他愛もない日常のメロディー   作:こと・まうりーの

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第19話 「聖祥小学校」

「ヴァニラ・H(アッシュ)です。今日からよろしくお願いします」

 

「アリシア・テスタロッサです!同じく今日からよろしくお願いします~」

 

聖祥小学校初日、私達の挨拶は拍手で迎えられた。

 

「H(アッシュ)さんとテスタロッサさんは家庭の事情で、現在高町さんの家で暮らしています。みんな仲良くしてあげて下さいね」

 

先生が大まかに私達の事情を説明した上で座席へと案内してくれる。クラスは以前士郎さんが説明してくれた通り、なのはさん、アリサさん、すずかさんと同じだった。席に着くと3人がにこやかに手を振ってくれているのに気付いたので、こちらも笑顔で小さく手を振り返した。

 

ホームルームを終えると次は始業式だ。先生がいくつかの注意事項を伝えた後、生徒に廊下に出るよう促し、そのまま講堂に移動する。移動中も、講堂で椅子に座っても、周りからの視線を感じる。恐らくみんな転入生に質問したくて仕方ないのだろう。始業式が無ければ、ホームルームが終わってから授業開始までの間、私達は質問攻めに遭っていたに違いない。

 

いずれにしても始業式が終われば全員教室に戻る。今日は授業が無いのでホームルーム終了後に帰宅することになるが、恐らくその前後で質問タイムが発生することだろう。そんなことを心の片隅で考えながらも、私は延々と続く校長先生のお話を聞いていた。

 

 

 

終業式が終わり、みんなが教室に戻ると案の定、私とアリシアちゃんの周りにクラスメートが殺到した。

 

「ねぇねぇ、家庭の事情ってどんなこと? 」

 

「前にはどこの学校に行っていたの? 」

 

「高町さんの家にはいつから? 」

 

「趣味は? 」

 

「誕生日は? 」

 

ポンポンと飛び出してくる質問に1つ1つ回答していくのは大変だったが、アリシアちゃんだけでなくなのはさんも一緒に説明側に回ってくれたこともあって、何とか質問攻勢を乗り切ることが出来た。

 

私達の家庭環境は、以前士郎さんが作ってくれたカバーストーリーの通り、アリシアちゃんの両親が日本に帰化した英国人で、私は親を亡くしてそこに引き取られた親戚の娘だが、その両親は現在行方不明と言うことになっている。尚、高町家で生活するのにあたり、現在ではここに高町家の遠縁であるとの説明も加えられている。

 

正直、最初は両親が行方不明というのは状況が重すぎるのではないかとも思ったのだが、それ以外の設定に辻褄を合わせるためには行方不明にしておいた方が、都合が良いのだそうだ。

 

「ヴァニラちゃん、アリシアちゃん、お疲れさま。なのはちゃんも大変だったね」

 

ホームルーム直前にクラスメートから解放された私達の所へアリサさんとすずかさんがやってきた。

 

「よっぽど困るようなことがあったら助け舟でも出そうと思ったんだけど、まぁ大丈夫だったみたいね。なのはも頑張って説明してたし」

 

アリサさんがそう言うと、なのはさんはいつもの通りにゃはは、と照れたように笑う。

 

「そう言えば、さっきの誕生日のことだけど、アリシアの方が早かったのね。てっきりヴァニラの方が上のイメージだったんだけど」

 

「そう言えばアリサさんやすずかさんには誕生日のこと言ってなかったよね」

 

実は私の誕生日が1月22日で、アリシアちゃんの誕生日が5月29日なのだ。本来生年は同じで、学年で言えば私が1つ上になる。今回士郎さんの提案でなのはさんと同い年という設定を当てはめた際に誕生日まで変えなくてもいいだろうということで、アリシアちゃんの方がお姉さんという設定になったのだ。

 

アリシアちゃんは期せずして「妹が欲しい」という願いを叶えたことになるのだが、以前も言っていた通り私が妹というのは感覚的に少し違うらしい。そのためお互いの接し方は今まで通りという形を採っている。

 

「まぁ、半年くらいしか違わないからね。普段はあんまり意識してないかな」

 

そんな話をしていると、先生が戻ってきてホームルームが始まった。日直と思われる子が起立の声を出す。私は懐かしさに微笑みながら席を立ち、礼をした。

 

 

 

「どうだった? 初日の感想は」

 

帰宅中になのはさんが聞いてきた。

 

「まだ本格的に授業を受けていないから何とも言えないけど、クラスの雰囲気は良いと思うよ」

 

「うん、私もヴァニラちゃんと同じかな!」

 

