定するだけでも訓練になると聞いた覚えがあるのですが…」

 

 百のその言葉に、彩人は痛いところを突かれた為うぐ…と呻いた。実は彩人は触手を縛らずとも触手の形を触手の力のみで変え、固定することが出来る。

 それに教授達にもそれは普段のトレーニング程ではないが、多少の訓練にもなると言われていた。

 

 

「それは…そうなんだけど…」

 

 しかし、それでも彩人には抵抗があった。

 これは彩人自身の感覚でしかないが、触手には神経が通っているために、触手の形を髪型の様に変えるのは自分がポージングを取っているのと同じ感覚なのだ。

 例え他人から見た様子ではなんとも思わなくても、本人的にはそれは恥ずかしくて許容できなかった。

  その為、触手型?を変える時は、自分の家か誰も居ない、もしくは人目の無い時にしかしていない。人前では恥ずかしくて出来なかった。

 

 ーー(我々目線では、自分がカッコいいと思うジョジョ立ち等をしながら走ったり、作業している様に彩人は感じている)ーー

 

 

 そんな彩人の事情を知らない百は、(周囲の人も何故、恥ずかしいのか良く分かっていない)逃げようとする彩人の、今はオレンジ色の触手を掴んだ。

 

「さあ!今度こそ、その髪型を私が何とかして男らしくして見せましょう!」

 

「そんなぁ…」

 

 今日は逃げられ無さそうだ、と思った彩人はガックリと気を落とした。

 

 

 因みに髪型はどうにかなっても彩人は顔立ちが女の子らしいので、あまり効果が無いという事に二人とも気付いたのは一通りの髪型に挑戦した後の事だった。

 

 

 

 

 その彩人と百の様子を烏墨夫妻と八百万夫妻は微笑ましげに見ながら話をしていた。

 

 

「いやぁ、二人ともすっかり仲良くなったようで何よりですよ」

 

「本当にその通りですわ」

 

 八百万夫妻は、嬉しそうに烏墨(うずみ)夫妻に話し掛けた。子供達二人の仲が良いだけでなく、幼くともお互いに教え合い、高めあっている現状に満足しているが故の反応だった。

 

 

「ええ、今は冗談も言い合える仲です。私の子供時代でもここまで仲がいい友人は中々居ませんでしたよ。」

 

「そうですね。それに昔は家同士で確執何てのもあったそうですけど、今はそんな事もありませんし、子供達も自由に将来を決められる。」

 

 いい時代になりましたね。という雨美の言葉に他三人は頷いた。この両者の家は昔は規律が厳しく、家同士で対立もしていたが、時が流れるにつれ確執は薄まり、規律も穏やかになっていった。そして八百万千花と烏墨雨美の代から仲良くなり、今では家族ぐるみで付き合う関係にまでななったという経緯があった。

 

 

「あの子達はヒーローに憧れている。その上実際にヒーローになるために努力している。あの年頃であそこまで一途に向かって行けるのは中々あることじゃない。

 我々親がちゃんとサポートしてやらねば行けませんな」

 

 甚兵衛がそう言った事で、この話題は一度締め括ろうとした。

 

 

 

「そうですわね。それにあそこまで仲が良いんですもの、夫婦でヒーロー何てのも面白そうですわね」

 

 が、からかうように八百万千花が発した言葉で空気が変わることになった。

 

 

「おいおい千花、百達にはまだ早い話じゃあないか?ついさっき小学生になったばかりなんだぞ」

 

 千花に反論した男性、八百万京一(やおよろずけいいち)は、相当驚いたのだろう。ぎょっと目を見開き、自分の妻を見た。

 

「いいえ、早いからこそですわ。彩人君は自覚はまだありませんが、既に百は意識自体は薄いですがし始めています。

 これから成長したら恋愛に発展する可能性は十分ありますわ」

 

 京一は、千花にもう一度反論しようと口を開こうとしたが、先に話に食い付いた雨美の言葉に遮られてしまった。

 

「良いじゃないですか!幼馴染みで夫婦でヒーロー!素敵ではないですか!」

 

 やはり女性は恋愛話が好きなのだろう。そこから女性二人で会話が始まった。大分話に熱が入っていた。

 因みに甚兵衛は女性陣から少し離れている。話が飛び火するのを恐れての行動だった。

 

