After The BLEACH   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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ep9:Like and Don't Like

 突きは躱される。

 

 薙ぎは変質した右腕で受け止められる。

 

 袈裟が出来るような隙はない。

 

 チャドさんからの攻撃はあたしがギリギリ防げるように放たれる。

 

「お前は……」

 

 少し強めに放たれた右腕からの攻撃を受け止め、軽く吹き飛ばされた後、チャドさんは聞いてくる。

 

「なんの為に戦う」

 

 あたしはその質問に即答することができなかった。

 

 あたしはただ、父さんや母さんに追いつきたくて、一勇に追いつきたくて、必死に走っていた。

 

 だけど、それもある日を境に目標は消えてなくなった。

 

 それからはひたすらに強くなろうとした。

 

 白猿からは呆れられたけど、それでもあたしは前に進みたかった。

 

 一勇は常に私の1歩前にいて、父さんや母さんはその遥かな先にいた。

 

 1歩前すらわからなくなって、あたしは進み方がわからなくなったけど、なんとか、四席くらいまでの力をつけることが出来た。

 

 鬼道はからっきしだったから、座学的にはなれる訳じゃないけど、それは今後頑張ればいい。

 

 だけど、今、その力でさえも叶わない。

 

「わからないです!」

「そうか」

 

 私が少し考えてから結論を出すと、チャドさんは短く答える。

 あたしは白くなった刀身を確認し、叫ぶ。

 

「教えろ!白猿!!!」

 

 あたしの始解は、単純だ。

 

 相手と戦って、学び、実践する。

 

 あたし自身の力は上がらないが、戦えば戦うほどあたしは相手を倒すためだけの戦い方を出来る。

 

 だから戦えば戦うほど、相手を圧倒できるはずなのに、

 

「温い(ぬるい)」

 

 チャドさんが目の前に現れる。

 

 速いとかじゃない。

 

 技術だ。

 

 足運び、体の使い方、それらが速いように見せている。

 

 一度白猿を使わなかったら分からなかっただろう。

 

 あたしはチャドさんの左腕のパンチを刀で受け止める。

 先程吹っ飛ばされた威力だったが、今は受け止められる。

 

「苺花、と言ったな」

「な、なんですか」

 

 白猿の解放は、一度目と二度目で溜まるまでの時間が違う。

 次の解放までチャドさんを相手にできるとは、思えない。

 

「お前の刀は、軽い」

「そりゃあ、あたしは力が弱い方ですけど……」

「違う」

「じゃあ、なにが軽っ?!」

 

 その途端、チャドさんが両腕の変身が解ける。

 

 あたしはすぐさま刀を避けようとしたが、チャドさんはすぐさま右腕であたしの腹を殴る。

 

「かはっ」

 

 先程とは違い、弱い。

 

 それは分かるのだが、なんだろう、この威力は。

 

 痛くはないのに、痛い。

 

「分かったか?」

「なん……ですか……チャドさん……」

「…………」

「なんで……なんでこんなに強いんですか?!」

 

 なんだか、チャドさんを見ていると、苛立って来る。

 あたしよりきっと強いんだけど、チャドさんはあたしより弱くなるように手加減している。

 けど、その拳の一発一発は重くて、受け止めるのさえ難しい。

 

「それが理解するための」

 

 チャドさんは、ファイティングポーズを取る。

 両腕の変身はしない。

 それがなければ、チャドさんはただの人間と同じだって言うのに。

 

「来い」

 

 まだあたしは、チャドさんに叶わないと思う。

 だから。

 

 

 あたしは、始解を解く。

 

「チャドさん」

「なんだ?」

「胸、お借りします」

 

 構える。

 

 息を吐く。

 

 一つ一つの動作を、しっかりと行う。

 

 チャドさんの話を全部理解出来たとは、思えない。

 だけど、確かに今、あたしには足りないものがある。

 

 その何かは、きっとすぐには見つけられないものだろう。

 けど、チャドさんは持っている。

 

 なら、あたしは学びたい。

 

