死をもって、救済する   作:STM

6 / 8

 片翼クラフトも、10partまできたかぁ。
 早いねぇ。

 次は何作ろうか迷うなぁ。1つは確実に決まってるんだけど、雪関係や氷関係の建物って作るの難しい。

 まぁ、こんな話は後にして。
 ではでは、本編どうぞ!



『禁術』

 

 

 

 フィンは納得した。自分の『親指』がずっと疼いていたことに。

 

 黄金の空間。

 グリフォンは自分の財宝を落としただけで狼狽え、拾い集める程だ。そんな魔物が、外からこれほどの財宝を冒険者から集めることなど出来ない。

 だから、集めさせたのだろう。

 この場にいる金欲に溺れた魔物『スライム』に。

 

 入り口にべちゃべちゃとした金があった。それは、間違いなくスライムの体から出たものだ。可能性に気付くべきだったと、今さら後悔する。

 

 グォォォォォォォォ!!

 

「慌てるな。あの種は移動が遅い。体の金塊を周囲にバラ撒くが、その範囲も狭い。冷静に見ていれば全部に対処はできる」

 

 バシャバシャ。

 落ちてくる金塊も早くはない。冷静に分析しつつ、避ければなんとかなる。全員がそれを避けれるだけの速さもある。

 リブロムは、避けつつも炎悪魔の矢尻を投げつける。柔らかいスライムに突き刺さり、奇声をあげる。

 

 強くはない、だがそれを補うだけの数。

 苦戦を強いられるが、彼らも多くの試練を乗り越えてきた冒険者。この程度、負ける理由にはならない。

 

 それは、相手も同じこと。

 

「っ!!なんで!?」

 

 リブロムはティオナを吹き飛ばした。

 その瞬間、リブロムを一つの光が貫いた。何事だとその方向を見れば、グリフォンが光の弾をとばしていた。

 庇われた、と理解するのに時間はかからなかった。

 

「罪悪感を感じるなら後にしろ。今はこの現状をどうにかする事だけ考えておけ」

 

 倒れ込んだと思われたリブロムは何事も無かったように立ち上がった。光のレーザーのためか、目は閉じている。

 リブロムはオラリオで一番の防御力を持つ男。

 この程度で、怪我はしない。

 

 リブロム達にスライムが意識を向けている間に、フィンは後ろからスライムを突き刺した。

 グニャリ、グボッ

 スライムの体に槍が突き刺さった。だが、スライムは倒せていない。硬質な純金を体内に取り込んでいるのはスライムも同じ。

 

 グリフォンと違うのは『柔らかさ』。

 

 スライムは皮膚を金で覆ってはいるが、金はドロドロと溶けている。液体状の体に槍が沈んだだけ、ということだ。

 

 とはいえ、フィンの槍には炎の付与がされている。沈めば沈むだけ、スライムはダメージを受ける。

 スライムの皮膚は少しずつ溶けるが、大きさからして、余り効果は見込まれない。

 

 リブロムが投げた炎の矢尻もあまり効果はなかっただろう。

 

「全員、その場から離れろ!」

 

 スライムは体が潰れたようにしゃがみ込んだ。人間の足のように、バネを使っての跳躍。自身の重さで叩き潰すと考えたのだろう。

 複数体が、4人の頭上へと跳び上がった。

 直ぐ様その場を離れた。

 

 ドゴォォォォォォォォォォ!!

 地面のえぐれる音が響く。

 土煙が視界を覆う。スライムの落ちた場所には、クレーターが作られていた。大量の金を吸収したため、重量が増している。

 

 休むことなく、他のスライムが触手を鞭のように使って攻撃してくる。粘着性のある触手には、多くの瓦礫や金が引っ付いている。

 

「あの触手じゃ、避けて近づくことも無理じゃない!」

 

 スライムの触手はサイズで言えば小さい。だが、触手に絡み付いている財宝や戦いの余波で出来た瓦礫のせいで、後ろに避けるしか方法がない。

 

 完全に攻めあぐねている。

 

「フィン、此処から離れろ」

 

「?どうするつもりだい?」

 

「別にどうもしない。俺のやることは変わらない。あの者たちを救済するだけだ」

 

 目の見えない状態でスライムの攻撃をすべて避ける。

 リブロムは、見えざる目、心眼という力を用いており、スライムの攻撃やグリフォンの攻撃を完璧に把握出来ている。

 ただ、これをしている間は攻撃ができず、魔力も少しずつだが消費している。

 

