初めまして、STMです。
はじめての投稿です。
原作と、違うところもあるかもしれませんので、気を付けてみてください。
1話目には、ダンまち要素は皆無です、申し訳ありません……。
ガァァァァァァアアアアア!!!
身も凍るような叫び声が響く。
憎悪・殺意とともに、憤怒が伝わってくる。
何故、裏切ったのかと。何故、故郷を捨てたのかと。
悲しさの果てに、住民を殺し、住民に殺された哀れな男。
その成れの果てが『これ』だ。
殺した住民の命を『代償』に、共に過ごした『愛犬』を取り込んだ姿……。
その瞳には、存在しない住民が見えているのだろう。
いまだ、自分の村から出ていかないのが、良い証拠だ。
村に近付くもの全て、村から出るもの全て、その手で殺し、守ってきたのだろう。悲しいことだ。
「……俺を殺すか」
故に、目の前の障害を排除すると言うことを、この『化け物』は躊躇わない。
赤い瞳が、目の前の男を捉えた。
動けば殺す。赤い瞳は、そう訴えていた。
だが、男はそんなこと関係ないとばかりに前に進んでくる。
黒いフードを深くかぶり、顔は見えない。
だが、特徴的な部分があった。
男の『右腕』である。
包帯を何十にも巻いてある右腕は、包帯を巻いていない場所さえも白く染まっている。そして、包帯の隙間から、羽の様なものが飛び出ている。
だが、不思議と恐ろしさはなかった。
感じるものはある。だが、恐怖とは違うもっと優しいもの。神聖さを感じた。
グルルルゥ!!!
化け物も、それ感じ取った。
あれは『異質』なのだと。そして、明確な敵であると。
"村を守る"と言う思いをもって、化け物……『ケルベロス』は走り出した。目の前の男を滅ぼすために。
「来るなら来い」
俺がお前を……
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
ドゴォッ!!
地面が砕ける音が響いた。
ケルベロスが、男を仕留めるために殴りかかった。だが、男は避け、打撃はそのまま地面へと何度も衝突する。
地面がえぐれ、砂が巻き散る。
ならばと。
ケルベロスは姿勢を低くした。男に狙いをつけて、タイミングを見計らって走り出した。
突進。
避けられたとしても、避けた先に腕を振るえば当たる。
殺せる、と考えたケルベロス。
「本能で通常攻撃は聞かないと踏んだか。野生の本能かそれとも人間であったときの経験か……」
男はボソッと呟いた。
ケルベロスは突っ込んだ。
ドガァン!!
吹き飛んだ。体が後方へと浮き上がりそうなのを踏ん張り耐える。
ケルベロスは『一歩も動いていない』男を睨み付けた。
吹き飛んだのは『ケルベロス』だった。
突進したのは自分だ、攻撃したのは自分だ、殴られたのは相手だ。なのに何故、自分は吹き飛ばされているのか。
答えは、男からわかった。
男は右腕をこちらに向けており、その腕の先には岩が浮いていた。あれだ、あれにぶつかったのだと。岩を盾にされて、それに阻まれたのだ。
刹那、ケルベロスの肩を『何か』が貫いた。
痛みを感じて肩を押さえる。触れてみて、血が流れていること確認する。考えている間にやられた、と分かるのは数秒後。
一体何にやられた……と思い、男をよく見る。
みれば、男の周囲に刃の破片のようなものがクルクルと回りながら浮いていた。
男が右腕を振り下ろした。
来る、とケルベロスは横に避けた。刃の破片はこちらへと迫ってきて……まるで意志があるかのように、追いかけてきた。
……っ!!?
顔と肩、そして腕に当たった。
血が飛び散るが関係ないと言わんばかりに、その場から離れる。予想外、と言わざるを得ないだろう。
追尾性能。
大きく避ければ当たりはしないだろうが、ケルベロスと男の距離はかなり離れている。曲がるには十分の距離だ。
隙は与えないと、男はケルベロスに刃の破片を投げ続ける。幾枚もの刃の破片が、ケルベロスへと当たる。致命傷とはいかないが、それでもかなりのダメージを負う。
このままではやられる。
ケルベロスは恐れた。自分はここを守らなくてはならない。やられるわけにはいかないのだと。殺されるわけにはいかない。
ケルベロスとなった『人間』は、元々は衛兵だった。愛犬と共に、自身の村を守っていたのだ。そんな人間だった頃の思いが、今も体に染み付いているのだ。そんな『化け物』が……戦うことを止めるわけがない。
ガァァァァァァアアアアア!!!
