他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第16話 「お泊り会」

「いらっしゃいませ、なのは様。それからヴァニラ様とアリシア様でよろしいでしょうか。すずかお嬢様がアリサ様と一緒にお待ちですよ。こちらへどうぞ」

 

お屋敷としか形容できない月村邸に入った私達を迎えてくれたのは可愛らしいメイドさんだった。

 

「こんにちは、ファリンさん。これ、お土産です」

 

「ご丁寧にありがとうございます、なのは様。後程お飲み物と一緒にお出ししますね」

 

なのはさんがメイドさんに挨拶をして、翠屋のシュークリームを渡している。私とアリシアちゃんも順にファリンさんと呼ばれたメイドさんに挨拶をした。

 

「何だか『様』付けで呼ばれるのは変な気持ちかも~」

 

アリシアちゃんが照れたように言う。

 

「むしろ呼び捨てにして頂いても構いませんよ? 」

 

「滅相もございません。これでも随分と譲歩はしているのですよ。最初はバニングス様、高町様、とお呼びしていたのですが、どうしても名前の方がよいと申されまして」

 

確かにH(アッシュ)様やテスタロッサ様と呼ばれるよりはいいかもしれないが、矢張り少しこそばゆい気がした。

 

「こちらでございます。」

 

ファリンさんが開けてくれたドアの先には小振りなテーブルに着いて紅茶を飲んでいるアリサさんとすずかさんの姿があった。

 

「やっと来たわね。遅かったじゃない。お洒落に時間をかけ過ぎたんじゃないの? 」

 

「本当、みんなかわいい。いらっしゃい。待ってたよ」

 

「ごめんね、翠屋の方でちょっとしたことがあって」

 

にゃはは、と笑いながらなのはさんが言った。

 

「何? トラブル? 」

 

「ううん、そうじゃなくてね。久し振りに曲をリクエストしたお客さんがいたんだけど、アリシアちゃんが歌ったんだよ」

 

「「へぇ~」」

 

ただ、当のアリシアちゃん本人は別の物に気を取られている。

 

「…猫…ねこ…ネコ…猫だぁ」

 

部屋中、至る所に猫がいた。ちなみに私もさっきからみんなの会話は耳に入っているものの、視線は猫に釘づけだった。何しろ、その数が多いのだ。普通に1匹2匹というレベルではなく、十数匹が部屋の中にいる。窓の外で日向ぼっこしている猫もいるから、総数はこんなものではないのだろう。

 

「そう言えば、言い忘れてたよ。すずかちゃん家が猫屋敷だってこと」

 

「まぁ、何も知らない人としては当然の反応よね」

 

「アリサちゃんの家だって初めての人はびっくりすると思うけど…ねぇ、アリシアちゃん猫好きなの? 」

 

「うん!ウチでも…じゃなくて、猫だけじゃなくて、動物は全部好きかも」

 

「ふ~ん、じゃぁ犬も好き? 」

 

「うん、好きだよ~」

 

「なら今度あたしの家にも遊びに来ると良いわ。犬がいっぱいいるから」

 

アリシアちゃんは猫屋敷の衝撃から無事に帰還出来たようだった。

 

「ほらヴァニラちゃんも呆けてないで座って」

 

「あ、ありがとう、すずかさん」

 

アリシアちゃんと私がテーブルに着くと、ファリンさんが紅茶セットを持ってきてくれた。ケーキスタンドにはさっきのシュークリームと、それ以外にも何種類かのお菓子が乗せてある。その時、何故か周りの空気が緊張したように感じた。

 

「……」

 

ファリンさんがテーブルにケーキスタンドと紅茶セットを置いた瞬間、誰ともなくふーっと息をつき、空気が弛緩する。

 

「ど、どうかしたの? 何だかみんな緊張してたみたいだけど? 」

 

「えっとね、ファリンがお茶を運ぶ時って、大抵何かしらあってトレイごとひっくり返しちゃうんだよね」

 

「申し訳ございません~」

 

苦笑交じりのすずかさんの言葉に、まさかそんな漫画のようなお話が、と思ったのだが、あっさり本人が肯定してしまった。情けなさそうに言う彼女は、言葉遣いとは違って随分とおっちょこちょいの人のようだ。

 

「まぁ今回はちゃんと運べたんだし、いいんじゃないかな? ちゃんと出来たのに責められるのもかわいそうだよ」

 

ファリンさんを庇うなのはさんも若干苦笑気味だったが、淹れて貰った紅茶はシュークリームやお菓子にも合っていて、とても美味しかった。

 

 

 

「さてと、じゃぁ始めるわよ」

 

