オーバーロード〜新たなる神々〜   作:HONEEEE

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初投稿


神々の降臨
其の壱 大災厄の魔


 

 

 

「くっ…」

 

 『彼』は振り向きざま、迫り来る輩に向かって、掌に現れた紅蓮の炎を投げつける。

 自然の法則に反した理を成す炎。虚空から大気で織ったかの様に現れた炎。即ち魔法である。

 

 直線的に飛んで行った炎の球は唸りを上げ、『彼』を殴り飛ばさんと棍棒を構えている者達の、最前列の腐ったような緑色の筋肉塊に着弾。

 

 周りの同種族と思しきモンスター達共々、その命を奪う熱量を維持したまま嘗め尽くす。

 

 刹那、洞窟内に断末魔の絶叫が響き渡る。

 

「なんなんだよ!お前らは!」

 

 本当に訳が分からない。

 

 

 発売当初からかなりやりこんだ自信のあるオンラインゲーム、終了間近だから折角と、ギルドマスターの呼びかけに応ようと、久々に顔を出そうとしたらいきなりこれだ。

 本来ならば所属しているギルドのホームポイントに出現するはずの見慣れた山羊のアバター。

 しかしログイン直後、操作不能のブラックアウトと共に視界に映ったのは、この洞窟の中だった。

 

 確かに今までもいろいろとミスの多いゲーム運営で、サービス開始当初からプレイヤーに散々叩かれてはいたが、運営に直接連絡を取れるGMコールは使えない、その他操作を行うコンソールも開かないとなると、ネットワーク上の拉致と取られても可笑しくはなく、一企業として裁判どころの話だ。

 

 

――ただこれだけは運営の所為とは言い切れまい。『五感が働く』。

 

 

 これはゲーム【YUGGDRASIL】において、いや全てのDMMO-RPGを縛る、電脳法と呼ばれる法律によって排除されている。視覚、聴覚だけならば問題ないが、〈火球(ファイアーボール)〉による熱、足に伝わってくる地面の感触は確実にアウト――法律違反だ。

 現在の技術形体ならば五感の再現は不可能ではないだろうが、そもそもの話、【YUGGDRASIL】では味覚と触覚は取り入れられていない。これが最先端技術を使ったアップデートでなければ。

 

 従って『その男』――ウルベルト・アレイン・オードルは、現状をこう判断した。

 

 

 異世界転移、と。

 

 

我ながら聞いて馬鹿々々しいと思うが、それしか有り得ないのだ。

 頭が納得を拒否していても、既に心は認めている。

 

 

 感じるのだ。

 

 己に備わるMPの総量、魔法発動による冷却時間(リキャストタイム)、発動している特殊技術(スキル)の効果。

 

 

現に現実世界(リアル)には存在し得なかった、それらをまるで我が物として振るえているのだから、もはや言い訳の余地はあるまい。

 

「クラエッ!!」

 

 洞窟を震わす濁声と共に、己の脳天へと振り下ろされた一撃――それを超越した反射神経でヒョイと躱すと、反撃とばかりに無詠唱化した〈魔法最強化(マキシマイズマジック)火球(ファイアーボール)〉を叩き込む。

 

 ここ数分間ずっとこれの繰り返しだ。

 

 

 そもそも、初めにコンタクトを図ろうとしたのが間違いだった。

 汚い大音声で「モンスター!テキ!」などと叫ばれたから、この洞窟内の全ての仲間たちが集合したのだろう。

 

 ノコノコと逃げ回っている内に、追いかけて来るモンスターの数は優に50を超える。構成の大部分は人食い大鬼(オーガ)だが、中には自己再生能力を持つ妖巨人(トロール)の姿も見える。

 

(まぁ、俺の敵にはなり得ないけどな…。)

 

100レベルプレイヤーであるウルベルトにとって、変異個体でもない妖巨人(トロール)程度なら数百匹単位でかかってきても数秒で容易く殲滅できる。

 

 では何故今この状況でそうしないのか。

 答えは簡単だ。

 