海辺の道の、堤防の上を歩く。行きはスクールバスに乗り、帰りはこうして徒歩で戻ってくることが多いのだそうだ。ちなみにアリサさんとすずかさんは始業式当日からバイオリンのお稽古とのことで、校門のところまでは一緒だったのだが、鮫島さんというバニングス家の執事さんがお迎えの車を用意して待っていたため、そこで別れた。

 

「アリサちゃんとすずかちゃんはバイオリンのお稽古の他に塾にも通っているんだよ」

 

「塾かぁ…そこまでしなくてもあの2人なら今のままで十分勉強とか出来そうな感じだけど」

 

「わたしも3年になったら同じ塾に通うんだ。ヴァニラちゃんとアリシアちゃんも一緒にどう? 」

 

「さすがにそれは遠慮させて貰おうかな。これ以上士郎さん達に迷惑かけられないし」

 

正直なところ、なのはさんの学力も塾に通わないといけないようなレベルではないと思う。ここ数か月間なのはさんが勉強しているところを見てきたが、特に算数の知識は相当なものだ。それに本人が苦手と言っている国語にしても、算数と比較すれば苦手である、と言う程度であって、決して壊滅的に出来ていない訳では無い。

 

まぁこの年頃の子は結構友達と一緒に塾に通うのが楽しいということもあるだろうし、恐らく士郎さんや桃子さんもそれを認識した上で許可していることなので私が口を出す問題ではない。だが、私達までとなると話が違ってくる。

 

ただでさえ学校に通わせてもらって、生活を保障してくれて、しかも秘密を守ってくれている高町家の人達。恐らく塾に通わせて欲しいと言えば、なのはさん達とのコミュニケーション的な意味でもあっさりOKが出るに違いない。だが流石にそれは申し訳なさ過ぎて、私の方が気にしてしまうだろう。

 

「そっか、ちょっと残念だけど」

 

「士郎パパ達はたぶん負担は気にするなーとか言いそうだけどね」

 

「確かに言いそうだけど、言われたら逆に私が困っちゃうよ…」

 

今まで受けた恩だっていつ返せるか判らないのに、と小さく呟いて、私は堤防から1mほど下の道路に飛び降りた。

 

「もう、ヴァニラちゃん危ないよ。もうちょっと先まで行けば階段もあるのに」

 

「あ、そうなんだ…でも大丈夫だよ。ほら、何ともない」

 

私は両手を広げてなのはさんに無事をアピールする。

 

「うーん、そうでもないと思うな。飛び降りる時、スカート捲れてパンツ見えそうだったよ? 」

 

「……」

 

アリシアちゃんの指摘には一瞬言葉を失ってしまったが、こんな幼女のパンツをみても喜ぶ人はいないと思う。

 

 

 

自宅に戻る前に翠屋に寄って、士郎さんや桃子さんに挨拶をする。松尾さんには制服が良く似合っていると微笑まれた。

 

「帰る前にコーヒーでも飲んでいくかい? 」

 

一瞬迷ったが店内を見るとほぼ満席の状態に近く、テラス席も少し空いているだけだった。仕事の邪魔をするのもどうかと思い、おまけに桃子さんが自宅の方に昼食を用意してくれているとのことだったので、今回は遠慮することにした。

 

部屋に戻って着替えると、居間に降りてみんなでお昼を済ませた。

 

「明日からはお弁当だよ」

 

食器を洗いながらなのはさんが言う。聖祥は給食ではなくお弁当スタイルだ。ちなみにこれはミッドチルダの魔法学校も同じだったので、違和感はない。問題なのは、全員分のお弁当を桃子さんが朝食を作る時に一緒に作ってくれるということだった。

 

風芽丘学園には学食もあるそうだが、桃子さんは美由希さんの分もお弁当を作っている。ちなみに恭也さんは最近、忍さんお手製のお弁当を食べているらしい。

 

よく「1人分だけ作るよりも2~4人分を作った方が楽」という話を聞くが、それはあくまでも材料を纏めて用意できる分の手間のことだけであって、実際の労力は確実に増える。特にお弁当ともなればみんな同じように盛り付けたりする分、余計に時間がかかってしまうのだ。

 

「明日から朝練を早めに終わらせて、桃子さんのお弁当作りを手伝おうか」

 

「「賛成~」」

 

なのはさんとアリシアちゃんも同意して、今夜にでも桃子さんに話をしようということになった。

 

 

 

夕食の準備で戻ってきた桃子さんにお弁当の作成を手伝いたいと申し入れたところ、夕食の準備から手伝うことになった。お弁当に入れるおかずもご飯も計算しておいて、夕食時に一緒に作ってしまうのだそうだ。

