戦えない艦娘の鎮守府   作:夜間飛行

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決意

「これでよしと!」

 

大鯨は明石の額にバッテンに絆創膏を貼った。その姿は手塚治虫の『三つ目がとおる』の主人公写楽保介を彷彿とさせる姿だった。

 

「さてと…」

 

そういうと、明石はベッドの方に向いた。そこには顔を赤くした時雨が少し俯いた状態で座っていた。

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「いえ、別に気にしないでください!こんな傷すぐに直せますんで!あ!私明石と言います!敬語とか気にしなくていいですから!」

 

「そ、そうそう!明石さん工廠勤めだからこの程度の傷日常茶飯事で!だから気にすることないんですよ?私は大鯨です。私に対しても気さくに話しかけてください。」

 

謝罪をした時雨に対し、明石と大鯨は慌てた様子で慰めた。

 

「えーと、これからあなたにいくつか質問をします。いいですか?」

 

「う…うん。わかった」

 

「あなたの名前は、白露型駆逐艦2番艦時雨で合ってますか?」

 

「合ってるよ。僕は時雨だよ。」

 

「所属する鎮守府は?」

 

「…大湊警備府」

 

時雨は思い出すだけで吐き気がするような自らの所属する鎮守府(正確には鎮守府ではないが)の名前を言った。思い出すとあの男の顔と暴行を受ける艦娘の様子が浮かび上がるからだ。

 

「………」

 

「どうかしたの?」

 

明石は少し黙ってしまったので時雨は声をかけた。

 

「そういえばここはどこの鎮守府なんだい?かなり海が綺麗みたいだけど」

 

「沖縄です。」

 

「…へぇー。いい場所だね」

 

「驚かないんですね。」

 

「うん。もう何があっても驚かないや。」

 

「それはあなたが『死なない艦娘』だから?」

 

「!!どうして知ってるの!?」

 

「アレ。形はプレーンってところですかね」

 

明石は医務室をのそのそと動き回る真っ黒な異形を指さした。その異形はブツブツと何かをつぶやきながら部屋中を動き回った。

 

《いイ…アme…daね…見tu…ケ…たよ…》

 

「明石さんにもこれが見えるの?」

 

「はい。『私もそう』ですから」

 

明石はそういうとおもむろに自ら所持している9mm拳銃、海外ではミネベアP9と呼ばれている拳銃を抜くと、何の躊躇いもなく自分のこめかみを撃ち抜いた。時雨には血しぶきがかからないように撃ったので、脳漿やら何やらが反対側の床に飛び散った。

 

明石の体から黒い粒子のようなものが溢れ出した。こめかみに開いた風穴は黒い粒子に覆われ晴れると見事に塞がっていた。死んだはずの彼女はゆっくりと立ち上がり、椅子に座り直した。

 

「ね?信じてくれました?」

 

「うん。君もなんだね」

 

明石は隣にいた大鯨にも拳銃を向け射殺した。至近距離からのヘッドショット。普通に考えれば即死である。

 

「ちょっと!なんてことを!」

 

「大丈夫!彼女もそうですから」

 

「もう!いきなり殺さないでもらえます?」

 

大鯨は立ち上がった。そしてハンカチで頭についた血をふき取った。

 

「ごめん!ごめん!時雨ちゃんにも信じてもらいたくて」

 

「血って洗濯とか掃除するの大変なんですからやめてください」

 

殺された後とは思えないほど日常的な会話をする明石と大鯨。

 

「もしかして、明石さんたちも出せるの?この黒いやつ。」

 

「ええ、私と明石さんは出せますが、ここにはいませんが秋津洲さんも同じく『死なない艦娘』ですが、彼女は出せません。」

 

「そうなんだ…。」

 

「ところでここからが本題です。軍の艦娘名簿にアクセスしましたが、あなたはすでに轟沈したことになってます。」

 

「やっぱりそうだよね。あのクソ野郎の事だからそういうことにはなるだろうって思ってたよ。まぁ、だから逃げることにしたんだけどね。」

 

「恐らく鎮守府に戻ってもいいことはないでしょう。それどころか、死なないということがバレれば今までよりも過酷な扱いを受けるかもしれません。というわけでどうでしょう。うちの鎮守府に来ませんか?」

 

「え?」

 

「ここだったらあなたをひどく扱う提督もいないし、何よりあなたと同じ境遇である私達がいますから。それがあなたにとって最良の選択ではないでしょうか?」

 

明石の言葉に対し、時雨は疑問の声を上げた。まさかここで勧誘を受けるとは思ってもみなかったからだ。そこへ大鯨の声がさらに畳みかけた。時雨は涙が溢れた。気を許せる仲間に会えたから。安全な場所を手に入れることができたから。時雨のだした答えはただ一つだけである。

 

「…うん。ここにいるよ。」

 

 

時雨 鎮守府着任。

 

 

「じゃあ提督に着任のあいさつしに行かないと。執務室に案内してくれないかな?」

 

「何がおかしいの?」

 

「その必要はありませんよ。ですよね明石さん」

 

「ええ。さっきも言ったじゃないですか。ここには()()()()()()()()()()()って」

 

「え?それってもしかして」

 

「ええ、ここには提督はいません!」

 

「えええええええええええ!?」

 

「そもそも、ここ鎮守府じゃありませんし!」

 

「えええええええええええええええええええええええ!!??」

 

着任早々轟沈クラスのクリティカルヒットを食らった時雨であった。




筆が進まない…。

多分初めてのあとがきコメントがこんな感じになるとは…。

次の投稿も今年中にできるかどうかが怪しいですね。何とか頑張ります。
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