 自分まで巻き添えになりたくないからである。

 

 ユグドラシル内において、魔力系魔法詠唱者(マジック・キャスター)では最高の攻撃力を誇る《世界災厄(ワールドディザスター)》の職業(クラス)に就く彼からしてみれば、この程度のモンスターが幾等集まったとしても話にもならない雑魚共だ。

 

 しかし、だ。

 

 今こうして〈火球(ファイアーボール)〉を放って分かるように、この世界では【YUGGDRASIL】の魔法は世界の法則――出現の仕方などを除き――に則り顕現する。

 要はゲームのエフェクトがそのまま現実世界(リアル)の現象として置き換えられる、という事だ。

 

 そのため、下手に十位階魔法〈隕石落下(メテオフォール)〉などを唱えたら、星もろとも吹っ飛ぶ可能性がある。――同様に、使用する魔法の采配を間違えると、自分が洞窟に生き埋めにされる恐れがあった。

 ただでさえ純粋な攻撃特化型魔法詠唱者(マジック・キャスター)で、広範囲&攻撃強化系統の常時発動型特殊技術(パッシブスキル)を多数取得しているため、より弱い魔法を使わなくてはならないのだ。

 

(圧倒的火力による多数殲滅系の魔法ばっかりとっていたからな…。妖巨人(トロール)って確か、炎と酸系攻撃以外の高速治癒だったよな…。…試してみるか。)

 

 終わりの見えない鬼ごっこに終止符を打たんと、意を決したウルベルトは後ろを振り返り、高らかに詠唱する。

 

「〈魔法二重効果範囲拡大最強化(ツインワイデンマキシマイズマジック)超酸の霧(ミスト・オブ・スーパーアシッド)〉!」

 

 唱えたのはウルベルトが覚えている中で酸系統の中では最強の、第十位階魔法。強烈な酸によるダメージで、対象及び若干だがその武器にも損害を与える魔法だ。

 

 ウルベルトの伸ばした手、それぞれの延長線上で、黄緑のもやが噴出した。生み出された、鋼鉄をも溶かす酸の霧は、全身から蒸気と悲鳴を上げながら逃げ惑うモンスターの群れを、嬉々としてその体に飲み込む。狭い洞窟の中、逃げようと必死に足掻くモンスター達。しかし自由に形を変える霧に対して巨体が身を隠す場所などあるはずなく、その場が静寂に支配されるのには2分とかからなかった。

 

 暗くジメッとした空間に残るのは、酸っぱい匂いとかつてモンスター()()()、謎のふやけたものだ。

 

「...本当に低レベルの雑魚だったって訳か。ともあれ綺麗になってよかった」

 

 未だにゲームの世界であることを諦めきれていないせいか、どことなく浮ついた気持ちで、次取るべき行動を考える。たったあれだけの魔法で、この広い洞窟全てのモンスターが駆除できたとは思えない。

 

「となると、次はこっから脱出が…」

 

(上に穴を掘るか?…下手したら土が降ってくるよな…)

 

 悩むウルベルトにYUGGRASIL時代の思い出が蘇ってくる。

 

「〈次元の転移(ディメンジョナル・ムーブ)〉」

 

 

 

 タン、と軽やかに地上に降り立つ。と、同時に無詠唱化した〈飛行(フライ)〉を唱え、即座の逃走を可能にしてから素早く周囲を見回す。

 

「敵…は居る筈もないか…。」

 

 突拍子もないことに巻き込まれた挙句、約2年近くものブランクを経てなお転移後の対PK動作が染み着いている自分に苦笑する。とはいえ何度もこれに救われて来たのも事実だ。

 

 モンスターとの戦闘で張り巡らせていた緊張が解け、警戒が薄れていくと共に、己の常識から逸した周りの状況とそれに追随する興奮がじわじわと頭に入ってくる。

 

「これは……」

 

