After The BLEACH 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「チャドさん達は、親父達を追わないんですか?」
俺は警戒を続けながら、チャドさん達の方を見る。
チャドさんは何やら軽く柔軟を始める。
リルカさんは、なにやら手持ち無沙汰そうに自信の長いピンクのツインテールを弄っている。
そんな様子に、俺は警戒を解こうかと考えていると、
「よし」
チャドさんが一言呟く。
それを聞いたリルカさんは、どこからか取り出した不思議な形の玩具の銃を取り出す。
大きい霊圧は感じない。
しかし、気配はヒシヒシと感じる。
不思議な相手。
「一勇、あんたどっちを相手にしたい?」
隣にいる苺花から声をかけられる。
苺花は今にも走り出しそうなくらいワクワクしている。
「なんでワクワクしてんの」
「だってチャドさん生身であんな強いのに、あの霊圧感じたら……ねぇ」
ニヤリと笑う苺花に、将来が不安だな、と思いながら、僕は肩をすくめる。
苺花の目線はチャドさんをずっと見ている。
こりゃチャドさんは苺花とやるのか。
僕はリルカさんの方を見て、斬魄刀をチラリと見る。
囁きは小さく、特に戦うのに支障はない。
「じゃあ、苺花はチャ……」
その瞬間、チャドさんの姿が消えた。
咄嗟の移動に回避を選択する。
しかし、僕はチャドさんの後ろに見えたリルカさんの姿を見て、察した。
「集中攻撃、ね」
僕はリルカさんの玩具の銃から放たれたハートの弾丸を腕で受けた。
「一勇……?」
一瞬だった。
チャドさんの方を警戒していたら、チャドさんが突然一勇に向かって、一勇はチャドさんからの攻撃は避けれたけど、リルカさんの銃に……。
あたしは斬魄刀を構える。
すると、妙なことが起こった。
一勇の姿が消えた。
一勇はリルカさんの銃を受けた瞬間に煙になったようにその場から消えた。
一勇は霊圧を抑えてるからから簡単に見つからないけど、いる、ということは分かる。
けど、今はそれすら分からない。
「チャドさん……卑怯じゃないっすか?」
二対一。
いまの状況は分かりやすいくらい不利だ。
「リルカが戦うためには仕方が無いからな」
「そうそう、私元々戦うの得意じゃないし」
少し申し訳なさそうにするチャドさんと、ヒラヒラと手を振るリルカさん。
今まで相手にしてきたのは、戦うための存在。
だけど、リルカさんは違う。
戦いと別のところが強い。
あたしは目の前の2人を相手にする、という荷の重さを感じながら、斬魄刀を力強く握る。
「じゃ、私は行くわ」
「あぁ」
チャドさんとリルカさんがよくわからないやりとりをした瞬間、いきなりリルカさんは消えた。
さっき一勇が消えたように、煙になったようにその場からいなくなった。
あたしはリルカさんを探すべきか、と考えようとするが、辞める。
目の前のチャドさんから漂う気配を放っておけるわけが無い。
あたしは自身の斬魄刀を見る。
始解すらしていない。
一勇との戦いを思い出す。
終始やられてばかりだった。
きっと本気でやっていたら何回殺されていたのだろうか、というくらいに未だに力の差は歴然としていた。
あたしはまだ、成長しなければならない。
「苺花」
「は、はい」
いきなりチャドさんから声をかけられて、少し驚く。
「今回は、殺しでもなんでもない。
ただ、俺たちを知ってもらい、お前らに理解してもらうための、戦いだ」
ゆっくりと取られるファイティングポーズ。
どうに入ったその構えに、見取れてしまいそうになるが、あたしも刀を構える。
「だから、死ぬ気で理解しに来い」
膨れ上がる霊圧。
さっきも見たけど、チャドさんの両腕からそこらの死神を優に超える霊圧を感じる。
チャドさんはあたしの斬魄刀を知らない。
なら、チャドさんの予想を簡単に超えて見せよう。
だってあたしの斬魄刀は、
学ぶ(真似ぶ)斬魄刀なのだから。
「轟け!白猿!!!」
黒い刀身は、あたしの心。
白くなるのは、償いたいから。
「っと、死んだわけじゃないのか」
僕が目を覚ますと、そこはファンシーな世界だった。
犬、猫、兎、熊、といった数々の動物のでぬいぐるみ。
パステルカラーな机や椅子、はたまたタンスや鏡台なんかもある。
全体的に目に悪そうな色をしている空間に閉じ込められた僕は、感覚を張り巡らせようとして、
「はいはい、説明したげるから、壊そうとしないで」
「あっ、リルカさん、いたんですか」
「いたんですか、じゃないわよ。
さっきから緊張感のないやつねぇ」
そこで現れたリルカさんを見て、辞めた。
「やだなぁ、壊すわけないじゃないですか」
「いやいや、あんたいかにも壊す気満々で力解放しようとしてたでしょ」
「あー、確かにここがどこなのか探ろうとしてましたね」
「それだけであんなに怖いくらいになるものなの?」
確かに、霊圧の感知は割と繊細だから、霊圧の抑えが緩くなるけど、そういうふうに感じるんだ。
僕は立ち上がり、リルカさんの方を見て、軽く聞く。
「それで、なんかするんですか?」
「なんかするんですか、ってあんた、もしかしたら殺されるかもしれないのよ」
リルカさんが先程使った銃をこちらに向ける。
「いやまぁ、多分リルカさんだけなら大丈夫ですよ」
「大丈夫って、あんたなんの根拠があって言ってるのよ……」
「うーん……」
僕的には初対面の人だし、適当に言っておこうかな。
「これ、人を殺すように作られてないな、って感じたからですよ」
「ふーん」
「周りを見ても、殺傷能力を持ったものはないし、リルカさんからはやる気が感じられない」
正直に言うと、この程度の箱庭だったら、本気を出せば内側からでも壊せるだろう、と言うだけなのだけど。
僕の適当な発言は、リルカさんに何かを感じさせたようで、リルカさんは少し考えてから、
「それもそう……だけど」
「はい?」
「殺傷能力がない風に見える、ってのは油断ね」
すると、僕の体は動かなくなる。
なんだ…………?