ケルベロスは立ち上がった。
体はボロボロ、満身創痍である。それでも立ち上がった。攻撃も通用しない。それでも立ったのだ。つまりは……。
「切り札……か」
ケルベロスの特徴は2つある。
1つは3つの首をした獣人であること。これが、驚異的な力の大本である。鋭い爪と牙、そして圧倒的な力と速さ。この力で多くの者達を殺してきた。
そして、もう1つは胸に刺さった赤い槍だ。
ケルベロスとなった衛兵は、自身の槍で多くの住民を殺し、最後は槍で殺された。胸に刺さっているのは、その時の名残だろう。
ケルベロスは胸の槍を『抜いた』
血が溢れ出るのも気にせず、それを天へと掲げる。
バチッバチッ!!
火花が散った。よく見ると槍から赤い雷が出ていた。少しずつだが、その規模を大きくしている。雷は徐々に槍の
ケルベロスは、その赤雷の槍を地面へと突き立てた
溜まりにたまった雷は、槍を中心に全方位に展開していった。地を走る雷は、触れるものを粉々に破壊しながら男へと向かっていく。
雷を防ぐには盾では不充分、後は避けるしかない。男は横に避けようとしたが……。
「…っ!!?」
雷が意思を持つかのように、男を追いかけた。
つまり、先ほど男が使った刃の破片と同じ性質を持っているということ。
雷はそのまま男へとはしり、直撃した。
土煙が舞い、その中に『血』が混じっているのを、ケルベロスは自身の鼻で確認した。ダメージが入った、というのは明らかだった。
死んだか、と判断するには足りないが、腕一本は取れたはず、と。
土煙が舞うなか、ケルベロスは男の方へと歩き出す。ジリジリと音が響いている、その場には一つの影が見
えた。
男のものだ。
『片膝をついた』ような影をしていた。
思わず、グルルぅ、と喉がなるケルベロス。
避けられ、止められた攻撃。ようやく手応えのある一撃を与えられたことに対する歓喜だった。
「…流石に侮りすぎたか」
土煙が晴れていき、男が片膝をついた状態でケルベロスを見上げていた。スクッと立ちあがり、ケルベロスに警戒をしつつ、構えた。
ケルベロスも、次で仕留めようと構えた。
だが、不可解な事があった。
ケルベロスはもう一度、男の『体』を確認する。
相も変わらず深く被っているフード、特殊な形状をした右腕。何も変化はない。
そう、変化がない。
ケルベロスはあのとき、血の匂いを確かに感じた。にもかかわらず、男は血が流れるどころか、臭いすらしなくなっている。
ザシュ。
一体、何が起きたのか。
目の前から男が消え、自分の首が一つ、飛び上がった。一瞬の出来事だ。何も見えなかった。
ケルベロスは男を見た。
ゆったりとこちらを振り向く男の手には、一本の槍が存在していた。
「さぁ、続きと行こうか」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
一方的な蹂躙だった。
早く、それでいて鋭い一撃をケルベロスは目で追うことも出来ず、そのまま地面へと倒れ込んだ。
すると、ケルベロスの体が崩れ始めた。
ドロドロと、黒く汚い液体となり、形が無くなっていく。しばらくすると、黒いヘドロは消え、その場には一人の男が現れた。
この男は、ケルベロスとなった『元衛兵』だ。
つまり、魔物から元に戻ったのだ。
「たす、けて……まだ、死にたくない……」
起き上がった男から出た言葉がそれだった。
愛する犬をも自身の体に取り込み、魔物となってまで村を守ろうとした人間。
だが、それ以上に犠牲が出た。
村を訪れたもの、村の住民だったもの、そして共に歩んできた愛犬。生かすほどの価値など、ありはしない。
男は、自身を倒した男に右腕を向けられた。
駄目だ、殺される。
犯した罪が無くなるわけがない、また殺すかもしれない人間を救う必要など無い。男は素直に諦め、目をつぶった。
だが、向けられたのは光だった。
戦いに敗れ、傷ついた体を癒すかのように、自分の体は楽になっていく。何が起きたのかわからない。気付けば、立ち上がれるほどには回復していた。
何故、助けたのだと。
衛兵は聞いた。
「俺の仕事は『魔物を討伐すること』。人間は管轄外だ」
嘘だ、と言いたくなった。
が、それを男に手で止められた。
「それに……お前今、死ぬべきだと考えているだろう?」
図星だった。
多くを殺して、何も守れなかった。そんなやつが生きていても意味はないと。
「それは『逃げ』だ。自分の犯した罪を意識して、罰されるべきと言い訳を立てて逃げようとする。そんなやつを、殺すことなどしない」
それに……。
「ケルベロスは死んだ。誰も、お前を魔物だとは思わない。なら、後は生きるだけだ。死んだのならば、一からやり直せ。自分の罪を恥じるのなら、それを一生かけて償え」
それが、お前の生きる意味となろう。
男はそれだけ言うと、その場を離れた。
最後に聞きたいことを、衛兵は大声で聞いた。あなたの名前は、と。
「……俺の名はリブロム、魔法使いだ」
見てくださりありがとうございました。
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