 辺り一面、ウルベルトの周りを覆うのは、様々なグラデーションの緑だった。頭上から差し込む木漏れ日とどこまでも続いて行きそうな深い森が、飲み込まれそうな異様な圧迫感となり、その身を包む。

 

「すげぇ…」

 

 何とも乏しい感想だが、それだけの驚きを感じていたのだ。こんな場所は現実世界(リアル)ではお目にかかる事は不可能と言って差し支えない。もしこれらの植物を持って行ったなら、かなりの額にはなる筈だ。

 

(まぁ、だからこそ異世界ってやつの証明にもなるんだがな…。)

 

 改めて現状を突き付けられ、ウルベルトは少し肩を落とす。が、ここでじっとしているわけにも行かない。

 何か行動を起こさねば。

 

 現実世界(リアル)に戻る方法を探すのか。

 この未開の地で暮らして行くのか。

 それとも……

 

(……冒険、か。ユグドラシルの真似事も悪くは無い…。)

 

 元の世界にも別段心残りがある訳でもない。寧ろほぼ全ての事柄に置いて、こちらの世界の方が魅力的だ。

 それに維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)やら呼吸不要のアイテムやらを使えば、海底はおろか宇宙までも行けるかもしれない。

 

(ユグドラシルと言えば、他のメンバーも居るかもしれないな…。タイミング的にモモンガさんとかが居そうだな。そうと決まれば!)

 

「〈次元の転移(ディメンジョナル・ムーブ)〉」

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 再び視界が開ければそこは、無限、と言って差し支えない程に開けた若草色の大地だった。吹き付ける風がとても心地良い。

 

(凄え…こんな草原、記録にも無いよな…)

 

 その場で回転するように、ぐるっと辺りを見渡す。すぐ後ろに見える鬱蒼とした森は、先程自分自身が居たもので間違いはないだろう。

 

 ならば、転移は成功。

 

 さっきから何かと魔法を使っていて、少々怠いような感覚がある。恐らくこれがMP消費、と言う奴なのだろう。とは言っても集中してやっと分かる、という微々たるものなのだが。

 

 次は生活の基、衣食住の確保。

 

(こうやって順序立てて行くことがサバイバルでは必須、だったよな。ブルー・プラネット。)

 

 あの時、高給取りの趣味は関係ないと笑い飛ばしながらも、陰で耳をそばだてていた甲斐があったと一人微笑う。

 

 衣装、もとい装備はアイテムボックスに大量に保存されていたものを確認済みだ。

 因みにアイテムボックスは、妖巨人(トロール)たちとどんちゃん騒ぎをしている内に偶然発見できた。こればかりはあのモンスター(ゴミ)共に感謝だ。

 

 そして食料。これは先程も言ったように維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)で代用が利く。

 どうしても何か口にしたくなった時は巻物(スクロール)にそういった物があるはずだ。

 何かを狩る、というのも新鮮でいいかも知れない。技術の有無はこの際おいておく。

 

 最後。

 

 

(問題は住むとこなんだよなぁ…)

 

 家の材料になりそうなものなど、周りには木や草しか無い。そんな状況で、建築などかじった事も無い者が家など作れるはずも無く。

 しかしこの世界は現実世界(リアル)と違って、理不尽なことを可能とする法則が支配している。

 

(魔法…魔法か。本当に何でもありだよな…。魔法詠唱者(マジックキャスター)で良かったよ、マジで…。)

 

 そこでふと思う。

 

(戦士職…たっち・みー()だったらどうするんだ?こっちに居る可能性だってあるんだよな…。まぁ居ないだろうけど…巻物(スクロール)溜め込んでたし大丈夫か。)

 

 何かに付けては対立していた旧友に思いを馳せる。少し位心配してやってもバチは当たらないだろう。

 

 そんな事を考えながら、アイテムボックスから百科事典(エンサイクロペディア)を取り出し、「魔法」の欄を探す。

 

 百科事典(エンサイクロペディア)は、所持者がこれまで出会って来たアイテム、モンスター、魔法などが自動的に記録されていく、所謂便利グッズと言うやつだ。

 しかし自動で記録されるものはあくまで名称に過ぎず、その詳細は自分で書き込まなければならない。

 