 

今、高町家は7人でご飯を食べているが、桃子さんが炊くご飯は5合。恭也さんは結構おかわりもしているが、小学生組は小さめのお茶碗1杯から2杯程度でお腹がいっぱいになってしまうこともあって、お弁当の分も含めるとこの程度が丁度良いのだそうだ。

 

「余ったらお茶碗1杯分くらいに小分けにして、ラップで包んで冷凍しておくと後々使いやすいのよ」

 

お弁当を作った後で残ったご飯は、冷凍しておくと炒飯やオムライスなどにも使えるし、お茶碗1杯分くらいに小分けするのもちょっと小腹が空いた時のお供として重宝するため、私も「琴の頃」にはよくやっていた。おかずは日毎に異なるが、作り置きできる物であれば基本的には多めに作っておいてお弁当に入れる。

 

翠屋の超一流シェフである桃子さんも、家では普通に庶民的な方法でお弁当を作っていることが判り、何故か少しだけ嬉しかった。

 

 

 

=====

 

翌日からは普通に授業が行われた。小学校の授業で教わる内容はさすがに判っていることばかりではあったが、周りの子達が嬉しそうに手を挙げ、先生が出す問題に答えていくのを見るのは微笑ましく、思っていた以上に新鮮で楽しかった。

 

クラナガンの魔法学校に通っていた頃は退屈に思っていた授業が楽しく感じるのは、矢張りクラスメートに友達がいるということが大きく影響しているのだろう。ふと見れば、私の目の前にはなのはさんのシュリンプ・ツインテールが揺れている。右斜め後ろではすずかさんがノートをとっており、左隣りのアリシアちゃんはキラキラした目で黒板と先生を見つめている。

 

アリシアちゃんの更に左隣に座っているアリサさんと目があった。

何故かすごく不思議そうな顔をされた。

 

 

 

昼休みになると、みんな仲の良い友達同士でお弁当を広げ始める。私達はアリサさんに促されて、お弁当とコートを持つと教室を出た。

 

「コートを持ってくるように言われた時点で外だとは思っていたけれど、まさか屋上にこんなスペースがあるとは思わなかった」

 

学校の屋上は綺麗に整備されており、ベンチや花が植えられたプランターなどが並べられていた。生徒達の憩いの場として用意されているのだろう。

 

「さすがにこの時期だと人も殆どいないけどね」

 

「海風が冷たいからね。でも実は穴場があるんだよ」

 

すずかさんが指し示したのは、背の高いプランターに囲まれた小さなベンチだった。日当たりは良く、プランターが海風を凌いでくれるのでコートを着ていれば十分に暖かい。

 

「っていうか、このプランターって最初からここにあったんじゃないでしょう? 他のプランターとは並び方が違うし」

 

「いいのよ。他に使う人もいないんだから」

 

どうやらプランターを移動させた犯人らしいアリサさんはコートのポケットからレジャーシートを取り出して敷くと、その上に座った。私がその隣に腰を下ろすと、なのはさんとすずかさんがアリシアちゃんを間に挟む形でベンチに座る。そしてみんなでお弁当を広げた。

 

「あ、ヴァニラとアリシア、なのはもおかず一緒…って、桃子さんが作ってるんだからそうなるわよね」

 

「でも今日のお弁当はみんなで作ったんだよ。材料は殆ど昨夜のおかずだけど」

 

「それ生姜焼きだよね? ミートボールと交換しない? 」

 

「うん、いいよー」

 

そんな感じでささやかな昼食会は進み、やがてご飯を食べ終わると今度は水筒に入れたお茶を頂きながら雑談を続ける。

 

「でね、ヴァニラったら授業中ずっとにこにこ笑ってるのよ。一瞬何て反応したらいいか判らなかったわ」

 

「え…私そんなに笑ってた? 」

 

「そうね、なんかこう…雰囲気は子犬を見つめる母犬みたいな感じだったけれど、ただずーっとにこにこと」

 

「あ、それ私も見たよ!ヴァニラちゃんずいぶん嬉しそうにしてたよね」

 

「えー、わたし見てないよ? 」

 

「…なのはさんは私の目の前の席だから。授業中振り返られても困るし」

 

「私の席はヴァニラちゃんより後ろだけど、私も見てないよ。見たかったなぁ」

 

そう言えば授業中、アリサさんが不思議そうな顔をしていたことを思い出した。アリシアちゃんにまでバレる程とは思っていなかったが、多少顔が緩んでいた自覚はある。こんな学校生活も楽しいと思っていたのは事実だったからだ。