 リブロムの言葉にフィンは疑問を持つが、何かしらの打開策があるのは理解した。敵を倒す算段がない中、リブロムを頼ることが今一番勝算があった。

 

「わかった。無事に帰ってきてくれ」

 

 ティオネとティオナを連れ、少しばかり距離をとる。

 グリフォンも生きて、スライムも大群。どうでるのか、フィンは興味があった。

 

 いきなりだが、リブロムの魔法を説明する。

 リブロムの魔法『代償魔法』には2つの特徴がある。1つは『何か』を『代償』とすることしか発動しないこと。これは当然であり、誰もが周知のこと。

 そして、もう1つは捧げるものの『大きさ』

 これは、サイズの問題ではない。代償魔法を使う者にとって、供物に捧げるものがどれ程『大切』かと言うこと。

 犠牲を払う、と言うことはそう言うことだ。

 

 グリフォンやスライムを倒すには炎の威力も力も足りない。ならば、さらに大きな物を代償とすればいい。

 

 リブロムは自身の『体』に右腕を置いた。

 

「ぐぅっ!!…ぐがぁぁ!?」

 

 リブロムから苦痛の声が聞こえた。

 どうしたのかと、フィン達は近づこうとする。だが、足を止めた。

 リブロムの体から、赤黒い瘴気が溢れ出ていくを目にしたからだ。あれはいけない、触れてはならない。親指でなくても、それが感じ取れた。

 

 赤黒い瘴気はリブロムを包み、体に赤いヒビを入れていく。体を壊していると、誰にでも理解できた。

 

「あぁ…!!あ"あ"ア"アァァァァァァァ!!!」

 

 リブロムの魔法は代償の大切さできまる。

 リブロムが現在、代償として使用しているのは自身の『皮膚』。つまり、皮。

 自身の体は供物とは違い、これからの人生をも左右するほどのもの。威力を上げるには、これがてっとりばやかった。

 

 謂わばこれは『禁術』だ。

 

 リブロムの体から、チリチリと火が出てきたかと思うと、炎に囲まれてしまった。その炎は直ぐに消えたが、それとともにリブロムの『皮膚』が……無くなった。

 黒く焦げた体を必死に動かし、リブロムはそれを発動した。

 

 

 

 

 

「『サラマンダー』」

 

 

 

 

 

 突如として、リブロムの背中に一人の炎人が現れた。

 4本の腕をした炎人は、自身の体の炎を周りへと解き放った。

 爆炎。

 この世のすべてを燃やし尽くすのではと、フィンは思った。何故、自分は無事なのかと疑問に思うほどに。

 

 炎はスライムを、遠くにいるグリフォンを呑み込んだ。ジュワァァァ!!と、金が熔けていく音が聞こえた。見れば天井も地面も、周りにある財宝も熔けている。

 ここで起きているのは、災害級の火事であると……無意識に思った。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 煙が立ち込み、至るところが少し燃えている。

 先程の炎が止まった。理解した瞬間、フィンはリブロムの元へと走った。皮膚を焼き、あの爆炎の中に居たのだ。只ではすまない。

 少し走れば、そこにリブロムはいた。

 

 皮膚が黒く、目を開けているのかすらもわからない。

 フィンは近づき、無事なのかを確認した。

 

「リブロム!」

 

 返事はなかった 。

 だが、体がピクリと少し動いている。死んでいないことを確認すると、フィンはリブロムの鞄から『エリクサー』を取り出す。

 

 長年の付き合いで、リブロムが何を持ってきているのかは大体予想がついている。フィンはリブロムに、ゆっくりとエリクサーを飲ませた。

 すると、少しずつ焼けた皮膚が戻っていく。

 ホッと一息つくフィンは、もう一度周りを見渡す。先程のスライムたちの姿はなく、その場には多くの冒険者の姿があった。全員が苦しみながら、何かにすがる様に手を伸ばしている。

 

 ティオネとティオナは今の現状に言葉を出せないでいる。

 冒険者である者たちが、この魔物の正体。その現実を受け入れることはできないようだ。

 助けてくれ、と口にする者たちにティオネは怒りを抑えられなかった。

 

「ふざけんじゃないわよ!!あんたたちのせいで、こっちは死にかけた者がいる!!金のために人を殺して、魔物になるまで欲望に溺れた癖に、今更助けるわけないでしょ!!」

 