 外表紙はかなり古臭いが、開いてみるとかなり良質の真新しい紙であることが分かる。そんな中にはびっしりと細かい文字が詰め込まれていた。敵に関する情報という点では、ウルベルトは意外に几帳面なのだ。

 

 そのままペラペラと捲って行くと、とあるページでウルベルトの手が止まり、その目が妖しく光る。

 

「これだ。大きさ的にもここで良いな…。」

 

 ニヤリという笑みを浮かべたまま、ウルベルトは指揮者(コンダクター)さながらに、優雅な動きでその腕を振る。

 

「〈要塞建設(クリエイトフォートレス)〉」

 

 第十位階の魔法発動と共に激しい地響きが起こる。通常の人間なら立っていられないレベルだが、高位のマジックアイテムで身を包んでいるウルベルトには関係ない。

 

 そんな中ゆっくりと姿を現したのは漆黒の要塞だ。何人たりとも動かす事ができないオーラを放っているその姿は、まさに魔王の城と言うに相応しい物だった。

 

 威風堂々と――少し禍々しいが――したその建物は、その全貌を見せると主であるウルベルトを歓迎するかの様に、重々しく門を開く。

 ゲームとは比べるべくも無い。リアルの感触にただ圧倒されていたウルベルトだが、一拍の後に我に帰る。

 

「ハハハ、これは凄い。」

 

 黄昏の光に何を思ったか、一体の悪魔は嗤いをその顔に浮かべる。

 

「さて、この世界に災厄をもたらすとしよう。」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 心地が良い。とにかく良い。

 

「ふあああぁぁぁ………」

 

 大欠伸をしながら思う。

 こんなにもゆっくりと寝たのは何時振りだろうか。

 

 ドクン、と一つ、嫌な動きで心臓が跳ねる。

 

「やべッ!今何時だ…!」

 

 慌てて枕元にある時計に手を伸ばす――が、その手は空を切った。

 そこでようやく、ウルベルトは辺りを確認する。

 

「え…あぁ…。夢じゃなかったんだな。」

 

 朝から嫌な汗をかいた、と独りごちる。もう一眠りしても良いかと思ったが、流石に外は日が出ているし、何より先程のショックで完全に目が覚めていた。

 

 ウルベルトが目を覚ましたのは、一人で使うには余りにも広い寝室だった。天井付近に浮かぶ、淡い光の玉は確か〈永続光(コンティニュアルライト)〉によるものだったか。

 部屋の内装は何気に凝られており、それでいて実用性に事欠かない、何とも便利なものである。

 実は、これと同じ様な部屋を他にも10部屋程発見している。更に、同じ様な内装ではあるが、広間や食堂らしき場も確認している。

 

 そう。今ウルベルトが居るのは、己が〈要塞建設(クリエイトフォートレス)〉の魔法で創り出した要塞の一室だ。

 

 〈要塞建設(クリエイトフォートレス)〉に代表される、MP依存による作成系統の魔法は、維持し続けると少しずつMPが削られていく。

 加えてウルベルトはワールド・ディザスターの職業(クラス)を取得しているため、[MP効率の悪化を代償として、攻撃魔法の威力を増大する。但し、解除不可]という、ある意味呪いじみた常時発動型特殊技術(パッシブスキル)がある。その為一般的なプレイヤーよりもMP消費が激しいのだ。従って現在その量は、ウルベルトのMP自然回復とせめぎ合って、ほんの少しずつだが減少し続けている。

 

「寝てもイマイチ休んだ気がしないな…」

 

 これがMP消費によるものかどうかは分からないが、依然として身体の奥の方に僅かな倦怠感が残る。夢であって欲しいとはこれっぽっちも思いはしないが、急激な変化はやはり精神に応える。

 

「でも、だとしたら生身の俺は今どうなってんだ…?」

 

 意識だけアバターに乗り移って、本当の肉体はセットを付けたまま失神しているのか。

 

