とりあえず思いつきで書いてみた作品です。
このジャンルの作品ねーじゃん、じゃあ書いてみよ的な感じです。
投稿は気長に待ってください。
食料もない。弾薬も燃料もない。
万事休す……いや、その言葉も生ぬるいねこの状況は。
燦燦と照り付ける太陽が僕の喉の渇きをより一層悪化させる。
体は焼けるような熱さの砂浜に倒れ、ピクリとも動かせないよ。
『君』は誰?僕の敵?まぁいいか、敵じゃないんだったら僕の話し相手になってくれないかな?
何も言ってくれないか。まぁ、勝手に話すけどね。
僕のいた鎮守府は所謂『ブラック鎮守府』というやつだった。むろん最初からブラックだったわけではない。僕が着任したころの提督は優しかった。話も面白かったし、多少欠点もあったけど、それが人間らしいというかそんな感じだった。一緒に釣りやデートもしたっけ。手をつなぐとき多少頬が赤くなるのがとても愛らしかった。
ある日、大規模作戦が実行されることになった。その作戦が成功した暁には深海棲艦に形勢逆転できる一大作戦だった。
結果は見事な歴史的大敗北。ミッドウェーやマリアナもかわいく見えるぐらいのね。原因は明らかに上層部の連中、特に兵器派と呼ばれる、僕たち艦娘を出世のための道具にしかとらえていない犬どものせいだ。いや違う。犬なら番犬として役に立つ。だけどあいつらは寝て食うだけのただの豚だね。ほんと全員今の僕みたいにくたばればいいのに……。
話が少しそれたね。さっきも言った通り作戦失敗の原因は明らかに
そして事もあろうにアイツらは作戦が失敗したと知ると金の力に頼って失敗をもみ消し、責任を人間派の提督達に押し付けた。すぐに僕たちの提督は更迭、新しい提督がやってきた。
そこから暗黒の時代が始まった。
大破進撃は当たり前。補給は最低限、食事のない日もあった。その食事もただの残飯だったけどね。そういえば夕立が食料庫からパンを銀蠅してきたこともあったっけ。あの時は3日間何も食べていなかった。みんなで数個のパンを分け合って食べた。口中に広がる麦の味。あの味は今でも鮮明に覚えているよ。僕の人生最高の食事さ。
その後、銀蠅をしたことがあの
夕立が連れていかれたのは僕たちが住んでいた部屋の真上の提督室だった。ここの天井は薄く、上の音など簡単に聞こえる。何かがぶつかる音。割れる音。殴打する音。夕立の抵抗する声。提督の罵声。憲兵たちの下品な笑い声。すべてが僕たちの耳に聞こえるんだ。今でも頭から離れないんだ、耳をふさいでも聞こえる夕立の悲鳴が。声を聴くだけで吐き気がしてきて、そのあと何度もトイレに吐きに行ったよ。最後のほうは吐くものもなくなるぐらいだったよ。
トイレに行く以外はみんなで身を寄せ合ってただただ時間が経つのを待った。
夕立は妊娠した。誰の子かわからない赤ん坊さ。確かなのはあの日参加した連中の誰かだということ。『君』は知らないだろうけど、僕たち艦娘はどう言う理屈がわからないけど妊娠の可能性が限りなくゼロに近いんだ。ただ、『ゼロに近い』のであって『妊娠しない』わけじゃないんだ。夕立はそのごく僅かな確率に当たったんだよ。
僕は提督に報告するのはやめたほうがいいって言ったのに、夕立は行っちゃった。僕は責任感を感じて、「僕も一緒に行くよ」って言いたかった。だけど、言えなかった。今になってみると、言ったらどうなるかがわかってたのかもしれない。
その夜夕立はボロボロになって帰ってきた。身体中痣だらけで、お腹にはくっきりと靴の跡と蹴られた跡が何箇所もあった。提督は暴行したらしい。口からは酸っぱい匂いがした。嘔吐したんだ。ただろくにものも食べてないから胃酸を吐いたんだと思う。そして、部屋を汚したってことでまた殴られる。これを繰り返したんだ。お腹の子は言うまでもない。
その日からだよ。夕立がおかしくなったのは。一日中部屋の隅っこでブツブツ呟いたり、笑いながら自傷行為を繰り返したり、突然叫び出して壁に何度も頭を打ち付けて血まみれになったり、笑顔で誰もいない空間に話し出したりするようになったのは。その時には僕と夕立以外の白露型は全員轟沈して、部屋には2人きりだった。部屋の隅っこに座って震えながら、ただただ夕立がおかしくなってるのを見ていた。そしていつしか、僕もその部屋には寄り付かなくなっていった。
『君』は僕が逃げた卑怯者だと思うの?ああ、そうだよ。僕は逃げたんだ。苦しんでいる仲間に寄り添うこともできないただの卑怯者だよ。だけど、じゃあ、どうすればよかった?あの現場にも、苦痛も味わってないような僕がどんな言葉をかけられる?かけたところで惨めになるだけさ。