 

「まぁ、学校生活を楽しんでもらえているならいいんじゃないかな」

 

ミッドチルダに帰る方法はまだ見つからない。本当に帰れるのかどうかすら判らない。でも万が一ここでずっと生活していくことになったとしても、こうして一緒に楽しめる友達がいれば、それもアリなのかなと一瞬だけ思う。

 

「ヴァニラちゃん、そこで『私達の戦いはこれからだ!』的なことを言うと、最終回っぽく締まるんじゃない? 」

 

「ごめん、アリシアちゃん。悪いんだけど『最終回』の意味が全く判らないよ。それに戦いって何? 」

 

「んーっと、人生かな? 」

 

アリシアちゃんがまた変な知識を仕入れてきた。出所は恐らくなのはさん所有の漫画か何かだろう。そうやって雑談をしているうちに予鈴が鳴った。

 

「さてと、じゃぁ午後の授業に行きましょうか。5時間目はなのはが大好きな国語だったわね」

 

「全然大好きじゃないよぉ…休み明けくらい、5限目の国語はなくして欲しい」

 

「曜日で決まってるんだから仕方ないよ」

 

「それに本当の休み明けは始業式だった昨日でしょ…今日は6限目が無いんだから、頑張りなさい」

 

「にゃぁぁ…」

 

なのはさんはまるで猫のような声で小さく悲鳴を上げた。

 

 

 

=====

 

私達が聖祥に通い始めて2週間近くが過ぎた。このころになるとアリシアちゃんも学校生活に慣れ、なのはさん達以外の友達も何人も出来ている状態だった。私も数人のクラスメートとはかなり親しく話をするようになっており、魔法学校にいたころと比べればかなりの進歩だと思うのだが、アリサさん辺りに言わせるとまだまだなのだそうだ。

 

「ヴァニラの場合、その『数人』の中にあたし達が入っていることが問題なのよ。あたしとすずかとなのはとアリシア以外に誰と話をしてるか、言ってみなさい」

 

「えっと…橘さんと火鳥くん…かな」

 

「他には? 」

 

「……」

 

「まったく…そもそも月夜と泉行は最初にあんた達の面倒をいろいろと見てくれたから話をするようになっただけでしょう? それ以外の子達ともちゃんと話せるように頑張りなさいよ」

 

アリサさんが親切で言ってくれているのは判るのだが、今更「お友達になって下さい」と言うのも照れくさい感じがした。

 

予鈴が鳴ってアリサさんが自席に戻ると、目の前のなのはさんが振り返り、小声で言う。

 

「アリサちゃんもね、最初は上手くお友達が作れなかったんだよ。まぁ、わたしもあまり人のことは言えないんだけどね」

 

「え、そうなの? 」

 

「うん、入学してすぐの頃にね…」

 

1年生の頃、すずかさんの気を引きたくて髪留めを取り上げたアリサさんを、なのはさんがひっぱたくという事件があったのだそうだ。その後取っ組み合いの大喧嘩をした挙句、今のような大親友になったのだとか。

 

「雨が降って地固まるの典型だね。でも下手したら土砂崩れとかになりそう」

 

「『海になる』かも」

 

横で聞いていたらしいアリシアちゃんも小声で会話に加わってきた。今の台詞は最近アリシアちゃんがお気に入りのバンドの歌に似たような歌詞があるので、そこから取ったのだろう。ただこういった切り替えしが出来るということは日本語の言い回しにも随分慣れてきていることを意味する。実際、最近翻訳魔法は殆ど使っていなかった。

 

「アリシアちゃんも最近いろんな日本語の言い回しを覚えてるよね。翻訳魔法なくてもクラスの子達とお喋りできてるし」

 

「うん、お喋りしているとみんないろいろ教えてくれるしね」

 

ちなみに先ほどの「お気に入りのバンド」も最初はクラスメートに教えて貰ったのだそうだ。もしかして趣味が同じ人なら同じ話題で盛り上がったりするのかもしれない。私の場合なら読書好きな人とならいろいろとお喋りも出来るのだろうが、図書室などはあまりお喋りできるような場所でもないし、私は一度本を読みだすとかなり集中してしまう方なので、本に関するお話をするとしても教室で少しだけ、といった形になるだろう。

 

そんな思いに耽っていると授業開始のチャイムが鳴り、先生が教室に入ってきた。日直の号令に合わせて席を立ち、礼をする。授業を受けながら私は同じく読書が趣味というすずかさんにも相談してみようと思った。

 

 

 