 それとも意識はコピーされた状態で、現実世界(リアル)ではいつも通り生活しているのか。

 

 はたまたその存在すらも消滅しているのか。

 

 後者ならば、面倒事は無いと思っていいだろう。

 上部の方々がその馴れた手腕で、面倒のタネとなった自分の事も抹消して下さるに違いない。

 

 だが前者ならば…

 

「気付かれずに衰弱死…は無いにしても、突然肉体(向こう)に戻った時に点滴繋がれてる、とか冗談抜きに嫌だぞ。」

 

 治療紛いのものを受けられれば良い方だ。下手をすれば臓器摘出されていた、などという事も――

 

「いや、有り得ない。それは無い。」

 

 ウルベルトは自分に言い聞かせるようにして、この考えを頭から完全に追い払った。

 

 勢いに任せて、柔らかく身を包んでいた至高のベッドから飛び降りると、部屋を出て歩き出す。と言っても目的地は無く、強いて言うなら次の予定が見つかるまで、だ。

 広大な建物内を何周しただろうか、いい加減歩くだけの行為に飽きて来た頃、ある考えがふと頭に浮かぶ。

 

「外、出て見るか…。」

 

 昨日の森や、要塞(ここ)の周辺地理、他の知的生物の有無も気になる。仲間―アインズ・ウール・ゴウンのメンバーの捜索だって重要事項だ。

 その為には、まずこの建物から出なくてはならないのだが…。

 

(やっぱり怖いんだよなぁ〜…。)

 

 ウルベルトはモモンガのような、遊びのある構成ではなく純戦闘系魔法詠唱者(マジックキャスター)であり、近接戦闘は苦手だ。だからこそ行き当たりばったりのアクシデント――先日の洞窟での事件等――が起こった場合、対応し切れない恐れがある。この世界の生物が皆、あの人食い大鬼(オーガ)達のように弱いとは限らない。

 

「前衛…か。…〈第十位階怪物召喚(サモン・モンスター10th)〉」

 

 取り敢えず思い付きで魔法を使う。なんだかMP消費量の管理が緩い気がするが。

 

 空気を織り成したかのように出現したのは、体躯2mを超える真っ黒な犬。ただし、その凶悪な牙を持った頭部は全部で3つ。異形種の怪物だ。

 

「体力と物理防御に特化、攻撃もそこそこに出来る。及第点だな。」

 

 『ケルベロス』と名付けられた召喚獣の詳細を、百科事典(エンサイクロペディア)で見ていたウルベルトは、満足げに顔を上げる。

 このモンスターであれば、100レベルプレイヤー相手でもある程度の時間稼ぎは可能だろう。

 しかしウルベルトは、先程から1つだけある疑問を抱えていた。

 

「召喚獣…と繋がっている…?」

 

 勿論、物理的に繋がっている訳ではない。だがこの形容し難い異様な感覚は、正に精神の繋がりと言うべきものか。実際、このモンスターの思考や感情が伝わってきている。

 

「俺を守れ。」

 

 発した言葉に対し、思念派で了承の意が伝わってくる。

 

「こりゃ面白い。コマンドを使わなくて良い分対応速度が速いな。」

 

 のんびりと会話をしているが、召喚獣なのである一定の時間で消える事を忘れてはならない。

 

「これ以上の時間の浪費は愚かだ。」

 

 己の底に意識を向け、本日3度目になる転移魔法を唱える。

 

「〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

 タン、と地面に降り立ち、一連の回避行動を取った後、ウルベルトは辺りを見渡す。

 

 転移した先は森と草原の狭間、拠点且つ目印たる要塞から最寄りの場所だ。一応、隣には護るように召喚獣が控えている。

 

 

「やはり、これから冒険するとなるとワクワクしてくるな」

 

 

 溢れ出る高揚感に身を任せ、異世界探索初めの一歩を踏み出す。

 

 

 

 

「さて、未知なる旅の始まりだ。」

 

 

 




   
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