雑談しながら頂いていたお茶やお菓子が無くなりそうになった頃、急にアリサさんがそう言って立ち上がった。

 

「アリサさん、何をするの? 」

 

「ゲームよ、ゲーム!このために態々家から持ってきたんだから」

 

アリサさんが取り出したのは家庭用のゲーム機のようだった。打ち合わせ済みだったのか、なのはさんがケーブルを受け取ると手際よく部屋のTVに繋ぎ、すずかさんがコントローラーらしきスティック状のものを私とアリシアちゃんにも手渡してくれた。

 

「ヴァニラちゃん、これってどうやって使うのかな? 」

 

「ごめん、私もこれは知らない」

 

『琴だった頃』に晶が貸してくれたゲーム機のコントローラーとは全然違うものだった。扱いに困って弄り回していると、なのはさんが隣にやってきた。

 

「2人共初めてだよね? これね、ストラップに手首を通して、こうやって片手で握るの」

 

なのはさんが教えてくれた通りに持つと、丁度指が当たる所にボタンが配置されていた。

 

「最初はチュートリアルで簡単なのをやってみようか。あ、この居合い斬りは簡単だし面白いよ」

 

「ありがとう~私からやってみるね」

 

アリシアちゃんがなのはさんに教えられながらコントローラーを振り回す。ボタンもついてはいるものの、どちらかと言うとモーショントレーサー的な効果で動かすのがメインのコントローラーのようだ。

 

「うん!やってみると結構判りやすいし面白いよ~」

 

アリシアちゃんが満面の笑顔で私に場所を譲ってくれる。なのはさんに教えて貰いながらコントローラーを振ると、画面の巻き藁が弾けた。ボタンを押すタイミングやコントローラーを振り抜く角度などによっては、巻き藁は弾けるのではなく綺麗に切断出来るのだそうだ。画面を二分割にして、もう一方の画面でアリサさんが同じようにコントローラーを振ると、巻き藁は見事に両断された。

 

だんだんコツがつかめてきた私達はチームで別れて同じゲームの中にあった射的やボウリング等を楽しんだ。実際にやってみると、ゲームと言うのは色々と奥が深く、純粋に面白いと思った。

 

(晶がゲームにのめり込んだ気持ちも、今なら少し判る気がする…きっと前世でずっと勉強ばかりしていて、転生して初めてゲームに出会った時にカルチャーショックを受けたんだろうな)

 

そう、丁度今の私が魔法に明け暮れているのと同じように。

 

 

 

「初めての割に、ヴァニラもアリシアもなかなかやるわね。でもまだまだ負けないんだから!」

 

「甘いよ、アリサちゃん。わたしがサポートしてるんだからね」

 

「ありがとう、なのはさん。アリシアちゃん、反撃」

 

「りょ~かい!」

 

「それはこっちで防ぐよ。アリサちゃんは攻撃に専念して」

 

「サンキュー、すずか」

 

チームバトルではアリサさんとすずかさんのチームに、なのはさん、アリシアちゃん、私のチームで対戦する。人数分の優位は、このゲームに慣れているアリサさんへのハンデなのだそうだ。やったことのないゲームで最初は抵抗もあったのだが、戦術の組み立てなどは一部プレシアさんに教えて貰っていた魔法戦闘にも通じるものがあった。世の中、何が幸いするか判らないものだ。

 

この後何度かチームを入れ替えてプレイしたが、実は一番苦戦したのはアリサさんとアリシアちゃんが組んだチームを相手にした時だったりする。

 

「久し振りに白熱したわ。またやりましょう」

 

「アリサちゃん強いから。でも楽しかった!ありがとう」

 

一通りゲームを楽しんだ後でお互いの健闘を讃えあう。

 

「そうそう、これが今回のゲームの順位ね。無くさないように取っておくのよ」

 

アリサさんが手渡してくれたのは数字が書かれた小さなカードだった。ちなみにアリサさんが1、なのはさんが2、アリシアちゃんが3、すずかさんが4、私が5。順応性が異様に高いアリシアちゃんは兎も角、それなりに妥当な順位だと思う。貰ったカードをスカートのポケットに入れると、ファリンさんではないメイドさんが部屋に入ってきた。

 

「失礼します、お嬢様方。夕食の用意が整いましたので食堂までお越し下さい」

 

ファリンさんは髪が長かったが、こちらのメイドさんはショートで、ファリンさんよりも落ち着きがある雰囲気だった。

 

「ありがとう、ノエル」

 

すずかさんの答えに、思わずアリシアちゃんと顔を見合わせた。

 

「えっと、ノエルさん、でいいのですか? 」

 

