After The BLEACH 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「くっ!」
すかさず僕の受け止めていた2本の指を蹴りあげようとしたので、剣を離してあげると、そのままバク宙で後に下がっていく。
ジャリジャリとなる地面に僕は苺花を止めようとするが、苺花は後ろに下がったその瞬間、目の前から消えて、
頭を下げる。
そこには横薙ぎに通り過ぎた刀があり、背後には苺花がいた。
そこから袈裟斬りに移行しようとしたので、僕もさっき苺花が使った消える歩法……瞬歩(しゅんぽ)を使って、距離をとる。
空振る苺花の刀に、苺花の本気具合を見ながらも、僕は苺花に話しかける。
「いち「うるせぇ!」…………」
苺花は、肩を震わせていた。
「色々言いたいことあったけど……あんたのその姿見て全部忘れた……」
そして、僕を見て、
「轟け!白猿(しらざる)!!!」
"名"を、口にした。
吹き荒れる大気。
そして感じる、寒気。
霊圧が跳ね上がる。
そして見える、苺花の姿。
「始解……できるようになったんだね……」
「うるせぇよ……」
苺花の頭の上に真っ白な小さい猿がいた。
そして、苺花の握る刀……斬魄刀は、黒一色に染まっていた。
「とりあえず……何年越しの決着かは忘れたけど、仕返し、させてもらうよ!」
獰猛な笑みを浮かべた苺花が、飛び込んでくる。
僕は自分の刀を抜くか迷った挙句、苺花の刀を躱すことに専念することした。
さっきと変わっていることは……剣術は…………環境の変化は…………と考えながら躱していく。
まわりに変化した様子はない……。
剣術が高まったり、膂力が変わったりは感じられない……。
変わっていることといえば、苺花の持っている刀がじわじわと黒から白に変わって言っているってことくらいか。
何回目か分からない太刀筋を躱した後、苺花は僕と距離を離した。
多分刀の色の変化が終わったからだろうと当たりをつけ、僕は身構える。
その様子に苺花はニヤリと口元を変化させ、
「…………ふっ、一勇が舐めた真似してくれたから、ここまで来れたよ」
そしていつの間にかどこかへ行っていた苺花の白い猿は、頭の上に再度乗り、
「真似べ(まなべ)、白猿」
苺花のその長いポニーテールは真っ白に変わる。
明らかに、霊圧が変わった。
それも、洗練された、という意味で。
再び黒一色になった斬魄刀を持ち、
「教えろ、白猿」
苺花の、姿が消えた。
考える。
下!
「シっ!」
足元を薙いだ斬魄刀は僕の真下で、急に上を向く。
腰に差していた刀を鞘から引き抜く暇もなく、自分と苺花の斬魄刀の間に入れ込む。
ギィンっ……
僕は苺花の刀を蹴り、一気に後ろに下がる。
苺花の追撃は、止まない。
先を見据えられた攻撃。
突きから薙ぎ、薙ぎから切り上げ、袈裟から突き。
ギリギリで防いでいく。
僕が刀を使わなきゃ避けることが難しく、さっきの苺花から考えると、有り得ない。
その間に、苺花の髪の色は白からだんだんと元の色である赤色に戻っていく。
しかし、それに反して同じペースで苺花の斬魄刀はその色を白に染め上げていく。
予想が正しければ、これ、もう一段階グレードアップすると思うんだけど……と額に汗をかく。
"使えば、いいじゃないか"
それと頭にさっきからチリつく声に少し意識を割かれてしまう。
「なぁ…………あんた、ほんとに一勇か?」
「……それ、どういう意味だよ」
急に攻勢をやめた苺花は、僕にもう真っ白となった切っ先を向けて話す。
「私の知っている一勇は、すげー負けず嫌いで、全力で、かっこよかった」
「…………そんな時もあったかもね」
なんだか、イラッとする。
僕は何も変わっていない。
ただ、周りが変わっただけなのだ。
このチラつく声だって、周りが変わったから聞こえるだけ。
僕が死神になりたくないのも、周りが変わったせい。
「だから、そんな一勇とお別れするために、勝つよ」
勝手に僕を変えるな。
苺花の言葉に反論しそうになるが、ぐっとこらえる。
