After The BLEACH 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「ただいまー」
僕が家に帰ったのは、ちょうど夕飯時の時間帯だ。
結局、苺花は起きた瞬間、俺に謝ってきた。
それに面食らった僕は、謝り返した。
そして色々謝り合戦が始まった頃に、喜助さんの、残りはケータイでやり取りしたらどうっすか?もう飯時っすよ?、という言葉に救われ、帰ることが叶った。
「おかえりー!」
「おかえりー」
ハキハキとした声に、間延びした返事。
親父ももう仕事終わったのか、と思いながらリビングに入ると、親父がゴゴゴゴ、となりそうな勢いの覇気を醸し出しながら座っていた。
その姿に思わず身構えてしまうが、母さんの表情を見て察した。
僕は観念して、親父とテーブルを挟んで向かい側に座る。
「一勇……」
「はい」
「………………言うことは?」
「…………飯食った後になりました」
親父は俺のことをしっかりと分かってる……と思っているからか、苺花と仲良くしないことに敏感だ。
まぁ、親父の考えていることは分かるし、俺もそれでいいと思っているため、そうしてる。
だから、親父の言いたいことは分かる。
苺花を泣かせたことに対して、ケジメを付けたのか、というあたりの話だろう。
すると、親父の覇気は、すっと消えていって、その後少し悲しそうな顔をした。
「それで、喜助さんから聞いたんだが……」
「あぁ…………成り行きで仕方なく、ね」
やっぱり
親父は俺が死神になることに1番反対している。
というか俺が死神になりたくないのは、1番は親父が原因だ。
親父を見ていればわかる。
有り得ない霊圧を常にしまって生きている。
そんなことが分からないわけはないので、俺としては親父がどんなことを考えているのか理解したいのだが、親父はほとんど昔のことは話さない。
それに母さんはのらりくらりと話を躱すので、俺は親父たちの馴れ初めとかを聞いたことがない。
でも、気にはなる。
「一勇……俺は…………」
「はいはい、お父さんはちょっと違う部屋に行ってて」
親父が下を向きながら俺に話そうとすると、横から母さんが入ってきて、親父を押しやってしまった。
部屋から追い出された親父にボソッと耳打ちした母さんは、こちらを向いた。
「ちょっと、散歩しよっか」
「えっと……飯は……」
「うん?今日はお父さんが作ってくれるから、ね」
年甲斐もなくウインクする母さんに俺は苦笑いした。
「それで、ここは?」
なんてことない路地裏。
電柱に飾ってある電灯が、薄暗く光っている。
虫が飛び回っていて、もうそんな季節か、と思わされた。
「うーんと、ちょっと待っててね」
下唇に指を当てる母さんが何かを待っていると思ったら、突如、空からなにかが降ってきた。
吹き荒れる土煙。
思わず母さんの前に立っていると、目を疑った。
霊圧。
しかも、戦闘慣れしている。
人の形をしている……右腕と左腕からとびきり高い霊圧を感じる……。
右腕は大きな口がついている、赤と黒の腕。
左腕は、肩から角が飛び出している白と赤の腕。
視界が悪いせいか、胸の穴はわからないが、物々しい仮面を付けているため…………こいつは、
「虚か!」
僕は母さんを逃がすことを第一に考える。
母さんが戦えるなんて話は聞いたことがない。
いくら親父とか阿散井さんに強気でいられるからって、母さんが虚に対しても強いということは……可能性が低い。
"使いなよ"
そうだな、使うっきゃないよな。
僕は右手を虚空に突き出し、集中する。
が、
「があぁ!」
速い!?
思わぬ速度で接近されたことで、判断に迷う。
僕は母さんの前にいる。
避ければ、母さんに当たる。
仕方がない。
僕が盾になる!
生身の僕は、身体能力が高くない。
しかし、魂の俺の質が高いせいか、反射神経や感覚神経については自信がある。
だから僕はその運動神経の悪い体で、前に足を踏み出す。
すこしでも、母さんに危害を加えさせないように。
もう少しで……当たる!
その瞬間、
「三天結盾!私は拒絶する!」
僕の目の前に3匹の何かが現れたと思ったら、目の前を光が覆った。
そしてその光に虚の拳がぶつかる。
ガキィン!
耳を劈くような音と共に、僕の目の前で、虚の拳は止まった。
苦笑いを浮かべてしまう。
今の声は確かにそうだった。
後ろを振り返ると、両手を前に突き出したかあさんの姿。
「大丈夫だよ、一勇」
その言葉に安心した俺は、頭を冷やした。
どうすればいいのか、どう動けばいいのか。
すると、一瞬でわかったことがあった。
「もしかして…………チャドさん?!」
目の前の人物の胸には穴なんてなく、それ以前に霊圧だって集中してみると、荒々しいがまるっきりチャドさんだ。
それに拳に殺気が全然ない……。
これってもしかして…………
「僕…………騙されてる?」
後ろにいる母さんの苦笑いは俺の耳に届いた。
「とりあえず、話を聞かせてほしいんだけど」
「ん?どういうことだ?」
「風呂、ありがとな」
「おー、チャド、上がったかー?」
「チャドさんすごい鍛えてますねー……って、話戻したいんだけど!」
僕と母さんと、チャドさんは一緒に家に帰り、飯を食い、風呂に入るまでは、僕は終始考えっぱなしだった。
いや、親父が死神なのは分かってたけど、まさか母さんもだとは思わないし……というかチャドさんもなんかすごかったし…………どういうこと?
とりあえず、分からないことだらけだった僕は、一回考えるのをやめて、きちんと全部聞くことにした。
「うーんと、じゃあどこから話せばいいんだ?」
「えっ…………どこからって…………」
僕はしばらく考える。
とりあえず、僕が聞きたいことは全部だが、順序はちゃんと聞きたい。
だから考えて考えて、僕が出した結論は、
「親父が、死神になったところから」
すると親父は、その言葉に眉をあげて、クスリと笑った後に、
「明日」
「は?」
「明日、朝早く起きて、1から全部、教えてやるよ」
「だから、今日は苺花ちゃんとちゃんと話しな」
親父の笑い顔は、久しぶりに見た気がした。