「はい。ノエル・K・エーアリヒカイトです」

 

なるほど、前に忍さんが言っていたのは彼女のことだったのかと、改めて納得する。

 

「クリスマスにぴったり!素敵な名前だね!」

 

アリシアちゃんが満面の笑みで言うと、すぐにノエルさんも優しく微笑みながら「ありがとうございます」と返した。どうやら誕生日がクリスマスだったために名付けられたのだそうだ。

 

ノエルさんについて食堂に行くと、庭に面した大きな窓からイルミネーションの光が見えた。

 

「わぁ~キレイ!」

 

アリシアちゃんが窓辺に走り寄る。庭には5、6mほどの生木にクリスマスイルミネーションが施されていた。

 

「もみの木です。これはまだ樹齢数十年と言ったところですが、もっと長い年月を経ると高さ60mを超えることもあるそうです」

 

「すご~い。そこまで大きくなるのに、どれくらいかかるのかな? 」

 

「世界中で、樹齢1000年を超えるものが多数確認されているようですね」

 

私も窓辺に立ってもみの木を眺めた。その隣にはすずかさん、アリサさん、なのはさんもやってくる。

 

「長生きなんですね。気が遠くなりそう」

 

「確かもみの木って、ラテン語で永遠の命っていう意味があるって、何かの本で読んだことがあるよ」

 

「なんだかロマンチックよね」

 

「そうですね。もみの木は学名を『Abies』と言い、『ab』はラテン語で永遠を表します。『ies』が命を表すという説もありますが、ラテン語で命を意味するのは『vita』の方が一般的ですね。私としてはむしろ『ies』は『Iesvs』なのではないかと思っています」

 

ノエルさんがそんなお話をしてくれた。『Iesvs』…イエズス・キリストのことである。イエス・キリストとも発音されるので説得力があるようにも思ったが、彼女曰く別に学術的な根拠は何もないのだそうだ。

 

「さあ、お嬢様方。お料理が冷めてしまいますよ。お席へどうぞ」

 

ノエルさんに促されて席に着くと、程なくしてノエルさんとファリンさんが料理を運んできてくれた。それは前菜、スープに始まり魚料理、口直し、肉料理、デザートと続くフルコースだった。ただ子供向けに分量を調整してくれているようで、お腹いっぱいで食べられないということもない。

 

桃子さんの料理も絶品だが、このコース料理も劣らず美味しいものだった。デザートは少し大きめのブッシュ・ド・ノエルをみんなで切り分けて頂いた。食後のコーヒーや紅茶を頂きながら、暫くの間歓談する。

 

「とっても美味しかった。えっと、こういう時『シェフを呼べ!おいしいです!』って言うんだっけ? 」

 

「アリシアちゃん、それ何か違う気がするけど…あれ? 合ってるのかな? 」

 

「きっちりおかしいわよ…ヴァニラも混乱しないで。全く、どこでそんな台詞覚えた訳? 」

 

「なのはちゃんに借りた本に書いてあったよ」

 

「あ、アリシアちゃん、あれ、漫画…」

 

「あはは」

 

みんなで笑いあう。こうして楽しい時間を過ごしていると、すずかさんがノエルさんにバイオリンを持ってきてもらっているのに気が付いた。2つケースがあるので、片方はアリサさんの物なのだろう。

 

「あ、あの曲やるんだよね!私歌うよ~」

 

アリシアちゃんが元気に立ち上がる。

 

「アリシアのお手並み拝見ね。なのはとヴァニラも歌うんでしょ? 」

 

出来れば遠慮したかったのだが、なのはさんやすずかさんにも促され、2番だけということで了承した。なのはさんもそれでいいと言い、1番はアリシアちゃんが独唱することになった。

 

アリサさんとすずかさんのバイオリンもなかなかの腕前だったが、やはりアリシアちゃんの歌は群を抜いていた。2番からは私も参加して全体のレベルを落としてしまったが、一緒に歌ってくれたなのはさんもまたアリシアちゃんほどではないものの上手と呼べるレベルだったため、何とか誤魔化せたようだった。

 

ノエルさんとファリンさんも拍手を贈り、演奏を終えたアリサさんとすずかさんも、アリシアちゃんに賞賛を贈っていた。

 

「他にも歌える? 」

 

「あー、ゴメンね、まだこの曲しか覚えてないんだ」

 

「じゃぁまた他の曲を覚えたら一緒にやろうね」

 

そしてすずかさんはファリンさんにお願いしてオーソドックスなクリスマスソングのCDを流し始めた。ふとアリサさんが呟く。

 