 

「し、しかしだがね、まだ将来が決まったわけじゃないんだ。そう言った意味でもまだ早いと思うんだが…」

 

 しかし、女性二人がそんな状態でも京一は苦言を呈そうとした。父親にとって娘は可愛いもの。理性では良縁ではないかと思っていたが、やはり感情では納得出来ない。どうにか反論しようとしたが……。

 

「あなた、何を言ってますの?彩人君の現状を見てみなさい。あの子は今ですら幼いのに、何年も前から今に至るまで努力を怠ってはいませんのよ。

 その上、様々な分野の高名な先生方に教えを乞いつつ、親密な関係を結んでいます。つまりあの子独自の人脈を築きつつあります。

 あの子は今の時点でも他の子供達より遥かに進んでいますのよ。

 百の幸せを願うならこれ以上の良縁は無いとはっきり言えますわ」

 

 寧ろ、今だからこそですわ。と言葉を続け、千花は話を切った。ここまで捲し立てるように言われては京一は最早反論する気も失せてしまった。

 その上意気消沈した事もあり、より深く千花の言葉に納得してしまった。

 

 

「そう言われれば…確かにそうだな…」

 

 京一はそう言って女性陣二人から離れた。二人はすでに、未だ始まってすらいない子供達二人の恋愛話に熱を上げている。

 

 

 肩を落としている京一の肩を甚兵衛がポンと軽く叩いた。

 

「だからやめた方が良かったんですよ。この手の話題では女性には勝てないんです。」

 

 甚兵衛の言葉には実感が籠っていた。心なしか乗せられた手がそれを表すかのように重く感じた。

 

「私もまだ早いと思ってたんです。これからの事は誰も分からない、でも、もしそうなるのでしたら子供達を祝福する。それで良いじゃないですか」

 

「そう…だな。…それもそうだ」

 

 顔を上げた京一は少し立ち直った様だ。少しすっきりとした表情を浮かべた。

 

「そうです。取り敢えず、今まであまり話す機会が無かったんです。あちらで我々男性だけで話でもしましょう」

 

 甚兵衛の言葉に京一は頷き、甚兵衛と色々と話し合った。今まで仕事等の関係で話す機会が無かった為、話はより弾んだ。

 

 

 この日男二人に軽い友情が芽生えた。

 




読了有り難う御座います。

知らない方の為に原作のインクリングの身体スペックを書いてみました。
これらは公式設定とゲーム内での行動を現実に当てはめた際のものになります。


一般のインクリング


 ゲーム内では彼らは、公式設定で全員凡そ14歳、ヒトになれるのも14歳、恐らくヒトになって最低一年以内だと思われる 

 人型とイカ型の二つの形態に自由にほぼ一瞬で姿を変えられる

 インクの色を変更すると頭の触手の色も変わる

 インクを圧縮するインク袋がある

 現在の色以外の色のインクを踏んでいる間、ダメージを受け、動きが著しく遅くなり、イカ化で潜ることもできない

・ジャンプ力は150cm

・水中は泳げない

 
  イカ状態
 

・陸上では動きが緩慢だが、基本的に物理的干渉は隙間があれば流体の為すり抜ける

・インクの上なら非常に素早く移動が出来、例えインクを塗っただけの浅さでも、頭ほどの面積でも、沈むように潜り、垂直な壁までなら自由に移動することが可能。

・来ている服、そして自分の腕で持てるもの、ブキであれば生物以外すべて保持した状態でイカ形態になり、インクに潜れる。
 ただし、重量によりイカ化している時の動きが遅くなる

・インクの中にいる間潜っているインクを消費する事なく数秒で限界までインクを補充可能。

・インクを噴出し高く、長い距離を跳躍する事が可能

 
  ヒト状態
 

・ブキを通してインクを放出することができる

・頭にイカのゲソのような部分があるがあまり自由には動かせない

・骨がなく肉体は細身ながら見た目より遥かに力が強い、
計算上重さが100kgを越えるダイナモローラーというブキを疲れる事なく振り回せる
(ゲーム内の持ち方だと梃子の原理で、体感では倍以上の重さ)

・数十mの高さからかなりの勢いで落ちても難なく着地出来る

・100m先でもはっきり見える視力をもつ

・瞬発力は無く、駆け足程でしか移動できない

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