 白猿を使わないで、自分の力で。

 

 白猿が、鼻で笑ったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、一勇君」

 

 そこは、和の部屋。

 

 畳、障子の戸、掛け軸等。

 

 まさに日本人が考える、正に和の風景、と言えるような場所だった。

 

 そこに、一勇はいた。

 

 一勇の目の前には、温厚そうな笑みを浮かべた、メガネの男性。

 髪はくせっ毛なのか、クルクルとしている。

 

 服装は、苺花達と同じような死覇装。

 

 だが、その死覇装の上に、更に羽織を着ている。

 

 その羽織は、白を基調としたもので、背中には大きく、五、と書かれている。

 

「久しぶりだな」

「あはは……そんなに警戒しないでおくれよ」

「警戒してないよ」

 

 部屋の中心に置かれた机を挟んで、一勇は座る。

 一勇の目の前の男……鏡花水月は、どこからか出現させた湯呑みを差し出す。

 

「どうぞ」

「どうせ現実じゃないから、いいよ」

「……連れないなぁ……」

 

 鏡花水月は、一勇に差し出した湯呑みを持ち、ゆったりとした動作で飲み始める。

 

「それで、なんでここに呼んだの?」

「急いては事を仕損じる、よ」

「……確かにそうだな」

 

 一勇は、鏡花水月の言葉に頷き、数秒沈黙したあとに、

 

「待ったよ」

「それは言葉の綾、屁理屈、と呼ばれるものだよ」

「あんたにそんなことを言われるとは光栄だね」

「それは褒めてる、と取っていいかな?」

「それが出来るなら是非そうして頂ければ」

 

 一勇が一方的に鏡花水月に噛み付く。

 その攻撃的な言葉を鏡花水月には、暖簾に腕押し状態だった。

 

「……それで、君をここに呼んだ理由だけど」

 

 無言で返す一勇。

 鏡花水月は、一勇の表情を見て、話を続ける。

 

「ちょいと、力を貸してあげよう、と思ってね」

「力を貸す?」

「君、ピンチだろう?」

 

 一勇を通して見ていたのであろう事を、まるで予想していたかの様に話す。

 その事実を知っている一勇からしたら、つまらない茶番。

 

「で、本心は?」

「……君に、全てに魅せたい、そう思ってねぇ」

「……昔から変わらないな、あんたは」

 

 一勇は鏡花水月の変わらない表情に寒気を覚える。

 確かに鏡花水月のせいで今でさえ地獄のような人生を進もうとしているのに、これ以上地獄を見せる、などと言ってくる。

 

「変わるわけがないじゃないですか」

 

 一勇の一言に、鏡花水月はにこりと微笑む。

 そして、またもどこから取り出したかわからない筆と半紙を取り出し、何かを書く。

 

「君こそ、いや、君だからこそ、この文字は似合う」

 

 達筆に書かれたその文字を見て、一勇はため息をつく。

 

 そこには、全ナル一、と書かれていた。

 

 

 一勇は、その鏡花水月を見て一言、

 

「流石に冗談が過ぎるぞ、鏡花水月」

「いやいや、この姿だからこそ、こうなんじゃないか」

「確かに、俺は実際には知らないが、そうらしいな」

「はは、我ながらいい文字だと思うんだけど、どうかな?」

 

 半紙を自分の方に向け、ニコニコとしている鏡花水月。

 

「お前……その藍染惣右介の姿で、そんなことしてるから、僕から嫌われるんだよ」

 

「ふふふ、嫌われなきゃいけないから、この姿なんだよ」

 

「…………」

 

 正直、一勇と鏡花水月では見ている世界そのものが違うのか、というレベルで話が噛み合ってはいない。

 

 だが、一勇は分かる。

 

 鏡花水月は、絶対的に、自分の味方だと。

 

 感覚でしかないその直感は、誰にも信じてもらえない。

 

 だから、敢えて一勇は鏡花水月を嫌い、

 

「行くぞ」

 

 鏡花水月を振るう。

 

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