「アリシアの声って、どっちかっていうとアルトに近い音域なのかしら? 演歌とか歌ったらハマりそうね」

 

「演歌って? 」

 

「日本独特の歌謡で、辛いこととか、悲しいこととかを歌うのが多いみたいだよ」

 

「辛いのや悲しいのはイヤだなぁ…」

 

「まぁ、その内機会があったら聴いてみるといいわ。言う程悪いもんでもないわよ」

 

そんな話をしながら、アリサさんとすずかさんはバイオリンをケースにしまう。そこにノエルさんとファリンさんが、私達が持ってきた交換用のプレゼントを持ってきてくれた。

 

「じゃぁ、今日のメインイベント、プレゼント交換行くわよ!」

 

さっきのゲームで貰った順位カードを出すように言われ、ポケットからカードを取り出す。さっきは確り確認していなかったが、裏面がビンゴカードになっていた。

 

「ルールは簡単。今からビンゴゲームをやって、その順位によってそこの!プレゼントが貰えるっていうことよ!」

 

見れば私達が持ってきたプレゼントには既に「1位」「2位」といった番号が割り当てられていた。ビンゴゲームを知らなかったのはアリシアちゃんだけだったので、簡単に概要を説明する。

 

「もし自分のプレゼントが当たった時は、次の順位のプレゼントと交換すること。最後に残った1人が自分のプレゼントに当たる場合は、その前の順位の人のプレゼントと交換すること。OK? 」

 

「「「「OK!」」」」

 

「同時ビンゴの場合は、対象者で相談ね」

 

プレゼントには別にハズレがある訳でもないので、このルールは妥当なところだろう。それから暫く私達はビンゴを楽しんだ。番号を読み上げてくれるのはファリンさん。

 

「はい、次は15番です」

 

「リーチがかかったわ!」

 

「アリサちゃん、早い~」

 

「次参りますね…28番です」

 

「あ、わたしもリーチ!」

 

「やるわね、なのは。負けないわよ」

 

「これって、別に勝ち負けを競っている訳じゃないような…」

 

だが、この2人はリーチばかりが増えて一向にビンゴせず、その隙にすずかさんがビンゴを達成してしまった。

 

「おめでとうございます、すずかお嬢様。プレゼントはこちらですね」

 

「あ、それわたしのだよ!喜んでもらえると嬉しいな」

 

「ありがとう、なのはちゃん。早速だけど開けてみるね」

 

包みから出てきたのは、天使の形をしたプレートがベルを鳴らすクリスマスピラミッドだった。

 

「わぁ、かわいい!これ、ろうそくの熱で回転するんだね」

 

「そうそう。お店で見かけて、すごく気に入ったの!クリスマスにしか使えないのが難点だけど…」

 

すずかさんはノエルさんに頼んで、早速ろうそくに火をつけた。くるくると天使が回り出し、ちりん、ちりん、とベルを鳴らす。

 

「かわいいから、いつでも使えるよ。ありがとう。大切にするね」

 

すずかさんはそう言って微笑んだ。そのままビンゴ大会は続行され、次にビンゴになったのは気迫で一歩勝ったアリサさんだった。アリサさんにはアリシアちゃんの大きな包みが渡される。

 

「あ…かわいい…」

 

包みから出てきたのは大きな犬のぬいぐるみだった。古着の再利用にしては随分と確り作られている。

 

「パンヤの代わりに小さく切った生地を入れたんだ。型崩れしないように表面の素材を確りしたものにしたんだけど、元々が古着だから肌には馴染むでしょ? 」

 

「本当…肌触りもいいし、丁度良い抱き枕ね。あんたこれ、本当に手作り? すごくいいわよ!ありがとう。早速今夜から使おうかしら」

 

アリサさんに絶賛されたアリシアちゃんは嬉しそうにえへへと笑った。

 

次のビンゴはアリシアちゃんだった。なのはさんと私はリーチの数は増えるものの、なかなかビンゴにたどり着けない。ちなみになのはさんに至っては5個目のリーチだった。私は番号がなかなか合わないものの、リーチは3個。

 

「あ、それ私のプレゼントだよ、アリシアちゃん。気に入ってもらえると良いんだけど」

 

すずかさんのプレゼントは綺麗な飾りのついた髪留めのセットだった。

 

「キレイ…ありがとう!」

 

「アリシアちゃんは髪が長くて綺麗だから、似合うと思うよ。付けてあげる」

 

すずかさんはアリシアちゃんの髪をブラシで梳くと、ツインテールの状態にまとめ上げて両側に髪留めをつけた。

 

「えへへ~どうかな? 」

 