 もっともな言い分であった。

 多くの冒険者が彼らの被害にあったのだろう。リブロムも、あの禁術でこの有様。言い返すことなどできはしなかった。

 救いはないのだと覚悟を決めた彼らに、1つの手が伸びた。

 

 リブロムだ。

 

「ちょ、ちょっと……!!」

 

「お前たちは間違えた。金に目がくらみ、冒険者をだまして殺した。欲望のままに生きた結果、魔物となり、挙句の果てには助けてくれと命乞い。あきれてものが言えない。だが……」

 

 リブロムは笑った。

 

「間違えたお前らも、魔物だったお前らも…もう『死んだ』。お前らは上では死んだことになっている。ファルナもない。なら、やり直せ。欲望ではなく夢として、犠牲ではなく努力をして、誇れるような己になれ。安心しろ」

 

 1人のサポーターを右腕で救済しながら、リブロムはつづけた。

 

「また間違えても、俺が救済してやる」

 

 その場の全員が涙し、リブロムの名前を心に刻んだ。

 リブロムの行動に理解が及ばないティオネとティオナ。そんな二人に、フィンは言う。

 

「リブロムの行動は自己満足だよ。本人もそう言ってる。自分の体をあそこまでボロボロにして、それでもなお怒りもなく彼らを救う。依頼とはいえ、あそこまですることもない。それをリブロムは当たり前のようにする。異常だろう?怖いくらいさ……人とは思えないほどに」

 

 けど……。

 フィンはリブロムをみる。

 

 僕には彼のしていることが間違っているとは、思えない。

 世間的に正しいとは言わない。それでも、ここで見捨てたら大切な『何か』をなくしてしまうような気がすると、フィンは考えていた。

 

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 

 

 冒険者全てを救済し、リブロムはある場所へと向かった。

 先ほど、グリフォンがいた場所だ。

 

「わた、しは……なに、を……」

 

 グリフォンも、人へと戻っていた。

 金色のスーツに、蝶ネクタイをした男は……自分が何をしていたのか。それを思い返していた。

 

「そうか……わたし、は……像を……」

 

「そうだ」

 

 リブロムは答えた。

 男はリブロムを見て、彼の抱えている金の像。自分が何よりも愛していた金の像をを見つけ……何も感じなくなっていた。

 男は疑問に思った。なぜ、これを大切と思わないのかと。

 

「人は魔物になるとき、必ず人として大切なものを代償にしている。金の像を取り返す代わりに、お前は自分の愛した妻を殺したのさ」

 

「……ふ、ふふ……それが、原因か……」

 

 本当に大切なものとは何だったのか。

 作れば手にはいる金の像か。一生に一度だけ愛した自分の妻なのか。

 今なら分かると、そう感じた。

 

「……」

 

 サラサラ~。

 男の体が砂金へと変化していく。

 元々、大昔にここへ来た人物。時間による死だ。リブロムであろうと、時間に逆らうような救済はできない。

 

「……1つだけ、お願いがある……」

 

「聞こう」

 

「…ふふ、何もまだ、言って、いない…のにか…?」

 

「それが、お前の最後の望みなのだろう?」

 

「……その像、砕いてくれ…」

 

 自分の目の前で、と言うことなのだろう。

 昔の彼なら絶対に口にしなかった言葉だ。

 

「…自分で、自分に……終止符を付けたい……」

 

「……あぁ、分かった」

 

 リブロムは、了承すると……金の像を地面に叩きつけた。バキィン!!と、砕けちり、粉々になった。

 

「……ありがとう」

 

 男は満足した顔で消え去った。

 人を救済することは、人の命を助けるだけではないのだと。リブロムは自分に刻み付けた。

 

 






 あのときこうしておけば良かった。
 そう思うことがよくあります。後悔って言うのかな。ある人は、そう思ったことがないって言ってた。自分がやって来たことに満足できるって。
 そういう人って凄いよね。

 やりたいことと、やるべきことの両方を出来たってことなのかもしれないから。

 今回もご覧いただきありがとうございました。
 小説のお気に入り登録・好評価・感想・意見・アドバイスなどお待ちしております。
 可能であれば、YouTubeの片翼チャンネルもご覧ください。茶番などで楽しんでいます(苦笑)

 ではでは、また次回お会いしましょう。
 またね!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。