その日の中休みに、私はすずかさんに読書が趣味の子に心当たりがないか聞いてみた。

 

「ヴァニラちゃんはうちのクラスの子で読書が好きな子を探しているの? 」

 

「うん、お話する切欠とか掴みやすかなって思って」

 

すずかさんの問いに頷きながら答える。すずかさんは少し考えるような素振りを見せたが、ゆっくりと首を横に振った。

 

「私、学校の図書室にも良く行くけれど、このクラスの子達はそんなに見かけないかな。別のクラスの子達でもいいなら紹介できるけど」

 

「ありがとう、すずかさん。取り敢えずそれは次のステップで」

 

「そうだ、私今日風芽丘図書館に借りてた本を返しに行くんだけど、ヴァニラちゃんもどう? 」

 

風芽丘図書館と聞いた瞬間、脳裏にあのガラス張りの大きな建物と一緒に、驚いた表情の車椅子の少女が浮かぶ。

 

「あ…えっと、ごめんなさい。今日はちょっと用事があるの」

 

「そっか。じゃぁ、また今度ね」

 

暫くの間はあの界隈には近づかないことにしているので、今度があるかどうかは不明だが、取り敢えず心の中でもすずかさんに謝っておく。

 

「…クラスの子達と仲良くするなら、もうちょっと手っ取り早い方法があるかもしれないよ? 」

 

不意にすずかさんがそう言ってきた。

 

「え? 」

 

「ヴァニラちゃんって普段おとなしそうに振る舞ってるけど、実は体育も得意でしょう? この前の体育でドッジボールをやった時に私が本気で投げたボールを避けてたし」

 

「あ…あれ? そうだっけ? 」

 

惚けてみたが、実ははっきり覚えている。当たるとちょっと痛そうだったので、瞬間的に身体強化をして避けたのだ。

 

「で、今日の体育はまたドッジボールな訳だけど。本気で私と勝負してみない? 」

 

「その勝負、乗ったぁ!」

 

「…ごめん、私が申し込まれた勝負を何故アリシアちゃんが受けているのか、とても疑問なんだけど。っていうか、いつから聞いてたの? 」

 

「このクラスの子があまり図書室に行かないっていうあたりかな」

 

割と最初の方だった。

 

「あたしとなのはも聞いてたわよ。まぁ、体育ですずかと勝負するっていうのは面白いかもね」

 

「最近はわたしも頑張ってるからね。運動神経が壊滅してるとか、もう言わせないんだから」

 

「取り敢えず、チーム編成だけど、ヴァニラとすずかが別チームなのは決定ね。あとのメンバーは追って決める感じかしら」

 

「…そういうのって、先生抜きに決めちゃってもいいものなの? 」

 

「平気よ。ちゃんとあたしが先生に口添えしておくから」

 

こうしてなし崩し的に私とすずかさんのドッジボール対決が確定してしまったのだった。出来れば念話で作戦立案が出来るなのはさんをこちらに引き込みたかったのだが…

 

「あ、なのはちゃんはこっちに来てくれると嬉しいかな」

 

すずかさんに先手を打たれてなのはさんを確保し損ねてしまった。後で聞いたところ、私となのはさんがアイコンタクトで理解し合えているように見えたことを警戒していたらしい。実際に理解し合えている訳なのだが、すずかさんの観察眼も侮れない。なのはさんからは念話でゴメンね、と連絡が入った。

 

取り敢えず私はアリサさんとアリシアちゃんを確保できたものの、それ以外の戦力も確保しないといけない。アリサさんに縋るような視線を送ったのだが、彼女はとても素敵な笑みを浮かべて私にトドメを刺した。

 

「あたしは先生に趣旨を説明しておくから、ヴァニラはメンバーを集めておいてね」

 

「あぁ、なるほど。そう言うことね」

 

アリシアちゃんも何か納得した様子で頷いている。つまりすずかさんとアリサさんは、クラスメートに私から話しかけるきっかけを作ってくれたのだ。そう言うことなら覚悟を決めるしかない。

 

私は4限目の体育を前に、チームメンバー確保に動くことにした。

 




ちょっと長くなりそうだったので途中で切りました。。

オリジナルのクラスメートは設定が面倒だったので、名前だけ浪漫倶楽部からお借りしました。。橘月夜さんと火鳥泉行くんはヴァニラ同様名前だけで、本人ではありません。。

たぶんクラスメートはいろんな漫画やゲームなどから名前だけ借りてくることになりそうです。。


注意はしているつもりですが、もし誤字脱字などがあればご報告頂けると幸いです。。
よろしくお願いします。。
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