「よく似合っているわよ。今日の服にもぴったりじゃない」

 

「うん、お人形さんみたいでかわいいよ」

 

アリシアちゃんは少し照れていた様子だったが、嬉しそうにもう一度ありがとう、と言った。それにしても、アリシアちゃんにツインテールがここまでよく似合うとは思っていなかった。

 

「さぁ、次こそはわたしがビンゴするよ!」

 

「あ…なのはさん、残念だけどビンゴはもうおしまいだよ」

 

「にゃっ? 何で!? 」

 

「今残っているのはなのはさんと私だけ。プレゼントはアリサさんのプレゼントと、私のプレゼント。ルールに従うなら、もう割り当ても決まっちゃってる」

 

「そんなぁ…折角だからビンゴするまでやろうよぉ。ファリンさん、お願い~」

 

なのはさんは純粋にビンゴを楽しんでいたようだった。魔法を覚え始めてから我儘が増えてきた様子のなのはさんだが、士郎さんに言わせるとビリーフ・チェンジ・セラピーが効いているのだそうだ。

 

「じゃぁ、折角だからもう少しやろうか」

 

「うん!ファリンさん、お願いします」

 

そしてファリンさんが次の番号を読み上げる。

 

「「あ…ビンゴ!!」」

 

2人揃って同時ビンゴだった。みんなに祝福されながらプレゼントを受け取る。アリサさんからのプレゼントは、アクセサリーとしても使える、手首に巻くタイプのロザリオだった。綺麗な翠色の珠が使われていて、ハーベスターとの相性も良さそうだ。私は一目でこのロザリオを気に入った。

 

「色合いが一番きれいだったのがその緑色だったんだけど、ヴァニラのペンジュラムともいい感じで合うわね。むしろあんたに当たってよかったわ」

 

「うん、すごく綺麗。ありがとう、アリサさん」

 

早速、左手の手首にブレスレットのように巻きつけた。一方、私のペン立て付きフォトスタンドを貰ったなのはさんはと言えば。

 

「うわぁ、これいい!見て見てみんなの写真がついてるよ、これ。ほら!」

 

「あんた達、2人揃って職人ね。手作りなのに、良い物作ってくるじゃない」

 

「うん、すごく綺麗に仕上がってるし、この飾りもかわいいね」

 

飾り気のないままだと寂しかったので、ハートや星を模した小さな飾りをいくつかつけておいたのだが、それがとても好評だった。実は魔力刃を使って細かい形を作ったのだが、おかげで廃材がベースとは思えないほどいいものに仕上がっていた。

 

「あ、写真2枚入ってる!」

 

「見せて見せて~」

 

2枚とも桃子さんに撮って貰った写真だ。1枚はみんなが私達の試験合格をお祝いしてくれていた時の物、もう一枚は「えがおー」で撮ったもの。どちらもみんないい表情で写っている。

 

「あ、そっちの『えがおー』の写真は、みんなの分もあるんだよ」

 

人数分多めに焼いておいた写真をみんなに配る。みんなの笑顔は写真の中に負けないくらいキラキラしていた。その後もゲームをしたり、お喋りをしたりしながら夜は更けてゆき、みんなで温泉のように大きな月村家のお風呂に入ってはしゃいだりもした。それはとても、とても楽しい時間で、お父さんやお母さん、プレシアさんには申し訳ないけれど、もう少しだけ地球での生活を楽しんでもいいかな、と思った。

 

 

 

「年末年始はバイオリンのお稽古も塾もないし、またみんなで遊びましょう」

 

すずかさんの部屋に敷き詰めた布団の上でゴロゴロしながら、アリサさんが突然そう言った。

 

「初詣とかかな? みんなで晴れ着着て? 」

 

「さすがに私とアリシアちゃんは、晴れ着持ってないよ」

 

「じゃぁ、出来るだけおめかしして、かな」

 

晴れ着などはレンタルもあるようだが、さすがに年末年始は予約でいっぱいだろう。取り敢えずお洒落をしてみんなで初詣に行くことになった。アリサさんもすずかさんも1月1日は家の都合でゆっくり出来ないそうだったので、日程は2日に決定した。

 

「じゃぁ、そろそろ電気消すよ。みんな、おやすみなさい」

 

灯りが消えて暗くなる。すぐに誰かの寝息が聞こえてきた。沢山騒いで疲れていたのだろう。私も身体は思っていた以上に疲れていたらしく、布団にもぐるとすぐに夢の世界へと旅立った。

 




随分時間をかけて書き溜めたつもりでしたが、投稿してみたらあっという間でした。。
続きは書きあがり次第不定期に投稿します。。
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