僕は、別に苺花を倒すためにここに来ているわけじゃない。
「じゃあね」
苺花の髪色が変わる。
そして、こちらに向かってくる。
その顔にあるのは、悲壮。
落胆。
僕は、カチンときた。
ここで刀を抜くことはしないが、勝たせてはもらう。
「破道の四、白雷」
刀を持っていないほうの指から、1本の小さな雷が苺花に向かう。
当然、苺花はなんなく避けるが、
「縛道の四、這縄」
避けた先に待ち受けるのは、縄。
苺花はそれを避けきれず、縄に斬魄刀を持っている方の腕を取られる。
しかし、苺花は気にせずこちらに向かってくる。
僕はその縄を一気に手繰り寄せ、足で縄を踏みつける。
そのせいで、苺花は腕を下げられ、頭を下げてこちらに向かってくる。
そして僕はその苺花に対して、
「これで終わり!」
ゲンコツをかましてやった。
「いやー、一勇さん、訛ってないっすねぇ」
「…………喜助さん……?」
「あ、あの、一勇さん……?あたしはあなたのためを思って……」
ゲンコツで伸びた苺花を肩に担ぐと、どこからともなく喜助さんが現れた。
そんな喜助さんを睨みつけると、喜助さんはあたふたと弁明を始める。
そんな様子に食ってかかってやりたかったが、どうなろうともこの人に先読みで勝てるわけがないので、諦めた。
「温泉、どこでしたっけ?」
「…………一勇さん、しばらく見ないうちに頭が回るようになりましたね」
「……諦めてるだけですよ」
喜助さんの案内についていきがてら、雨さんに自分の体を近くに持ってきてもらうように頼む。
ついたのは、馬鹿でかい地下室にも関わらず、存在感を放つ温泉。
その中に黒装束……死覇装を着たままの苺花を少し雑にお湯につける。
このお湯は回復増進作用があるので、なにか怪我をした場合でもなんとかなるだろうと、僕は高を括り、近くにあった岩に腰掛ける。
「あら、一勇は浸からないのか?」
「そうですよ、使っといた方がいいのよさ」
そこに後ろから声をかけるのは、ぬいぐるみと本物の猫2匹。
俺はその2匹を一瞥して、ため息をついてから、
「あの勝負、結局僕一撃も攻撃もらいませんでしたよね?」
「あ、それが不思議なのよさ!」
「不思議?」
俺はベリの言葉に聞き返す。
一方の夜一さんは、何かを考えているのか、黙ったままこちらを見つめる。
「もう多分バレてると思うけど、苺花の斬魄刀の力は……「学習と、実践、ってとこでしよ?」…………そうなのよさ」
斬魄刀には、無二の力が宿る。
死神見習いにも、当然無二の力が宿っていて、死神はその力を使って戦っていく。
「まぁ、露骨に見せちゃったからあれだけど、あの真っ黒の刀身が白に変われば変わるほど、学習していく。
そしてあの刀が真っ白になれば、その刀を振った時の相手の状況の学習が終わる。
そして解放すると、それが自分に還元され、相手に合わせた戦い方をできるようになる、ってとこでしょ?」
「さ、さすが一勇さんですのよさ…………」
これでも昔は強かったんだからね、とベリの方から目をそらしながら答える。
「ほう、それでは一勇、お主なんで還元した苺花に対応できた?」
「………………」
無言で夜一さんを見返す。
どうやら喜助さんはもう分かっているのか、遠くからこちらを見ている。
俺は諦めて、溜息をつきながら答える。
「僕はあの時、刀を使わないで、体捌きだけで避けていた。
あの刀は、それを学習した。
と、いうことは、僕が刀を使えば、"刀を使っていない僕"に適応した苺花にも対応できる」
「…………なら、お主はあれを何回目まで防げる?」
僕が再度夜一さんを睨むと、
「おーい喜助!何回だと思う?」
「えっ?!あたしに話を振りますかい?!
うーーーん…………」
いきなり喜助さんに話を降った。
話を振られた喜助さんはしばらく考えてから、微笑を浮かべ、
「恐らく4回目くらいで殺してしまうんではないでしょうか」
ベリは顔を青ざめさせる。
当然だ。
その答えは圧倒的に苺花より俺の方が強い、という事になってしまう。
そしてその喜助さんの回答に俺は一言、そうですよ、と告げた。