視点は動くため、下の方を向いたりして、自分の異変を探る。
「自分の腕を見なさい」
僕はリルカさんの言葉に従うように自分の腕を見る。
そこは、先程リルカさんの攻撃が当たった所。
そこにあったのは、ハートのマークと、その中に書かれた『0』の数字。
「私、13って数字が好きなのよ」
僕は答えることが出来ない。
それをリルカさんも知ってか、話を続けていく。
「そしたら、いつの間にか私の能力に、こんなものが着いていた」
「カウントダウンは13秒」
「それを過ぎたら、私の言いなり」
「私もこんなものいらなかったんだけど、まぁ貰っちゃったから名前もつけたの」
「『余計な愛』(Unnecessary Love)」
僕はしてやられたなー、と思いながら、どうなるんだろ、このまま殺されちゃう……とかなのかな?と考える。
正直、親父が消えてから、僕はやる気を失っていた。
親父は勝手に決めたけど、それは僕を見ていない決断だ。
なにが僕に向き合う、だ。
ふざけんじゃない。
だから僕はやる気が出ない……いや、出さない。
「それであんたさ」
そんなことを考えていると、リルカさんから声が掛かる。
眼球だけでそちらの方を見ると、リルカさんはいつの間にか椅子に座っていた。
「あの女の子、なんで一緒にいるの?」
僕からの返答はない。
リルカさんは、少し待ってから、気づいた様に、
「発言を許可するわ」
その言葉で、声が出せるようになったことに気づいた。
僕はリルカさんの方を見ながら、話す。
「あの女の子……苺花とは、昔馴染みなんですよ」
「へぇ……だけど、あの子死神になるのよね?」
「えぇ、まぁ」
「で、あんたは死神になる気はない、と」
「それが………約束なんで……」
過去のことを思い出し、顔を歪め……ようとするが、リルカさんのお陰で表情を変えることは叶わない。
「約束って、誰との?」
「それは、親父との……」
「はぁ?あんたそんなに強いのに死神にならないって言うの?」
「…………それがなんだって言うんですか」
リルカさんは苦笑いしながらこちらを見る。
その目はなんだか品定めされているようで、気分が悪い。
「ふーん、あんたさ、将来の夢とかあるの?」
「将来の夢?」
「そ、答えなさい」
リルカさんの命令が、僕に聞こえると、僕は自分の意思とは関係なく、話し出す。
「昔は、死神になりたかった。
今は、誰にも迷惑をかけないようになりたい」
「…………あんた、生きてて楽しい?」
口から出た答えに、自分でもハッとする。
確かに、昔は死神になりたかった。
だけど今の夢は、確かに誰にも迷惑をかけないように生きる、それだけだ。
「生きてて、楽しいわけないじゃないですか」
「じゃあなんで生きてんのよ」
「みんなのためですよ」
「へぇ、言ってみなさい」
「親父や母さん、苺花とか恋次さん、ルキアさんに迷惑はかけたくない」
その言葉に、リルカさんは頭を抑える。
「…………あたしは、昔、やりたい放題やって後悔してる」
しばらくの沈黙のあと、リルカさんは話し始める。
「それでも、何回も後悔するようなことがあって、それで今、私はこうして楽しく生きてる」
それで何が言いたいのか、と僕はリルカさんを見続ける。
「あんたはさ、その後悔する、って大事なことを取られているのよ」
リルカさんは、悲しそうな顔でこちらを見る。
「てかこれほどまでに拗らせてるとか、一護、あんたどんな教育したのよ……」
まるで憐れむようにこちらを見る。
それはまるで、今までの僕に同情している視線のようで、
「とりあえず、あんた多分もうこれ以上一護のことを知るのをやめなさい」
なんだか胸のイライラが溜まってきて、
「私から一護にキツーく言っておくから」
僕は、耳元に未だ聞こえる囁きに、答える。
"使えば…………鏡花水月を、使えばいいじゃないか"
そうして僕の意識は暗転する。