それから1か月ぐらいたって。夕立の様子が気になって部屋を訪れた。
天井からぶら下がってたよ。
僕は一気に吐き気がするほどの嫌悪感に襲われた。
『なんで僕は離れていった?』
『なんでもっと寄り添ってあげれなかった?』
『なんで自殺を止められなかった?』
『なんであの時声をかけられなかった?』
無能な七光り提督のせいで、多くの仲間を失った。白露型ももう僕一人だ。
戦果を挙げられなければ暴力。精神が壊れれば艤装を解体。身体は生ゴミを捨てるかのように放り出される。
ある出撃で、僕は深海棲艦に遭遇した。6人いたけど、練度不足であっという間に僕一人になった。僕も大破状態になった。深海棲艦は僕のことは放っておいてもじきに沈むと考えたのかな?見逃してくれた。チャンスだと思った。あの鎮守府から逃げられる。そう思った。どうせあの生ゴミは僕たちのことを気にしてなんかない。気にしてたとしてもそれは自分のキャリアについてだろう。アイツのキャリアなんてクソくらえだ。
僕は運が良い方だ。でも途中で艤装が故障してね。運良く流れ着いたのがこの島だったわけさ。でも僕の運ももう尽きかけているみたい。いや、ここからが僕の運の本領発揮ってとこかな。運が良ければ向こうで夕立たちに会えるもんね……。
……ん?『君』は何をするつもりなんだい?そんな大きな爪を僕に向けて振り上げて。そうか。『君』も僕を殺そうとしてるんだね。だったら一思いに頼むよ。痛くて苦しいのは嫌だからさ……
グサリ
----------
「♪ひーろーいーうちゅーのーかーずーあーるーひーとーつー」
工作艦明石は気の抜けたような歌を歌いながらパラソルの下でビーチチェアに寝そべっていた。
「いい天気ですねぇ!こんな日はゲームをするのが一番です!」
明石はインドア派なのかアウトドア派なのかわからないような言葉を言うと、背もたれにもたれ、大きなあくびを一回した。
「お!やっぱ強いなスレイマニ大尉!!」
F-22《ラプター》を操縦してサンフランシスコで戦っている。明石は何としても逃すまいと、ボタン操作で必死に食らいつく。だがその瞬間、彼女の肩にかかっている無線機が通信が入る。
『明石さん!明石さん!』
聞きなれた声が聞こえてくる。今の状況ではあまり集中を崩されたくない明石はイラついたような声で無線に出た。
「何ですか秋津州さん!今忙しいんですから後にしてください!」
『あっ、ちょ(ブツン)』
明石はそういうと無線機の電源を完全にオフにした。
「あ、死んだ。よし!もう一回!」
ゲームに熱中している明石であった。
一方、無線室にいる先ほどの通信相手秋津洲は困ったような表情をしていた。
「明石さん酷いかも~!!二式大艇ちゃんから通信があったのに~!」
この鎮守府では定期的に秋津洲の二式大艇による哨戒活動が行われている。
《我、漂流艦娘発見セリ。鎮守府ヨリ方位240、距離350キロ》
先程、その二式大艇からそのような連絡があった。秋津洲は独断で救助を決めた。
《直チニ救助シ帰還セヨ》
二式大艇
「救助せよとのことだ。これより着水する。着水出来次第ボートを出し救助を開始する」
この二式大艇は救助艇も兼ねているのでゴムボートを搭載している。着水すると搭乗員たちは防衛のため何人か残し、ゴムボートを膨らまし乗り込んだ。
波間に漂っていたのは髪飾りをつけた少女。容姿からして駆逐艦と思われた。
「機長」
「何だ」
「髪が濡れた女の子って可愛いっすよねアイタぁ!?」
隊員の一人が頭を抱えてうずくまる。原因は機長の拳骨のせいだ。
「バカなこと言ってねぇで早く救助すんぞ!」
搭乗員たちは艦娘の脇を掴んで2人がかりで引き上げる
「よし、救助完了!誰か体を拭いてやれ」
「じゃあ私があべし!」
先程の隊員が再び頭にコブを作った。
「お前は危険だ。小鳥遊!お前が体を拭け」
「は、はい!」
小鳥遊上等兵は隊内唯一の女性搭乗員である。小鳥遊は渡されたタオルで体を拭いた。その間にボートは二式大艇へと向かっていった。
救助された駆逐艦娘は救助されたのがわかったのか安心したような顔をしていた。
「艤装番号はD-170-ST-392K。Dってことは駆逐艦か。おい!すぐに照合しろ!」
「了解!」
隊員はすぐに持っていたタブレット端末に番号を入力した。
「出ました。白露型駆逐艦2番艦時雨です。」
「そうか。直ちに帰還するぞ!」
ボートは二式大艇へ向けて動き出した。
この艦娘との出会いが日本の運命を大きく変えるとはこの時は誰も知る由もなかった。